隠岐谷 誓
私と違い、弥代さんは存外あっさりと終えられていましたね
弥代衣都
……あ、はい。
短いのをこう、並べる感じだったので
てっきり誓さんの願いごとの話になると思っていた分、
つい返事がまごついてしまった。
隠岐谷 誓
ふむ。となると貴方の願いごとは……
家内安全、商売繁盛あたりでしょうか
隠岐谷 誓
なるほど、なるほど。実に興味深いですねえ。
よければ聞かせていただいても?
短い沈黙のあと、誓さんはなぜかしみじみとうなずいた。
隠岐谷 誓
実は戦くんが特別メニューを組んでいるようでして
隠岐谷 誓
これで年末年始に鈍った方々の身体を鍛え直すんだと、
ずいぶんはりきっている様子でしたから
隠岐谷 誓
そうやって貴方が喰らいついてきてくれるからこそ、
戦くんも指導に熱が入るんでしょうねえ
誓さんにうなずき返し、その背中を追おうとして──
ふっと足が止まった。
うまくかわされたかもしれない、とは思わなかった。
初めから誓さんは明かすつもりがなかった、というほうが
しっくりくる気がしたからだ。
隠岐谷 誓
それにわずかな時間でも羽を伸ばしてもらえたなら、
お誘いした私としても嬉しいです
隠岐谷 誓
“商売繁盛”に越したことはありませんが、
気を緩める時間も確保してくださいね
隠岐谷 誓
ちなみに私は、このあと大河と春日と一緒に、
ハウスでのんびり過ごす予定です
誓さんから立ち入ってもいいと許された境目が、
おぼろげに見えた気がした。
例えば、誓さんの願いごとは教えてもらえないけれど、
あの2人との話なら聞かせてもらえる──というように。
隠岐谷 誓
といっても、過密スケジュールではあるんですが
隠岐谷 誓
大河が年末年始に録りためた特番にお付き合いしつつ、
春日の大画面でのゲームにも参加しようかと思いまして
隠岐谷 誓
ええ。炬燵が出ている間は春日もリビングにいることが
多いので、自然とお互いの趣味に付き合う機会も
増えたようです
──そんな他愛もない話をぽつり、ぽつりと交わしながら、
誓さんの案内で休憩処に到着した。
お目当てのお雑煮を買い、外の縁台に並んで腰かける。
誓さんはどうだっただろうと、それとなく様子を窺うと、
綺麗な所作で器をお盆に戻すところで。