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local p={} p.text_data_88={ {index="10001",text="私、スペシャルウィークって言います!<br>夢は日本一のウマ娘です!お母ちゃんたちに<br>喜んでもらうため…私、けっぱります!"}, {index="10002",text="サイレンススズカです。走るのが好きです。<br>先頭は、誰にも譲りません。<br>えっと…………その、以上です"}, {index="10003",text="やっほー、トウカイテイオーだよ!<br>無敗の三冠ウマ娘になるボクのこと、<br>ぜーったい見逃さないでよねっ!"}, {index="10004",text="ハァーイ、マルゼンスキーよ!<br>君も見にきたんでしょ?異次元の走り。<br>ふふっ♪首ったけになっても…知らないゾ♪"}, {index="10005",text="私はオグリキャップ。<br>故郷のみんなに喜んでもらえるよう、<br>精一杯頑張るつもりだ。よろしく頼む"}, {index="10006",text="よう、ゴールドシップ様だ!たとえ<br>火の中、芝の中!宇宙の果てでも関係ねえ!<br>どこまでも面白いモン探しに行ってやるぜ☆"}, {index="10007",text="おっす、ウオッカだ!俺のポリシーは、<br>誰よりもカッケーウマ娘でいること!<br>ダッセェことはしねーかんな。覚えとけ!"}, {index="10008",text="ハウディ!タイキシャトルです!<br>ワタシのパワフルな走りでみんなを<br>ハッピーにしちゃいマスよー!"}, {index="10009",text="グラスワンダーと申します。<br>ウマ娘として生まれたからには、その“道”<br>を果てまで窮めたいものですね。ふふっ♪"}, {index="10010",text="メジロマックイーンと申します。我が生家、<br>メジロ家の悲願である『天皇賞』の制覇――<br>この両脚で、必ず果たしてみせますわ"}, {index="10011",text="コースを駆ける真紅の怪鳥!<br>エルコンドルパサー参・上・デース!<br>世界を目指してカッ飛びますよー!"}, {index="10012",text="はーっはっはっは!ボクこそが最も強く<br>美しい“覇王”テイエムオペラオーさ!<br>いざ、伝説を始めようじゃないか!"}, {index="10013",text="私はシンボリルドルフ。あらゆるウマ娘の<br>頂点に立ち導く“皇帝”たらんとする者だ。<br>同じ志を抱く者よ、共に勇往邁進して征こう"}, {index="10014",text="やっほー、セイウンスカイだよー。<br>適度にテキトーにのーんびりしてこー。<br>…大物を狙うなら、待つ時間も大事でしょ?"}, {index="10015",text="ライスシャワー…です。あ、あのね…?<br>ライス、みんなを不幸にする…だめな子なの<br>でも…か、変われるように…がんばります!"}, {index="10016",text="アタシ、アタシ!ダービーウマ娘になるのが<br>夢なんだ!あとは…あーっ!!名前!!!!<br>ウイニングチケットです!よろしくねーッ!"}, {index="10017",text="ゴールドシチー。…言っとくけど、アタシの<br>ことお人形扱いしたら許さないから。<br>見た目じゃなくて、走りで判断してよね"}, {index="10018",text="こんにちはッ!サクラバクシンオーです!<br>ご覧の通り、優秀な委員長でもあります!<br>みなの模範となるべく、いざ!バクシーン!"}, {index="10019",text="うふふっ、スーパークリークですよ~。<br>みんなの笑顔のためなら、う~んと<br>頑張っちゃいます。お任せください♪"}, {index="10020",text="わたし、ハルウララ!にんじんとね、<br>あとは、たのしいから走るのがだ~い好き♪<br>1着めざして、めいっぱいがんばるぞーっ!"}, {index="10021",text="こんにちは、トレセン学園の理事長秘書、<br>駿川たづなです。みなさんが、より良い<br>学園生活を送れるよう、支えてまいります♪"}, {index="10022",text="こんにちは、桐生院葵です。トレセン学園の<br>新人トレーナーです。まだまだ未熟者ですが<br>ウマ娘の為、精一杯、努めて参ります!"}, {index="10023",text="こんにちは、ダイワスカーレットです!<br>精一杯頑張り…って、アンタか。ふんっ!<br>目指すは1番よ。それ以外はないんだから!"}, {index="10024",text="いいツラ構えのヤツが大勢いるねえ…<br>へへっ、全員このヒシアマ姐さんが<br>相手してやるよ!さあ、タイマンだっ!"}, {index="10025",text="エアグルーヴだ。信念を曲げなければ<br>理想は必ず芽吹く。それを示すため<br>私が“女帝”として皆の指針となろう"}, {index="10026",text="お疲れちゃん!デジたんですっ!<br>キラキラのウマ娘ちゃんたちを推してます!<br>毎日幸せ!ヲタクに生まれてよかった~♪"}, {index="10027",text="タマモクロスや!ウチはな、レースで勝って<br>勝って勝ちまくって名前を売るんや!ナリが<br>ちっさいからって、なめとったらあかんで!"}, {index="10028",text="ご機嫌よう、ファインモーションです!私、<br>素敵な思い出をたくさん作りたいの。まずは<br>おいしいラーメン屋さんを知りたいな♪"}, {index="10029",text="ビワハヤヒデだ。私の目的は、完全なる<br>勝利の方程式を組み立てること。…あと、<br>私の頭は一般的なサイズだからな!"}, {index="10030",text="えへへ、マヤちんだよーっ☆<br>ワクワクすることとか~、シゲキの<br>あることが大好きなんだっ♪よろしくー!"}, {index="10031",text="…マンハッタンカフェ、です。<br>私には…追いつきたい友だちがいます…。<br>いつも私の前を走る子…ほら、そこに…"}, {index="10032",text="私の名はミホノブルボン。<br>目標は三冠ウマ娘に設定されています。<br>脚質などは別データをご参照ください"}, {index="10033",text="メジロライアンって言います!<br>体を鍛えて元気よく!筋肉育てて<br>健やかに!張り切って行きましょう!"}, {index="10034",text="あ、あたしはユキノビジン言います!<br>チンクルシリーズでイケてるシチーガールに<br>なるのが夢です!ふぅ…ちゃんと言えたぁ…"}, {index="10035",text="はろはろ~!アイネスフウジンなの!<br>家族みーんなに喜んでもらえるように、<br>レースもバイトもいっぱいがんばるの~!"}, {index="10036",text="君も興味ないかい。ウマ娘がどこまで<br>速くなれるのか。もしあるのなら…この私、<br>アグネスタキオンのモルモットになりたまえ"}, {index="10037",text="エアシャカールだ。どんな勝負でもデータが<br>ものをいう。シミュレーションに問題はねェ<br>ねじ伏せてやるよ、ロジカルにな"}, {index="10038",text="エイシンフラッシュと申します。<br>ウマ娘の伝統を守る為、私は走り続けます。<br>どんなレースも全てはスケジュール通りに"}, {index="10039",text="スマートファルコンでーっす!ファル子って<br>呼んでね!私、ウマドルになるのが夢なの!<br>サインはいつでも受付中だよっ☆"}, {index="10040",text="ナリタタイシン。以上。アタシはただ<br>勝ちまくって、バカにした奴らに<br>わからせたいだけ。…ほっといて"}, {index="10041",text="こんにちは、ニシノフラワーです。<br>みなさんに頼ってもらえるくらい、素敵な<br>おねえさんウマ娘になりたいです…!"}, {index="10042",text="正義のヒーロー、ビコーペガサス参上!<br>アタシの走りはどんな強敵もバーンと倒して<br>みんなを笑顔にするんだ!すごいだろ!"}, {index="10043",text="ハイハーイ、マーベラスサンデーでーす!<br>全世界に、マーベラスな気持ちを届けるよ!<br>さぁ、みんなも一緒にマーベラース!"}, {index="10044",text="どうも!マチカネフクキタルって言います!<br>シラオキ様のお告げを信じて、福を掴む日を<br>待ちかねつつ…日夜占いに励んでいます!"}, {index="10045",text="メ、メイショウドトウです…!あの、あの、<br>私、自分に自信が持てるようになりたくて、<br>精一杯、努力しゅてま…か、かんだっ!"}, {index="10046",text="どうも…えっと、メジロドーベルです。<br>アタシもメジロ家のウマ娘だし、それに<br>恥じない走り…をするつもり、です"}, {index="10047",text="あー…ナイスネイチャでーす。あはは、<br>やっぱ『素晴らしい素質』なんて名前負け<br>ですよねー…まーぼちぼちやってきましょ?"}, {index="10048",text="おーっほっほ!私の名前はキングヘイロー。<br>一流のウマ娘として最高の結果を残すわ!<br>…この私の才能を世界中に示すためにもね!"}, {index="10049",text="みんなを楽しませる漆黒のエンターテイナー<br>フジキセキだよ!最高の“キセキ”で、<br>君を必ず笑顔にしてみせるからね!"}, {index="10050",text="スイープトウショウは変身前の名前!<br>アタシは魔法少女スイーピーなの!<br>これが魔法よ!えいっ!!(ゴンッ)"}, {index="10051",text="ツインターボだー!<br>ターボ1番とるもん、ぜったいとるもんっ!<br>いっくぞー、ターボぜんかーーーい!!"}, {index="10052",text="ウェーーイ!ダイタクヘリオスでぇーっす!<br>テンアゲなレースブチかましてくんで、<br>過去イチのコールよろしくー☆"}, {index="10053",text="イクノディクタスと申します。<br>マネジメントならお任せください。<br>鉄の意志で徹底管理してみせます"}, {index="10054",text="メジロパーマーだよ!元気してる~?<br>ま、なんかあったらいつでも聞くからさ。<br>気軽に話しちゃってよ♪"}, {index="10055",text="あたしはキタサンブラック!<br>お祭りみたいにみんなが盛り上がる<br>最高のレースを目指して、全力で駆けるよ!"}, {index="10056",text="サトノダイヤモンドと申します。<br>最初から決まった運命なんてありません。<br>未来は、私の走りで輝かせてみせます!"}, {index="10057",text="やっほー、マチカネタンホイザだよ。<br>みんなに負けないよう、張り切って<br>練習しちゃ…え、今日はお休み!?"}, {index="10058",text="ヤエノムテキです。金剛八重垣流の<br>門弟として、強者とのレースを所望します。<br>いざ、尋常に勝負!!"}, {index="10059",text="ゼンノロブロイと申します。その…こんな私<br>ですが、英雄譚に憧れていまして…いつか<br>レースの中で、私の物語を描きたいです…!"}, {index="10060",text="樫本理子です。ウマ娘の健康を預かるのは<br>トレーナーの役目。緊張感をもって業務に<br>当たるのは当然です。"}, {index="10061",text="ほーっほっほっほ!シーキングザパールよ!<br>知ってる?世界は可能性に満ちているの。<br>私がそれを証明してみせるわ!"}, {index="10062",text="サ、サクラチヨノオーです!<br>憧れのあの人と、夢の舞台に立つために<br>この想い――花開かせてみせますっ!"}, {index="10063",text="おーっほっほ!私はカワカミプリンセス…<br>そう、気品高き姫の中の姫!レースでも<br>可憐にぶっ飛ばして差し上げますわっ!!"}, {index="10064",text="ボノボーノ♪ヒシアケボノだよ~☆<br>料理も走りも、大っっきな愛情込めて<br>みんなに届けるから!よろしくね~♪"}, {index="10065",text="ちわっス!バンブーメモリーっス!<br>鬼の風紀委員長の名にかけて<br>ビシバシ走るっスよー!!"}, {index="10066",text="ガオ~ッ!シンコウウインディなのだ!<br>ビビったか?正直に怖いって言えなのだ~!<br>…おいっ!無視するなっ!ガブーッ!"}, {index="10067",text="ナカヤマフェスタだ。<br>生ぬるいレースじゃ、スリルを感じねぇ。<br>なァ…もっとアツくヒリつかせてくれよ…!"}, {index="10068",text="てやんでい!あたしはイナリワンってんだ!<br>見ての通りチャキチャキの江戸っ子でい!<br>誰よりでっかいウマ娘になってやらぁっ!"}, {index="10069",text="メジロアルダンと申します。<br>この脚は儚くとも、誇り高く走りたい…<br>一瞬でもいい。私はレースで輝きたいのです"}, {index="10070",text="あたしはトーセンジョーダン。夢は……<br>って感じの、固い話NGだからよろ~☆<br>とりまネイル見てよ?イケてるっしょ?"}, {index="10071",text="シリウスシンボリだ!<br>レースに御託はいらねぇ。黙って見てな。<br>世界を獲って“最強”を証明してやるよ"}, {index="10072",text="…ナリタブライアンだ。<br>わざわざ語って聞かせるような話はない。<br>ただ走り、ブッちぎって勝つだけだ"}, {index="10073",text="Currenこと、カレンチャンでーす!<br>世界を“カワイイ”で包んじゃいます☆<br>よそ見はめっ。カレンだけを見ててね♪"}, {index="10074",text="凄腕笹針師(の弟子)、安心沢刺々美よ。<br>あたしにかかればブスッとパワーアップ!<br>ワォ、あんし~ん☆"}, {index="10075",text="アドマイヤベガよ。……もう行っていい?<br>もっとトレーニングして、レースに勝って、<br>私は一等星にならないといけないから"}, {index="10076",text="…………まあ? 自己紹介の時間ですの?<br>うふふっ、メジロブライトと申します。<br>メジロ家の一員として励みますわ~。"}, {index="10077",text="こんにちは、ナリタトップロードです!<br>応援してくださるみなさんの期待に<br>応えられるよう、全力を尽くします!"}, {index="10078",text="レースにしかない風があるんだ。軽くて、<br>澄んでいて…自由気ままな追い風でね。<br>――アタシはミスターシービー。よろしく"}, {index="10079",text="ダイイチルビーと申します。<br>至上であることこそ、我が一族の務め。<br>己の責務を果たすべく、邁進して参ります"}, {index="10080",text="…おれは、ケイエスミラクルです。<br>この命をくれた、みんなに報いて…<br>必ず、奇跡を起こします"}, {index="10081",text="ツルマルツヨシ!憧れの『三冠ウマ娘』<br>目指して!とにかく全力をっ――…ゲホッ!<br>…む、むせただけです!超元気です大丈夫!"}, {index="10082",text="――シンボリクリスエスだ。シンボリ家には<br>恩がある。その1人として、掲げた目的も<br>与えられたmissionも――遂行するのみ"}, {index="10083",text="私、ライトハローはイベント企画を主な業務<br>としております。ステージで輝くみなさんの<br>お手伝いを…少しだけさせてくださいね"}, {index="10084",text="俺はタニノギムレット!求めるのは理想の<br>“ワタシ”。仮棲まいの己を騙る気はない。<br>壊せよ、蹴破れ――そして進みな、終焉へ!"}, {index="10085",text="サクラローレルです。目指すのは、世界。<br>凱旋門賞です!――ふふ、今はただの『夢』<br>ですけど…いつか必ず実現してみせます"}, {index="10086",text="……ヤマニンゼファーです。<br>私が目指すのは、風…なによりも速く、<br>自由に駆ける――風に、なりたいのです"}, {index="10087",text="マーちゃんです。アストンマーチャン。<br>いずれ世界のマスコットになります。<br>その瞳でまっすぐ見ていてくださいね"}, {index="10088",text="私を知りたい?ならばターフへどうぞ。<br>メジロラモーヌ…私の総てがそこに在るわ"}, {index="10089",text="ジャングルポケットだ。<br>走りてーなら相手になってやるよ。<br>ま、“最強”の座は譲らねーけどな"}, {index="10090",text="北の港から飛んできた、紙の翼の渡り鳥♪<br>苫小牧ロコドル、ホッコータルマエだべ!<br>…うーん、もっとひねった方がいいかな"}, {index="10091",text="カツラギエースだ、よろしく!<br>夢があるなら臆するなよ?<br>狭っ苦しい壁はあたしが壊してやるからさ!"}, {index="10092",text="リッキー☆ラッキー☆大吉祥☆<br>コパノリッキーだよっ!風水の力で<br>キミにもハッピーを呼び込んであげる♪"}, {index="10093",text="ワンダーアキュートじゃ。<br>のんびりしとるが、コツコツやるのは<br>得意なんよ。よろしゅうねぇ"}, {index="10094",text="佐岳メイだ!欧州レースの分析なら<br>任せてくれ。『凱旋門賞』制覇という<br>前人未踏の夢、私と一緒に叶えよう!"}, {index="10095",text="さあ、心躍る旅を!仲間と踊る日々を!<br>Everyone!夢を見たいヤツは全員――<br>このタップダンスシチーの船に乗りな!"}, {index="10097",text="私はヴィルシーナ。<br>全てを打破し女王となるその日まで<br>くじけてなんて、あげないわ"}, {index="10098",text="おお、我が愛するムジチスタたちよ!<br>このサウンズオブアースと共に、<br>今日もメロディーアを重ね合おう!"}, {index="10099",text="ヴィブロスだよ!いつか絶対、キラキラの<br>ドバイで、セレブなレースをしちゃうんだ♪<br>いっしょに行こっ!もう決めちゃったもん♪"}, {index="10100",text="望みはひとつ――“最強”の称号よ!<br>人々の記憶に残るウマ娘になりたいの!<br>そのために必要なのは…そう、自己演出よ!"}, {index="10101",text="……ドゥラメンテだ。<br>目指すは勝利ではなく、先にある“最強”。<br>…………以上だ"}, {index="10102",text="はい、ノースフライトです!衣装とメイクと<br>アクセサリーと、そしてたゆまぬ努力と。<br>全てで磨いたわたしの輝き、見てください!"}, {index="10103",text="不敬であろう、疾く跪け。<br>――このオルフェーヴルの覇道、<br>伏して拝するがよい"}, {index="10104",text="都留岐涼花です。日々、様々なコンテンツの<br>プロデュース業をしております。<br>最高の感動を、皆様にお届けいたします"}, {index="10105",text="…シュヴァルグランです。…その、<br>身の程知らずなのはわかっています。でも…<br>いつか――い、偉大な…いえ、頑張ります"}, {index="10106",text="ネオユニヴァースは、<br>友好的“コンタクト”を提案。<br>つまり――『よろしくね』"}, {index="10107",text="はい、ヒシミラクルです。そこはかとなく?<br>いい感じで、がんばっていけたらいいなぁ、<br>と思うので、よろしくお願いします~"}, {index="10108",text="ダンツフレームだよ。<br>まあまあ、ケンカしないでさ。<br>甘いものでも食べて頑張ろ~、みたいな?"}, {index="10109",text="理事長の秋川やよいだ!我が校の生徒と、<br>それを支えるトレーナーのため全力を尽くす<br>所存ッ!!是非、存分に頼ってほしいっ!!"}, {index="10113",text="過程や理屈、そんなものは無意味よ。<br>勝者こそが正義、そうではなくて?<br>ジェンティルドンナ、全てを屈服させるわ"}, {index="10114",text="ラインクラフトです!想いを引き継ぎ、<br>道を切り拓き、未来へ繋いでいく。わたし、<br>そんなティアラウマ娘になりたいんです!"}, {index="10117",text="にゃーっはっは、ワシこそはノーリーズン!<br>天下を統べるためなら、手段など選ばん。<br>いざ下剋上~!"}, {index="20001",text="日を追うように走り、日が沈むまで駆ける。<br>それがここ、トレセン学園生徒の青春。<br><br>「さて、このくらいかな」<br><br>そうつぶやく彼女の視線の先には、<br>スポーツドリンクと数個の塩おにぎり。<br>あとそろっていないのは……。<br><br>「はぁっはぁっ……スぺちゃん、急いで」<br><br>「ス、スズカさ……もう動け、ません~っ」<br><br>「ふふ、ご到着か。これでそろったね」<br><br>門限時刻を通り過ぎた時計の長針を一瞥し、<br>彼女は寮の玄関へ歩みを進める。<br>まずはしっかり門限破りの帰宅を注意して。<br>……たっぷり、その頑張りを労う。<br><br>それがここ、トレセン学園寮長の青春。"}, {index="20002",text="「ここはこの数式だから……」<br><br>もれた独り言にも気づいていなそうだ。<br>傍らの参考書は使い込まれており、<br>せわしなくペンを走らせているノートは<br>整然とした数式できっちり埋まっていた。<br>ふと、彼女が母親について<br>語っていたことを思い出す。<br><br>「ママはなんでもできる優秀なウマ娘なの。<br>アタシの憧れなのよ」<br><br>そう話していた彼女は今、母親を追うように<br>黙々とペンを走らせている。<br>懸命な努力の邪魔にならないよう、<br>静かにその場を後にした。"}, {index="20003",text="突き抜けるような晴天の下。<br>皆が彼女の名を呼び、称える。その勝利を。<br><br>「ははっ、いい心地だねぇ。<br>……よーく見てな!<br>次のレースも、ぶん回してやるからね!」<br><br>視線の先には、轟く大歓声。<br>しかし、彼女の思考は遥か遠く。<br>その先を走る、怪物を見据えていた――"}, {index="20004",text="「あとは、この装飾を残すのみ。<br>……皆、気を引き締めてかかれ!」<br><br>ファン感謝祭の準備は順風満帆!<br>当然だ――全ての采配を、<br>女帝と名高い彼女が握っているのだから。<br><br>「あれ、『ゴルシ特製焼きそば即売会』?<br>……こんな横断幕、だったっけ?」<br><br>「は……?」<br><br>女帝の雷が犯人のウマ娘を打つまで、<br>あと3秒――!"}, {index="20005",text="TSUI☆GEKI TSUI☆GEKI<br>( ゚∀゚)o彡゜( ゚∀゚)o彡゜<br><br>U☆遊撃注意デスデス!(なになに?)<br>M☆マガジンぶっぱなし!(ふっふー!)<br>A☆アサルトで♪(ノックアウト~!)<br><br>TSUI☆GEKI TSUI☆GEKI<br>( ゚∀゚)o彡゜( ゚∀゚)o彡゜<br><br><br>「FOOOO! ゆるにゃん可愛いよ~!<br>……ッ!? え、ま、ちょ、目、合っ――」<br><br><br>※しばらくお待ちください※<br><br><br><br><br><br><br>「――……ふぅー。ギリ魂戻ってきたわー。<br>ライブ中に魂抜けるとか、なんたる不覚……<br>……ッシャ! 気を取り直していくよー!」<br><br><br>※最初に戻る×∞"}, {index="20006",text="「ふぅ……日課のメニューは完了したが、<br>この脚の感じ――まだいけそうだな。<br><br>計算上の活動限界は、残り……ふむ。<br>レッグプレス450kgを12レップ程か。<br>……と、くれば――」<br><br>キラリと眼鏡が光り、<br>その下の金色は、静かに燃える。<br><br>「検証、あるのみ……だな!」<br><br>キリリッと眉を引き締め意気込む彼女。<br>尻尾は、上機嫌そうに揺れていた。"}, {index="20007",text="キラキラ輝くシャイニーデイ!<br><br>「大人なガールズトーク日和だね☆」<br><br>ちょっぴりビターなコンビニお菓子に、<br>新作コスメが彩るファッション雑誌♪<br><br>「あ、牡羊座ラブ運サイコーだって☆」<br><br>「ボーノ! 美容スイーツ特集もあるね♪」<br><br>「きゃー! ぜーんぶ、見逃さないもん!」<br><br>いつでもワクワク! ガールズトーク!<br>もちろん日焼けも対策済み☆<br>だってだってそれが、大人のたしなみ♪<br>少女たちのおしゃべりは、まだまだ続く。<br><br>――チャイムの聞き逃しには、ご用心!"}, {index="20008",text="<br>――……、……。……?<br><br>「……うん、そう。<br>……だから、好きなの……描いたの」<br><br>……、…………。<br>……――……、――……、……――?<br><br>「ふふ……外れ……正解は、……雲……」<br><br><br>それは雨の日の、“お友だち”との内緒話。"}, {index="20009",text=".COMMAND;Squat<br><br>START:0830……<br> WGT 100㎏+20㎏<br> SET 10×3<br>……END:<br><br>――ノートの上を滑る、ペン先が止まる。<br><br>「はぁ……はぁ……発汗、体温上昇、確認。<br>ですが、トモへの負荷は不十分。<br>もう1SET――……えい、えい、おー」<br><br>胸に浮かんだ彼女の友人のかけ声と共に、<br>ノートを閉じた。"}, {index="20010",text="――ピピーッ!<br>得点を告げる、ホイッスル。<br>コートの主役が勝利を収めた。<br><br>「ありがとう! みんなもナイスプレイ!<br>その声援に、筋肉が奮い立ったんだよ!」<br><br>キラリと輝いたのは、太陽か。<br>彼女の笑顔か。<br><br>シュートしたのは、ゴールネットか。<br>観客のハートか。<br><br>答えは、そう。どっちもです。"}, {index="20011",text="「み、見てください! さんきゅー、って!<br>にこにこマークも……めンこいです!」<br><br>「ふふっ、ユキノも負けてないよ。笑顔」<br><br>憧れのおしゃれなカフェ。<br>都会のシチーガールになるためにと、<br>踏み入れた別世界が――少女を輝かせる。<br><br>「よ、よぉし! 