おはよう、ござ……、朝食は……。
早……早上好……早餐……
昨日の残り、温めただけだけど。
只是热了一下昨天的剩菜。
……お嬢さまが? ああ、それは……失礼しました。
……大小姐您? 啊,那个……失礼了。
着替えますので……すぐに。
我这就去换衣服……马上。
……今日は……お嬢さまはお仕事。帰りが遅い。
……今天……大小姐有工作。回来会很晚。
念のため、夕飯の用意はしておくか……。
以防万一,还是准备晚饭吧……
やっぱりとっても綺麗な線ねぇ。
果然画得线条好漂亮呢。
デッサン未経験とは思えないくらい !
真不敢相信是素描新手!
美しいものを描けば、綺麗に映るのは当然か。
描绘美丽的事物,映出来自然漂亮。
……けれど、なんだろう、このひっかかりは。
……但是,总觉得,这份违和感是什么。
思えば、あの仕事が白紙になってからだ……。
回想起来,是从那项工作泡汤后开始的……
それが仕事なのであれば、やりますが。
既然是工作,我会做。
【Gadget-TheViewerNameプロデューサーP】
【プロデューサーP】
仕事、か……「ソロ」の意味は、どう捉えてる?
工作,吗……你是怎么理解“个人”的含义的?
ひとりで歌い、ひとりで踊る。
一个人唱歌,一个人跳舞。
私に価値を見出している、酔狂な者たち向けのステージ。
面向那些在我身上找到价值的、荒唐家伙们的舞台。
……お前でも、諦めることがあるのですね。
……连你也有放弃的时候啊。
いまの千夜が歌っても、「ただの」ソロ曲になりそうだからね。
现在的千夜唱出来,也只会是“普通的”独唱曲而已。
「やりたい」という気持ちが、少しでも芽生えたときにしよう。
等“想做”的心情稍微萌芽时再说吧。
待ちつづけることになりますね。ずっと。
会一直等下去呢。永远。
白雪さん、鉛筆、使いなれてきたみたいね。
白雪同学,铅笔用得挺熟练了呢。
……、……描きません。いえ、描けません。
……不画。不,画不了。
私にはその必要も価値も、ありませんので。
我没有那个必要和价值。
もー、わたしばっかり鬼だよ~。
真是的,老是欺负我~
千夜ちゃん、じゃんけんで何出すかわかりやすいんだもん。
千夜酱,猜拳要出什么太好猜了嘛。
じゃあ、次は別の……いっしょに遊べることにしよっか♪
那下次换别的……一起玩点什么吧♪
うん ! じゃあ、雪だるま作るのもいいし……
嗯! 那堆雪人也行……
そり滑りで遊ぶのもいいし……あとは~。
玩雪橇也行……还有~
ふふっ、やりたいことばっかりだね♪
呵呵,全是想做的事呢♪
……寒いよね。もうおうち、入ろっか。
……冷吧。我们进屋吧。
お屋敷のピアノで、お歌をうたおう。
用大宅的钢琴,唱歌吧。
千夜ちゃん、もっと遊びたいでしょ……?
千夜酱还想玩吧……?
ちとせちゃんが元気じゃないと、意味ないもん !
千岁酱不精神,就没意义了!
大丈夫だよ、わたし、我慢できるから。
没关系啦,我,能忍的。
帰りの電車……ああ、乗り過ごしてしまったのか。
回程的电车……啊,坐过站了吗。
心地の良い夢を、見ていたせいで……。
因为做了个舒服的梦……
ずいぶん、遠くまで来てしまったな。
不知不觉,走到这么远的地方了。
……なぜ、こんなところで降りてしまったのだろうか。
……为什么,会在这里下车呢。
寄り道する時間に、意味などないのに。
绕路的时间,根本毫无意义。
やっぱ千夜サンだ。すごい偶然デスね。
果然是千夜桑呢。超巧的咯。
あ、せっかくだし写真撮ってこ。記念にね。
啊,难得碰到拍张照吧。当作纪念。
……………………あきらさん?
……………………明桑?
あー、ただの掛け声なんで。テキトーで。
啊——,只是随口喊喊啦。随便的。
でもほら、いー感じ。あとで送っときます。
不过看,拍得不错吧。待会儿发给你。
ついでにここの雰囲気を満喫してます。
顺便享受这里的氛围。
どっか遊びに行ったり、新しい服着たり、知らない景色観るの。
去别处玩、穿新衣服、看陌生风景什么的。
……って、ナンパみたいかこれ。
……啊,这样问像搭讪似的咯。
あ、そだ。絵とか好きな感じデス?
啊,对了。喜欢画画之类的感觉?
美術部入ったって聞いて。自分も美術部で。
听说你进了美术部。我也在美术部。
理由っていうか、んー……楽しいから?
理由嘛,嗯——……开心吧?
自分のメインは造形なんだけど、なんか……
虽然我主攻造型,但总觉得……
じゃ、いつかなんか作ったら、見せてくださいよ。
那,哪天创作了点什么,给我看看呗。
なんとなく。ただの興味デスよ。
就随便咯。纯粹好奇。
今日も、デッサンの続きか……
今天也,继续素描吗……
意味のない、まるでお嬢さまの戯れのような日々。
毫无意义的,就像大小姐的玩笑般的日子。
なぜ、自分の手で描こうとしているのだ、私は……。
为什么,我……要用自己的手去画……
千夜ちゃん、自画像は描きたくないんだ。ほかのものも?
千夜酱,不想画自画像呢。其他东西呢?
……ええ。もったいないわよね。もともと美術への造詣が
……嗯。真可惜呢。本来听说对美术造诣很深,
深いそうだし、それなら絵の才能も開花するかもしれないから
或许绘画才能也能开花……
……描くことにこそ、意味があるのだけれど。ほら、これ。
……画画本身才有意义哦。看,这个。
……これ、千夜ちゃんが描いたもの?
……这个,是千夜酱画的?
ほんとだ、綺麗な静物デッサンだけど……。
真的,是漂亮的静物素描……
……私も、もっと違うものが見たいな。
……我也想看点不一样的东西呢。
この絵、なんていうか……どこか、私みたいだもの。
这幅画,怎么说呢……有点,像我。
お嬢さまがそれを望むのであれば、描けばいい。
如果大小姐希望,我画就是了。
なぜ、こんな場所でひとり……逃げるように……。
为什么,在这种地方一个人……像逃跑一样……
ふたりで~? どうせわたしが鬼じゃん~っ。
两个人~? 反正我当鬼嘛~。
え~? しょうがないなぁ。
诶~? 真拿你没办法啦。
わからない、知らない。知らないはず……違う。
不明白,不知道。应该不知道的……不。
閉じ込めたのだ。押さえつけ、声を出せなくして。
是我把它关起来了。压制住,让它发不出声音。
どうして……どうしてこんなに胸がざわつく……。
为什么……为什么胸口这么乱……
お嬢さまの望みも果たせず、仕事すらこなせず。
连大小姐的愿望都实现不了,工作也做不好。
アイドルでいる理由も、もはやありはしないというのに……。
身为偶像的理由,也早就没有了……
どうして、「楽しい」という感情を思い出してしまった……?
为什么,想起了“开心”这种感情……?
……アイドルというものになってからだ。
……自从成为偶像后。
私は何も得たくない。だが何かを得てしまった。
我不想得到任何东西。却得到了什么。
その矛盾から……目をそらせば、それで済むのだろうか……?
这种矛盾……如果移开视线,就能解决吗……?
アイドル活動を…………休止させてください。
请让我…………暂停偶像活动。
「一身上の都合による、無期限の活動休止」。
“因个人原因,无限期暂停活动”。
……本当に、それでいいんだね?
……真的,这样就好吗?
はい。仕事は求められる基準にも達せず、意欲もない……。
是。工作达不到要求标准,也没有热情……
それはアイドルに真摯に向き合っているお嬢さまや、
那对认真对待偶像的大小姐、
凛さんや涼さん……あきらさんたちにも、失礼にあたります。
凛小姐和凉小姐……明桑她们来说,也是失礼。
……なぜか、胸がざわついている。
……不知为何,胸口乱糟糟的。
私はただ与えられた仕事をこなす人形でよかった。
我本该只是完成被赋予工作的人偶。
それなのに……なにかが、おかしい。
可是……有什么,不对劲。
答えが見つかるまで……アイドルから離れさせてください。
在找到答案之前……请让我离开偶像。
私が意味を見出したら改めて、とお前も言っていた。
你说过,等我找到意义再重新开始。
わかった、それじゃあ告知文を作るから、あとで確認して。
明白了,那我准备公告文,待会儿确认一下。
……辞めたいとは、いわないんだね。
……你没说想辞职呢。
聞こえてしまったからには、謝りたい、とね。
既然听到了,我想道歉。
ボクは盗み聞きするつもりはなかったのだけれど……
我本没打算偷听……
通りかかったときに話し声が聞こえちゃって……。
路过时听到了说话声……
聞かれて困ることでもありません。いつか知られることです。
不是听了会困扰的事。迟早会被人知道的。
そっか……あ、あの、千夜ちゃん。
这样啊……啊,那个,千夜酱。
アイドル、お休みしちゃうの……?