次はSNSにあげて……」<br><br>「あ、SNSやってるんだ。<br>……ね、フォローしていい? せっかくだし」<br><br>「ふぉっ!? ももも、もちろんです!」"}, {index="20012",text="20XX.XX.XX<br>とある研究趣味のウマ娘の独白。<br><br>「私は渇望している。<br>シナプスを震わす程の興奮を」<br><br>校舎3階にある、とある空き教室。<br>分厚いカーテンで外界と隔てられた<br>薄暗いそこは――いわばラボなのである。<br><br>限界の先。<br>事象の地平面の向こうへと、至るための。<br><br>「その燃料たり得る、モルモットに……<br>新薬の出来を伺うとしよう」<br><br>――飽くなきこの探求心を、満たすために。"}, {index="20013",text="――ピッ、<br><br>アラームはひと鳴りで、沈黙。<br>斜光の角度から、天気は予測通りと判断。<br><br>「ふぅ……定刻起床。216秒で髪を整え、<br>310秒でジャージに着替えて……」<br><br>「むにゃ……アンコール、いくよぉ~……」<br><br>……幸せそうな寝顔に、微笑がこぼれる。<br>定刻は5.2秒ほど過ぎてしまった。<br><br>が、しかし――嬉しい誤差である。<br><br>「フラッシュさんも、アイドルコール……<br>練習、しないと……ねー……」<br><br>「……え」"}, {index="20014",text="「1、2……――ふぅ……」<br><br>喧騒から離れた、プールサイド。<br>じっくりとストレッチをした甲斐もあり、<br>生徒たちは続々と帰り支度を始めている。<br><br>これでようやく静かに泳げ――<br><br>「イッダァーー!? 足づっだ~~ッ!?<br>たす、たすけっ! タイシン~~!!」<br><br>「~~っ! ……だーかーらー! ちゃんと<br>ストレッチしろって言ったでしょっ」<br><br>口とは裏腹に、腰を上げる少女。<br>プールに入るのは、まだ先になりそうだ。"}, {index="20015",text=" ~新・マーベラス計画!!~<br> 作成者:マーベラスサンデー<br><br>【概要】マーベラスの、マーベラスによる、<br> マーベラスのための……計画!!<br>【狙い】世界にマーベラスな気持ちを届ける<br>【開催期間】今! 今すぐ! これから!!<br><br><br>「というわけで☆ 早速始めちゃうよ★」<br><br>計画の重要事項を記した企画書が、舞う。<br>しかしそれに構う時間はない。なぜなら――<br>世界が待っているのだ……マーベラスを!!<br><br>※散乱した書類は後でしっかり片付けました"}, {index="20016",text="日は西から東に沈めども!<br>運は凶から吉に……いえ、大吉。<br>いえいえ! もうひと声の大大吉に成らん!<br><br>「来ませり! 開運必勝シラオキ様!」<br><br>取り出したるは、<br>『特製☆福が来たるシラオキ様シート』<br>侮ることなかれ! レース運だって、<br>見通せちゃうのですから。(談・作成者)<br><br>「レース当日……は、れ、と、き、ど、き」<br><br>「く、も、り……の、ち……あ、め……<br>え、これ占い? ……ウソでしょ?」"}, {index="20017",text="『幸せは、自ら掴み取るべし!』<br>その言葉に胸を打たれた少女は――<br><br>……ちょっぴり後悔していた!<br><br>「く、苦しいぃ……みなさんの、視線も……<br>ううっ……本当に、これで校舎1周……?」<br><br>「ええ! 全てが幸せの呼び水です!<br>レッツファイト! レッツ開運!」<br><br>「幸せの――……れ、れっつ、ふぁいと……<br>れっつ、かいうん……っ!」<br><br>頑張ればきっと報われる。だって――<br><br>幸せは、意外と傍にあるもので。<br>努力は、誰かが見ていてくれる。……はず!"}, {index="20018",text="憧れと言うには、近すぎて。<br>目標と言うには、遠すぎる。<br><br>それでも、追いかけたいのだ。<br>彼女の前を往く、2つの影を。<br><br><br>「……よしっ、まずは1本。<br>ライアンのタイムを目指して」<br><br><br>視線は、輝くターフの上。<br>――その横顔にまた、憧憬を抱く者がいる。"}, {index="20019",text="人がまばらなプール。<br>自由気ままに泳ぐ、狼ならぬ一匹魚。<br><br>「昼時のプールほどの穴場、ないわ。<br>……っし、クールダウンがてら、もう1本」<br><br>ふやけた指先は見てみぬふり。<br>しかし額を流れるのは、まさしく努力の証。"}, {index="20020",text="一流は、一日にして成らず。<br>一流は、一を聞いて十を知り。<br>一流は、一着を目指しひた走る。<br><br>「さすがですわ! 練習内容だけでなく、<br>心得も一流だなんて……!」<br><br>「おーーっほっほっほ!<br>私のようになりたいのであれば、<br>この一流の三拍子を……<br>日々に足してごらんなさい!」<br><br>「はい! 一流に一流と一流を足して、<br>三流に――……!」<br><br>「そうそう! …………ちょっと待って」"}, {index="20021",text="「お疲れ様です!」<br><br>ある日の、トレーニングコース。<br>同期のトレーナーを見かけて声をかけた。<br>彼女の頬には、わずかに赤が差している。<br><br>「練習風景、観させていただきましたっ!<br>流石の指導力ですね、刺激を受けました。<br>……私も、負けていられません」<br><br>「私も、負けない……むん」<br><br>「ミーク! ……そうね、言い直します。<br>――私たち、負けませんから。<br>共に、切磋琢磨していきましょう!」<br><br>その宣言は、青空のように澄み渡り。<br>その虹彩は、春の木漏れ日のように輝いた。"}, {index="20022",text="どや! ふんわりもっちり!<br>ほんでむにむに!<br>これが関西の『いか焼き』や!<br><br>関東じゃ姿焼きのほうばっかやろ?<br>でもウチの『いか焼き』はこっち。<br>小さい頃からようさん食べたおやつ、<br>こいつがウチを大きくしたんや!<br>……まだ小さいって? やかましいわ!<br><br>ったく、イジワル言うとあげへんで?<br>……なーんて、ウチは優しいからな。<br>ほれ、遠慮せずパクッといってまえ!<br><br>……どや? にしし、うまいやろ!<br>そのええ顔、関西人冥利に尽きるわ!"}, {index="20023",text="+===================+<br> 誰でも言うことを聞かせられる魔法<br>+===================+<br>【レベル】★★☆☆☆ 魔女入門<br><br>【材料】<br>・7日間月光浴させた水<br>・絶対に成功させるという思い<br><br>【手順】<br>①月光浴させた水を指につけ五芒星を描く<br>②相手のフルネームを3回唱える<br>③「ケキトコウイ」と1回唱える<br>④念を込めながら本を閉じる(おしまい♪)<br><br>※見つかったら制裁魔法されちゃうかも!?<br> 注意してね☆<br><br>「ふっふっふ~……カンペキだわ。<br>これで明日のゴミ捨て当番、回避ねっ!」<br><br><br>制裁魔法『寮長指導』発動準備、開始……。<br>魔女の運命やいかに!?<br>"}, {index="20024",text="準備はバッチリ、カンペキ! テンアゲ~☆<br>にんじんジュースに、にんじんスティック!<br>そんでポテトときたら、<br>パーティーするしかないっしょ!?<br><br>「あっははは! バイブス上げてこ~ッ!<br>ネイチャ目線ちょーだい♪<br>ウェーイ! 好きピにかまちょちゅ~!」<br><br>「えっ、ちょっ……」<br><br>ほらほら、ど? いい感じに盛れてるし!<br>パジャマもウチらも、めっカワじゃん?<br>これ絶対、ファンついちゃうやつ!<br>バズり確実的な~?? ヤッバ、うれぴよ☆<br><br>「おー、ジョーダン来たね。<br>こっちこっちー。<br>にんじんジュースでいい?」<br><br>「おけまる~。<br>すご、すでに大盛況ウケる~」<br><br>「ジョーダン、遅いし!!<br>つーか、もっと集めるべき??<br>栗東寮のみんなでエンカしよ的な。<br>あはっ! そんなん、ぶちアゲっしょー☆」<br><br>パーティーはここからなワケで、<br>人数いた方が盛り上がるし?<br>ワンチャン、全員集合ありえるし?<br>飲んで騒いで、盛り上がって、<br>寝るヒマなんてあるわけないし??<br><br>ま、とりま始めとくか!<br>ウェイウェーイ! ちゅうも~っく!<br>みんなグラスよろた~ん!<br>それじゃあ――<br><br>「今夜はオールでいくよー!<br>イエーイ、れっつ・ぱーりなーい!!」<br>"}, {index="20025",text="パンッ、という小気味の良い音が<br>プールサイドに響く。<br>白いボードの前に立ち、2人のウマ娘を<br>指導するのは、イクノディクタスだ。<br><br>「いいですか、ターボさん。<br>準備運動もせず水の中に入ろうなどと<br>は言語道断。いくら身体能力に恵まれた<br>ウマ娘であれど、油断すれば<br>命に関わります。わかりますか?<br>まずは筋肉を伸ばし、しっかりと――」<br><br>「うう、わかったってばぁ。長いよ~」<br><br>「タンホイザさんも、<br>ボーッと見ていないで柔軟を!<br>屈伸と前屈は、しっかりと筋を意識して、<br>順序はこちらに書き出した通りに。<br>これを守って行えば、通常よりもさらに<br>大きな成果が得られるはずと――」<br><br>「は、はい~!」<br><br>2人のやり取りを見守っていた<br>マチカネタンホイザもまた、<br>イクノディクタスからありがたい<br>お説教を受けていた。<br><br>「脚を大切にしてください。<br>無茶をしてケガなど、絶対にしないように」<br><br>思わず「もうほっといてよ~」と<br>愚痴をこぼしたくなったツインターボも、<br>この一言に素直に従った。<br>……ただ説教をしたいわけではない。<br>彼女は仲間を想っている。だからこそ――<br><br>「――それでは、もう1度初めから。」<br><br>……こうして、何度も繰り返し<br>準備運動の大切さを叩き込んで<br>いるのだろう。<br><br>「えー!!」という声が、<br>今度はプール全体に響き渡り、<br>イクノディクタスのストレッチ指導は、<br>その後も長々と続いたのだった。"}, {index="20026",text="「ちょっ、いたたっ。<br>尻尾も耳も触っちゃダメだって!」<br><br>「あはは、ネイチャ大家族だ~。<br>楽しそうだね~」<br><br>それは、そっちの方がよっぽどでしょーが。<br>てか、呑気に見ていないで、<br>助けて欲しいんですけど。<br>……いや、子どもは好きだよ。<br>カワイイし、無邪気で毒もないしさ。<br>だけど――<br><br>「おねーちゃん、<br>おみみもしっぽも、かわいいね!」<br><br>「うん! すっごくかわいい!!」<br><br>「う……」<br><br>毒がなさすぎるのも、毒って言うか。<br>カワイイなんて、子どもに言われても、<br>別に嬉しくは……ああもうっ、<br>キラキラした目で「さわってもいーい?」<br>なんて、許可をとろうとしないで欲しい。<br><br>「そ、そんな顔しても、<br>ダメなものは、ダメなんだから……」<br><br>力のない言葉を放ってみる。<br>……はいはい、わかってます。<br>これはきっと、無駄な抵抗。<br>結局、最後は無邪気な笑顔に<br>騙されちゃうんだろーな。はぁ。"}, {index="20027",text="お花のお礼、スカイさん喜んでくれたかな?<br>いろんなお花があったけど、デイジーは<br>おひさまが大好きって聞いたから……。<br><br>おひさまを待ってお花がひらく……<br>日向ぼっこが好きなんて、<br>スカイさんみたいなお花です。<br><br>それに、スカイさんみたいなところが<br>もうひとつ――<br><br>デイジーの花言葉は『無邪気』<br>それから『ありのまま』……。<br><br>お昼寝したり、釣りをしたり、<br>いつだって楽しそうなスカイさん。<br>風に揺れてるデイジーみたいに<br>のんびり、自由に見えて……。<br><br>お話ししてると、ほっとするんです。<br>無理はいらないよって言われてるみたいで。<br><br>(スカイさんがデイジーを好きだといいな。<br>私は、デイジーが大好きになったから……)"}, {index="20028",text="まさかあなたが『アイヴァンホウマ』を<br>読んでみたいなんて……<br>いえ、嬉しいんです……すごく。<br><br>そうですね……<br>この図書室にある本ですと……<br><br>こちらの文庫新装版はどうでしょう?<br>注釈が丁寧なので小ネタの解説も<br>充実しています。<br><br>この大判本もおすすめですね。<br>挿絵が多いので、当時の生活や現地の様子が<br>とてもイメージしやすいかと……!<br><br>あ、映画版のノベライズも……!<br>オリジナル展開が実にスリリングで、<br>5人のウマ娘たちが槍で戦うシーンは<br>圧巻なんです。<br><br>ですがやはり、ゆくゆくは原著を読んで<br>いただきたいですね!<br>原文ならではの古風で重厚な筆致から<br>真の英雄像らしい勇敢さが感じられ……<br>(※以下略)"}, {index="20029",text="「ほーっほっほっほ!<br>さあ、世界遠征のプランを練るわよっ!<br>私のターゲットは――まずはフランス!<br>次はアメリカ! 貴方たちはどうっ!?」<br><br>「おおお、世界! エルも走るデェェス!!<br>イギリス! ドバイ! 憧れのパリ!!!」<br><br>「いいわね! ナイス・パッション!<br>ウィンザー城へのロングウォークで併走、<br>凱旋門を背に強敵と握手を交わし、<br>ドバイの夜景を仲間たちと楽しむ。<br>そんな1週間があったっていいわっ!!!<br>そちらのガールはどう!?」<br><br>「私は、国内で着実に勝つつもりなので~」<br><br>「最高よ! あえて世界に出なくてもいい。<br>だって輝く貴方を見るために、世界から<br>人々のほうが、この国に集まるのだから!<br>そうね、『世界』の中心は貴方!<br>ンン~……レボリューション!!!<br><br>素敵だわ……みんな自分だけの<br>プレシャスな夢を抱いてる。<br>世界を見つめ! 世界に見つめられる!<br>そうやって私たちは宝石になるのよっ!!」"}, {index="20030",text="彼女はいつも早起きだ。<br>他のウマ娘が眠っているうちから<br>新聞配達のアルバイトに出かける。<br><br>配達を終えたら、授業とトレーニング。<br>たくさん走った後は、またアルバイト。<br>なんと3つ以上掛け持ちすることもある。<br><br>目まぐるしく多忙な毎日。<br>いくらウマ娘でもへとへとになるはず。<br>彼女はどうやって、この日々を<br>乗り越えているのか――<br><br>「さて、と。<br>栄養補給してもうひとがんばりなの!」<br><br>彼女はいつでも<br>駆け出す準備ができている。<br><br> ~~頑張るキミに タフネスバー~~<br><br>このCMが流れてから、アイネスフウジンに<br>ファンから大量のタフネスバーが<br>差し入れされるようになったという――"}, {index="20031",text="「ゲート練習ぅ~?<br>合図するまで、待つ練習ぅぅ~~?<br>……バカにするなぁーッ!<br>そのくらいヨユーでできるのだ!!」<br><br>…………。<br>……………………。<br><br>「ンガァーッ! なんで合図しないのだ!?<br>する気ないのだ!?<br>――うぅぅぅ~~……こうなったら……」<br><br>(ザッ! ザッ! ザザザッ……!)<br><br>「穴掘って抜け出してやるのだぁーーッ!」"}, {index="20032",text="――時は現代、嵐の日。<br>泥にまみれたコースに立つは、<br>小さな小さなウマ娘。<br><br>「なんでぇ、シケた面して。<br>おめぇ、あたしが走れないって<br>思ってんのかい」<br><br>――ただ修練の時なれど、<br>手を抜く道理は有りはせぬ。<br><br>「てやんでいべらぼうめ。<br>嵐じゃマトモに走れない?<br>泥の道じゃあ脚が取られる?」<br><br>――もはやこの世は江戸で無し、<br>何が粋だと人は言う。<br><br>「はっ、小せえ小せえ!<br>小せえなあ!」<br><br>――否!<br>粋ならばここに有る!<br><br>「向かいっ風があるほうが<br>走りがいもあらあ!<br>泥がなんでえ、地面があるにゃ違いない!」<br><br>――江戸っ子の<br>粋な魂なかりせば、<br>このウマ娘もここに無し!<br><br>「こちとら江戸育ちのイナリワン!<br>嵐だろうがなんだろうが、<br>いなせに走ってやろうじゃあねぇか!」"}, {index="20033",text="「本日ご紹介する商品は、<br>こちらの高圧洗浄ノズル!<br>勢いよく水を吹き出し、ゴシゴシしなくても<br>汚れをキレイに落とせますデス!<br>靴はもちろん、車や壁などの清掃も<br>簡単にできちゃうんデェェェス!」<br><br>「わお、素敵ー。<br>でも、お高いんでしょ~?」<br><br>「いえいえセイちゃん、<br>お値段はとってもリーズナブル!<br>し・か・も! 飛距離もブエノ!<br>遠くの花壇にも水やりができるんデス!<br>ほら、こんなふうに――!」<br><br>(ぶしゃーーーっ)<br><br>「「…………あ」」<br><br>「……うふふ、エル……水遊びですか?」<br><br>「グラァァァス!? ごごごめんなさい!<br>悪気はなかったんデス!!!!<br>た、たまたま花壇の横にグラスが!<br>ね!? セイちゃ――って、いない!?」<br><br>「エ~ル~?<br>……もう。トレーニングシューズを<br>洗っていたんですか?」<br><br>「そそそ、そうなんデス!<br>今日も一緒に頑張ってくれたので、<br>キレイにしようと思って!」<br><br>「道具に敬意を払うのはよいことですね。<br>一緒に洗わせてもらって構いませんか?」<br><br>「ど、どうぞどうぞデース! ……ほっ」<br><br>「ところで、水をかけられた借りは、<br>レースでお返ししますからね?」<br><br>「! それは……望むところデェース!<br>負けませんよ、グラス!!」"}, {index="20034",text="額の汗を優しく押さえる1人のウマ娘。<br>その凛とした横顔から、高貴な精神と<br>逆風にも怯まぬ意志がうかがえる。<br><br>「それでも、私は走ります」<br><br>……彼女の脚はガラスのように繊細だ。<br>疾駆に憂いを抱いている者も少なくない。<br><br>「それでも、私は諦めません」<br><br>彼女は双眼を凝らし、2つの影を追う。<br>かたや武辺の中に光明を得る者。<br>かたや薄紅の淡き憧憬を抱く者。<br>まだ遠き背中たちに、焦がれるばかりだ。<br><br>「それでも、私は競います。<br>誇りを胸に今を駆けたいのです!」<br><br>それでも……と、彼女は立ち上がる。<br>息が続く限り……否、その道が続く限り。"}, {index="20035",text="もー、やめやめ休憩ぇ~。<br><br>や、マジでありえないんですケド。<br>フツー併走でガチ走りしなくね?<br>坂路で抜かなくね?<br><br>んで、ヨユーで抜かれてるあたし。<br>ウケるわ~。パね~。<br><br>……てか、ネイル乾かないな~。<br>……はぁ~~…………はぁ~~~~~~っ!<br><br>………………ガチ負けとか、ダッサ。<br><br>――っしゃ、か~わいたっ☆<br>とりま坂路走っか!"}, {index="20037",text="「黄金色のスープ、綺麗に揃った麺、<br>すぐにほぐれるほど煮込んだチャーシュー」<br><br>「お腹が空くと、ラーメンを考えちゃう。<br>職人さんが作った本格派も、町食堂で<br>愛されている味も、カップ麺も、<br>私に感動をくれた素敵な食べ物!」<br><br>「そうだ! こんな最高の出会いを<br>させてくれたラーメンに携わる人たちに、<br>『ラーメンナイト』の勲章を<br>あげるのはどうかな?」<br><br>「それで、もっと美味しいラーメンを<br>作ってもらえるように、最高の設備を建てて<br>職人さんに思いきり腕を振るってもらおう!<br>名付けて『ラーメンキングダム』!」<br><br>「……え?<br>そんなことされたら逆に戸惑いそう?」"}, {index="20038",text="黄色い悲鳴の中心に、堂々と座る彼女。<br>面倒くさそうにも、満足そうにも見える<br>どこかシニカルな笑み。<br><br>近づくのは、ためらわれる。<br>けれど、嫌でも視界に入ってくる……。<br><br>彼女みたいなウマ娘を意識せずに<br>いられる人なんて……いるだろうか?<br><br>人だかりが動いて彼女が見えなくなる。<br>つい首を伸ばしたら、目が合った――<br><br>「なんだよ? 物欲しそうな顔しやがって。<br>アンタも可愛がられたいのか?」"}, {index="20039",text="――お前は言った。<br>「アンタがまた掃除当番をサボらないように<br>監視してるの。他の子のためにも」<br><br>その言葉通り、少し休もうとしただけで<br>ぎゃーぎゃーうるさい声が飛んでくる。<br>ほんのちょっとスマホ触っただけだぜ?<br>別にいいじゃねぇか。<br><br>……おい、待て。いつの間に<br>ホウキなんか持ってきてんだよ。<br>さっさと終わらせるわよ、って<br>お前、俺の母ちゃんか?<br><br>お前もお前の用事があるくせに。<br>俺に構ってたら駅前のシュークリーム<br>売り切れちまうぞ?<br>今日こそは、って<br>楽しみにしてたじゃねぇか。<br><br>……ああ、もう。お前のせいだ。<br>この掃除、1秒でも早く<br>終わらせねーとじゃねーか!"}, {index="20040",text="「ふー、いい汗かいたー!<br>筋肉も喜んでます!」<br><br>トレーニングをひと区切りした<br>メジロライアンは、失った水分を補うため、<br>スポーツドリンクを体に流し込む。<br><br>「トレーナーさんも<br>日陰に入ったほうがいいですよ。<br>太陽の下にいるだけで体力を消耗しますし。<br>よかったら、これ飲んでくださ――」<br><br>だがメジロライアンは、<br>スポーツドリンクを差し出す手を<br>咄嗟に引っ込めた。<br><br>「あの、えっと……あははっ!<br>飲みかけを渡すなんて失礼でしたね!<br>更衣室にある新品を取ってきます!」<br><br>少しだけ頬を赤らめたメジロライアンは、<br>そう言ってトレーニングの時と同じように<br>颯爽と駆けていくのだった。"}, {index="20041",text="「……すごい……」<br><br>1人きりの教室。<br>レースの動画をチェックしながら、<br>思わずつぶやいた。堂々と走る姿、<br>その自信にたがわぬ圧倒的な内容――<br><br>「……それでも必ず、私が一等星に……」<br><br>――人が決意を固めているのに、<br>ぶしつけに開かれる部屋のドア。<br><br>「おお! 麗しのアドマイヤベガさん!<br>まさかこんなところで会おうとは!<br>やはり君とは相まみえる定め……<br>切ることのできない縁があるようだね!」<br><br>静寂を破った声の主を認識した瞬間、<br>ノートパソコンを閉じた。<br><br>「待たせたことを詫びよう、マイライバル!<br>さあ、熱き友情という交響曲を<br>共に奏でようじゃないか!」<br><br>「……そもそも待ってないし、<br>ライバルってそういうのじゃないでしょ」<br><br>反論しつつノートパソコンを片づける。<br>無事にこの場を切り抜けられるだろうか――<br><br>「ずいぶん難しい顔をしているね!<br>君が抱えている難題を2人で解き明かそう!<br>嗚呼、なんて感動的なシチュエーション!<br>さあ、悩んでいることを話してごらん!」<br><br>「…………」<br><br>誰のレースを観ていたか、<br>知られるわけにはいかない。<br>面倒なことになるに決まってる。"}, {index="20042",text="「おはようございます!<br>この言葉に隠された意味をご存じですか?」<br><br>「お、は、よ、う……は、よ、う……<br>は、や、う……は、や、い!<br>なんと! 朝のあいさつには<br>“はやい”イコール“速い”が<br>含まれているのですっ!!」<br><br>「つまり! おはようございます、とは<br>スピードを言葉で表した挨拶!」<br><br>「朝のあいさつを継続すれば、バクシンする<br>スピードも増すというわけですね!<br>これぞバクシン革命!!」<br><br>「というわけで、いきましょう!<br>……おはようございまぁぁぁーーすっ!!」"}, {index="20043",text="トレセン学園に来てから<br>もう何通目になるかな。<br>北海道のお母ちゃんたちへの手紙――<br><br>電話で伝えればすぐだけど、<br>こうして文字にすると<br>自分の本当の気持ち……<br>嬉しかったことや悩んでることが、<br>とってもハッキリする気がする。<br><br>それはきっと、お母ちゃんたちにも<br>ハッキリ伝わるってことだよね。<br>今日の私の気持ち、しっかり届くかな。<br><br>「お母ちゃんへ、元気にしてますか?」"}, {index="20044",text="――この店は行きつけですか?<br><br>カレン:そうなんです! 寮にお引越しした<br> ばっかりの頃、お部屋の小物を<br> 揃えに来て以来、ずーっと♪<br><br>――思い出の店でもあるんですね!<br><br>カレン:内装も変わってないから、<br> あの時のこと思い出しちゃいます。<br> ……あ! このマグカップ!<br> これもその時から、ず~っと同じ<br> デザインで売ってるんですよっ♪<br> カレンのは色褪せちゃったけど、<br> それはそれでうれしいな~って。<br><br>――と、言うと?<br><br>カレン:トレーナーさんとの作戦会議で、<br> 大活躍してるカップなんです!<br> 会議中に『どうしよう?』って<br> 悩んじゃうこともあるんです。<br> でもでも! そういう時に、<br> ブレイクタイムすると……<br> ピコーンっていい案が浮かんで!<br> だから……<br> カップが色褪せちゃった分、<br> 壁を乗り越えてきたってことで。<br> がんばってきた証かな、って。<br><br>――積み重ねてきた色、ということですね<br><br>カレン:はい! これからもいっぱい使って<br> も~っとカワイイ色にしたいな♪<br><br>◆Profile:カレンチャン<br>トレセン学園所属のウマ娘。<br>若者に人気のインフルエンサーでもある。<br>彼女を称賛する『カワイイカレンチャン』は<br>度々トレンドにランクインしている。<br>最近ハマっていることは、トレーニング。<br><br>Umastagram:@Curren"}, {index="20045",text="ふぬっ! ふぬぬぅ~~っ!?<br>ほ、ほんとに……ハトさん……<br>こんな、ポーズ……してる、のぉ~!?<br><br>むぎゃ~っ、い、痛い……。<br>もう、む、む……り………………。<br><br>――~~っ、じゃ……なぁぁぁ~い!<br><br>めいっぱいのキラキラを!<br>『ありがとう』って、<br>『ウマドル道を一緒に走っていこう』って、<br>気持ちを――<br><br>ファンのみんなに、<br>応援してくれるあの人に、届けるのっ!<br><br>だって、ファル子は、トップウマドル、<br>なん……だか、らぁ~~~~っ!!<br><br>(ぴきっ)<br><br>……ほぁっ。"}, {index="20046",text="風にさらわれ、ターフに落ちる大事な帽子。<br>それを見て思い出すのは、<br>グランマが教えてくれた魔法――<br><br>『おやおやおや……?<br>私のかわいいスイーピーは<br>どうして泣いているのかね?』<br><br>『帽子が汚れた? ふふふ……<br>それなら泣く必要はないよ、<br>かわいいスイーピー。<br>……なんでかって? そりゃ、<br>立派な魔女に1歩近づいたってことさね!』<br><br>『魔女の帽子は<br>魔女と一緒に走って<br>汚れたり、ほつれたりするうちに<br>魔法がこもっていくんだよ』<br><br>『さあおいで。<br>集めた魔力が、水にとけないように<br>汚れだけを落とす、<br>とっておきの魔法を教えてあげようね――』<br><br>「……そうよね、グランマっ!<br>今こそグランマに習った<br>『浄化の魔法』の出番!」<br><br>「よ~し、そうと決まったら<br>魔道具を準備しなきゃ!<br>たしか……清めた水と、シャボンと――」"}, {index="20047",text="――いつものゲームセンターが、<br>まるでライブステージのような喧騒だった。<br><br>「へっへ~、このまま<br>ハイスコア更新しちゃうぞ~!<br>みんな、もっと盛り上げてー!」<br><br>筐体の前で踊る彼女。<br>快活でよく通る声。<br>軽やかなダンスに合わせ揺れる尻尾。<br>そして、はじけるような笑顔――<br><br>「――ねぇ! キミも応援して!」<br><br>――心臓が跳ねた。<br>直後、そのウインクと言葉が、<br>自分に向けられたものだと知る。<br><br>「最後はターンで~、ブイっ!<br>いぇーい! ハイスコア~!」<br><br>神がかったスコアが表示され、<br>ギャラリーが沸き、私も思わず拍手する。<br><br>「みんな、応援ありがと~!<br>……っと、もうこんな時間かぁ。<br>じゃあ、次はレース会場で会おうね!」<br><br>「このテイオー様が、今日よりも~っと<br>ワクワクさせてあげるから!<br>――ってなわけで、バイバーイ!」<br><br>そう言って、走り去る彼女。<br>その姿が見えなくなっても、<br>私の瞳にはその笑顔が焼きついていた。<br><br>……多分、この時から私はもう、<br>小さな“帝王”の<br>ファンになっていたんだと思う――"}, {index="20048",text="「あの、これ……全部食べるんですか?」<br>思わず尋ねたカメラマンに、真顔で頷く<br>オグリキャップ。しかし、その尻尾が<br>揺れていることに、筆者は気づいていた。<br><br>――オグリさんレベルになると、<br>トレーニングの負荷も相当でしょうし、<br>体力を回復させるため……でしょうか?<br><br>オグリキャップ(以下オグリ):いや。<br>ただ、たくさん食べたいだけだ。<br>好きなんだ。ご飯が……食べることが……<br>お腹いっぱいにしてくれる、全部が好きだ。<br><br>そう言い切るオグリキャップの瞳が、<br>彗星のように煌めいた。<br><br>オグリ:食べていいか?<br>よかったら、みんなも。<br>それじゃあ……いただきます!<br><br>まるで花が咲いたような笑顔。心から、<br>食事を喜ぶ……クールな“アイドルウマ娘”<br>の意外な素顔を、カメラマンは捉えていた。<br><br>(『月刊トゥインクル』<br>【巻頭特集!オグリキャップ――<br>“アイドルの素顔”】より抜粋)"}, {index="20049",text="……見た目だけだって、思われたくない。<br>磨いてるのは外見だけじゃないって<br>証明したい。<br><br>「あっ、また焦げちゃった」<br><br>……もっと強くなりたい。<br>最低限、自分のことは自分でできるように。<br>メッキじゃなく、中まで輝いてるって<br>自信を持てるように。<br><br>「……っし、もう1回!」"}, {index="20050",text="「ふわぁ~~……あ。<br>ヒシアマさんのおにぎりだ。<br>これいい鮭使ってて美味しいんだよね~」<br><br>「……ちょっと」<br><br>「あ、大丈夫大丈夫~。<br>これ作り置きしてくれてるやつだから。<br>キングの分もちょうどあるし……」<br><br>「~~っ! そうじゃないわよっ!<br>早朝ランニングに行くんじゃなかったの!?<br>あなたったら着替えてもいなければ、<br>そんな……立ちながら水を――!」<br><br>「おおぉ~、元気だねぇ。<br>うんうんうん~、<br>いい感じに目が覚めてきたかも~。<br>ってわけで、着替えてきますよーっと」<br><br>「…………作り置きのおにぎり、<br>残ったら処分だろうなぁ」<br><br>(パタパタパタ……)<br><br>「…………。……。<br>……残すのは、よくないわよね」<br><br>…………もぐ。<br><br>「……!! ……おいしい。<br>…………そういえば<br>このところ、レースレースって……<br>ゆっくり食事を味わう時間も、<br>作れていなかったわね……」<br><br>「あ、水色の容器のやつ<br>うちの実家から届いたキュウリの浅漬けね。<br>それもご自由に~」<br><br>「んぐっ!? ……もうっ!!<br>わかったから早く着替えてきなさいよ!!」"}, {index="20051",text="記録を塗り替えた2度の快挙を<br>彼女はこう語った。<br><br>『おれが走れているのはみんなのおかげ。<br>この結果が少しでも恩返しになっていたら、<br>嬉しいです』<br><br>かつて周囲の人々からもたらされた<br>奇跡に報いたい。<br>今度は自分が奇跡を起こすのだと。<br><br>バ群から抜けて後続を突き放す。<br>――追いすがる影。<br>その瞬間、彼女が抱く感謝が、執念が<br>蒼き双眸に炎を宿した。<br><br>全てを燃やし尽くした果てに彼女は掴んだ。<br>3度目のミラクルを――<br><br>(撮影:編集部/記者:乙名史 悦子)"}, {index="20052",text="「……うんっ。<br>今月の振り返りは、こんなところかな。<br>トレーニング中に倒れちゃうこともなくて、<br>スぺちゃんたちのデビュー戦、観戦して……<br>……。……うん。<br>さらにがんばろうって思える1か月だった」<br><br>「っ……こうしていられない!<br>さっそく来月のトレーニング内容を……<br>いや、それより食事内容かな?<br>そ、そうだ。シップも買い足さないと――」<br><br>「……って、あれ? ほかほかの、お茶?<br>いつの間にこれ……」<br><br>「うふふ。おくちに合うとよいのですが~」<br><br>「ブライトさん!? おはようございます!<br>すみません、私ぜんっぜん気づかず……!<br>あったかいうちにいただきま――あちち!」<br><br>「まあ、いけませんわ~。ツルちゃんさま、<br>まずは“ふーふー”なさってくださいまし。<br>さあ、わたくしと一緒に……ふー、ふぅー」<br><br>「は、はい! ふー……ふーー……<br>…………こくっ…………はぁ~~」<br><br>「ふふふ、横のお茶菓子もぜひ~。<br>では、わたくし、洗面所のほうで<br>身支度をして参りますわね~」<br><br>「あっ、はい! ありがとうございました!<br>……ぱくっ……ふふっ、甘いなぁ」<br><br>「さてと、続き続きっ!<br>たしか次にやることで悩んでたけど。<br>……うん、まずは状況の把握からだ。<br>それから優先度をつけて。<br>……えへへ、すごいや。<br>あんなにこんがらがってたのが嘘みたい!」<br><br>「――よぉし! やるぞッ!」"}, {index="20053",text="「トップロードさん……書類、落としたわ。<br>次の世界史で使う資料よね?<br>……持つから、半分貸して」<br><br>「わっ、ありがとうございます!<br>けど、平気ですよ! 重くないですし。<br>これも学級委員長の仕事ですから!」<br><br>「それよりアヤベさん!<br>次の授業の準備は大丈夫ですか?<br>移動教室なので、早めに<br>済ませておくといいですよ!」<br><br>「どこまでお人好しなのよ……もう。<br>ほら、持つわよ」<br><br>「アヤベさん……!」<br><br>「そうだよ、トップローードォーー!<br>アタシとタイシンにも運ばせてよーー!!」<br><br>「耳元で叫ぶなっつーの……!<br>……ま、そういうことだから<br>さっさと片づけるよ、トップロード」<br><br>「チケットさん……! タイシンさんまで!<br>それでは、お言葉に甘えてお2人は<br>模造紙をお願いします!<br>アヤベさんには地球儀をお任せしますね!」<br><br>ナリタトップロードはテキパキと荷物を<br>割り振るが、それでも書類がどっさり入った<br>段ボールは頑なに譲らないのだった……。"}, {index="20054",text="「嗚呼、ボクを目にした太陽が、<br>あんなにも顔を赤らめてしまった!」<br><br>「ふふ、無理もないね。<br>この宇宙で最も美しい存在。<br>それこそがボクなのだから!」<br><br>「世界をあまねく照らす太陽よ、<br>誇るがいい。ボクという存在と<br>共に写る栄誉をね!」<br><br>「さあ、ドトウ! 始めようか!<br>いずれ世紀末覇王へと至る、<br>偉大なるボクの写真撮影を!」<br><br>「は、はい~……!」<br><br>デビューして間もないテイエムオペラオー。<br>そんな彼女の宣材写真を撮るために<br>選ばれたのがメイショウドトウだった。<br><br>「テーマは無論、『世紀末覇王』!<br>どうだい、この威風堂々たるマントは!<br>覇王の荘厳な魅力が溢れているだろう!」<br><br>「い、いつもより眩しく感じます~……!<br>過去の聖蹄祭で使われた衣装を<br>さっと借りてこられるだなんて……<br>さすがオペラオーさんですぅ」<br><br>「では撮っていきますね~……?<br>ええと、どの角度から撮れば……<br>……って、わ、わわわわっ!?」<br><br>メイショウドトウはうっかりつまずき、<br>カメラは宙へと舞った。<br>慌てた彼女は<br>ダイビングキャッチを試みて――<br><br>「ぷべっ。……はわわ、す、すみません~!<br>危うくカメラを<br>壊してしまうところでしたぁぁ!」<br><br>「でも、なんとか死守しましたの、で……<br>ひぃいいいい~~~っ!!<br>れれれ連写になってるぅ~~~!?<br>すごい枚数撮れちゃってますぅ~~~っ!」<br><br>「おや……? ――でかした、ドトウ!」<br><br>「最上の1枚が撮れているではないか!<br>――見たまえ、この燦然とたたずむボクを!<br>天地開闢以来紡がれてきた歴史の中でも<br>これほどの至宝はなかっただろう!」<br><br>「心からの賞賛を贈るよ、ドトウ!<br>ボクの最も尊く美しい瞬間を切り取るとは、<br>さすがは我が宿敵! はーっはっはっは!」<br><br>「お、オペラオーさん……!<br>はわ……お、恐れ多いですけど……<br>うれしいですぅ……!!」"}, {index="20055",text="スマートフォンの通知音が鳴った。<br><br>メッセージアプリ・LANEに、<br>表示された最新メッセージ。<br>『アストンマーチャンが<br>ファイルを送信しました』<br><br>見れば送られてきたのは<br>音声ファイルのようだ。<br>別途メッセージは……<br>待てども送られては来ない。<br>――再生ボタンをタップする。<br><br>『バッテリー、異常なし。<br>マイク機能も大丈夫。ぶいぶいですね』<br><br>『それでは始めます、<br>アストンマーチャンラジオ~。<br>なんて、普段は言わないんですけど』<br><br>『なお本日は危なくないように、<br>塔屋から空を眺めます。<br>脚はぷらぷらさせておきましょう。<br>……怖くなんかありませんから』<br><br>『――周りには、昨日降ったザーザー雨で、<br>水たまりがたくさん。そのおかげで<br>マーちゃんは空と空のあいだにいます。<br>上にある大きな空と、下にある小さな空と』<br><br>『わたしは今、空のあいだにいます』<br><br><br>音声ファイルの再生を止め、<br>椅子から立ち上がる。<br>頭に浮かんだ行き先は、<br>学園で空がきれいに見える場所。<br><br>階段を全速力で走って向かえば、<br>彼女はまんまるな瞳をもっと丸くして、<br>困ったように笑うのだろうか。<br><br>「……はい。マーちゃんはここにいました」"}, {index="20056",text="俺は最強の称号とか最高の栄光とか、<br>ギラついたモノが好きだ。<br>みんなだってそうだろ?<br><br>……けど、アイツは違う。<br>アイツ自身が誰よりもギラついてて、<br>マジで光ってるみたいに眩しく見えやがる。<br><br>ハハ、ジョートーだ。<br>光だろうがなんだろうが関係ねぇ。<br>まとめてぶっちぎってやる。<br><br>じゃなきゃ勝ち取れねぇもんな?<br>俺が目指してんのは、<br>そういう最強【ばしょ】なんだよ。<br><br>「オイ、タキオン。ツラ貸せよ」"}, {index="20057",text="うん……新しいドライヤー、いい感じ。<br>パサつかないで、ふわっと乾いてくみたい。<br>さすがエアグルーヴ先輩のおすすめ……<br>使った感想、今度伝えたいな。<br>……お礼にポプリも添えようかな?<br><br>これで頑張ってスタイリングしたら……<br>もしかして、アタシもブライトみたいな<br>ふわふわヘアスタイルになれたりする?<br><br>昔から思ってたけど、あれ、可愛いよね。<br>触り心地も、こう、わたがしみたいで……<br>ライアンも気づいたら撫でちゃってるって<br>前に話してたし。<br>……や、撫でられたいわけじゃないけど!<br>それはちょっと恥ずかしいけどっ。<br><br>「って、さすがに無理かな。アタシと<br>ブライトじゃ、髪質全然違うし――」<br><br>「ヘーイ、ドーベル! そのドライヤー、<br>ニュー・アイテムですか?」<br><br>「わ、タイキ! う、うん。<br>エアグルーヴ先輩からおすすめしてもらった<br>やつなんだけど……」<br><br>「オゥ、ソーグッド!<br>エアグルーヴもストレートサラサラ~、<br>ドーベルもストレートサラサラ~、<br>つまり、ベストマッチ!」<br><br>「乾かすの終わったら、あとでたくさん<br>サラサラ~させてくだサイ♪<br>楽しみにしてマス!!」<br><br>「えぇ……もう、なにそれ。<br>……いいけどね、少しなら」<br><br>本当にずーっとニコニコ待ってたタイキは、<br>アタシがいいよって言ったらすぐ<br>背中に飛びついて、手を伸ばしてきた。<br>でも、その勢いとは裏腹に、<br>アタシの髪を根本から毛先まで<br>すうっと撫でていく手つきは、<br>思っていたよりずっと丁寧で。<br><br>恥ずかしいからそろそろやめて、って<br>伝えられるまで、<br>ちょっと時間がかかってしまった。"}, {index="20058",text="「ふわっ……くちょん……!」<br><br>「すまない、昨日から風邪気味でね……。<br>公の場でこうも豪快なくしゃみを<br>披露するつもりはなかったのだが――」<br><br>「――窓を開けようか。<br>少し埃っぽいのも原因のように思う」<br><br>窓を開け放つと、温もりを帯びた風が<br>乾いた空気を追い出した。<br>彼女は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。<br><br>「普段は、あのようなくしゃみは<br>しないのだけれど……ふふっ、参ったね。<br>親しき仲こそ気を引き締めるべきだったよ」<br><br>視線を外し、彼女は外に目を向ける。<br>オレンジ色の光の束が、<br>その頬を染め上げていた。"}, {index="20059",text="――たとえば入学したての頃の話だけど、<br>アグネスタキオンさんときたら、<br>それはもうすさまじい注目の的だった。<br>うっかり同じクラスだったせいで、<br>不躾ともいえる目線が彼女に向かって<br>降り注いでいたのを、よく覚えている。<br><br>最初の要因はもちろん、血筋のよさだ。<br>こういう学園だから、いわゆる良家のお嬢様<br>というのはそれなりにたくさんいるけれど、<br>祖母がオークスウマ娘で、母親に至っては<br>無敗の桜花賞ウマ娘だなんて、<br>さすがに注目を集めるには十分だったから。<br><br>……で、そうやって彼女を中心にぐぐっと<br>集まったベクトルは、すぐさま反転した。<br>奇矯な言動、怪しい実験活動、<br>それでも発揮される才能のきらめき……<br>まあ、こうして挙げていけば、<br>避けられる理由としては十二分にも思う。<br><br>「クックック……なかなか愉快な論文が<br>出てきたじゃあないか、えぇ?<br>ウマ娘の筋収縮とエネルギーに関する<br>新説……このアイディアは次の実験に<br>活かせそうだ! ……なんてねぇ!」<br><br>今日もまた、賑わうカフェテリアの一角では<br>彼女を中心とした空席の輪ができている。<br>輪というか、結界?<br>うず高く積み上げられた異様な量の砂糖が、<br>もしかしたらバリアでも張っているのかも。<br>私のような、ごくごく普通の生徒では<br>到底突破できない、そんなバリア。<br><br>「タキオンさん。<br>……食べ物で遊ぶのは、やめたほうが」<br><br>「おっとカフェ! しかしそれは食べ物を<br>食べ物扱いしないがゆえに言われることでは<br>ないのかい? 私はここにある全て、そう<br>全てをこれより紅茶に投入する用意がある!<br>つまり全部食べるので問題ないという――」<br><br>「ことでは、ありません」<br><br>そんなバリア――を、突破できる子が、<br>今ではそれなりにたくさんいる、らしい。<br><br>空席だらけのタキオンさんの向かいに、<br>ため息交じりのカフェさんが腰を下ろす。<br>その拍子に、積みあがった砂糖がひとつ、<br>コロンと落っこちるのが見えた。"}, {index="20060",text="「いっちに! さーんしっ!<br>ごーろっくしっちはっち!」<br><br>「最後に深呼吸をして~……<br>準備運動はばっちりだね~!」<br><br>「さあ、たっくさん泳ごう!<br>それでいっぱいお腹をすかせちゃおう!<br>今日のおやつも、とってもボーノに<br>できたんだ~!」<br><br>「ん? 泳ぐのが苦手?<br>それならあたしの手に掴まって。<br>泳ぎ方を教えてあげる!」<br><br>「浮き輪みたいにまーるいドーナツが<br>待っているから。<br>一緒にがんばろうね!」<br><br>「よーし、じゃあざっぷーんと<br>飛びこも……」<br><br>「あっ、ちょっと待って~!<br>それは浮き輪じゃないよ!<br>あたしが焼いた、特大ドーナツだよ~~!」"}, {index="20061",text="~ゴルシちゃん焼きそば縁起~<br><br>あれはアタシがまだ白玉粉を被る前、<br>キューティーブラウンな<br>ゴルシちゃんだった頃――<br><br>『だれか……だれかこの<br>ソースを買ってくれませんか……<br>先祖代々うけついだソースなんです――<br>ああ、だれも買ってくれない……』<br><br>そうして諦めかけたアタシが<br>浜辺の砂でお城を作り始めた時――<br><br>突如、海面が割れたかと思うと<br>後光を放つ美貌と<br>真珠が如き御髪を持った<br>ウマ娘観音が現れ<br>アタシにこう言った――<br><br>『ゴルシよ、焼きそばです――<br>そのソースで焼きそばを作るのです――<br>さすればそのソースもオメーも<br>人気者間違いなし――<br>あとついでにレースとか出れば?』<br><br>こうしてできたのが、<br>ゴルシちゃん印の<br>はちゃメチャ旨い焼きそばと<br>いうわけさ。<br>どっとはらい。<br><br>――という、ありがたい伝説が<br>描かれた掛け軸がこちらになります。<br>え? このウマ娘観音が<br>ゴルシちゃんとクリソツだって?<br>……ったく、ナンパの手口がベタ過ぎるぞ☆"}, {index="20062",text="今日はバッチグーのピーカン晴れね!<br>こんな日にドライブしないなんて、<br>そんなバナナって感じじゃない?<br><br>ささ! 助手席にどーぞ!<br>今日はタッちゃんがとっておきの所へ<br>案内してくれるんですって。<br><br>タッちゃんはいつだって<br>素敵な所に連れてって、<br>チョベリグな気分にしてくれるのよ!<br><br>おっと、シートベルトを締めるのも<br>忘れちゃノンノンよ♪<br><br>タッちゃんと同じスピードで感じる風は<br>世界で1番なんだから!<br><br>お仕事も息抜きも、<br>アクセル全開でかっ飛ばすのが最高よ?"}, {index="20063",text="(ザアアアア……)<br><br>……雨……。<br>まだまだ走ろうと思っていたのに……。<br>どのくらいで上がるかしら。<br><br>そういえば、前にスぺちゃんと<br>走り込みしてる時も急に降ってきて……。<br><br>あの時は木の下で雨宿りしながら、<br>一緒に雲を見て連想ゲームをしたっけ。<br><br>スぺちゃんが急に、お饅頭とかおにぎりとか<br>言い始めて、<br>何かと思ったら雲の形のことで。<br><br>にんじんケーキとかハンバーガーとか。<br>……本当に食べることが好きなのね。<br><br>……あの雲は<br>トレーニングシューズに似てる。<br>あっちは蹄鉄の形をしてるわ。<br><br>あの雲は……優勝レイの形。<br>あ……雨雲が切れてきた。<br><br>よかった、通り雨だったみたい。<br><br>あら?あそこの雲……<br>にんじんハンバーグみたい?<br>ふふっ、スぺちゃん、<br>気づいてるかしら……。"}, {index="20064",text="うん♪ すっごくいい天気♪<br>たっぷり陽の氣が満ちて、<br>どんなステキな1日になるかな。<br><br>1日の始まりで大事なのはやっぱり“色”!<br>ステキな日を送るためにも自分からしっかり<br>運気をコントロールしないとね!<br><br>今日はどのハンカチと一緒に過ごそうかな?<br>成長を司る緑のハンカチで、<br>トレーニングを精いっぱいがんばるとか……<br><br>ううん、それより<br>根を詰めすぎて疲れちゃわないように、<br>安らぎを伝えてくれるレモンイエロー……<br><br>あっ、でもトレーニング中に<br>ケガをしちゃったら元も子もないよね。<br>なら邪気を払う紫を持って行った方が……?<br><br>いやいや、<br>一緒にトレーニングをがんばる<br>相生の仲間と出会いたい……!<br>なら、新たなスタートを引き寄せる赤!<br><br>柄は人間関係に関わる花の刺繍!<br>うん! 完璧♪<br>最高の氣の流れを引き寄せられるはず!<br><br>「リッキー?まだ、ハンカチ選んでるの!?<br>もう行かないと遅刻しちゃうよ!」<br><br>「前も靴下の色がどうとかって言って<br>遅刻ギリギリだったでしょっ!」<br><br>「って、あれあれ!? もうこんな時間!<br>ありがとうタルマエ!」<br>リッキー☆ ラッキー☆<br>最高の1日に向かって駆け足ーっ!"}, {index="20065",text="綺麗な青空も、暑すぎる日差しも、<br>吹き抜ける風の心地よさも、<br>飲んだお茶の温かさも、<br>余すことなく全部覚えておけたらいいのに。<br><br>でもきっと思い出せなくなってしまう。<br>少しも色あせずとも、<br>他の鮮烈な記憶に追いやられて、<br>見えなくなってしまうだろう。<br>だからせめて1つだけ、<br>彼女のこの笑顔だけは覚えておこう。<br><br>駆け抜けた日々の中の、<br>何の変哲もないひとときだけれど。<br>そんな時にも確かに隣同士並んでいた、<br>その記憶の証として……。<br>この笑顔さえ思い出せれば、<br>他の何もかもがなくなったって、<br>今日と同じように美味しいお茶が飲めると、<br>そう思うから。"}, {index="20066",text="★天才スイーピーの魔法ノート9★<br><br>【サニディン・アノーソ・ムーンストーン】<br>内なるやる気を目覚めさせる呪文。<br>月長石みたいなキレイな石たちに<br>宿る魔力を借りる魔法。<br>気持ちをキラキラと光らせる。<br><br>〈記録〉<br>●回目 △月×日<br>人助けが上手くいかなかったせいで<br>落ち込んでるキタサンがいたから<br>呪文をかけてあげた。<br><br>実験体の感想<br>『本当に心があったかくなったよ!<br>ありがとう、スイープさん!』<br><br>結果:大成功!<br><br>★天才スイーピーの魔法ノート19★<br><br>【エリクシールキャンディ】<br>グランマの秘伝の方法で精製した<br>魔法のアメ。なめると元気になる。<br><br>〈記録〉<br>●回目 □月○日<br>トレーニングの後、アタシをおんぶして<br>寮まで走ったキタサンに<br>アタシがグランマに教わった方法で<br>精製したヤツを1粒あげた。<br><br>実験体の感想<br>『美味しい! 体に沁みる味!<br>今日の疲れが全部とれちゃったみたい!<br>ありがとう!<br>スイープさんの魔法は<br>いつもあたしを元気にしてくれるね!』<br><br>結果:大大大成功!"}, {index="20067",text="「くぉらっ! いつまで騒いでんだい!」<br><br>「ワオ、Escape!<br>ごめんなサ~イ♪」<br><br>騒がしかった部屋が慌てて消灯され、<br>タイキがはしゃぎながら飛び出てくる。<br><br>(ありゃ、カラ元気だねぇ)<br><br>そういえば今日は、ドーベルが<br>レースで関西遠征してて不在だ。<br>2人の遠征日程はほとんど被らないし、<br>タイキが留守番することも多い。<br><br>(まったく……寂しいんだったら、<br>アタシを頼りゃあいいってのに)<br><br>「待ちな!<br>――ほぉら、捕まえたっ!」<br><br>「オ~ウ、ムネンです!<br>ヒシアマさん、ワタシ反省しマシタ!<br>お仕置きはノーセンキューで――……」<br><br>「タイキ、今日は一緒に寝るかい?<br>アタシの部屋へおいで」<br><br>「――!! 行きマス!<br>今夜はとってもあったか~いデスネ!!」"}, {index="20068",text="商店街の街並みが切り取った<br>縦長のフレームの中で、<br>彼女は控えめに笑っている。<br><br>手のひらに太陽をのせて、<br>子どもっぽいねと笑っている。<br>当人もまだ、子どもだというのに。<br><br>小さな肩に圧しかかる期待と、<br>胸に灯る闘志と、<br>うすく固く蓋をする諦観。