偶像,要休息了吗……?
キミの歌声には、ボクも何かを感じていた……何かを。
你的歌声里,我也感觉到了什么……某种东西。
で、でもでもっ、辞めるってわけじゃないもんね?
但、但是但是,不是辞职吧?
ちょっと長めのお休みっていうだけでっ !
只是稍微长一点的休假而已!
どうしてそこまで気にされているのですか。
为什么这么在意呢。
それは……アイドルは、私にとってぜんぶだから。
那是……因为偶像,对我来说就是一切。
お休みも……辞めるなんてことも、私には考えられなくてっ。
休息……辞职这种事,我根本不敢想。
私、もともとアイドルを目指してたんだ。
我本来,就是梦想成为偶像的。
普通の女の子じゃない何かになりたくて。
想成为普通女孩之外的什么。
だから、いまは……まるで、夢のなかで生きてるみたいで。
所以,现在……就像活在梦里一样。
私は、いったい誰になっちゃうんだろうって。
我,会变成谁呢。
辞めたら何者でもなくなっちゃうんじゃないか、って……
如果辞职了,是不是就不再是谁了……
わ、私の場合は……だけどっ。
我、我自己的情况……但是。
プロデューサーさんに見つけてもらって、
被制作人发现,
アイドルの小日向美穂になれたから。
成为了偶像的小日向美穗。
ただの小日向美穂は、誰にも見つけてもらえなかった、私。
只是小日向美穗的我,没有被任何人发现。
どこにでもいる、普通の女の子。
随处可见的普通女孩。
……今の私とは、全然違っていて。
……和现在的我完全不同。
だから……辞められないんだ、アイドル。絶対に。
所以……不能辞职,偶像。绝对。
この輝きを知っちゃったから……。
因为已经知道了这份光芒……
……ご、ごめんね、自分のことばっかり !
……对、对不起,只顾自己!
えっと、休むのも大事だし、ゆっくり休んでっ !
那个,休息也很重要,好好休息吧!
戻ってくるの待ってるからね ! それじゃあ私……失礼しますっ !
我会等你回来的!那我……告辞了!
……まるでアイドルが、救いであるかのようなことを。
……仿佛偶像就是救赎一般的话。
……プロデューサー、千夜のこのあとの予定は?
……制作人,千夜接下来的安排是?
それは好都合だ。じゃあ、千夜。
那正好。那么,千夜。
もしよければ……何処かへ往かないかい?
如果愿意的话……要不要去个地方?
キミを……もっと聞かせてほしいんだ。
我想……多听听你的声音。
……ずいぶんとロマンチックですね。
……挺浪漫的呢。
かけらも思っていなさそうでなによりだよ。
看起来一点都不觉得,真是太好了。
水槽に閉じ込められ、彼らはただ、普通に生きている。
被关在水槽里,它们只是普通地活着。
彼らが、「彼ら」としてただ生きていることに、意味がある。
它们作为“它们”活着本身,就有意义。
それだけでいいのさ、此処ではね。
在这里,这样就够了。
アイドルも、似た存在だと思わないかい?
偶像,不也类似吗?
飾り立てられ、ステージに立たされ、
被装饰起来,站在舞台上,
誰かに作られた幸せを、観察者へ届ける《偶像》。
将别人制造的幸福,传递给观察者的《偶像》。
ボクたちには声がある。生きている証を、反抗を叫べる。
我们……有声音。能喊出活着的证明、反抗。
このセカイに己の意志を刻み、証明することができるんだ。
能在世界上刻下自己的意志,证明自己。
それはつまり……励ましか。このまま生きろと。
意思是……鼓励吗?要我活下去?