<br><br>それらすべてをひっくるめて、<br>あの子は笑う。<br>だから、思うのだ。<br><br>太陽ひとつ。<br>直径約140万キロメートルの、<br>世界で1番大きい金メダルは、<br>彼女の手にこそ相応しい。<br><br>彼女に願う。<br>どうか笑っていてほしい。<br>この時だけでも、無邪気に。<br><br>空に願う。<br>あの子が太陽を掴む時、<br>そのやわい手が焼けてしまわぬよう、<br>包んでやれるのが、自分でありますように。"}, {index="20069",text="=========<br>〇月×日(△) 天気:太陽さんさ~ん!<br><br>今日のおマチちゃんは、<br>フクちゃん先輩あ~んどドトウちゃんと、<br>占い小屋の大掃除をしました。<br><br>金ピカピカピカのしゃちほこちゃんに<br>にんじんくわえたおまねきさん。<br>みんなぴーっかぴっかぴっかぴかー!<br>に磨いて、<br>最後に幸運のお壺さんいくぞー!<br>ってしたら……<br>したら!!!!!<br><br>(小さいクモの絵) ←この子が(><)!<br><br>びっくり仰天のおマチちゃん!<br>に、びっくり仰天のフクちゃん先輩!<br>に、びっくり仰天のドトウちゃん!<br><br>振り回したはたきが自分の鼻に直撃。<br>涙ぽろり。鼻血もたらり。<br>とほほほほ~な、1日でした。む~ん。<br>========="}, {index="20070",text="――もしもしママ?<br>久しぶりね、元気?<br><br>――こっち? ランチを終えたところよ。<br>シュヴァルたちと3人でね。<br><br>――相変わらずシュヴァルは<br>茶色いものばかりだし、ヴィブロスは<br>ときめいたものしか食べないの。<br>本当、困った子たち!<br><br>――ああ、でも安心して。<br>ちゃ~んとお野菜もご飯も食べさせたわ。<br><br>ヴィブロスにはいつものご褒美作戦で。<br>シュヴァルには……食べないと<br>追いかけ続けてあーんするわよ、でね?<br><br>――ふふ。<br>あら、全然大変なんかじゃないわ。<br>もう慣れっこだもの。<br>それに……。<br><br>――ママはよく知ってるでしょ?<br>私、あの子たちの世話焼くの、大好きなの。"}, {index="20071",text="「――悲鳴を上げそうになる心が奮い立つ。<br>最終コーナーを抜ける直前のロイスの耳に、<br>大切な人たちの声が確かに聞こえたのだ」<br><br>(ロイスさんの思い描くシーン、<br>手に取るように伝わってくる……となれば<br>ここはあえてのピアニッシモだね……。<br>クライマックス直前には溜めが不可欠さ)<br><br>「『ロイスちゃん、頑張れえっ!』……と。<br>もう、ロイスの心に迷いはなかった」<br><br>(そしてここから大サビ!<br>満を持して!<br>メインテーマをスローテンポで!<br>グランディオーソッ!)<br><br>「大地を踏み込む音。<br>次の瞬間、スタンドに詰めかけた観衆は、<br>直線を駆ける一条の光を見る――」<br><br>「……完璧ね!やはりクライマックスには、<br>紡いだ絆によって奮い立つ王道熱血青春展開<br>……普遍的な強さがあるわ。<br>そしてアースさん……<br>最高の劇伴だったわ!」<br><br>「いやいや、魂が震えてね。<br>思わず加わらずにはいられなかったのさ。<br>おかげで素晴らしい旋律を生みだせた。<br>お礼を言うのは私のほうだよロイスさん!」"}, {index="20072",text="大地は見ていた。<br>原初の存在が、<br>氷と炎の一滴から生まれたことを。<br><br>大樹を礎として、<br>神々は繁栄と争いを繰り返し、<br>黄昏が訪れたことを。<br><br>やがて世界は滅びを迎え、<br>新たな誕生を迎えたことを。<br><br>――――即ち。<br><br>初めの一滴を注いだならば、<br>その運命を見届けよ。<br>盃を最後まで磨き上げよ。<br>さすれば新たな潤いで、<br>再生を果たすことができるのだから。<br><br>「スッゲー……! ピカピカっすね!<br>俺も、もっと頑張って磨きますっ!」<br><br>「……フ。よき心掛けだ」<br><br>ああ、我々もまた。<br>磨き上げればこの運命は、<br>いずれ新たな誕生を迎えるかもしれない。"}, {index="20073",text="「――え、夕陽じゃん。ヤバ」<br><br>「放課後ってマッハじゃね?<br>放課後までは長ぇ~のに、謎」<br><br>「は? なに?<br>そーせー……そー……<br>そーたいせーりろん?」<br><br>「えっ、『授業永遠か?』って<br>マジだったってこと!?<br>何それサイアクじゃ~~ん!」<br><br>「……そっか、だから<br>走ったりダベったりすんのは<br>すぐ終わっちゃうんだ」<br><br>「そっか~。えー……」<br><br>「ま、そのぶん<br>めっちゃ走ってめっちゃダベりゃいっしょ!<br>てことで、もうちょい付き合ってけ~♪」"}, {index="20074",text="「あのっ、えっと!<br>ヤエノさん、ファンです!<br>いつもつよくて、カッコよくて……<br>だいすきです!」<br><br>「か、かわ、ッ……――ゴホン。<br>いつも応援、ありがとうございます」<br><br>(いけない、あまりの愛らしさに<br>つい顔が緩んでしまった……<br>気を引き締めなくては!)<br><br>「――恐悦至極!<br>これからも精進いたします、押忍!」<br><br>(私を『カッコイイ』と<br>言ってくれた彼女の憧れ――<br>護らねば!! 命に代えても!!!!)<br><br>「わぁ~すごい! カッコイイ~!<br>きょーえつしごく! おす!<br>ねーっ、おかあさん!<br>ヤエノさんみたくできてる?」<br><br>「ふふ、この子ったら<br>いつも家でヤエノさんの<br>まねっこして遊んでるんですよ」<br><br>「……!<br>ぬ……くっ、かわ、……ぬぬぬっ……!」<br><br>「光栄です、押忍!!」"}, {index="20075",text=" 【Crew!(42)】<br><br>タップ:<br>今日ピザ買ってく!!<br><br>グラ:<br>急だな。てりやき<br><br>HB:<br>なんで~笑マルゲリータ<br><br>茶こ:<br>マジ?チーズのやつ<br>あ、ウチお菓子持ってくわ<br><br>タップ:<br>チョコならある!大漁だ!<br>Let's party!<br><br>HB:<br>なんで過ぎる笑<br>あ、あーしドリンク買ってく~<br><br>タップ:<br>ゲーセンでチョコ大量GET!!<br>ピザ20枚でいいか?<br><br>ついん:<br>多い多い多い!<br><br>グラ:<br>いーけど責任もてよ。<br>ドリンク買い行ける奴、コンビニな<br><br>タップ:<br>Okay! リクエストは16時まで!<br>You snooze, you lose!<br><br> ◆<br><br>「To surviving another day!<br>存分に騒ごうじゃないか!」<br><br>『Foo~~~~~~~~!!』"}, {index="20076",text="『同世代のウマ娘のレースレポート』<br>……もう持ってる。<br>つか、情報集めンのはボットの仕事だ。<br><br>『筋肉量と体内時計の関係性について』<br>睡眠時間を見直せって?<br>……ウザ。<br>へいへい、毎朝決まった時間に起きてマス。<br><br>『呼吸筋トレーニング、効率化の提案』<br>……ヘェ。<br><br>アァ? ンだよ。<br>悪くねェデータなら、食わせて当然だろ。<br>……いちいち反応すンな。キモい。<br><br><br>……で? 議題は以上か?"}, {index="20077",text="「ミラ子先輩、<br>保湿クリームの準備できました~」<br><br>「さすがはダンツちゃん!<br>それじゃあ、はじめますか。<br>保湿タップリ、モチモチ肌になるぞ~」<br><br>「おー!」<br><br>「……で、なにからやるんだっけ~?」<br><br>「まずはふくらはぎからですね……<br>しみ込ませるように、引き上げを意識です。<br>ふむむむ~……このこの~」<br><br>「うひゃ~、結構力入れるんだね。<br>疲れた日はサボっちゃいそ……」<br><br>「疲れた時こそ、ですよ。<br>シェイプアップとお肌のケアは、<br>1日サボると1日後退しちゃいますから!」<br><br>「おー、名言。<br>わたしもやれるだけはやってみようかな~。<br>ふにゅ~~~」<br><br>「その調子です!<br>2人でモチ肌、目指しましょ♪」"}, {index="30001",text="「みみみ、みなさんっ、いつも熱い応援、<br>ほ、本当にありがとうごじゃいあつ!」<br><br>盛大に噛んだ姿がほほえましく、<br>会場内から笑いが起こる。<br><br>「ひ、人が、たくさん……!」<br><br>「スペちゃん、落ち着いて」<br><br>「練習したじゃん、大丈夫大丈夫!」<br><br>2人の言葉で落ち着きを取り戻したのか、<br>ひとつ深呼吸して、しっかりと前を向いた。<br><br>「きょ、今日は、たくさんありがとうを<br>伝えられるように、がんばります!」<br><br>彼女の言葉に歓声が上がる。笑顔と共に、<br>ウイニングライブが始まった。"}, {index="30002",text="「本当は……少し、怖かったんです。<br>みなさんに何を伝えるべきか、わからなくて」<br><br>ライブ会場は静まり返っていた。<br>ひとりセンターに立つ少女の言葉を、<br>ひとつも聞き漏らすまいとして。<br><br>「私は……ただ、走ることが好きで。<br>それ以外のことに、興味もなかったから」<br><br>考え、迷いながらも、言葉を紡ぎ――<br><br>「けれど今はみなさんに、ただ歌を届けたい。<br>このステージを走り抜ければ、胸が高鳴る<br>その理由が……わかる気がするんです」<br><br>――曲が流れる。深呼吸した彼女が、<br>手を伸ばした先に――答えは待っていた。"}, {index="30003",text="「ハイハーイッ! 曲の途中だけど、<br>みんなテイオー様にちゅーもくっ♪」<br><br>ステージの端でファンサービスをしていた<br>トウカイテイオーは、軽やかなステップで<br>センターに正しく“踊り”出た。<br><br>「今日はボクが1着、でもってセンター!<br>レースでもライブでも、ボクは最強ッ♪<br>――これからも、ずーっとね!」<br><br>キラッキラのスポットライトも<br>味方につけ、彼女は3本指を掲げる。<br><br>「ボクなら“無敗の三冠ウマ娘”だって<br>夢でもなんでもないよっ!<br>だから全員、迷わずボクについてこーい♪」"}, {index="30004",text="――ゴルシ艦に燃料は不要だ。<br>面白けりゃ勝手に走る。飽きたら知らね。<br>ゴー・ルド=シップ1世。<br>(詩人、超哲学者、鬼冒険家/????~)<br><br>「邪魔だ邪魔だ! どけどけーーっっ!!」<br><br>ラストの直線、最後方にいたはずの<br>ニクいアイツが銀髪なびかせブッ込んだ!<br><br>「ヒャッホーウッ! マクれマクれ~!」<br><br>大胆不敵、慮外千万の瞬間移動を駆使し――<br>ゴール板を抜けると、そこは北極でした。<br><br>「うおっと間違ってK点越えしちまった!<br>もー、ゴルシちゃんてばウッカリ☆」<br><br>次回、『おでん!』ゼッテー見ろよな!"}, {index="30005",text="――そういえば、“彼女”はどこだ?<br>直線を向いたデッドヒートの中、誰かが<br>そう呟いた時、ギアは既に上がっていた。<br><br>「ッシャア!! こっからが勝負だぜ!」<br><br>後方の塊から勢いよく飛び出したウオッカは<br>そのまま軽やかに前へ前へと駆ける。<br>1人また1人と滑るように抜き去っていく。<br><br>「ヘヘッ! 俺がトップだ……!」<br><br>耐えて耐えて、じわじわと温められた<br>エンジンは絶好調で加速し続け、そして――<br><br>「これがウオッカ様だ、よく覚えとけッ!」<br><br>吹かして吹かして吹かしまくって、勝つ。<br>伝説になれるのは、いつだって<br>己のカッコよさを貫いた者だけだ。"}, {index="30006",text="「花は心である……」<br><br>パツン、と小気味良く断たれた花をとり、<br>グラスワンダーは柔らかく微笑む。<br><br>「そう仰る方もいらっしゃいますね~。<br>四季折々の花を、最も美しい形に見立てる。<br>その形に、心が表れるのでしょう~」<br><br>不意に、柔らかな笑みを湛えた目元が、<br>引き絞られる。狙いを定め……<br>最後の一輪が挿し込まれた。<br><br>「さて……いかがでしょう。私の心が、<br>あなたのお眼鏡に適うとよいのですけれど」<br><br>繊細かつ豪胆。闘志を秘めた<br>たおやかな彼女の“心”が、凛と立った。"}, {index="30007",text="――エールッ! エールッ! エールッ!!<br><br>怒号にも似たコールに出迎えられ、<br>ステージに揺らめく影がひとつ。<br><br>「赤コーナー! フルォォォムアメリカッ!<br>身長163センチ、体重セクレートポンド!<br>リングに舞い降りた覆面、その正体はッ!」<br><br>コートを翻し……影は拳を突き上げた!<br><br>「“怪鳥”!!<br>エールゥゥコンドルゥゥゥパサァァァ!!」<br><br>――ワアアアァァァッ!!!!<br><br>「アー・ユー・レディ!? 青コーナーは<br>アナタがた! 踊る準備はいいデスか!?<br>さあ! ハートを! 震わせましょう!!」"}, {index="30008",text="全て彼女の策略だったと、<br>気づいた頃にはもう遅い。<br><br>「にゃはは~っ! いち抜け~っと♪」<br><br>追い込みをかけだした競走相手に合わせ、<br>セイウンスカイもトップスピードで走る。<br>“逃げた”ウマ娘が“最後の直線で”、だ。<br><br>「『逃げまくって休んじゃえ』作戦大成功♪<br>コレで後はゆっくり流しても――」<br><br>「セイちゃんっ……捕まえてみせる……!」<br><br>「――ってわけにはいかないか。ちぇっ!」<br><br>(まあ最初から、楽する気はないけど。<br>私だって……勝ちたいからさっ!!)<br><br>「捕まえられるものなら捕まえてごらん。<br>雲に形はないけどねー♪」"}, {index="30009",text="「どやっ、ウチは絶好調やでー!!<br>……って、おいおいおいどこ見とんねん!」<br><br>ぴょこぴょこ跳ねる小さなウマ娘。<br>パドックでのタマモクロスは、<br>飛んでも叫んでもイマイチ目立たない。<br><br>「ええいっ、全員こっち見ろっちゅーねん!<br>小さいからって舐めるなーっ!!」<br><br>空に向かって全力で飛んで、<br>ようやく人々の注目が集まったところで――<br><br>「ええかアンタら、覚悟せぇっ!<br>ウチの走りでビビらせたるからなーっ!」<br><br>ガルルと吠える彼女を微笑ましく見守った<br>観客が、イナズマに打たれるまであと少し。"}, {index="30010",text="「わあ、キレイだなぁ~……」<br><br>満場のファンが曲に合わせ揺れる。<br>ファインモーションの振る手も、<br>自然と気品が滲み出るようだった。<br><br>(レースでドキドキした後にも、<br>こんなに素敵なドキドキが待ってるんだ)<br><br>それは窓枠に切り取られてはわからない、<br>彼女の夢想した以上の感動で……。<br><br>(まだまだたくさん、思い出が欲しいっ!<br>このトレセン学園で、みんなともっと――)<br><br>「走って踊って、笑って! 楽しもう♪」<br><br>――幸せのクローバーは、駆け回らなければ<br>見つからないものだから!"}, {index="30011",text="そよ風吹き込むゲートの中でも、<br>アイネスフウジンは家族を想っていた。<br><br>「お父さん、お母さん、妹たち。<br>見ててね。お姉ちゃん、がんばるのっ!」<br><br>スタートダッシュ、彼女は力んで飛び出す。<br>その反動か、右に少しだけヨレてしまう。<br><br>(やばっ! けど大丈夫!)<br><br>後脚を思い切り蹴り上げ、すぐ立て直した。<br>次の瞬間には、ミスも家族も競走相手も<br>全部頭からすっぽ抜け――<br><br>「はぁっ、はぁっ、はぁっ……あははっ!」<br><br>そよ風なんて生易しい。<br>ターフを戯れに薙ぐ、暴風だった。"}, {index="30012",text="残り200m、ちょうどスタート地点を<br>過ぎたあたりで、親友たちは再び集う。<br>先行するウイニングチケットは、<br>振り返らずとも追いすがる熱を感じていた。<br><br>「はぁっ……はぁっ……! クソッ……!」<br><br>「ふっ……チケットォ……!」<br><br>(楽しい! 楽しい! 楽しいッッ!<br>タイシンとハヤヒデと、もっと走りたい!)<br><br>けれど彼女は、親友2人を振り払うため、<br>力を振り絞り、がむしゃらに叫ぶ。<br><br>「うおおおおぁぁぁぁぁぁあああッッ!!」<br><br>(負けたくない、負けたくない、負けない!<br>2人だから、親友だから、だから……!!)<br><br>「2人には絶ッッ対、並ばせないッッ!!」"}, {index="30013",text="(ミリも誤差ナシ……ジャスト、出ろッ!)<br><br>エアシャカールが獰猛に飛び出した時、<br>場内の誰もが「またか」と嘆息した。<br>いつもの暴走だ、体力が続くわけがない。<br><br>(とか、浅ェこと思ってンだろうなァ)<br><br>だが彼女はペースを崩さずかえって加速し、<br>嘆息をどよめきに変えていく。<br><br>(この展開になることは確定してんだ。<br>逆算してスタミナつけまくったっつーの!)<br><br>幾度も重ねたシミュレーションが<br>たったひとつの『式』を導き、そして――<br><br>「証明終了だ、バァカ!」<br><br>予想外の結果に罵声まで飛び交う場内で、<br>エアシャカールだけが――嘲笑っていた。"}, {index="30014",text="金色の髪が靡き、その上を雨粒が走る。<br>遠目では息を呑むほどの美しさとは裏腹に、<br>ゴールドシチーは――泥にまみれていた。<br><br>「あと、もう……ちょいっ……!」<br><br>逃げ切れば勝てるラストスパート。<br>しかしすぐ傍に食らいつく息があり、<br>蹴り上げられた泥が容赦なくかかる。<br><br>(あーキツ、脚おっも!<br>けど粘れ! 粘ればアタシの勝ちだ……!)<br><br>一瞬も気が抜けない攻防の中、しかし<br>彼女の表情は晴れやかだった。<br><br>(アタシ今、最ッ高に上がってる……!)<br><br>――雨も泥も、汗だってアクセサリー。<br>アタシが輝くランウェイは、ココだ!"}, {index="30015",text="「どうぞご覧あれ! これこそが<br>ザ・学級委員長のお弁当ですッ!」<br><br>サクラバクシンオーの自信は、弁当箱からも<br>溢れ出そう……いや、溢れていた。<br><br>「ピクニックにはサンドウィッチが大定番!<br>栄養も彩りもカンッペキでしょうッ!?」<br><br>彼女のお喋りに合わせ、パンが揺れ、<br>きゅうりが踊り、ハムが舞い……。<br><br>「ではバクッとひと口でいきましょう!<br>何せピクニックは始まったばかりです!<br>早く食べていっそ食べながら走ります!?」<br><br>気づけば――桜色の瞳が眼前に迫っていた。<br><br>「さあッ! バクシンで召し上がれッ!!」"}, {index="30016",text="はい、飴をおひとつどうぞ~。<br><br>……そう、あなたですよ。あ・な・た♪<br>私を見つめてる、あなたにあげます~。<br><br>ふふっ、不安そうなお顔でしたね~。<br>私が勝てるかどうか、心配なんですか?<br><br>大丈夫、大丈夫。確かにオグリちゃんも<br>イナリちゃんも、他の子も……<br>とっても強くて、いいこですけれど――<br><br>――きっと私が勝ってみせます。<br>だからのんびり、見守ってくださいね~。<br><br>それじゃあ、頑張ってきます~。<br>いいこで待っていたら……<br>よしよし、してあげますね♪"}, {index="30017",text="「みんなーっ、声出していくよーっ!<br>まずはファル子のいいとこ聞かせて♪」<br><br>ラブリー! スマート! ド根性~!<br><br>「コラ最後ー! ま、いっか☆<br>次はファル子のお名前ちょーだい!」<br><br>逃げてもかわいい、あ~ファル子ー!<br><br>「あーん、いい感じ☆ それじゃラスト!<br>ファル子にラブ☆きゅんちょーだいな!」<br><br>L・O・V・E!<br>LOVEきゅんファル子ーッ!!!!<br><br>「ありがとーっ! ファル子、絶対<br>トップウマドルまで逃げ切ってみせるから!<br>全力で追いかけてきてね☆ チュッ♪」"}, {index="30018",text="「きょ、今日はみなさんに、<br>お話したいことがありますっ……!」<br><br>ぎゅっとマイクを掴んだ手は、<br>まだあどけなく幼い。<br><br>「いつも応援してくださって、<br>本当にありがとうございます。<br>まだまだ未熟な私です、でも……!」<br><br>――小さな花が、ほころんだ。<br><br>「いつかきっと、<br>りっぱなオトナの女性になりますっ!<br>すえながく、見守ってくださいねっ」<br><br>その日のライブ後、会場のあちこちで<br>『長生きしよう』と囁かれたという……。"}, {index="30019",text="アイスのうた おうた・ハルウララ<br><br>アイスは アイスは とってもすてき!<br>ぬいぐるみアイスは もーっとすてき!<br><br>クレーンでガブッて 揺らしてもつぶれない<br>コインを食べて おっきくなったの?<br>つよくて ムテキの スーパーアイス!<br><br>アイスはぎゅっとしたら溶けちゃうよ<br>でもぬいぐるみはすりすりできる!<br>(かじって なめても 味はしないよ!)<br><br>アイスは アイスはなんでもすてき!<br>いちごにみかん メロンにぶどう あと――<br><br>「えへへ、アイスが食べたくなっちゃった!<br>いっしょに買いにいこーっ♪」"}, {index="30020",text="「ムムッ、ライブの盛り上がりが今ひとつ?<br>どうやら正義の味方の出番らしいなっ!」<br><br>「――私にもぜひ、協力させてくれ!」<br><br>「! その声は……!」<br><br>「栄養満点! 正義満点!<br>カロテンチャージ、キャロットマン!<br>そして――」<br><br>「正義の翼で悪を差し! 駆けて羽ばたけ<br>世界を救え! 天に轟く、ビコーペガサス!<br>最強のヒーロータッグ、ここに見参ッ!」<br><br>――ドカァァァンッ!!<br><br>「みんなの笑顔を守ってみせるッ!<br>さあ、正義のショータイムだッ!!」"}, {index="30021",text="トレーナーさん、お疲れ様です!<br>理事長秘書の駿川たづなと申します。<br>これから全力でサポートしていきますので、<br>遠慮なくなんでもご相談くださいね♪<br><br>さて早速ですがこちらが本校の資料です。<br>お仕事の前に、お目通しお願いしますね。<br><br>ここトレセン学園には、ウマ娘たちを<br>支える教育や施設が充実しています。<br>もちろん、トレーナーさんが成長するための<br>ノウハウも揃っていますのでご安心を!<br><br>あなたと一緒に働けること、<br>心から楽しみにしていました。これから<br>ウマ娘たちのために、頑張りましょうね!"}, {index="30022",text="「皆さん、応援ありがとうございました!」<br><br>優雅に手を振るメジロマックイーン。<br>激戦の直後だとわかるのは、<br>額を流れるままの汗くらいだ。<br><br>「けれどこの1着はまだ、夢の途中。<br>メジロ家の誇りを胸に、今後も華麗に<br>勝利を重ねて参りますわ!」<br><br>高貴なる宣誓に、歓声は最高潮。<br>令嬢然とした振る舞いで、背を向けた後――<br><br>(決めましたわ、今日はご褒美にケーキを<br>いただきますっ。なににしようかしら……)<br><br>――ご機嫌で悩む後ろ姿は、<br>まだあどけない少女だった。"}, {index="30023",text="(がんばれライス。がんばれ……!)<br><br>勝利を願ってくれるのは、ただ1人だけ。<br>自分だけだと、少女は思い込んでいました。<br><br>――ライス、ライス、ライス、ライス……!<br><br>けれど全力で走りぬいた少女を迎えたのは、<br>まるで高い高い青空から舞い落ちるような、<br>たくさんのたくさんの声援でした。<br><br>「あ……あの、ええと」<br><br>少女は驚いて、戸惑って……それでも。<br>小さな、少女には大きな一歩を踏み出して。<br><br>「あ……ありがとう、ございます……っ!」<br><br>少女への声援は、いつまでもいつまでも<br>止むことはありませんでした――"}, {index="30024",text="じーー…………。<br><br>「……うん。ぬいぐるみの私は、<br>とても愛らしいな」<br><br>そうだろう。なにせ『私』は、<br>たくさんの愛をもらって、<br>生まれてきたのだから。<br><br>「キミたちはこれから、<br>たくさんの人のところへ行くんだな。<br>大切に、愛してもらうために」<br><br>「ママ~、オグリンかわいいよ。<br>抱っこしたいな~!」<br><br>「あ……早速、出番みたいだ。<br>頼んだぞ、『私』。<br>私の分まで、ぎゅっとされてくれ」<br><br>――任された!"}, {index="30025",text="スぺ、手紙ありがとう。<br><br>早速迷ったとのこと、驚きました。<br>まったくスぺの方向音痴は誰に似たのか……<br>スズカさんにちゃんとお礼を言ってね。<br><br>優しいウマ娘さんと出会えてよかったね。<br>同室になったそうだけど、<br>寝坊したり散らかしたりして、<br>迷惑かけたりしないようにね!<br><br>今だから言えるけど、ウマ娘のいない土地で<br>スぺは寂しくないかずっと心配してました。<br>だから、スズカさんって友だちができて<br>お母ちゃん本当に嬉しかった!<br><br>友だちとの学園生活も楽しんでね。<br>スぺの大好きなうちの人参、送ります。<br>スズカさんにも食べてもらって。<br><br>スぺが、いつでも幸せでありますように。<br><br> お母ちゃんより。"}, {index="30026",text="レンズの中に、<br>1人の少女が飛び込んできた。<br><br>「おーい、みんなー! ターボだよー!<br>ねぇねぇ、これちゃんと映ってる??<br>……そっか! 映ってるならよーっし!!<br>あのね、今回のレースは特別なんだー!」<br><br>そう言って、少女はカメラに顔を寄せる。<br>キラキラと輝く瞳が、数度、瞬いた。<br><br>「だから、今日も逃げ切るよ!!<br>ぜったいの、ぜーったい! 必ず!<br>逃げ切って勝つの!!」<br><br>レースの緊張を感じさせない、<br>明るく希望に満ちた声。<br>多くのものを振り向かせた少女は、<br>高らかに宣言する。<br><br>「ターボは強いから、<br>いつだって、スタートからゴールまで、<br>ターボエンジンぜんかーーっい!!<br>ずーっと1番前を走るんだ!」<br><br>諦めを知らぬ幼さからか。<br>少女の口から出たのは、<br>あどけない――無謀ともとれる言葉。<br><br>「負けないから!!」<br><br>けれどそれは、自分を鼓舞すべく発せられ、<br>また、立ち止まっている<br>誰かの背を押すように力強く――<br><br>「だから、見てて!!」<br><br>モニターの向こうまで、響いていた。"}, {index="30027",text="「あっはははっ!! テンアゲー!<br>これワンチャンあるかもー!?」<br><br>歓声に交じる笑い声と、<br>「またあいつらか」って生暖かい視線。<br>それこそいつものことだし、<br>慣れたものだけど――<br><br>(……そう、だよね。<br>私たちにだって、誰にだって、<br>チャンスはある。可能性はある)<br><br>足先に、グッと力が入った。<br>……不思議。もっとイケるって、<br>私の全身から訴えかけられてるみたい。<br>こういうのなんて言うんだっけ。<br>確か、パンプスがどうのって。<br><br>「おお!? パーマー、ヤバヤバのヤバ!<br>めっちゃバイブス上がってんじゃん!」<br><br>あ、それそれ。<br>……うん、今まさにそんな気分。<br>観客席からのどよめきも、気持ちがいい。<br>勝てる、突っ走れ、止まるな。<br>全力で走れって、私が私に叫んでる。<br>でももしかしたら、途中で力尽きるかも――<br>なんて不安は、<br><br>「勝っちゃえーーーーーっ!!!<br>パーーーーーーマーーーーーーッ!!!!」<br><br>背中から聞こえた声に、<br>一瞬にして消されたよね。<br>走っている最中にライバルを<br>応援しちゃうなんて、どうかしてるって。<br><br>(ありがと、ヘリオス)<br><br>……ああ、熱くなってきた。<br>まだ私には、脚が残ってる。<br>行こう、どこまでもどこまでも先へ、<br>ギアを上げて、ギアを上げて、<br>限界まで上げて――!!<br><br>「見てなよ、これが私の大逃げだー!!」"}, {index="30028",text="(そろそろだと思ってたよ、<br>ダイヤちゃん!)<br><br>――ああ、やっぱりすごい。<br><br>息遣いが聞こえる。<br>地を蹴る音が近づいてくる。<br>キラキラしてて眩しい宝石みたいに、<br>前を向くあたしの目を眩ませてくる。<br>そうやって、ただの1度だって、<br>油断はさせてくれない。<br><br>(……抜かせない)<br><br>だって、道は照らされてる。<br><br>僅かな差で負けた苦い記憶は、<br>今もしっかりと記憶に刻まれている。<br>本気で走って、お互い精一杯の力で<br>ゴールを目指した。<br><br>苦しかったから、悔しかったから<br>――楽しかったから。<br>だから、もう絶対に負けない。<br>負けたくない。<br><br>(だけど、やっぱり)<br><br>追いかけてくる。<br>勝ちたいという想いが、<br>後ろから迫ってくる。<br>そんな強い気持ちが熱となって<br>背中に浴びせられる。<br><br>(……うん、楽しい。<br>楽しいね、ダイヤちゃん)<br><br>そろそろ仕掛けてくるよね。<br>また、笑ってるんでしょ?<br>わかるよ。だって、あたしも笑ってるから。<br>こんなに楽しいんだもん。<br>最後までずっと、笑っていたい。<br>だから――<br><br>「勝負はここから……!<br>今度はあたしが勝つからね!」"}, {index="30029",text="(キタちゃんなら、<br>きっとこの先で仕掛けてきますよね)<br><br>――ああ、やっぱり素敵。<br><br>いつでも、どんな時も、<br>私を引っ張ってくれた、<br>優しくて温かな背中。<br>髪も、その衣装も。まるで黒い影の<br>ようなのに、走る姿は眩しくて。<br><br>(……追い越したい)<br><br>きっと、その先はもっと眩しい。<br><br>一緒に憧れを追いかけて、<br>笑って、泣いて、手を繋いで歩くのも、<br>好きだけれど。<br><br>はしゃいで走り出し、ふいに脚を止めて、<br>「ついてきてる?」って振り返ってくれる<br>あなたも大好きだけれど。<br><br>(それでも)<br><br>ここは神聖な場所。<br>礼節をもって、真摯な態度で挑むべき場所。<br>苦しくても、つらくても、<br>最後まで走り抜く。<br>それが、この場所に選ばれたものの義務。<br><br>(……でも、楽しいです。<br>ね、キタちゃん)<br><br>あなたの懸命な横顔が、<br>微笑みを返してくれる。<br>それだけで、同じ気持ちだって<br>わかるから。だから、私も――<br><br>「このレース……勝たせていただきます!」"}, {index="30030",text="(――あ、いまクイッて肩が上がった?<br>脚も少しだけピリピリして見える。<br>そっか、そろそろ仕掛けてくるんだね!)<br><br>他者から見れば尋常ではない<br>努力の積み重ねを経て、<br>マチカネタンホイザは<br>今このレースに挑んでいる。<br>だと言うのに彼女は、<br><br>(2人の走りは、たくさん見てきた。<br>走り方もクセも、仕掛けるタイミングも、<br>全部調べた。でも、そんなのは――)<br><br>『普通の努力』だから、と言う。<br>前を走る背中に勝ちたいから、<br>だからこれが『普通』なんだと。<br><br>(でも、勝つためにはそれだけじゃ<br>足りないよね。脚を、もっともっと<br>強く動かさなくちゃ――!)<br><br>レースが苦しいことは、わかっている。<br>勝つことが大変なことも、身に染みている。<br>でも、それらはすべて当たり前のこと。<br>だから踏み込む、土を蹴る。<br>2つの背中を追いかけて、勝つために。<br><br>「よぉおし!! ここから私も、<br>ババーンッと行っくぞぉー!!」"}, {index="30031",text="ユキん子ー! きばってけ~!<br><br>……ン? ユキん子が誰かって?<br>ほら、あっこで手ぇ振ってる子だよぉ!<br>あーの笑顔見てっと、心がぬぐだまるべ~。<br><br>ユキん子は……みんなの娘みたいな子でね。<br>畑さ耕してくれたり、肩もんでくれてよ。<br>……でも……なによりも、走ってる姿がね。<br>楽しそうで、みんなを元気にしてくれンだ。<br>――……だからな! 今日はオラたちが、<br>あの子に元気をあげにきたンだよぉ!<br><br>へ? おめぇも、応援してくれンのか?<br>……っへへ! 涙はあとにとっとかンとな!<br><br>よぉーし! ンだば、今度は一緒に言うべ!<br>……せーのっ――!"}, {index="30032",text="体練は武の道のみならず全ての道に通ず。<br>駆走、舞踏、歌唱、加へて礼節。<br>ものみな体練なくして優なき也。<br><br>その日、難敵多きなか一等の栄を得たり。<br>舞台中央に立つは、<br>勝者の誉れにして責である。<br>心して当たるべきなり。<br><br>発声の基礎は腹にあり。<br>臍下丹田に力を籠め、<br>足裏をしかと地につけるべし。<br><br>観客、気炎万丈なる様に大いに沸き立つ。<br>終幕の折、両の拳を握りて大呼す。<br><br>「――押忍!!」<br><br>朋友・サクラチヨノオー、<br>驚きて身を竦むるも、<br>観客、演者、皆相好を崩したり。<br><br>しかるのち深き礼を経て舞台を後にす。"}, {index="30033",text="ぜったい!<br>ぜ~ったい泣いちゃうって思ってた。<br>だってちっちゃい頃から<br>想像しただけで泣けちゃってたもん。<br><br>ダービーの、勝利者インタビュー。<br><br>でも不思議だ。<br>本当にこの場所に立ったら、<br>涙なんてちっとも出てこない。<br>だって、忘れたくないんだ。<br>真っ青な空。<br>いっぱいのお客さんの笑顔と歓声。<br>大好きな友だちと全力で競い合った<br>この景色の――全て!<br><br>涙でにじませるなんてもったいないよ。<br>3人で走ろうって約束して、励まし合って<br>負けたくないってがむしゃらに走って<br>たどり着いた……夢の場所だもん!<br><br>「アタシが、このサイコーの<br>ダービーを勝利したウマ娘、<br>ウイニングチケットですっ!!」<br><br>そして、夢のその先は、<br>まだずっと遠くまで続いてる――!"}, {index="30034",text="「――あ、あのね。<br>別々の入り口から入って中で合流する<br>っていうのはどうかな……?」<br><br>そして2人は二手に分かれ、<br>甘やかな香りが手招く<br>バラの迷路の奥へ……。<br><br>――これが数十分前のこと……。<br><br>少女は息を切らして小走りする。<br>探しても探しても、見つからない。<br>けれど……。<br><br>(がんばれ……がんばれライス……!<br>絶対にライスから見つけるんだ……)<br><br>(あの日、ライスが<br>見つけてもらったみたいに……!)<br><br>(必ず、見つけにいくから……!)<br><br>角を曲がった瞬間、少女は<br>上気した顔をぱぁっとほころばせた。<br><br>「……っ! 見つけた……!」"}, {index="30036",text="『レース生活の全てを管理する』<br>それは、まだ未熟な彼女たちにとって<br>最良の指導方法である。<br><br>「なぜプランにない柔軟を<br>自分たちの判断で行ったのですか?」<br><br>「気が昂ったのを落ち着けようと……。<br>勝手なことして、すみません」<br><br>一時的な感情の落ち込みは想定内。<br>憂慮の必要はない。大切なことは別にある。<br><br>「あの、樫本トレーナー!<br>軽い柔軟程度なら問題ないのでは?」<br><br>「いいえ、問題だらけです。<br>そもそも“軽い”という<br>考え自体が間違っています」<br><br>「トレーニング、柔軟、食事、睡眠……<br>全て軽んじてはいけません」<br><br>私は知っている――レース生活の重みを。<br>私は知っている――夢への架け橋の脆さを。<br>私は知っている――光なき道の冷たさを。<br><br>「では……念のため、もう1度アップを。<br>今日の地下バ道は少し冷えますから」<br><br>私は管理し続ける。<br>それが……樫本理子のなすべきこと。"}, {index="30037",text="この帝道の第一歩は、<br>奇跡か、それとも必然か――<br><br>割れんばかりの拍手が響いた。<br>彼女は悠然と<br>ウイナーズ・サークルに立つ。<br><br>狂ったように飛び交うシャッター音。<br>だが彼女は、いつも通り<br>堂々とポーズを取る。<br><br>まるで、この優勝は<br>予定調和だと言わんばかりに――<br><br>彼女はまっすぐに、<br>1本指を天へ掲げた。<br><br>「――まずは、一冠」<br><br>その呟きは、歓声にかき消される。<br><br>伝説は、ここから始まった――"}, {index="30038",text="勝者のみが立てる場所<br>――ウイナーズ・サークル。<br><br>向かう道すがらで、少女は目を瞠った。<br>望外の出会い。<br>憧れの存在が、目の前にいた。<br><br>並ぶものなき駿足に、<br>魅せられ、並び立とうと決めた過日。<br>専心が、今日の勝利を呼んだ。<br><br>万感の想いに声を失う少女。<br>夢うつつの歩みで近づくと<br>――憧れは、柔らかな笑みを浮かべた。<br><br>勝利の余韻が油断を呼んだか。<br>緩んだ帯を整えてくれる、手。<br>縮まる距離に、少女が頬を薄紅に染める。<br><br>咲き誇る大輪の隣<br>――小さな桜がそっと並び咲いていた。"}, {index="30039",text="ここは夢の国、ウマンダーキングダム。<br>私はこの国のプリンセスですわ。<br><br>今日はいよいよ王子様と結ばれる日。<br>国民もみな、テンションぶち上げで<br>祝ってくれております。<br><br>ドレスを着て礼拝堂にいる私に、<br>ゆっくりと近づいてくる王子様。<br>そして私が王子様の手を取ろうとした<br>――その刹那!<br><br>突如現れる敵の大幹部とそのしもべたち。<br>もちろん、姫は王子様と共に<br>悪者どもをギッタンギッタンに<br>なぎ倒しますわ!<br><br>姫たるもの、そして花嫁たるもの!!<br>幸せは腕力【おのれのちから】でもぎ取って<br>ナンボですわ~~~~~っ!!!"}, {index="30040",text="♪ボーノなキャロットウェディングケーキ♪<br><br><材料><br>生地……<br>にんじん 60本<br>薄力粉 9kg<br>たまご 120個<br>お砂糖 4.5kg<br>バター 6kg<br>ベーキングパウダー 大さじ12杯<br><br>クリーム……<br>クリームチーズ 7.5kg<br>牛乳 600ml<br>お砂糖 2kg<br><br>♪た~っくさん、お友だちをご招待してね♪<br><br>「い~っぱい愛情こめたから、<br>とってもボーノにできてるよ♪<br>さ、トレーナーさんも食べて食べて~!」<br><br>「……ねぇ、カワカミ。<br>あれ、まさか1人分だと思う?」<br><br>「当然ですわ! さすがアケボノさん、<br>あの豪快さ、姫として<br>見習いたいものですわ~~っ!」"}, {index="30041",text="可愛いもの。<br>素敵なもの。<br>綺麗なもの。<br>――アタシには、似合わないもの。<br><br>そうやってずっと遠ざけてきた。<br>華やかなものは、<br>たくさんの視線を集めるから。<br><br>だけど、アタシだって進みたい。<br>誇れる自分になって、<br>誰の視線にも怯まないようになりたい。<br><br>だからこのドレスはアタシの決意。<br>アタシを強くしてくれる――味方。<br><br>いつか、ドレスに見合う<br>アタシになれるって――自惚れてやるんだ。"}, {index="30042",text="突き放して突き放して、<br>レースの勝者はアタシで決定――なんて、<br>そんな甘っちょろい考え、あるはずもない。<br><br>「はっ……! くると思ってたっス!」<br><br>内側から迫ってくる、<br>どうしようもないくらいの威圧感に、<br>小さく背中が震える。でもこれは。<br><br>(ただの興奮っスよ!!)<br><br>誰にも邪魔されない、最高の瞬間。<br>この時を待っていた。<br>小細工は何もいらない、1対1――<br>力と力の真っ向勝負。<br>これで熱くならないはずもない。<br><br>「……行くぞ」<br><br>ざわめきすらも打ち消す呟きに、<br>息をのんだ。<br>……さぁ、ここからが本番だ。<br>いざ、尋常に。<br><br>「――勝負ッ!!」"}, {index="30043",text="白か、黒か。<br>勝利か、敗北か。<br><br>コインを投げれば、表か裏が出る。<br>それと同じでゲートが開けば<br>勝者と敗者が決まるというのがレースだ。<br>ただし大舞台になれば、<br>いろいろと小難しい要素も絡むらしい。<br>誰に勝ってほしい、誰が1番のウマ娘だ。<br>やいのやいのと騒ぎ立てる声が聞こえる。<br><br>1番人気だから、愛嬌があるから。<br>誰もが彼女の勝利を信じているから。<br>――オイオイ待てよ。<br>それで1着が決まらないのがレースだろう?<br><br>賽はもう投げられた。<br>勝利の女神はどちらに微笑む?<br>残された時間はたった2分とちょっと。<br>これから始まるのは、楽しいしのぎ合いだ。<br><br>さァ……目の前のことだけに集中しな。<br>ファンファーレはもうすぐ、鳴っちまうぜ?"}, {index="30044",text="歓声が消えた……静かだ。<br>何も聞こえない。<br><br>『ねーちゃん、待ってよ!』<br><br>今通り過ぎていったのは……?<br>そうか……あの時の私か。<br><br>なら、もっと速くなれ。<br>追いつくまで、ひたすら走り続けろ。<br><br>『ねーちゃん、もう走れないの?』<br><br>それでもオマエは走れ。<br>がむしゃらに、ただ前を見て、<br>信じて進め。そしたら――<br><br>『ねえ、また2人で一緒に……』<br><br>「……走ろう、姉貴」<br><br>「ああ、そうだな。ブライアン!」<br><br>「さあ、各ウマ娘ゲートインが完了して、<br>今…………スタートですッッ!!」"}, {index="30045",text="(じゅるじゅるじゅる……)<br><br>「ん~♪ このジュース、<br>しゅわしゅわで甘くておいしい♪」<br><br>(ちら……)<br><br>「ふふん、アンタも飲みたいんでしょ?<br>けどゼーッタイ、あげないもん♪」<br><br>(じゅるじゅる、じゅる……)<br><br>「……あ~、もう飲み切っちゃう!<br>味わえないのってかわいそうね!」<br><br>(じゅる、じゅる……)<br><br>「……ねえ、欲しいんでしょ?<br>なら素直に言いなさいよっ!」<br><br>(…………)<br><br>「……ふふん、しょーがないわね♪<br>じゃ、アンタのストローはこっちね」<br><br>(ぷすっ……カラン)<br><br>「がんばって飲みなさいよ?<br>氷しか残ってないけど! ぷぷ♪」"}, {index="30046",text="「きゃっほおおおう!!!!」<br><br>ウェイクボードを操り、軽々と<br>宙を舞うウイニングチケットに、<br>船上は揺れていた。<br><br>「な、なんまらすごいです……!」<br><br>「あの技、初心者は無理って<br>言われてましたよね?<br>さすがチケゾーさん!」<br><br>「むぅ、野生の勘ってやつね……」<br><br>「さいっこう~ッッッ!<br>もう1回ッッ!!」<br><br>「あら! 景気がいいわね♪<br>チケゾーちゃん、2回転ゴーゴー♪」<br><br>「任せてくださいッッ!<br>いっけぇ、これがアタシの――!!」<br><br>――ボードが散らすしぶきのような、<br>キラキラの歓声が船上からあがった。"}, {index="30047",text="「え゛え゛え゛ぇぇぇっ!?<br>アタシが1番前なんですかぁぁぁっ!?」<br><br>(そりゃ先頭に並んでたけど、<br>それはいつもの癖で、別にその通りに<br>乗らなくてもいいわけで……!)<br><br>「ちょ、スペさん! そこ尻尾!<br>ぎゅってしないで……ああああああっ!!」<br><br>「ええええ、マルゼンさん、<br>はいポーズって……<br>これまさか写真撮られるんですか!?」<br><br>(わわわ、やめて、<br>こんなポーズ、アイツに見られたら……!)<br><br>「あ……ああああっ……<br>1番耐えられないわよー!!」<br><br>(カシャッ☆)<br><br>「ああああ~っ!!」"}, {index="30048",text="「ラスト1枚は……外角低めの7番パネル。<br>苦手なコースが残っちゃったな。<br>……でもリラックスして、正確に<br>筋肉を動かせば……いける!」<br><br>「いいかい、三角筋? 余計な力は抜いて、<br>リリースまでエネルギーを溜めるんだ。<br>軸がズレないようヒラメ筋も踏ん張って!<br>よし……頼んだよ、みんな!!」<br><br>「そこだっ!!」<br><br>(スパーーーーン!!)<br><br>(ピロリロリ~~♪<br>デッデデッデッデッデデデッデ~~♪♪♪)<br><br>「やったぁーーー! パーフェクトだ!<br>理想通り動いてくれてありがとう、<br>あたしの筋肉! 後でプロテイン飲もう!」<br><br>ウェルカム トゥ 2ndステージ!<br>…………アーユーレディー?<br><br>「えっ、終わりじゃないんだ!?<br>……ふふ、そうこなくっちゃね!<br>まだまだいくよ、みんな!!」"}, {index="30052",text="――届きますか<br>――届いていますか<br><br>――私たちの鼓動は、旋律となって<br>――私たちの落涙は、光彩となって<br><br>――それは、陰日向に至りました<br><br>私……ずっと言いたかった。<br>あの時、言えなかったことがあるんです。<br><br>だから、今度こそ……届けるんです。<br>あなたがレースで見せてくれたみたいに。<br>私は、このステージから。<br><br>届いていますか、――"}, {index="30053",text="砂塵舞う白昼の決闘場。<br>腕……否、脚自慢の旅がらす達は睨み合う。<br>そこへまた1人、ならず者がやって来た。<br><br>「Oops!<br>みんなとっても強そうデース!」<br><br>拍子抜けするほど陽気な声が、荒野に響く。<br>――この子、大したことないわね。<br>誰もが胸中でそう確信した、その時。<br><br>「But……勝つのはワタシ。<br>ワンショットで仕留めてみせマース♪<br>――……Are you ready?」<br><br>クイックドローさながらの、宣戦布告。<br>撃ち抜かれたライバルたちは悟った。<br>この荒野を制するのは……彼女だ。"}, {index="30054",text="どんな努力をしても、<br>どんな苦しさを味わっても、<br>結果が全て。<br><br>勝つのは主役で、いつも輝いている。<br>負けた脇役には、眩しすぎるほどに。<br><br>努力は報われないことばっかりだし、<br>欲しいものにはあと少し手が届かない。<br>それが現実。<br><br>わかってる。<br>わかってるけど、わかりたくない。<br><br>「あは……ほんっと、笑っちゃう」<br><br>だって、どうせまた走るんだもん。<br>輝けるいつかを夢見て。"}, {index="30055",text="かの術者は大気を震わせ、暗雲を呼び、<br>空を煉獄に染める。まさしく森羅の<br>理を用いて、根源を解き明かす者なり。<br><br>また空を覆うおびただしき血涙を用い、<br>錆びし虚空に喚声を巡らすその様、<br>人智及ばぬ神罰の代行者なり。<br><br>ことごとくを慄かせ、ことごとくを還す<br>紅の使徒の名――<br>ブラッディスカイをここに記す……。<br><br>発行 黄金出版<br>「オールスター集結! ウマ王軍名鑑」より<br><br>「うーん、大げさかなぁ?<br>……でも宣伝だし、このくらいでいっか」<br><br>「強大なイメージを植え付けておけば、<br>勝手に身構えてくれるだろうしね~♪」"}, {index="30056",text="「煌びやかなシャンデリア。<br>金刺繍を施した絨毯。絢爛を極めた装飾。<br>全て栄華の象徴よ……でも、この<br>舞踏会場が一流であるゆえんは別にあるわ」<br><br>「それは不死鳥の羽? 黄金蟹の剥製?<br>ペガサスの天井画? 太陽のスタチュー?<br>いいえ、どれも違う。この舞踏会場を<br>一流たらしめるもの……それは――」<br><br>「「キングオブゴージャス!」」<br><br>「私がいれば、そこが一流の空間!」<br><br>「「キングオブマジック!」」<br><br>「世界の果てまで轟く名声!<br>まさに私は――!!」<br><br>「「キングオブキングス!!」」<br><br>「おーっほっほっほっほ!<br>キングという存在に感謝しなさい!!」"}, {index="30057",text="世紀末グルメ! 種籾リゾットの作り方<br><br>「まずはNPCに種籾を持ってこさせろ!<br>いわゆる年貢ってヤツだな。<br>テストに出っからマーキングしとけよ!」<br><br>「次に種籾を炎【フレイム】で炒めるぜ!<br>ウマ王の魔力なら、低級魔術も<br>万物を灰に還す業火だっつーの!」<br><br>「って、おい! 材料がなくなったぞ!?<br>自分の火力が恐ろしーぜ……ったく。<br>新しい材料を持ってこさせて再開だ!」<br><br>「適度な火力で炒めたらブイヨンスープで<br>20分くらい煮立てな。これで完成よ!<br>好みで“追い種籾”してもいいぜ!」<br><br>「っしゃーー! ウマネストの未来と<br>希望の味がする、種籾リゾット完成だ~!」<br><br>「ほら、食ってみろよ。<br>精米なんてする気が起きなくなんだろ?<br>ガーーハッハッハッハッ!<br>これでオマエもウマ王軍だ!」"}, {index="30058",text="地の果てまでも。<br>天の果てまでも。<br><br>「ボクは誰にも負けない」<br><br>「私は必ず勝利する」<br><br>どこまでも飛んでいき、<br>どこまでも駆けていく。<br><br>「きみを置いて前へと」<br><br>「真っ直ぐにゴールを見据えて」<br><br>――これは。<br><br>「ボクの後ろで踊ってもらうから」<br><br>「負けても、泣かないでくださいね」<br><br>輝きを目指す、<br>ウマ娘たちの物語。"}, {index="30059",text="誰かにとっての祝福は、<br>誰かにとっての悲嘆だ。<br><br>「ううぅ~……ど、ど、どうしよう。<br>カメラ見たら、緊張して……震えが……」<br><br>「では、私に背部を接触させてください。<br>……『温もり』で緊張が緩和されると<br>以前、データをインプットしました」<br><br>「でも……ライスがくっついたら、<br>よくないことが起こっちゃうかも……」<br><br>「否定します。電子機器以外は、<br>常時私と接触可能です。よって……<br>撮影オーダー完遂のため説得モードへ移行。<br>説得マニュアルを参照し、実行開始――」<br><br>「――ライスさん。<br>『四の五の言わず、寄りなさい!』です」<br><br>「ひゃいっ! ……え、え、えいっ!<br>…………わぁ……ブルボンさんあったかい。<br>えへへ……本当に震え、止まっちゃった」<br><br>「……温かいのは、ライスさんもです。<br>深部まで、熱が伝導していますので」<br><br>それでも、と私たちは言う。<br>挑戦者の勲章を、共に背負って。"}, {index="30060",text="ドレスにアクセ、スポットライト?<br>彼女たちを1番に輝かせるのは――<br><br>「……うん、カワイイじゃん♪<br>ターボ、コサージュつけたよ~」<br><br>「おおー! ネイチャ、がんばった!」<br><br>「おふたりとも、準備は……完璧ですね。<br>そろそろ撮影開始です」<br><br>「おお~ぅ! タンホイザもイクノも、<br>ドレス似合ってんねぇ~……ふむふむ♪」<br><br>「でへへ~♪ ネイチャもきれいだよっ!」<br><br>「きっ……!? お、お世辞はいいって!<br>ほら、チャチャッと撮っちゃいますよ!」<br><br>「よーし! みんな、しゅーごーだー!」<br><br>――ひとつ、またひとつ星が連なる。<br>くっつけばほら、なによりまばゆい。"}, {index="30061",text="競い合った足音は、<br>やがて調和の旋律となる。<br><br>(――シュタタタタタッ!)<br><br>「うひゃ~……ドレスだぁ!!<br>これで撮影するの!? ワクワク?<br>ドキドキ? って感じだね~~っ!?」<br><br>(――すた、すた、すた)<br><br>「別に、いつも通りでいいでしょ。<br>カッコが違うだけだし」<br><br>(――コツリ、――コツリ)<br><br>「ああ。