私は、そんな綺麗なものにはなれません。
我……成不了那么美好的东西。
キミはどうして、終わりを待つように、固く心を閉ざして……
你为什么,像等待终结一样,紧闭心扉……
ああ……いや、いい。胸の奥に閉じ込めたままで。
啊……不,算了。就让它锁在心底吧。
けれど、零れ落ちる独白なら、ボクは耳を傾けるよ。
但如果溢出的独白,我会倾听。
……たしかに、優等生ではないでしょうね。
……确实,不是优等生呢。
幸福から拒まれ、穏やかな日々からはじき出され。
被幸福拒绝,被平静的日子排斥。
世界を退け、退けられた……はみだし者なんだ……私は。
被世界拒绝,也被拒绝了……是个异类……我。
……覚えているのは、ひどい揺れと、轟音、衝撃。
……记得的,是剧烈的摇晃、轰鸣、冲击。
何度目かの、東欧への旅路だった。
不知第几次的东欧之旅。
両親と私は並んで座り……私は、疲れて眠っていた。
父母和我并排坐着……我,累得睡着了。
目を覚ましたときにはもう、穏やかな時間は消えていた。
醒来时,平静的时间已经消失。
明滅する赤のなかで、誰ともわからない悲鳴と、
在闪烁的红色中,不知是谁的悲鸣、
可哀想に、まだ小さいのに……。
可怜啊,还这么小……
大丈夫? 自分の名前は言える?
没事吧?能说出自己的名字吗?
ご両親のことは残念だったね……
你父母的事真遗憾……
気にしないでね。ゆっくりで、落ち着いてからでいいから。
别在意哦。慢慢来,等平静下来再说。
お父、さん……おかあさ……?
爸……爸……妈……妈……?
いた、千夜ちゃんっ ! ! ちょっと、通して…… !
找到了,千夜酱!! 让开一下……!
千夜ちゃん……。無事……でよかった。
千夜酱……。平安……太好了。
……落ち着いて、聞いてくれるかい。
……冷静下来,听我说好吗。
おじさまの言葉は、理解に時間を要さなかった。
叔叔的话,没花时间就理解了。
物心はついていたから、起こった事実は確かなのだろうと。
因为已经懂事,知道发生的事是事实。
……だからこそ、現実を直視できなかった。
……正因如此,无法正视现实。
……なんで? なんで、わたしだけ……?
……为什么? 为什么只有我……?
一緒に連れてってよ……。やだ……やだよっ…… !
带我一起走啊……。不要……不要啊……!
あなたは生きるの。私がいる……私がそばにいるから…… !
你要活下去。我在的……我在你身边……!
本当にささやかな願いの、ひとかけらさえ。
连最微小的愿望碎片也。
もう二度と触れることが叶わないのならば、必要などない。
既然再也无法触碰,就不需要了。
手を伸ばす価値も、意味もないのだから。
伸手的价值和意义,都没有了。
やがて、全てを喪い、行き場のない私を、
不久后,失去一切、无处可去的我,
おじさまが黒埼家へ招いてくださった。
被叔叔邀请到黑埼家。
私は、「ちとせちゃんの友だち」の千夜ではなくなった。
我不再是“千岁酱的朋友”千夜了。
過去を、自分を捨て。新たに「僕」という役割に頼り、
舍弃过去、舍弃自己。依赖“仆人”这个新角色,
お嬢さまの添え物として生きていくことだけが、
只作为大小姐的附属品活下去,
……なぜ、私だけが今もこうして生きているのか。
……为什么,只有我还活着。
なぜ、生きる意味をどこかに見出そうとしているのか。
为什么,要在某处寻找生存的意义。
私の生は、あのとき燃え尽きたはずなのに。
我的生命,本该在那时燃尽了。
この矛盾の果てに、なにがあるというのか……と。
这种矛盾的尽头,还有什么……
……キミに、意味はある……と思うよ。
……我觉得……你有意义。
こんなことを話したかったわけじゃ……。
说这种话本意不是……
知ったかぶりをして傷つけるのは……違う。
装作懂来伤害人……不对。
けれど、心にもない綺麗ごとを並べるのも、違う……
但堆砌虚伪的漂亮话,也不对……
……やはり刻みつけるべきだと、思う。
……还是该刻下吧。
時を進めて、足掻きながらでも、キミが生きている証を。
推进时间,即使挣扎,也要刻下你活着的证明。
……それが、キミの価値で、意味になるなら。
……那如果是你的价值、意义的话。
……貴方も、光から目をそらすなと?
……你也说不准移开目光?