ドレスはほんの彩りにすぎない。<br>重要なのは、応援してくれる皆に<br>普段通りの姿を届けることだ」<br><br>「そっか、いつも通りかぁ……!<br>それじゃあ――誰が1番にスタジオに<br>着けるか勝負だぁぁぁ~~~~!!」<br><br>「え、ちょっと――」<br><br>「ははっ、確かにそれはいつも通りだな。<br>よし、私たちも行くとしよう!」<br><br>「ったく、しょうがない……!」<br><br>(――タッ、タッ、タッ!)<br>(――タッ、タッ、タッ!)<br>(――タッ、タッ、タッ!)<br><br>はらりと裾が翻り、3つの足音が重なる。<br>まるで心地いい和音のように。"}, {index="30062",text="「くんくん……はわぁ、いい香り。<br>これが伝説のお弁当、にんじん幕の内……」<br><br>「スぺちゃん、お弁当はリハーサルが<br>終わってからにしましょうね」<br><br>「スズカー! ボクの手袋しらなーい?」<br><br>「さっき衣装さんに調整をお願い<br>していなかったかしら……?」<br><br>舞台裏はとても賑やかで、<br>心が落ち着く暇なんて全然ない。<br>だけどそれを――<br><br>――素敵だと感じている私もいる。<br><br>「……あなたたちと一緒だから、かしら」<br><br>「スーズーカーさーーんっ!」<br><br>「聞こえているわよー、スぺちゃん。<br>……ふふっ、もう。次はどうしたの?」<br><br>さあ、準備を進めましょう。<br>たくさんのお祝いの気持ちを<br>込めたステージを作るために。"}, {index="30063",text="蹄鉄オーダーシート<br>・オーダーNo.0723586<br>―――――――――――<br>『お名前』<br>メジロマックイーン様<br><br>『サイズ』<br>計測値に合わせて0.1ミリ単位で調整<br>『希望材質』<br>株式会社UMAGANE製アルミ合金<br><br>『その他のご要望』<br>サンプルの75gより重い80gを希望します。<br>負荷をかけたい箇所の関係上、<br>鉄頭に厚みを設けて調節してください。<br><br>こちらの蹄鉄は日常的なトレーニングで<br>頻繁に使用しますので、同様の蹄鉄を<br>1ダースご用意いただきたく存じます。<br>完成品は本日中に再訪して受領いたします。<br><br>「……できました。<br>マックイーンさんの蹄鉄は、<br>このようなオーダーが最善かと」<br><br>「まあ、ありがとうございます!<br>私に合わせた重量の調整など、<br>細かく見ていらっしゃるのですね」<br><br>「こだわらせていただきました。<br>蹄鉄で未来が変わることもありますから。<br>それほどにウマ娘にとっては<br>欠かせないパートナーなのです」<br><br>「ええ、良き蹄鉄になる予感がいたします。<br>ふふっ……完成が待ち遠しいですわ!」<br><br>「私も楽しみです……とても」"}, {index="30064",text="ヴヴヴ~~~~~ッ!!<br>ついに目覚めてしまったでぇ……。<br>おっそろしい3体のミイラがなぁ……!<br><br>《韋駄天のお祭り娘》!<br>――てやんでいミイラ・イナリ!<br><br>《包帯ですべてを包みこむ甘やかし沼》!<br>――マミー・ザ・クリーク!<br><br>そしてウチ! 《浪速の最速》!<br>――白い稲妻・タマモミイラ!<br><br>速すぎて、なびく包帯が稲光に<br>見えるっちゅうのが由来や!<br>どや? カッコええやろ!<br><br>さあて……ウチらに勝てるんかぁ?<br>“ミイラハンター・オグリ”ぃぃっ!<br><br>……ってなに呑気にカボチャパイ<br>食ってんねん!? 聞いとらんのかーいっ!<br><br>せっかく人がノッてやったっちゅーのに……<br>なに? もっぺん聞きたい?<br>もう言わんわ! 恥ずいやろっ!"}, {index="30065",text="ハロウィンの妖気が満ちる頃。<br>1人の少女が伝説の魔女の元を訪ねた。<br><br>魔女は彼女を試すように、ほくそ笑む。<br><br>「アタシの修業は甘くないわよ?」<br><br>「それでも、どうしても、<br>叶えたい願いがあるんです……!」<br><br>魔女はすぐに音を上げると思っていたが、<br>少女はめげなかった。やがて魔女は<br>彼女を認め、魔法の杖を授けた……。<br><br>「待っていてください。<br>今度は私が、あなたの力になるから――」<br><br>友を想い、魔女の心を動かした勇敢さ。<br>彼女こそ小さな英雄と呼ぶにふさわしい。"}, {index="30066",text="その幽霊さんは、こちらに背中をむけて<br>じいっと立っています。<br><br>幽霊さんは自分の役目を果たそうと、<br>ずっと1人でがんばってきました。<br>とってもとっても、真面目なのです。<br><br>誰かに手伝ってもらっても、<br>それは失敗じゃないのに……。<br><br>「――…………」<br><br>幽霊さんは、ぽつぽつと、<br>本当の気持ちを打ち明けてくれました。<br><br>あのね、気づいているかな?<br>悩むのは、あなたが優しいからだって。<br><br>――ある手作り絵本<br>『幽霊さんとヴァンパイアのハロウィン』<br>より抜粋。"}, {index="30067",text="玉座に坐すは、すべての頂点に立つ<br>“皇帝”シンボリルドルフ。<br>厳かな佇まいは、唯一無双の風格。<br><br>その威光に魅了された2人のウマ娘。<br>抜群の感性と才能で無敵を目指す<br>トウカイテイオー。<br>高い潜在能力と強靭な精神力で<br>突き進むツルマルツヨシ。<br><br>「絶対に超えてみせる」<br>「絶対に諦めない」<br><br>示された気概に“皇帝”は目を細めた。<br>その双眸に映る未来は、燦然と輝いている。"}, {index="30068",text="袖を大きく振って、半月を描くように……<br>で、灯りの位置はリハで確認したから、<br>差した紅が1番輝く角度で――<br><br>「うんうん、イイ感じ♪」<br><br>私が頭の中で描く、<br>1番だと思えるカワイイカレン。<br><br>そんな私を期待してくれて、<br>私は声をかけられ、今ここにいる。<br><br>いつもより艶やかなメイクなのは、<br>祭囃子に逸る気持ちと<br>みんなの期待に応えたい想いの表れ。<br><br>でも……ううん、だからもっともっと――<br><br>「みんなの期待を超える、<br>カワイイカレンを見せてあげるね!」"}, {index="30069",text="小さく灯された火の揺らぎに感情が昂る。<br>沸き立つ血は、一切の雑音と思考を止める。<br><br>感じるのは窮屈そうに暴れる鼓動のみ。<br>それを抑えつけようとすれば、<br>たちまち息苦しさに苛まれる。<br><br>ならば躍動のままに、欲するがままに、<br>望むがままに、求めるがままに――<br><br>身を焦がして、喰らうのみ……!<br><br>「時間だ。行こうか、ブライアン」<br><br>「ああ……すでに獲物は捉えた」"}, {index="30070",text="軽妙な旋律が踊り手たちを囃し立てる。<br>音色に乗せて扇子を回せば、<br>夜空の月が欠けて映った。<br><br>「はっ、はあっ!」<br><br>提灯の明かりは煌々と眩く。<br>見物客の目は爛々と輝く。<br>されど舞いを奉じる1人の少女は、<br>それより遥かな先を見ていた。<br><br>(ちゃんとできてる。……でも、<br>これじゃ今までのあたしと変わんねぇ!)<br><br>「もっと……もっと!」<br><br>「ユキノちゃん、飛ばしてきたね♪<br>よーし、カレンも!」<br><br>「2人ともヒートアップして――<br>うん、アタシだって……!」<br><br>追いつけ、追い越せと囃子も走る。<br>そこ行く少女の流転に合わせ、<br>揺蕩う祭りの趣が浮かぶ。<br><br>「まだまだこっから!<br>あたしだって、祭りの主役なンだ!」<br><br>誰もが笑い、誰もが続く。<br>今宵は長き祝いの舞台。<br>華の都に負けぬ賑わい……。"}, {index="30071",text="「ここでサンジョー!<br>でぃーーじぇーーー……<br>ウーーーチーーーーーっ!!」<br><br>\イエエエエエエイ!!/<br><br>「ヤバ~☆ そのノリ、優勝なんだケド!<br>マジみんな波来てんね、ノッてんね!?<br>そいじゃ、いつものコーレス……<br>……いっちゃう?<br>やっちゃう!?<br>神っちゃう~~!?」<br><br>\神っちゃう~!/<br><br>「おけまる~~っ♪<br>アゲでアゲでアゲてけぇ~~っ!<br>とりま右からっ……よいちょーっ!?」<br><br>\よいちょー!/<br><br>「左の席~! よいちょ~!?」<br><br>\よいちょー!!/<br><br>「センター! よいちょ~~っ☆」<br><br>\よいちょーー!!/<br><br>「ここにいる全員っっ!<br>よいちょぉぉ~~~~っ!?」<br><br>\よいちょぉーーーーっ!!!!/<br><br>「よき~っ☆ よきよきのよきすぎ!<br>も~ウチ、みんながしゅきピになっちゃう♪<br>つーか、なってる! なってたわ!<br><br>んじゃ、今日はラストまで<br>ウチらでカマしてこーっ!<br>最強で最高なライブ、スタートでよろ~☆」"}, {index="30072",text="今日は特別ハッピーな日!<br>みんなのドキドキをキレイな箱に詰め込んで<br>キラキラのリボンをかけたみたいな日。<br><br>「トレーナーちゃん、こっちこっち!<br>マヤたちのパーティー、すごいでしょ!」<br><br>寒さなんて吹き飛ばしちゃうくらいの笑顔!<br>雪降る静けさなんてものともしない歓声!<br>星空に負けない、キラキラのパーティー!<br><br>――なんて素敵で、特別な景色!<br><br>「楽しいよね? 嬉しいよね?<br>だから、トレーナーちゃんに<br>見せたかったのっ!」<br><br>見てほしい。褒めてほしい。喜んでほしい。<br>それって結構子どもっぽくて、<br>『大人のオンナ』とはちょっぴり違うかも。<br><br>……でも、<br>なんてったって、今日はクリスマス!<br><br>特別な日に、最上級の特別を……<br>特別なアナタへ、<br>とっておきのリボンをかけて。<br><br>プレゼントしたって、いいでしょ?"}, {index="30073",text="星降る石畳を踏んで君はゆく。<br>1歩半だけ先を、怒ったように忙しなく。<br><br>もろびとこぞる市場の中を、<br>その細い脚で縫うように淀みなく、<br>騒ぐ人波をかきわけて。<br><br>店先は光で満ちて、<br>きらめく品々は眩しく鮮やかだ。<br>甘いホットチョコレートの湯気に、<br>シナモンの香りが乗って夜を温めている。<br><br>この冬の日の喧噪の中で<br>その小さな肩を見失わずに済んでいるのは、<br>間違いなく君自身のおかげだった。<br><br>「何してんの、はぐれないでよ」<br><br>振り向いて、ぶっきらぼうに君は言う。<br>頷き返すと、すぐに前を向いてしまう。<br>ただ1歩半だけ先を、<br>それ以上決して引き離さないように、<br>細心の注意を払いながら君はゆく。<br><br>時折、ちらちらと振り返る視線に、<br>気づかないふりをして後を追う。<br>気づいたことがわかったら、<br>その途端にこの聖なる1歩半が<br>ぐんと伸びて消えてしまうからだ。<br><br>聖夜の月明りを受けて君はゆく。<br>1歩半だけ先を、誰よりも優しく慎重に。"}, {index="30074",text="「雪だ~~っ☆★<br>見て見てマヤノ、真っ白だよ~!」<br><br>「きゃ~~っ♡<br>すごいねマベちんっ、なにして遊ぶ!?」<br><br>「まずはマーベラスに雪合戦しちゃおうっ☆<br>えいえ~い★」<br><br>「ひゃあ、冷たい!<br>よーし、マヤもやり返しちゃうよ☆」<br><br>「負けないよ~っ!<br>それそれ、マーベラース☆★」<br><br>~3時間後~<br><br>「ふう~☆<br>すっごくマーベラスな戦いだったね……★」<br><br>「そうだね、マベちん!<br>でも、ちょ~っと遊びすぎたかも~……」<br><br>「遊び『すぎた』……?<br>そんなことないないっ!」<br><br>「ええ~っ、<br>もうたくさん遊んだよぉ?」<br><br>「だってだって、<br>雪って消えちゃうものでしょ!」<br><br>「うん、春には溶けて消えちゃうね」<br><br>「だったら、今、今、今……!<br>『今』遊ばなきゃ!<br>このマーベラスな一瞬を、<br>ずっとずっと引き延ばして……<br>もっともーっとマーベラスにしよっ☆★」<br><br>「確かに、そうかも……!?<br>よ~し!<br>マヤもまだまだ遊んじゃおっと☆」<br><br>「あははははっ!<br>雪が溶けるまで、マーベラス☆<br>そしたらきっと、雪が溶けてもマーベラス★<br>世界中に春夏秋冬!<br>広がれマーベラース☆★☆」"}, {index="30075",text="走る。走る。走る。<br>まだ足りない、彼女に追いつくには。<br>まだ足りない、全てを追い越すには。<br><br>廻る。廻る。廻る。<br>上昇している。下降している。<br>ぐるぐると思考は巡り、<br>いつしか私は極彩色の歯車の上にいる。<br><br>美しい歌が過ぎ去っていった。<br>私のための歌ではなかった。<br>ただ前を向く意志が過ぎ去っていった。<br>私は前ではなく彼女の背中だけを見ていた。<br><br>ああ、彼女の背中だけが見える。<br>もう、彼女の背中しか見えない。<br>ただがむしゃらに走るしかないのだ。<br>その揺らめく背に向かって。<br><br>私という1つの生き物が<br>攪拌され、希釈され、再構築され、<br>ただ彼女を追うための<br>1つの歯車になっていく。<br><br>自分が何者でなぜここにいるのか、<br>徐々にわからなくなってきた。<br>喧噪が遠い。<br>歓声なのか怒号なのかもわからない。<br><br>ぐちゃぐちゃにかき回された世界で、<br>彼女を追う1本の糸のような道筋だけが<br>どこまでも静かだった。<br><br>(アナタを追っている。<br>ずっと、アナタだけを――!)<br><br>黄金の歯車が廻る。<br>彼女に触れようと手を伸ばす。<br><br>――その瞬間、確かに、<br>私は世界の全てを置き去りにしていた。"}, {index="30076",text="瞳を閉じると浮かぶ景色がある。<br><br>暮れゆく陽の眩しさの中、<br>光に向かって<br>どんどん遠ざかってゆく影たち。<br>立ち尽くす私に、<br>遠く誰かの声が聞こえる――そんな景色。<br><br>いつ見たのか……。<br>記憶を辿るけれど、<br>想い出せたためしはない……。<br><br>だから……これは夢。<br>こうありたくないと、<br>無意識に思い描いた悪夢。<br><br>どうして、言い切れるのか――?<br><br>だって、瞳を開ければ、<br>いつだって別の景色が見えるから――<br><br>「またしても、サイレンススズカ!<br>堂々の1着でゴールだぁぁぁ!!」<br><br>見たいのは、夢じゃない。<br>ましてや悪夢でもない……。<br><br>私は――<br>見たことのない景色を見続けていたい。<br><br>これからも、この先も、ずっと……!"}, {index="30077",text="「おお、なんてことだ!<br>ボクに迫らんとする美しさ!<br>君はボクのレポレッロかもしれない!」<br><br>「むむ! アヤベさんの着ている振袖!<br>予知夢で見た通りの柄です!<br>好運大吉福の神! シラオキ様のお導き!」<br><br>「あはははー! アヤベさんキレイ!<br>わかった、お餅いっぱい食べたでしょ!?<br>お肌がモチモチだもん!<br>あとで一緒に餅つきしよーねー!」<br><br>「新年早々騒がしいわね……。<br>……はぁ、今年も先が思いやられるわ」<br><br>「はわわわわ! す、すみませ~~ん!<br>転んだら止まらなくなっちゃいました~!<br>どいてどいてぇ~~~!!」<br><br>「えっ!? こ、こっち来ないで……!」"}, {index="30078",text="「か、かるた大会始まっちゃいますぅ!<br>はわわわ……!? ふ、震えがぁ~~!<br>どどど、どうしましょう!」<br><br>「心配ナッシングですよ、ドトウさん!<br>シラオキ様の作った『新春ハピカム音頭』を<br>歌って踊れば、運気上昇・万事解決!」<br><br>「ハッピーカムカム 吉が出た~♪<br>目にも眩しい 初日の出♪<br>富士もニッコリ 頬が染まって♪<br>ふんにゃか はんにゃか 福来る~♪」<br><br>「ふんにゃか はんにゃか~……えへへ。<br>お、思わず口ずさんじゃいますぅ~」<br><br>「おお、その調子です!<br>さあさあ続けてご一緒に~!」<br><br>「ラッキーワクワク 松飾り~♪<br>みんな集まれ 福笑い♪<br>鷹がピューっと 告げる正夢♪<br>ふんにゃか はんにゃか 福来る~♪」<br><br>「フォーチュンおせちに 舌鼓~♪<br>幸せ全開 勝ちを呼ぶ♪<br>茄子は焼かずに ポッケにしまって♪<br>ふんにゃか はんにゃか 福来る~♪」<br><br>「これでシラオキ様のご加護もバッチリ!<br>大船……いや、宝船に<br>乗ったつもりで参りましょ~~!!」"}, {index="30079",text="届かないものがたくさんある。<br>大きくて眩しい憧れ……<br>遠い遠い頂上……胸を張っている自分。<br><br>辿り着けたら生まれ変われる。<br>わかってるのに……ぜんぜん届かない。<br><br>だから、ちょっとだけ背伸びをしよう。<br>気づかれないくらい、ほんの少しだけ。<br>そしたら……誰かが背中を押してくれた。<br><br>振り返りたいけど、振り返らない。<br>代わりに、もう少しだけ背伸びをする。<br>とってもとっても背中があったかい。<br>……いつの間にか、声が出ていた。<br><br>「ととっと、届けぇぇぇぇ~~っ!!」"}, {index="30080",text="「これって……師匠から<br>(勝手に)借りた笹針師の秘伝書!<br>ワォ、ここにあったのね☆<br>まだ半分しか読んでないっけ……どれどれ」<br><br>ひとつ、ウマ娘の神秘を追い求めるべし<br>ひとつ、五臓六腑に業を叩き込むべし<br>ひとつ、経験は才に勝るものと知るべし<br>ひとつ、世俗に溺れず鍛錬に励むべし<br>ひとつ、笹針を心の鏡とするべし<br><br>「……あっ、いけない!<br>カップ麺のお湯を沸かしっぱなし!<br>早く注いで……<br>押さえるもの押さえるもの……」<br><br>「……いいのがあるじゃない!<br>さすが秘伝書! 分厚くてフタ止めに最適!<br>ワォ、あんし~ん☆」<br><br>……3分後、秘伝書にラーメンをこぼして<br>大騒ぎする安心沢刺々美だった。"}, {index="30081",text="「おっ、あん時の写真きたのか!<br>あれ……なんだ、この影……<br>チョウチンアンコウの亡霊っ!?」<br><br>「きゃっ……どこ、どこ?<br>ちち、チョウチンアンコウさんの霊……!」<br><br>「ライスさん、落ち着いてくださいまし。<br>ゴールドシップさんの言うことを<br>真に受けてはいけません」<br><br>「うおおおおおん! 感動が蘇る~!<br>涙が止まらないよぉー!」<br><br>「あの時、充分泣いただろ。<br>……アンタの涙腺どうなってる?」<br><br>「あははは~……あっ! そうだ!<br>スズカさんにも見せてあげないと!」<br><br>「そう言うと思って、画像データも<br>いただいておきましたわ。<br>ふふっ……数々の激闘を経たというのに、<br>皆さん変わりありませんわね」<br><br>「そうそう! いつもの<シリウス>って<br>感じがサイッコー!」<br><br>「う、うん……ライスも。<br>変わらないのも、いいよね……えへへ」<br><br>「ふん……まあ、悪くはない」<br><br>「はい、そうですよね!<br>だから私たち……チーム<シリウス>で、<br>これからも仲良く――」<br><br>「一丸となって頑張るぞ、おっしゃー!!」<br><br>「な、なんで取るんですか~~!!」"}, {index="30082",text="大事なのは、<br>小さな勇気のひとかけら。<br>ちょっと前へと踏み出す気持ち。<br><br>ぜんぶぜんぶ一緒に混ぜて、<br>優しく焼いて、ふわっと包んで、<br>リボンを巻いたらできあがり。<br><br>あとは少し、上を向いて……。<br><br>「受け取って……もらえますか?」<br><br>できる限りの微笑みで。<br>まだ少し、手は震えるけれど。<br><br>伝えたいって思うから。<br>届いてほしいと願うから。"}, {index="30083",text="「小麦粉!! バター!! 小麦粉ッ!!<br>バター!! クリーム!! クリーム!!」<br><br>レシピも、温度も、なんのその。<br>彼女の前では意味を成さない。<br>ただただ爆速、爆速だ。<br><br>「ちょわっ、クリームが目と鼻と口にッ!!<br>……んーッ、非常に美味しいですッ!!」<br><br>「それでは最後のトッピング!!!<br>桜、桜、桜ーーーーッッ!!!」<br><br>豪快に舞う花あらし。爆速で咲き乱れ、<br>キッチンはすっかり桜色。<br><br>「――ハイッ!! できましたッ!!<br>これぞまさにバクシン的ッ!!<br>世界最速スイーツですッ!!」<br><br>満足そうに渡されれば、<br>つい笑顔で受け取ってしまう。<br><br>手にはクリーム、<br>服には桜がついてしまったが……<br>これもご愛嬌というやつだ。<br><br>「ハーッハッハッハ!! その表情!!<br>ええ、ええ、わかりますとも!!<br>大満足というわけですねッ!!」"}, {index="30084",text="「えっと、手をこう……ですか?」<br><br>「ん、イイ感じ。<br>じゃ、しばらくそのままでー」<br><br>フラワーちゃんのアゲ方、<br>これで合ってんのかわからんけど。<br><br>基本、あたし勢いだし、<br>いー言葉とか出てこんし、<br>励まし方もよくわからんし。<br><br>でもさ、やっぱほっとけないじゃん。<br>……なんかしてーって思うわけ。<br><br>だからあたしのやり方で。<br>これでイケればラッキー的な。<br><br>「わぁ、きれい……!<br>少しお姉さんになったみたいです……!」<br><br>「……マジ? 気に入った?」<br><br>「はい、とっても素敵です!」<br><br>――っし。イイじゃん、あたし。<br><br>やったもん勝ちってヤツ?<br>考えんのが下手でもさ、<br>とりま、やってりゃなんとかなるっしょ!"}, {index="30085",text="ある人気ウマドルのサイン会。<br>新譜を握りしめ、アグネスデジタルは<br>最後尾に並んでいた……。<br><br>「ちょっ、まって、ヤヴァイですぅ!<br>リアル後光見えてません……!?<br>ひょぉぉおお~~!!」<br><br>「あたし、同じ空間で同じ空気吸ってる!?<br>ありがたや、ありがたや~!」<br><br>「ふあぁぁ~~!?<br>ち、ちょっとずつ順番が!<br>あわわ、ジャケット以上にふつくし……!」<br><br>「……っぶなぁ! 昇天5秒前でしたよ!<br>なんという“尊みフィールド”!<br>いるんだ……すぐそこに推しが……!」<br><br>「……はっ! 落ち着けデジたん!<br>トリップしている場合か!<br>ちゃんとシミュレーションしないと!」<br><br>「さりげなく、印象を残さず……<br>サインをもらう→『いつも応援してます』→<br>素早く次の方へ……よし!」<br><br>「ここでマナー違反すれば、<br>サイン会の存続も危ういですからね……!<br>そこにいてくれることに最大の感謝を!<br>……行ってきます!」<br><br>颯爽とサイン会に臨むアグネスデジタル。<br>その背中は、いつにも増して<br>大きく、力強く見えた……気がする。"}, {index="30086",text="3000mの長丁場。<br>第3コーナーから伸びる、長く険しい坂。<br>努力という言葉だけでは乗り越えられない、<br>遥かなる道のりだ。<br><br>額を伝う汗は渇きを知らず、<br>彼女の視界を遮ろうと躍起になっていた。<br>脈打つ心臓の音は悲鳴に変わり、<br>荒々しい吐息が喉を焼く。<br><br>彼女は心に問うた。<br>なぜ苦しみを抱え走るのか。<br>なぜ重い脚を前へ前へ運ぶのか。<br><br>答えるより先に耳へ届いたのは、<br>地響きのような歓声……期待の声色。<br>彼女はその一切を噛み締めることで、<br>あらゆる辛苦を塗りつぶした。<br><br>気づけば宿敵と見定めた<br>強大な影が、背を脅かしている。<br>振り返ることは許されない。<br>諦めることも許されない。<br>それが頂へ通じる、ただ1つの道。<br><br>……その日、最も諦めなかったウマ娘が、<br>最も強いウマ娘になった。"}, {index="30087",text="「あれ……あっ、ブライト!<br>ストップ、ストーップ! そこまで!<br>ごめん、タイマーの表示が壊れてる!」<br><br>「はあっ、はあっ……ふぅ~~。<br>言われてみると、長い1セットでしたわ~」<br><br>「多分、3セットと同じ運動量だよ!<br>へ、平気……?」<br><br>「ええ、大丈夫ですわ~」<br><br>「これだけやってバテないなんて、<br>着実にトレーニングを重ねた成果だね!<br>もしかして、止めなかったらまだまだ<br>いけそうだった……!?」<br><br>「ふふふ、そうかもしれません。<br>きっと、気づかずに続けていましたわ~」<br><br>「あははははっ! ブライトらしい!<br>変わってないところもあるけど……<br>えへへっ、小さい頃から知ってるから<br>自分のことみたいに嬉しいよ!」<br><br>「そんなふうに言っていただけるなんて……<br>メジロの者として胸を張れるように、と<br>励んだかいがあります」<br><br>「これからも少しずつですが<br>前へ、前へ進んでみせますわ~」"}, {index="30088",text="「2人とも、トレセン学園をどう思います?<br>入ってみたら、想像と違いました?」<br><br>「はい……スペさんの言う通り、<br>全然違いました。ね、キタちゃん?」<br><br>「うん。全然違ったね」<br><br>「えっ、そうなんですか!?<br>もしかして期待外れだったとか!?」<br><br>「いいえ……むしろ――」<br><br>「思ってたよりずーっと楽しいです!<br>トレーニングもレースも、<br>全部想像以上でした!」<br><br>「そうそう! 毎日がお祭りみたいで、<br>ドキドキしっぱなしなんですよ!」<br><br>「はぁ~~、よかったぁ……。<br>ビックリして心臓止まるかと思いました~」<br><br>「でも……私も2人と同じです。<br>新しいことが次から次へと起きて……。<br>しかも、ワクワクするような<br>ことがまだまだ続いてるんですよ!」<br><br>「スペさんでもまだ……!<br>わぁ~! どうしよう、ダイヤちゃん!」<br><br>「うん! 私たち、これから<br>どうなっちゃうんだろう……!」<br><br>「あははっ! 想像できないくらいの<br>ワクワクが待ってますよ!