ボクはあの人とは違う。責任もない。光を見ろとは言えない。
我和那个人不同。没有责任。不能叫你看光。
けれど……矛盾こそがキミをキミにしているようにも見える。
但是……矛盾似乎才让你成为你。
……ああ。何が言いたいかと言うと。
……啊。想说的是。
いびつなままで、いいと思うんだ。
保持扭曲的样子,就挺好。
綺麗になろうとする必要はないし、美しさを理解しなくともいい。
不需要变得漂亮,也不需要理解美。
ただ……きっと、生きていてほしいんだ。
只是……一定,希望你活下去。
生きることに、なにか……わずかでも、何かを感じられたら。
如果活着,能感觉到什么……哪怕一点点。
言葉がまとまらなくて……我ながら、厭になる……。
话都说不清……自己都讨厌……
同情や励ましは、はじめから不要です。求めていません。
同情或鼓励,从一开始就不需要。我不求。
私には価値がない……ただそれだけの説明に過ぎないのだから。
我没有价值……只是如此解释而已。
……キミは全てを喪ったと言っていた。
……你说失去了一切。
だけど、まだ残っているはずだ。何かが。
但应该还剩点什么。什么。
……そうか……「白雪千夜」。
……是啊……“白雪千夜”。
「白雪」という名は、喪わなかったもの。
“白雪”这个名字,是没失去的东西。
それは……キミの「証」となるんじゃないか?
那……会不会成为你的“证明”?
……そんなことより、飛鳥さん。
……比起那个,飞鸟桑。
いつもと異なり大変伝わりやすい言葉遣いでした。
和平时不同,话说得很易懂呢。
なっ……い、いつもはもっと、ボクは…… !
什……我、我平时更……!
ああもうっ。なんなんだキミは…… !
啊啊真是!你搞什么啊……!
千夜ちゃんのこと、少しだけ待ってあげてほしいんだ。
希望你能等等千夜酱。
迷子になって泣くことは、もうなくなったから。
迷路哭泣的事,已经没有了。
前を向けるようになるはずなの。あの子も。
应该能向前看了。她也。
私が子離れしたように、千夜ちゃんにもその時が来たんだよ。
就像我放手一样,千夜酱的时候也到了。
時間はかかっちゃったけど……今度こそ、本当の意味でね。
花了点时间……但这次是真正意义上的。
鏡は、ありのままを映すから嫌いだった。
镜子,因为映出真实而讨厌。
これまでの道程を映し、静かに私を見せる。
映出至今的路程,静静地照出我。
そこには言葉もなく、温度もなく、ただ事実だけがある。
那里没有言语、没有温度,只有事实。
身だしなみを整えるためではなく、輪郭を捉えるために見る。
不是为了整理仪容,而是为了捕捉轮廓而看。
価値がないとわかっていながら、映るものを描く。なぞる。
明知没有价值,却描绘映出的东西。描摹。
そこにはやはり、矛盾しか映らない。
映出的终究只有矛盾。
どれだけいびつで、正しくないのだろう。
多么扭曲、多么不正确。
こんなものに、価値が宿ると?
这种东西,能承载价值吗?
わからない。ひとりで描いているだけでは、なにも。
不明白。一个人画,什么也不是。
……ひとりでは、ないとしたら。
……如果不是一个人。
ソロステージ、やる気になってくれたんだね。
个人舞台,有干劲了呢。
一度休止を宣言しておいて撤回など、
宣布了暂停又要撤回,
プロならばあり得ないことでしょう。
作为专业人士不可能吧。
ですが……確かめたいことがあります。
但是……有想确认的事。
誰も彼もが幻想を抱き、ステージに立つ。光のなかを生きている。
谁都抱着幻想,站在舞台上。活在光芒中。
彼女たちは美しく、眩い。私は……ああは、なれません。
她们美丽、耀眼。我……做不到那样。
お前は、光のなかに生きることこそが救いだという。
你说活在光芒中才是救赎。
……けれど、救われない者もいます。
……但是,也有不被救赎的人。
……魔法使いだと呼ばれることもあるが、
……虽被称为魔法使,
自分はそんな大層な人間じゃない。
但我不算什么大人物。
だけど、プロデューサーとしての責任はある。
不过,有制作人的责任。
確かな理由がなくとも、千夜がステージに立とうと思うのなら、
即使没有确切的理由,如果千夜想站上舞台,
なにか要望があるのなら、いくらでも聞こう。
有什么要求,尽管提。
これはちとせにお願いされたからじゃない。
这不是千岁拜托的。
君が願えば、そうするつもりだ。
如果你希望,我就这么做。
白雪千夜。君が、アイドルだから。
白雪千夜。因为你是偶像。
……プロデューサーという生き物は、重度の仕事馬鹿、か。
……制作人这种生物,是重度工作狂吗。
それとも、どうしようもないアイドル馬鹿なのか……。
还是说,无可救药的偶像痴呢……
私のこんな感情を、待っていたとは。
竟在等我这种感情。
お嬢さまでも、美穂さんたちでも、酔狂な者たちでもない。
不是大小姐,也不是美穗桑她们,更不是荒唐家伙们。
誰よりも偶像に救いを見出し、願っているのは……
比谁都从偶像中寻求救赎、渴望的……
……矛盾だらけで、どこまでも滑稽だな。
……充满矛盾,滑稽透顶啊。
ならば……私に。私を表現できるものをください。
那么……给我。能表现我的东西。
お前がアイドルとしての価値を見出したのならば、
如果你看到了作为偶像的价值,
その歌で……なにかを、見つけられるかもしれない。
那首歌……或许能找到什么。
この生にも……意味があるのかも……。
这生命……或许也有意义……
歌うことが、証になるかもしれないと。
唱歌,或许能成为证明。
愚かにも、思ってしまったから。
愚蠢地,这么想了。
……大好きな人たちの、生きた、証に。
……心爱的人们的,活过的,证明。
ああ。そのための、『白雪千夜』の歌を。
好。为此的,“白雪千夜”之歌。
お嬢さまに、幸せになってほしい。大切な友だちだから。
希望大小姐幸福。因为是重要的朋友。
ちとせちゃんのそばにいたい。唯一遺された、よすがだから。
想待在千岁酱身边。是唯一留下的依靠。
歌いたい。なぜかは、わからないけれど。
想唱歌。为什么,不明白。
あの光のなかにいたのは、お嬢さまではなかった。
那光芒中的,不是大小姐。
いつかの少女は……ただ、歌を……。
过去的少女……只是,在唱歌……
得ることとは喪うこと。それは変えられない摂理。
得到就是失去。那是不可改变的真理。
……けれど、嘆くことは、やめました。
……但是,不再叹息了。
なにかを……ずっと喪っていた、なにかを。
因为感觉……想起了什么……一直在失去的什么。
千夜ちゃん……話してくれたの?
千夜酱……告诉你了吗?
彼女の話と想いを聞いて、作った歌だよ。
听了她的故事和想法,创作的歌。
あの子、あなたに話してくれたんだ……。
那孩子,告诉你了啊……
こーいう曲調のバックダンサー、慣れてないからいろいろ発見。
这种曲风的伴舞,不习惯所以有各种发现。
誘ってくれてありがとね、千夜サン。
谢谢你邀请我,千夜桑。
一緒にステージに立てて嬉しかったよ !
一起站上舞台好开心!
……主役が楽しめたみたいでなによりだよ。
……主角享受了就好。
つぎのメロディー、わたしが歌いたい~ !
下一段旋律,我想唱~!
誰かと声を重ねられるから。
因为可以和别人合唱声音。
大好きな人たちの声を聴けるから。
因为可以听到心爱的人的声音。
ずっと、当たり前にそれがつづいていくのだと思っていた。
一直以为,那理所当然会继续。
……おはよう、ねぼすけの千夜ちゃん。
……早上好,贪睡鬼千夜酱。
そ・れ・と……見ちゃった、『題名:白雪千夜』♪
还·有……看到了哦,“标题:白雪千夜”♪
昨日のステージと、同じくらい……自由に描いたのかなって。
和昨天的舞台一样……感觉是自由画的呢。
でもね。千夜ちゃんは、とっても綺麗なんだよ。
但是呢。千夜酱,非常漂亮的哦。
いまが楽しければ、それでいいんじゃない?
现在开心就好,不行吗?
未来のこと、やりたいこと、いつかはわかるんだし。
未来的事、想做的事,总有一天会懂的咯。
いつか、アイドルでいられなくなる日は、来ちゃうよね。
总有一天,当不了偶像的日子,会来的吧。
ままならないセカイだからこそ、ボクらは願う。
正因为世界不如意,我们才祈愿。
満たされないからこそ、願いは、芽生えるものだろう?
正因为不满足,愿望才会萌芽吧?
拒んでも、背を押してくる。彩っていく。灰色の世界を。
即使拒绝,也推着我前进。为灰色世界添彩。
この描きかけの命にさえ、意味を見出してよいのだと。
连这未完成的生命,也能赋予意义。
アイドルというのは……なんて愚かで。
偶像这种东西……多么愚蠢啊。
……綺麗かは、やはりわからない。
……是否漂亮,还是不明白。
でも、あのステージには……意味が、あったのかもしれない。
但那个舞台……或许有意义。
わたしが、そこに立つ……私として生きる、理由が。
我站在那里……作为我活下去的理由。