<br>これからも、もっと、ずっと!」<br><br>「はい!」<br>「はい!」"}, {index="30089",text="興奮に沸く観客席の中で、<br>1人の男が、震える声でつぶやいた。<br><br>「ずっと、待ってた……。<br>期待されて、応援もされて、<br>なのに結果が出なくて……俺みたいで。<br><br>でも、あの子は勝ったんだ……。<br>自分を信じて、諦めなかったんだ……」<br><br>『――届いたよね、マーベラス☆<br>アナタもとってもマーベラーース★☆★』<br><br>男の頬を、熱い涙が伝う。<br>とうとう彼は気づいたのだ、<br>初めからそこにあった真実に――<br><br>「俺も、マーベラスなんだ……っ」<br><br>こうして、世界にまた<br>マーベラスの灯りが1つともった。"}, {index="30090",text="君のステップが牙を立てる。<br>しなやかな身のこなしは、<br>獲物の首を狙う獣のそれに映った。<br><br>「どうやら鈍ってはいないようだ。<br>殊勝にも陰で鍛錬に励んでくれたのかな」<br><br>「ご名答。お膳立てがなきゃ飛べない<br>アンタを大衆の目から守ってやりたくてな。<br>持ち上げられるだけの“皇帝”サマ」<br><br>「なら、今度は君に『語って』もらおう。<br>やにわに取り繕ったものでなければ<br>洗耳恭聴し、合切を委ねるつもりさ」<br><br>君のターンが静寂【しじま】を破る。<br>嘲りが吐息に化け、<br>にわかに額が輝きを帯び始めた。<br><br>「お望みなら連れてってやる。<br>だが忘れてくれるなよ。<br>誘い水を注いだツケはきっちりもらう!」<br><br>「おっと! 剣呑な足さばきだ。<br>大切なのはパートナーへの信頼。<br>また忘れないよう、シリウス……<br>レッスンの時間だ」<br><br>君のチェイスが追い立てる。<br>そのうねりは支配への渇望に見えた。<br>……ならば全身全霊で受け止めよう。<br>“皇帝”シンボリルドルフはここにいる。"}, {index="30091",text="「……なあ、そこから何が見える?」<br><br>「忙しなく過ぎてゆく影か?<br>それとも誰かが舞い上げた埃か?」<br><br>「ああ、そこら中に退屈が転がってやがる。<br>しかも泥濘のように厄介ときた」<br><br>「そのまま沈んでゆくか……<br>はたまた悪あがきをするか……<br>そんなところだろ?」<br><br>「だが、アンタには3つ目の選択肢がある。<br>この手を取れ――」<br><br>「退屈の外側を見せてやるよ」"}, {index="30092",text="エネルギー=質量×光速度の2乗。<br>どこまでいっても等価交換。<br>ペイした分だけバックがある。<br>言い換えりゃ、それ以上のリターンは<br>逆さに振っても出ねェ……それがイイ。<br><br>『マジ、アガるーー!<br>!monadサイコーかぁー!?<br>フゥーーーーッ!!』<br><br>けど、ノイズが混じっちまえば<br>等式が崩れてカオスへまっしぐらだ……!<br>なのに、オレは――<br><br>「上等だ。タダじゃおかねェ。<br>前後不覚になるまで酔わせてやるッ……!」<br><br>こンな不確定要素だらけの<br>キャッシュの中でオレは――<br><br>「おら、ツイてこいッ……!<br>はッ……ハハッ……!」<br><br>なンで笑い抑えンのに必死になってンだ?<br>……チッ、踊らされてンのはオレか。<br>解が出ちまった……認めてやる。<br>だから――<br><br>「……オレのビートが鎮まるまで、<br>ライトは点いてくれンなよ」"}, {index="30093",text="青と白が好き。<br>爽やかだけど、鮮やか。<br>気品があるけど、気取ってない。<br><br>アタシがなりたいアタシに<br>1番近づける彩り――<br><br>「うん、やっぱりこの組み合わせが1番♪」<br><br>コーディネートよし。<br>フリルよし、プリーツもよし。<br>リボンのちょうちょも完璧なバランス。<br><br>姿勢よし、笑顔もよし!<br>文句の付けどころのない<br>『オフの日の優等生』!<br><br>「大事なお出かけだもの……<br>1番気合いの入る『勝負服』で<br>行かないと、よねっ♪」"}, {index="30094",text="時に叱咤し、激励し、分かち合う。<br>そうやって君はいつも誰かを支えていた。<br><br>今日だって、誰かの背中を押すために<br>観客席から世界を俯瞰している。<br><br>10kgを優に超える団旗を翻し、<br>どんなに声を荒らげても<br>みんなの視線はレースに注がれていた。<br>君のいる場所は、光の当たらない陰。<br><br>だけどお構いなしに力を振り絞り、<br>自分の役割を全うしている。<br>それが正しいと信じているから。<br>それを誇りとして掲げているから。<br><br>「ガンバレ」<br>ふと、口をついて出た言葉。<br>日常にもかき消されそうな、か細い音。<br>誰にも届かず霧散していく声。<br><br>それでも……君は振り返った。<br>旗を振る腕も、励ます声も休めない。<br>ただ一瞬だけ、炎の揺らめきのような……<br>そんな笑みを君は浮かべてくれた。"}, {index="30095",text="観客席から見下ろす大迫力のレース。<br>物凄いスピードでコースを泳ぐ<br>ウマ娘たち。その勢いに負けない、<br>ひと際大きい声援が会場に響き渡った。<br><br>「ナイスターン! でも後続来てるわ!<br>このままだと……あっ!」<br><br>ひいきの選手でもいるのだろうか。<br>心底、残念そうにしている……<br>かと思いきや――<br><br>「グッジョブ! 見事な追い抜きよ!<br>トレーニングの成果が出ているわね!<br>そのままゴーよ!ゴー!!」<br><br>「えっ……!? さっき先頭だった選手を<br>応援していたはずじゃ……?」<br><br>思わず口に出してしまった私に<br>彼女……シーキングザパールは<br>ニッコリとほほ笑んだ。<br><br>「レースとは、勝者と敗者を決めること。<br>その光と影は必ずついて回るわ」<br><br>「……でもね、全力でファイトする<br>姿には上も下も、勝ちも負けもない。<br>讃えられるべき輝きなの!」<br><br>「全てのウマ娘にエールを!<br>全てのウマ娘に喝采を!<br>私は、全てのウマ娘を応援し続けるわ!」<br><br>曇り知らずで、まるで真珠のような純真。<br>その光に吸い込まれ……私が映してきた<br>世界の色が変わっていった。"}, {index="30096",text="一瞬でも隙を見せれば捲られる大ピンチ。<br>強敵が迫る中、俄かに聞こえてくる声援……!<br>これって、まるで――<br><br>『プリファイー! まけるなー!』<br><br>幼き日、テレビの前で応援する私の声を<br>力に変えて悪に立ち向かい――<br><br>『そこだー! やっちゃえー!<br>プリファイー!』<br><br>輝く希望を示してくれた<br>プリンセスの姿そのもの……!<br><br>『いけー! プリファイー!』<br><br>それなら答えは1つ。姫たるもの、<br>絶対の……絶対に――<br><br>「負けるっ……もんですかぁぁぁーー!!」"}, {index="30097",text="コースは最悪のコンディションだった。<br>それなのに、あなたは泥すらあしらって<br>バ群を切り開き、先頭へ躍り出た。<br><br>めくれ上がった芝も<br>宙を舞う雫も<br>先を行く私たちすら。<br><br>すべての間を、<br>縫って、<br>抜いて、<br>置き去りにして――<br><br>追い抜かれる時に見えたのは、<br>どこまでも澄んだ空色の瞳。<br>誰も捕まえられない、<br>捕まえようのない、自由な……。<br><br>「ミスターシービー、先頭でゴールイン!<br>三冠の初戦は、ミスターシービーが<br>制しました!」<br><br>誰が誰かわからなくなるほど<br>ひたすら汚れて泥まみれの中、<br>彼女だけが特別だった。<br><br>頬の泥を手の甲で拭う少年のような仕草に。<br>ゆるく口角をあげた、飄々とした笑顔に。<br>観客に向かって、宙へ手を突き上げる姿に。<br><br>打ち負かされたことすら忘れて<br>不覚にも、見入ってしまった。"}, {index="30098",text="「あ~た~らし~い勝負服~♪<br>目指すはレースで1等賞~!」<br><br>「ワクワクしちゃう~勝負服着て~♪<br>ワクワクいっぱい走るんだ~♪」<br><br>「ぴょんぴょん♪ びゅんびゅん♪<br>おもいっき~り ばっびゅーーん!」<br><br>同じクラスの彼女が、何かを歌っている。<br>日頃からよく見る光景ではあるけれど、<br>今日はやけに、そんな彼女が気になった。<br><br>「……それ、何の歌?」<br><br>気づけば声をかけていた。<br>あまりに楽しげで、胸の奥がうずいたから。<br><br>「これはね~勝負服の歌だよ!<br>これ着て走るの、すっごく楽しみなんだっ!<br>おもいっき~り ばっびゅーーん!」<br><br>走るのが、楽しみ。<br>楽しいから、歌う。<br>なんて単純で――まっすぐな想いだろう。<br><br>「――いいなぁ」<br><br>楽しいなんて気持ち、<br>私はいつの間にか忘れていたのに。<br><br>「じゃあ、一緒に歌う?<br>せーのでいくよっ!」<br><br>「えっ……えっと、」<br><br>「せーのっ! ぴょんぴょん♪<br>びゅんびゅん♪ おもいっき~り」<br><br>「ば、ばっびゅーーん……」<br><br>「ばっびゅーーん!<br>えへへっ、次のレースも楽しみだねー!」<br><br>――不思議だ。一緒に歌ってみると<br>ふつふつと楽しい気持ちが湧いてくる。<br><br>そうだ、レースは楽しみなものなんだ。<br>難しいことは考えず、<br>私も、ただレースを楽しみにしよう!"}, {index="30099",text="「ふぁぁ~……<br>イクノさん、ほんとうに綺麗……<br>本物の花嫁さんみたい……!」<br><br>「ありがとうございます、ライスさん」<br><br>素晴らしいデザインの勝負服を着て<br>皆さんに見守られ……<br>なんとも面映ゆい心地がします。<br><br>けれど、これも得難い経験。<br>しっかりと撮影に臨んで――<br><br>「えっ!? イクノ、花嫁さんなの!?<br>やだやだっ! やだよー!<br>お嫁にいっちゃやだーーっ!!」<br><br>「えっ、ちょっ、なにしてんのターボ!?<br>撮影の邪魔になるでしょーがっ!」<br><br>「やーーだーーーーっ!<br>おいてかないでぇーーーーーっ!」<br><br>……ターボさんの早とちりで、撮影現場は<br>少々混乱状態になってしまったようです。<br><br>レースでは皆をおいて大逃げする<br>ターボさんが、『おいていかないで』と<br>大騒ぎするのもまた、面白いものですが。<br><br>「ターボさん、落ち着いてください。<br>私はどこにも行きませんから」<br><br>離れるわけがありません。<br>私たちはまだ、レースの途中ですから。<br><br>――ひとまず、この撮影が終わったら<br>ターボさんたちのトレーニングに<br>お付き合いいたしましょう。"}, {index="30100",text="いつか見た、ウェディングの景色――<br><br>花嫁さんがふわっと笑って、<br>そうしたらまわりにも笑顔が広がって、<br>みんなが幸せでいっぱいになる。<br><br>その景色が、いまでも忘れられなくて。<br><br>私も、あんなふうにみんなを笑顔にしたい。<br>みんなに幸せを広げられるようになりたい。<br><br>それはささやかな、あこがれの夢。<br><br>勇気を出して、1歩前へ。<br>踏み出した先に、笑顔が広がっている。<br><br>あの日あこがれた、ウェディングの景色。<br>花嫁さんの見ていた、幸せの景色。<br>それが少し、見えたような気がして……。<br><br>「……もっと、もっと笑顔にしたい」<br><br>これからも、もっとたくさん<br>みんなに笑顔を広げていきたい。<br><br>そうして、<br>みんなに幸せが届きますように――"}, {index="30101",text="――無謀だ。<br><br>光さえ越えるようなその速さは、<br>ゴール前に擦り切れてしまうだろう。<br><br>誰もがそう思う中、<br>彼女だけがうっとりと笑む。<br><br>「ああ、素晴らしい……<br>素晴らしい……! 実に愉快だ!」<br><br>無謀を理論で貫き、屈服させる。<br>世界の彩度が高まる、その感覚は――<br><br>「フフッ……さて、次の実験では……<br>どんな悦楽が待っているかな……!」<br><br>――彼女しか知り得ない。"}, {index="30102",text="ドーベル先輩は優しすぎるから、<br>色々と考えすぎて<br>色々と悩んでしまうのデスね?<br><br>――なぜわかるか?<br>それはエルが先輩の優しくて<br>色々と考えてくれるところに<br>助けられたから!!<br><br>「――となれば、試合開始デース!」<br><br>入場、赤コーナー。<br>トレセン学園の怪鳥、<br>マスクド・エル!<br><br>対戦相手、青コーナー。<br>メジロのセニョリータ、<br>お悩み・ドーベル先輩!<br><br>ルールは簡単!<br>ドーベル先輩のお話を聞いて、<br>ドーベル先輩とおしゃべりして、<br>ドーベル先輩を笑顔にできたら大・勝・利!<br>……ふっふっふ、負ける気がしないデース!<br><br>「なぜなら、マスクさえあればエルは<br>元気、勇気、無敵! デスからね……!」"}, {index="30103",text="物語に彩られし森の中、<br>ツタに吊られて<br>風切るウマ娘がふたり――<br><br>「あのですねー! タイキさん!」<br><br>「ホワッツ? なんデショウ?」<br><br>「私、この状況になったら<br>どうしてもやりたいこと……<br>いや、言いたいこと?<br>いや、叫びたいこと……?<br>が、ありましてですねー!」<br><br>「……! アイスィー!<br>ワタシも今、<br>タンホイザと同じ気持ちデス!」<br><br>「おお! では、<br>さんにーいちで一緒に……!<br>3、2……1!」<br><br>「「アーアア~~~~~~♪」」"}, {index="30104",text="『水魔が誘う水辺、<br>妖精が導く庭、<br>星が示す扉……<br>数多の試練を乗り越え、<br>ついに目的の地へたどり着いた<br>村人たちを迎えたのは、<br>世にも美しき光景――』<br><br>「アメイジング……!<br>本当に、壁が青く光ってイマース!」<br><br>「本当、別世界みたい……。<br>こんな場所があったなんて……!」<br><br>『夢のようなその光景に、<br>村人たちの口からは<br>自然と声があふれ――』<br><br>嗚呼、嗚呼――!<br>私は今、本当にあの物語の中にいるんだ!"}, {index="30105",text="『日本一のウマ娘になる』<br><br>それが私の夢でした。<br>お母ちゃんと約束した、大切な夢でした。<br><br>けれど、私の夢は寒い朝の霧のようで。<br>うまく形にならない、ただの憧れのようで。<br>がむしゃらに、掴めないものを掴もうと<br>していたんです。<br><br>――でも。<br><br>多くの出会いが、<br>私の夢を鮮やかにしてくれた!<br>ライバルとの熱いレース、<br>乗り越えなきゃいけない壁。<br>苦しいこと、悲しいこと。<br>嬉しいこと、楽しいこと。<br>そのすべてが、私の夢をかたどってくれた!<br><br>あなたに憧れはありますか?<br>譲れない願いはありますか?<br>追いかけましょう、一緒に!<br>大切な、あなたの夢を掴むために!"}, {index="30106",text="母娘オークス制覇という歴史的記録が<br>かかったレース。会場は無数の噂話で満ち、<br>とてつもない重圧が双肩にのしかかる。<br><br>だが、”女帝”が姿を現した瞬間、<br>喧騒を薙ぎ払うように青嵐が吹いた。<br>彼女はその風をも支配下に置き、堂々たる<br>足取りでスターティングゲートへと向かう。<br><br>万物を平伏させるがごとき鋭利な眼光。<br>皮膚に食い込むほど強く握り込まれた五指。<br><br>求めるは理想。欲するは勝利。<br>武器は”女帝”としての矜持。<br><br>「――必ず勝つ」"}, {index="30107",text="チョベリグお姉さんの天気予報♪<br><br>今日のあたしはピーカン晴れ☆<br>真夏らしいホットでマブい日差しが<br>みんなの心に直撃しちゃうわ!<br>海でパーッと遊んじゃうのがトレンドよ♪<br><br>だけど楽しい時間はあっという間……<br>夕方にかけては<br>ちょっち肌寒くなっちゃうかも?<br><br>夕暮れってちょっぴり切なくて<br>局地的なおセンチ注意報って感じ。<br><br>だけど、だいじょーブイ!<br>あたしを照らしてくれるのは<br>太陽だけじゃない……<br>その熱でアツアツにしてくれる<br>マブ~い存在がいるの♪<br><br>ちょっちおセンチ気分に浸ったら<br>明日はまた、優しく晴れるでしょう♪"}, {index="30108",text="望むのは、痺れるような一瞬。<br>できる限りシンプルに<br>最高にヒリつくステージを。<br>対峙するヤツらの<レイズ>を待ち受ける。<br><br>我が命運は敵の手の内に……<br>というヤツだ。<br><br>――ジャッジの時。<br><br>この一瞬、共に命運を燃やし尽くす。<br>倒れゆく灯火たち。<br><br>ああ、そうだ。<br>この瞬間のために、私は……<br><br>「――これだから、やめられねェ」"}, {index="30109",text="『チョベリグ心あれば桜心』<br><br>(出典「ある白熱のバトル」)<br>チョベリグな心意気や生き様に<br>憧れてこそ走れる者がいるように、<br>憧れの力になりたいという気持ちも<br>真剣にぶつかれば実を結ぶことが<br>あるという意味。<br><br>(解説)<br>憧れの存在があったから<br>私はここまで頑張ってこられた。<br>だから、今度は私が憧れの力になる番!<br>思いっきり楽しんで熱くなれるように――<br>私は、憧れを本気で打ち倒しに行くんだ!"}, {index="30110",text="……いらっしゃいませ。<br><br>今日も……来て、くださったのですね。<br>……はい……<br>しばらくはこちらで、父の手伝いを……。<br><br>ご注文は……<br>ええ、いつものブラックですね。<br>すぐにお持ち――<br>…………ミルク多め、ですか?<br>いえ……問題ありません。<br>ありませんが……珍しいな、と……。<br><br>……なるほど、それはご多忙……ですね。<br>…………。……。<br><br>――あの、……すぐと申し上げましたが……<br>少々、お時間をいただけますか?<br><br>『お客様のための、一杯を』<br><br>……と、父から教わっておりまして。<br>少し、趣向を……凝らそうかと……。<br><br>どういった、ですか?<br>それは――<br><br>……あとのお楽しみ、ということで。"}, {index="30111",text="レースでも、それ以外でも、<br>何かに立ち向かうときって<br>緊張よりワクワクのほうが大きいんだ。<br><br>『好奇心旺盛なんだね』って言われるけど<br>それだけじゃない。<br><br>やり遂げたあと、ゴールしたあとの……<br>ボクに向けられるキラキラしたあの感じっ!<br><br>今だって楽しみなんだ。この勝負の先に、<br>どんな輝きが待っているのかって!<br>だから、ボクのハンドルさばきで絶対に――<br><br>「青いマフラーなびかせて~♪<br>ハンドル切ってうなるぞ最強マシン~♪」<br><br>「テイオーオー♪ テイオーオー♪」<br><br>「テイオー・オー・オー!!!」<br><br>「もうターボ! 真面目なこと考えてるのに<br>勝手に変な歌つくらないでよ~~っ!」"}, {index="30112",text="今日もツインターボは<br>トレーニングコースを全力で走る。<br><br>「ひぃ……ふぅ……はぁ……」<br><br>しかし、常に全力疾走。<br>周回するたびに、走る速度は落ちてゆく。<br><br>「おーい、デュアルブースター!<br>そろそろ休憩したら?」<br><br>「ツインターボ!<br>それよりもう1回走るから<br>ちゃんとタイム計ってて、テイオー!」<br><br>「ゲームでもそうだったもん。<br>がんばればがんばっただけ速くなるっ!<br>あきらめるなんて、ぜったいやだ!」<br><br>「またゲームみたいなスキルを出すんだ!<br>いくよ、ターボぜんかぁぁいっ!!」<br><br>再び勢いよく走り出すツインターボ。<br>しかし、すぐに失速してフラフラし始める。<br><br>それでも、<br>ひたすらに前を向き走り続けるその姿は――<br><br>「……カッコいいんだよねー、やっぱり」"}, {index="30113",text="鉄の飛行機で山を越える――<br><br>現実では当たり前の光景。<br>航空力学的に見合う設計図と<br>パーツを組めばいいが……ここでは違う。<br><br>見たこともない素材、<br>聞いたこともない原理……。<br><br>計画を実現するには、<br>やはりこの世界のことから<br>読み込んでおくべきだろう……。<br><br>「ふむ……これが私たちの世界で言う<br>チタンにあたるものだろうか?<br>そしてこちらが蒸気機関で初の発明……」<br><br>「む……? これは通信機か?<br>地表を電磁波で覆う送電システムだと?<br>それに蒸気の圧縮による半永久機関?」<br><br>「待て、そもそもこれだけの圧力に耐える<br>合金をすでに開発していたというのか!?<br>タングステンをはるかにしのぐとでも!?」<br><br>「……これ、ファンタジーだから。<br>ツッコみだしたらキリがないって」"}, {index="30114",text="「肖像画は我が一族の誇り。<br>歴史に刻まれた功績と栄華の誉れ」<br><br>格調高き踊り場に、音吐朗々と響く声。<br>壁面を埋め尽くす肖像画の前に立つ少女。<br>華奢で儚さを醸しながら、<br>その眼差しは凜として玲瓏。<br><br>「私の母と祖母もこちらに。<br>数々のレースでの勝利、URA賞の受賞。<br>我が一族でも傑出した光輝」<br><br>すっと白磁の指先が宙をなでる。<br>たおやかな右手が<br>赤いリボンの踊る胸元に添えられた。<br><br>「一族に連なる者は、何人も例外なく」<br><br>吹き抜けの踊り場に響き渡る言葉。<br><br>壁に並んだ数多の瞳が、<br>少女の背中を見つめていた――"}, {index="30115",text="ハロウィンコスで撮影会~ウェイ☆<br>ウチが超映えなパマちんを撮っちゃうぜ!<br><br>「お~衣装もセットも超本格的!<br>盛れそうな予感すんね~」<br><br>「それなー! パマちん、<br>悪魔コス超似合ってんよ! 1億点!」<br><br>こーゆーのなんていうんだっけ、ヨーエン?<br>やっぱパマちんは、<br>こーゆーお姉さん感も映え映えだよねん♪<br><br>「んじゃ、撮ってみますかー!<br>パマちん、悪魔なりきっちゃってー!」<br><br>「ええっ、なりきるってかぁ……<br>ちょいハズいね、それ」<br><br>「だーいじょうぶ!<br>もーよくばり悪魔ちゃん~な感じで、<br>ぜんぶ奪っちゃってよき!」<br><br>「なるほど、奪う……おけ、やってみる!」<br><br>「――君、甘ぁい匂いがするねぇ……<br>お菓子よりずぅっとおいしそう……♪」<br><br>おわーっ、鬼キュンですっ!<br>パマちんになら食べられてーってなるやつ!<br>エモエモ激盛れ写真、爆誕じゃーい!<br><br>――月夜の下で、ほほえむ悪魔!<br>ハロウィンナイトのはじまり~てやつ!"}, {index="30116",text="ハロウィンコスで撮影会!<br>ヘリオスの超映えな写真撮っちゃうよ!<br><br>「ウェイウェーイ! ハッピーハロウィン♪<br>ど? エンジェルなウチ、似合ってる?」<br><br>「ふふっ、チョー似合ってる! やっぱ<br>ヘリオスは明るいカッコが映えるね!」<br><br>いつでもウェイで楽しさを追い求めてて、<br>そんで周りまで明るくしちゃうんだよなぁ。<br>ヘリオスからもらう元気は、<br>まさに天使の恵み……って感じ?<br><br>「よっし、ヘリオスは好きに動いちゃって!<br>私は追いかけながら勝手に撮るから!」<br><br>「マ!? そんならウチ、<br>お菓子バラまきに行ったろー!」<br><br>「ウェイウェーイ☆<br>エンジェルさんのお通りでーす!<br>みんなにお菓子をプレゼントふぉーゆー♪」<br><br>まさかのお菓子配り!<br>どんどんみんなに元気を与えながら<br>パーリーしちゃうヘリオス……<br>うん、これはベストショットでしょ。<br><br>――太陽の下、輝く天使!<br>ハロウィンパーティーのはじまりだ!"}, {index="30117",text="『ウインディちゃん魔王城計画書』<br><br><魔王城の設定><br>魔王ウインディちゃんの恐怖の魔王城!<br>そこに足を踏み入れた者は<br>とんでもなく恐ろしい目にあいまくって、<br>恐怖のズンドコに陥れられるのだ!!<br><br><イメージ><br>・教室1コ使う!!<br>・ぜんぶ真っ暗! 壁に暗幕を張るのだ!<br> →暗黒の魔王の城は暗くて怖い!<br>・ラスボス★★ウインディちゃん魔王★★<br>・いっぱい試練を乗り越えないと<br> 魔王様にはたどり着けない!<br>・道はぐるぐるに入り組んでて、<br> ココがどこだかわかんなくなるのだ!<br>・試練の種類<br> →怖いワナがいっぱいの箱からカギを探す<br> →オバケと戦う<br><br><オバケの候補!><br>・巨大オバケ ※とにかくでっかくて怖い!<br>・カボチャのオバケ ※浮く<br>・悪魔 ※捕まるとカナシバリにあう!<br>・キョンシー ※噛まれたら仲間にされる<br><br>みーんな恐怖のズンドコに陥れられて<br>魔王軍の支配がはじまっちゃうのだ!!"}, {index="30118",text="時間だ。<br><br>歩を進めるごとに<br>歓声、蹄音、心拍――全てが遠のく。<br>だが――<br><br>魂が、吼え猛る。<br>苦みはもう、噛みしめた。ならば。<br><br>「噛み砕くのみ」"}, {index="30119",text="そこには、<br>悔いがあった。<br>嘆きがあった。<br>無念があった。<br>でも、共に必ず<br>未来のウマ娘への祈りがあった――<br><br>なんと気高く、偉大な先達たちだろう。<br>なんと大きな想いだろう。<br><br>「いつか――<br>いつか必ず、私が証明してみせます」<br><br>全ての祈りが<br>今に未来に駆ける私たちの<br>背中を押しつづけてくれていたことを。"}, {index="30120",text="神馬たちによる『想撚』練習風景の一幕――<br><br>「ヤエノさんはまるで<br>炎がまったく熱くないかのように<br>堂々と舞われていて……<br>素晴らしいです。<br>私もぜひ見習いたく思いますが<br>なにか極意などあるのでしょうか?」<br><br>「いえ、極意など大それたものは<br>若輩者の私には――<br>ただ、舞っている間は不思議と<br>熱さを感じなくて……」<br><br>「なるほど。……まさしく<br>『心頭滅却すれば火もまた涼し』<br>ということでしょうか」<br><br>「その境地に至れている<br>というのならば幸甚です。<br>……ふふ、熱中するとそればかりに<br>なってしまう己の性――<br>悪癖とばかり思っていましたが、<br>捉えようによっては<br>我が武器になるやもしれませんね」<br><br>「ええ、きっと……」<br><br>「なれば、このヤエノムテキ<br>いかなる烈火を前にしても<br>揺るがぬ心で、必ずや<br>役目を果たしてみせると誓います……!<br>たとえ烈火がこの身を<br>こんがり焦がしたとしても<br>動じることなく<br>踊り切ってみせましょう……!!」<br><br>「ふふふ、素晴らしい気迫です。<br>ただ、こんがり焦げてしまっては<br>大変なので……<br>そうならない安全な舞い方を<br>練習しましょう」<br><br>「……押忍!!」"}, {index="30121",text="ファン感謝企画へのご招待状<br><br>いつもウマ娘たちへの応援、<br>ありがとうございます。<br>実行委員のミホノブルボンと申します。<br><br>私たちは、ただひたすらに<br>ゴールを目標にここまで走ってきました。<br>ですが――<br><br>夢に見た景色に心奪われた時も<br>高い壁に心が折れてしまいそうだった時も<br>私たちは、ひとりではありませんでした。<br><br>あなたの声援が、そこにはありました。<br>私たちはそれを聞く度、<br>立ち上がり新しい夢を描いた。<br><br>皆々様と残してきた蹄跡も、<br>まもなく第2コーナー目前。<br><br>レースで言えば、<br>肩ならしを終えて……<br>温存していた力を脚に込めて駆け出す時。<br><br>つきましては、ささやかながら<br>日頃の感謝とこれからの決起の念を込め<br>ファン感謝企画を実行いたします。<br>ぜひ、奮ってご参加ください。<br><br>これからも、私たちは走り続けます。<br>かけがえない、あなたと共に。<br><br>「……よしっ! こんな感じでどうかな?」<br><br>「すごい……内容を変えないまま、<br>文章の硬さが消えてる……!」<br><br>「スズカさんに同意します。<br>この招待状であれば、<br>ファンの皆さんも気軽に参加可能と推測。<br>つまり……『素晴らしい』です」<br><br>「えへへ~! でもね、ブルボンちゃんの<br>想いがこもった、もともとの文章が<br>あってこそのできばえだと思うよ♪<br>あとは当日、楽しんでもらうだけだね☆」<br><br>「はい。<br>……当日が……『待ち遠しい』、ですね」"}, {index="30122",text="1、2、345、67、8、910……。<br>メトロノームが乱れては、<br>その役目は果たせない。<br><br>刻む、刻む――例外を許さず等間隔に刻む。<br>その美しさは私のしるべ。<br>耳を傾けて、均衡を保つ。なのに――<br><br>123、4、567、89、10……。<br>私は乱れたメトロノームを正さず、<br>そのまま忘却の箱に押し込める。<br><br>感動、昔日、嬉々、郷愁、羨望、<br>落涙、執念、去来……!<br>それらが今、私に押し寄せている!<br>調子の外れたブリキの玩具のように、<br>跳ねるリズムが抑えられない!<br><br>「Danke! Danke!<br>……Danke!!」<br><br>ただ歓喜のるつぼだけが残っている……<br>Danke! 今はそれしか見つからない!"}, {index="30123",text="「お前も、こういう顔ができるのだな」<br><br>エアグルーヴの言葉に、<br>ナリタブライアンの耳がピクリと反応する。<br>そして「文句でもあるのか」とでも<br>言いたげに、一瞥をくれた。<br><br>「いい写真になった、と言いたいだけだ。<br>聖夜は、かくあるべきだからな。<br>クリスマスは苦手かと思っていたが……<br>案外そうでもないのか?」<br><br>「まあ、どれだけ肉を食っても<br>姉貴に小言を言われないしな」<br><br>「ははっ、それはいい。ハヤヒデも<br>聖夜に水を差すような真似はしないか」<br><br>「それと……」そう言って、<br>ナリタブライアンは煌々と光る<br>ハロンタワーを見上げた。<br><br>「こういうのも、たまには悪くない」<br><br>「珍しく気が合ったな……私もそう思う」<br><br>ハロンタワーは眩く明滅を繰り返す。<br>ナリタブライアンとエアグルーヴは、<br>その光をしばらく眺めるのだった……。"}, {index="30124",text="トレセン学園クリスマスパーティーを<br>控えた前日、エアグルーヴは<br>フジキセキにある相談をしていた。<br><br>「コホン……『メリークリスマス。<br>本日はトレセン学園へお越しいただき、<br>まことにありがとうございます』――<br>まずは、こう切り出そうと思っている」<br><br>「うん、エアグルーヴの誠実さはすごく<br>伝わってくるよ!ただクリスマスという<br>場を考えると、ちょっぴり堅苦しいかも?」<br><br>「……やはりか。<br>だが公の場で生徒会として挨拶することを<br>考えると、どうしてもな……」<br><br>「エアグルーヴは、<br>TPOをきちんとわきまえているものね!<br>でもそれなら、こう考えてみるのはどう?<br>クリスマスパーティーでサンタクロースに<br>なるなら、それらしく振る舞わなきゃ――」<br><br>「――『ふぉっふぉっふぉっふぉ!<br>メリ~~クリスマ~~ス!』<br>こんな感じで! はいっ、君の番だよ!」<br><br>「なに!? む……むむ……<br>『ふっふっふ、メリークリスマス!』<br>……こうか!?」<br><br>「う~~ん、惜しい!<br>……サンタというより、サタンかな?」<br><br>「誰が悪魔だ!」<br><br>「あははっ、それそれ!<br>ぐっと表情が生き生きしてきたね、<br>エアグルーヴ!<br>……まずはそれが大事じゃないかな?」<br><br>「む……。<br>……いや、そうか。……そうだな」<br><br>「これではお母様に叱られてしまうな――<br>クリスマスは、『楽しい』イベントだ。<br>ならば――『楽しむ』場であることを、<br>なによりもまず私の心で、伝えねば」<br><br>「その通り!<br>ふふっ、当日も楽しんでね、エアグルーヴ」<br><br>「ああ。そう努めるよ」"}, {index="30125",text="どうだった? なんて聞かないよ。<br>ステージに全部詰め込んだから。<br><br>喉が枯れるまで声を張り上げた。<br>床を踏み抜く気持ちで力強くステップした。<br>絶対に気づいてほしいから、<br>私の全部を出しきったの。<br><br>これが私からのメッセージ。<br>ありったけの、今の正直な気持ち。<br>だからね、ブライアンちゃん――<br><br>「次は貴方にも歌ってほしいな。<br>……私の隣で」"}, {index="30126",text="GⅠを制した猛者が集う今回のレース。<br>一方。ヤマニンゼファーは<br>まだ目立つ成績を残していない。<br><br>彼女に注目が集まらないのも、<br>無理からぬことではあった。<br><br>だが、人々はすぐに知ることとなる。<br>そよ風【ゼファー】と見くびったのは<br>間違いだったと。<br><br>「――はぁああああああ!」<br><br>ヤマニンゼファーが早めに仕掛ける。<br>その様はまさに、疾風の如く。<br><br>第4コーナーでは3番手につけた。<br>直線で先頭に躍り出る。<br><br>自由に、なによりも速く風は駆ける。<br>あの日、目にした憧れのように。<br><br>――烈風は何者をも寄せつけなかった。<br><br>「……これが、あの風が見ていた景色。<br>なんと清風なのでしょうか」<br><br>「しかし、まだ風道の途中。<br>ここで凪となるわけにはいきません」<br><br>「まことの風はこの先に。<br>何よりも速く、吹き抜けてみせます」<br><br>ゴール板前まで戻って来た彼女は、<br>右腕を空へと伸ばした。<br><br>――ターフに風が吹き抜ける。<br>それは祝福の青嵐だった。"}, {index="30127",text="「スペちゃんは羽根つきに<br>込められた願いを知っていますか?」<br><br>顔に墨を塗るための筆ペンを<br>私に差し出しながら、不意に<br>グラスちゃんがそんなことを聞いてきた。<br><br>「羽根つきに込められた願い……?」 <br><br>「この羽根の先の木の実には、<br>『健康でありますように』<br>という願いが込められていて……<br>羽子板は、『様々な厄をハネのけて、<br>健やかに美しく育ちますように』<br>という願いを込めて<br>お正月に贈られる物なんですよ」<br><br>「へぇー!」<br><br>「ですので羽根つきは本来、<br>打ち合って競うのではなく、<br>互いの健康を願って<br>長く打ち合い続けるものなんです」<br><br>「ええっ、そうだったんだ!<br>じゃあ次からはなるべく長く続けなきゃ!<br>……あっ、じゃあハイ! グラス先生!<br>もしかして罰ゲームで顔に墨を塗るのも<br>なにか理由があったりしますか?」<br><br>「いい質問です、スペシャルウィークさん。<br>一説では墨の黒は魔を払う色とされていて、<br>それを顔に塗ることで魔除けとなり、<br>身が守られると考えられているそうですよ」<br><br>「なので、万が一<br>羽根を落としてしまっても、<br>墨を顔に塗れば大丈夫、ということですね」<br><br>「ただの罰ゲームじゃないんだね!<br>――よし!」<br><br>受け取った筆ペンに<br>ぎゅっと力を込めて深呼吸をする。<br><br>「グラスちゃんが<br>一年間ケガなく走れますように」<br>右目に一筆、大きな丸。<br>「風邪とか病気になりませんように」<br>左頬に一筆、斜めに線。<br>「美味しいものをたくさん食べて、<br>たくさん笑ってくれますように」<br>左頬にもう一筆、斜めに線。<br><br>一筆一筆に想いを込める。<br>友だちとして、ライバルとして<br>いつまでもどこまででも<br>一緒に走れますようにと――<br><br>「……たくさんお祈りをしてくれて<br>ありがとうございます、スペちゃん。<br>でも、ふふっ、ちょっと塗りすぎですね?」<br><br>「え? わぁ!? ごめんなさい!!!!」"}, {index="30128",text="雪被る石段を、彼女は静々と歩む。<br>艶やかな尾とレースの傘はご機嫌に揺らぎ、<br>冴え冴えとした風を縫って鼻歌が聞こえた。<br><br>ふと、カメラマンが彼女の名を呼んだ。<br>1度大きく尾を揺らした彼女が<br>緩慢にこちらを振り向き――息をのむ。<br><br>美しいかんばせに落ちた傘の陰影。<br>そこにぽつりと咲く紅と、薄く覗く白。<br><br>後ろを流し見る目元、<br>力みなくかしげられた首元。<br>お行儀よく傘に添えられた手元に、<br>自分の中の彼女がさらわれていく。<br><br>ハッとするほど美しかった。<br>そこにいるのは確かに彼女なのに、<br>それを疑ってしまうほど魅入られていた。<br>――まるで魔法にかけられたように。<br><br>不意に彼女と視線が交わった。<br>心地よさそうに目を細めて、彼女は笑う。<br><br>「ふふん、カンペキでしょ?<br>未来の大魔女は<br>いろんな姿になれるんだから♪」"}, {index="30129",text="ひとつ、ふたつと増えていく。<br>夜明け前の境内に、<br>ウマ巫女をつとめる彼女たちを想う灯が。<br><br>彼女たちならきっとやり遂げると、<br>信じる炎が広がっていく。<br><br>「……美しいですね」<br><br>真冬の夜の磨かれた寒さをとかす、<br>柔らかな灯が。<br>誰かが誰かを想う真っすぐな心が。<br><br>遠く暗い山影。<br>灯の途切れた山肌を望んで思う。<br><br>どうか彼女たちが気づきますように。<br>この美しき温もりに。<br><br>どうか届きますように。<br>このぼんぼりを灯す誰も彼もが、<br>まだ2人を諦めていないこと。"}, {index="30130",text="「じゃあ、次の曲。<br>この歌は……みんな、わかるかな?」<br><br>「うんっ! たんじょう日のうたー!」<br><br>「うん、生まれた日をお祝いする歌だね。<br>おめでとう、ありがとうって。<br><br>でも、もともとは<br>違う歌だったらしいんだ。<br>特別な1日のためだけじゃなくて、<br>毎日の『おはよう』をうたった歌で」<br><br>「そうなのー?」<br>「ミラクルねーちゃん、おはよー!」<br><br>「あははっ。うん、おはよう。<br>じゃあ今度はピアノの音にあわせて<br>あいさつをしてみようか」<br><br>「――おれにも、キミたちにも、<br>きっと新しい朝はくるから。<br><br>だからね、夜ベッドで眠るときに<br>もしもさみしくなってしまったら、<br>みんなでこの曲をうたったことを<br>思い出そう。<br>それで、こう考えてみて。<br><br>『眠るのは暗い夜が来たからじゃない。<br>朝、おはようを言うためなんだ』って」<br><br>暗い夜がずっと続くことはない。<br>キミたちを待っているのは、<br>あたたかい未来のはずだから。"}, {index="30131",text="~マーベラス☆チョコレート~<br><br>なにが出てくるかはお楽しみ☆<br>アナタをマーベラスな気分にさせちゃうよ★<br><br>「えっ、このモミジ型のチョコレート<br>初めての味がする! メイプルシロップに<br>近いかも。花の蜜みたいで美味しい……!」<br><br>「こ、このスポーツカーを再現したチョコ<br>すごいけど食べづらいな……。いや、なんだ<br>この独特な食感は。<br>特にサイドミラーは絶品だ!」<br><br>「ふ、ふおおおおお! この白鳥の湖の<br>チョコレート、オデットの悲哀が口の中に<br>流れ込んでくる!? まるで<br>芸術そのものを食しているかのようだ!」<br><br>あはははは☆ 不思議だよね、<br>おかしなチョコも食べてみないと<br>美味しいかどうかわからない★<br><br>それって人生とそっくり!<br>やってみるまでわからない、<br>なにが起こるかわからない、<br>わからないからマーベラス☆<br>さあ、マーベラスを召し上がれ★"}, {index="30132",text="「いらっしゃいませ!<br>お客様、席へご案内いたします!」<br><br>「うんうん、お願いねビコーちゃん♪」<br><br>「あーっ、ボノ! 練習なんだから、<br>お客さんみたいに頼むぞ!<br>じゃあ、こっちにどーぞ!」<br><br>「アッサムティーだ! ……じゃなくて、<br>アッサムティーでございます。<br>豊かなコクがスイーツの甘さを引き立てます<br>ので、こちら、と、一緒に……!」<br><br>「だ、大丈夫~!? そんなにたくさんの<br>スイーツ、両手で持たないと危ないよ?」<br><br>「こ、困難に立ち向かうのがヒーローだ!<br>ライアン先輩やアイネス先輩みたいに<br>アタシだって堂々とやってみせる!」<br><br>(それで――正義の味方みたいな、<br>みんなが頼れるアタシになるんだ!)<br><br>「~~っ! お待たせしました!<br>アルティメット・エクストリーム・ペガサス<br>スイーツパラダイスになります!!」<br><br>「わあっ、ひとつも崩れてない!<br>すごいねすごいねっ、こんなにいっぱい<br>運べちゃうんだもん!<br>ヒーローみたいでカッコいいよ~!」<br><br>「そ、そうか? ……へへ♪<br>――では、お客様。<br>ごゆっくりお楽しみください!」"}, {index="30133",text="みんな、ボ~ノ♪ 今日のウマスタライブは<br>ほろ苦おいしい『ビターチョコ』<br>を作っていくね!<br><br>実はね、このレシピを教えるの<br>どーしよっかなって思ってたんだぁ。<br>だって、苦いのはダメ~な人もいるよね?<br>あたしが作りたいのって、み~んな笑顔に<br>なれる、ちゃんこ鍋みたいな料理だもん。<br><br>……でもね、<br>小さなヒーローさんを見てたら、<br>あたしも勇気を出さなきゃって思ったんだ。<br><br>だからみんなとも、<br>がっぷり四つで向き合おう、って決めたの。<br>だってあたし、この大好きなチョコレートで<br>みんなとボーノ♪ って笑い合いたいもん!<br><br>『ボーノちゃんのチョコ食べてみたいな~』<br>『俺もボノのチョコレート欲しい!』<br>『ボノの好きなビターチョコ気になるなあ』<br><br>……! うん、えっとね!<br>おすすめのカカオの配合率なんだけど……<br>あっ、大切なこと言い忘れてたね。<br><br>みんな――ハッピーバレンタイン!"}, {index="30134",text="貫くは至高。<br>魅せるは艶麗。<br>捧ぐは愛。<br><br>妙なるその身はただ駆けるため。<br>紫紺の瞳は、無欠の栄光のみを見据える。<br><br>菊も桜も樫も薔薇も。<br>あらゆる華が頭を垂れる。<br>嫉妬も羨望も憧憬も闘志も。<br>あらゆる想いを置き去りに。<br><br>彼女は駆ける。そして勝利する。<br><br>――その名は、"}, {index="30135",text="色んな連中が口にする。<br>「あんな高い壁は越えられやしない」<br>「それでもいつか誰かやってくれるだろ」<br>「いつか、きっと、誰かが……」<br><br>けど――そうじゃないだろ?<br>誰もやらないからこそ自分の脚で進む!<br>怖い気持ちも、諦めたい気持ちも、<br>全部置いて駆け出せばいい!<br><br>それでも踏み出せない時は――<br>あたしを見ろ! あたしに続け!<br>道はあたしが切り拓く!<br><br>それが、ウマ娘たちのエース!<br>カツラギエースだ!!"}, {index="30136",text="幾重にも響き渡る蹄鉄の音。<br>こだましているかのように、<br>全身を包み込む。<br><br>……ざわめき――熱せられる、少しずつ。<br><br>目指す場所、手にしたいもの、<br>辿り着く場所。<br>瞳に宿る炎、<br>抱く闘志に差異はなく、<br>ならば共にと緑を駆けようか?<br><br>「No way」<br><br>誰も……渡さない――譲りはしない。<br><br>あの場所に立てるのはただ1人。<br>駆けろ、駆けろ、駆けろ。<br>我こそはと走り抜け。<br>それこそがこの場所を、<br>やがては世界を、<br>高揚させていくのだから。"}, {index="30137",text="お前たちに叡智を授ける。<br>先人が灯してきた知識の松明が<br>標となるように。<br><br>苦悩を聞かせて?<br>それはかつて誰かが通った道。<br>足跡を辿れば、暗い森も抜けられるわ。<br><br>勇気が必要かい?<br>ならば物語ろう。かつてを駆けた者が<br>一歩踏み出すに至った時のことを。<br><br>時代は違えど、形は違えど。<br>大地を抉る蹄鉄の跡は変わらん。<br><br>幾星霜、紡がれた錦の一糸残らず、<br>わたしたちが語り継ぐわ。<br><br>そして繋げよう、<br>今を駆けるウマ娘たちへ!<br><br>伝説は次なる伝説へ。<br>――続く者たちに、限りない祝福あれ。"}, {index="30138",text="目を閉じて、アンタを思い出そうとする。<br>決まって浮かんでくるのは、<br>遠ざかっていく後ろ姿。<br><br>まるで踊るように駆けていくアンタは、<br>笑っちゃうくらいカッコいいんだけど――<br><br>悔しいよね。どんな顔してんのか、<br>アタシからは見えないなんてさ。<br>追い抜きたくても、かないませんし?<br><br>……せめて振り返らせたかったんだよね。<br>こっちを見ろ、って……。<br>ちっぽけだけど、勇気出してさ。<br><br>――けど、まだ届いてない。<br>アタシが積み重ねてきたもの。<br>アタシが望んでいたこと。<br><br>だから、このダンスで……<br>アンタに刻みつけてあげるから!"}, {index="30139",text="慣れない舞踏会で手持ち無沙汰になり、<br>バルコニーへ足を向ける。<br>……先に夜風を楽しんでいた<br>メジロマックイーンと目が合った。<br><br>「貴方も休憩にいらしたのですか」<br><br>パートナーを見つけられず、<br>ダンスの輪に入れなかった。<br>そう正直に答えてしまえばいいものを、<br>苦笑いでやり過ごしてしまう。<br><br>「……もしや……貴方も、引く手あまたの<br>お誘いから逃れてきたとか……?」<br><br>これ幸いと力強くうなずいた。<br>彼女の前では情けない姿を見せたくない。<br>出所の知れない虚栄心に支配され、<br>いたたまれず視線を外してしまう。<br><br>「……戻りますわよ――」<br><br>「――戻って、私と踊ってくださいまし」<br><br>返事を待たずに、メジロマックイーンは<br>歩き出す。1度だけ振り返って、<br>キリッと強くにらみつけられてしまった。<br>慌てて小走りで追いかける。<br>少しだけ彼女の足取りが速くなり、<br>少しだけ弾んでいるように見えた。"}, {index="30140",text="流れる水のようなステップ。<br>優雅で……繊細……。<br>ですが、私にはわかります。<br>歓声を独り占めにする貴方の柔靭な脚は、<br>これで満足していないことを。<br><br>「マックイーン、いい感じ!<br>ライバルたちの視線が熱いよ~!<br>ふふん、ベストデートは間違いなしだね!」<br><br>「もう高ぶっていらっしゃるのですね。<br>テンポが速くなっていますわよ」<br><br>「だってさぁ、このままじゃ――」<br><br>「ベストデート“しか”取れない。<br>そう仰りたいのでしょう?」<br><br>「へへっ、そういうこと!<br>ボクたちはもっと上を目指さなきゃ!<br>ほら、ついてきなよ……!」<br><br>呼吸を近づけて、優しく、優雅に。<br>まるで大空を舞う翼。ですが――<br><br>「――足りませんわ。私にも誇り……<br>目指すべき頂点がございます。<br>さらに、高みへ参りますわよ……!」<br><br>「あはは! それでこそマックイーン――<br>それでこそボクのパートナーだよ!<br>証明しよう! ボクたちが<br>“史上最高のデート”だ、ってね!」"}, {index="30141",text="ミホノブルボンは食事を開始する。<br>効率的なエネルギー補給のために。<br>かんぴょう巻きを一定速度で<br>黙々と口に詰め込んでいたのだが――<br><br>「ブルボンさんの作った<br>かんぴょう巻きは美しいですね。<br>完璧な円柱形です」<br><br>「均等な力加減に注意して巻きました。<br>よろしければ、お1つどうぞ」<br><br>「ありがとうございます。いただきます」<br><br>「ブルボンちゃん、<br>よかったら私のテリーヌと交換しない?」<br><br>「私のからあげも食べてみてください!<br>定食屋さんをやっている両親直伝です!」<br><br>「私が爆速で作ったサンドウィッチも、<br>ぜひ!」<br><br>「……皆さん、ありがとうございます」<br><br>料理を受け取ったミホノブルボンは、<br>静かに微笑む。<br><br>(今のやり取りにより、<br>特別なエネルギーの充填を感知しました)<br><br>(皆さんにも、ステータス『楽しい』を<br>獲得してほしい。<br>ただ、私に実現可能かは不明……)<br><br>ミホノブルボンは思わず口を引き結ぶ。<br>――しかし、他の4人を見て、<br>再び頬を緩めた。<br><br>「このエネルギーに大事なのは、<br>……現在の『素直な笑顔』だと推測。<br>ミッション『元気をお返しする』を<br>開始します」"}, {index="30142",text="サクラローレルはパスを受けた刹那、<br>幼少期を思い返した。<br><br>体が弱かった彼女は激しい運動に交ざれず、<br>いつも見学。<br>枠線の外にいて、転がって来るボールを<br>笑顔で手渡す日々だった。<br>ずっと、みんなと一緒に走り回ることに<br>憧れがあった。<br><br>そして今日、彼女は知った。<br>信頼し合う仲間とプレイすることは、<br>こんなにも心躍るものなのだと。<br><br>サクラローレルは力強く地面を蹴り、<br>天高く跳躍する。<br><br>「このチームで――勝ちたい!!」"}, {index="30143",text="親愛なる相棒へ――<br>幼い頃、私と貴方はいつも一緒でしたね。<br>病気で走れなかった私を、<br>貴方は遠くへ運んでくれました。<br>自分の力でどこまでも行けるのが嬉しくて、<br>夢中でペダルをこぎ続けたあの頃……。<br><br>ある時は、走破不能と言われた高台に<br>一緒に挑戦しましたね。<br>永遠に続くと思われた坂道を、<br>何度も挫けそうになりながら登り切り、<br>見下ろした海の美しさといったら……。<br>あの経験に私は今も支えられています。<br><br>そして今日。仲間と努力し続けたことで、<br>美しい光景を見ることができました。<br>照明で照らされたステージ。<br>激しく振られるペンライト。<br>たくさんの笑顔と歓声。<br><br>かつて貴方と見た高台からの景色と<br>同じくらい眩しかった。どちらも、<br>私1人ではたどり着けなかった光景です。<br><br>私をここまで運んでくれたのは、<br>間違いなく貴方です。<br>また一緒に、見たことがない景色を求めて、<br>旅に出ましょう。"}, {index="30145",text="ここはトレセン学園――<br><br>ときに、ぱかっとして<br>ときに、ゆるっとした歴史を持つ<br>別世界の名前と共に生まれ、<br>その魂を受け継いで<br>のんびりと青春を駆ける……<br>それが、彼女たちの日常?<br><br>雷が落ちる日もあれば、<br>人知を超えた事件が起きる日もあれば、<br>なんにも起こらない日もあるかもしれない。<br>それが――彼女たちの日常!?<br><br>さあ、今日はどんな日になるかな?"}, {index="30146",text="『想駆』スタート地点。<br>そこからも『想撚』――<br>『蹄板』が燃え、火の粉になって<br>空へのぼっていく様子はよく見えた。<br><br>「オグリ、なにお空見つめて<br>ボーっとしとるんや?<br>もうすぐウチらの『想駆』の番やで?」<br><br>「いや、ふと……<br>私もいつか『蹄板』を書いて<br>誰かに想いを預ける日が<br>来るんだろうな――と思って……」<br><br>「……その時の自分は<br>いったいどんな想いを<br>『蹄板』に書くんだろうか?<br>そう思ったら色々考えてしまって……<br>でも、考えても全然わからないんだ」<br><br>「ははっ、そら今いくら考えても<br>なんもわからんやろ!<br>なあイナリ?」<br><br>「あたぼーよ!<br>明日のためにあたしらができるのは、<br>今できることを全力でやることだけさ!」<br><br>「せやな! むしろ<br>『蹄板』に、こう書くために頑張るで!<br>くらいの気持ちで走ってけばええやろ!」<br><br>「『蹄板』に書くために――……ああ、<br>タマとイナリの言う通りだ」<br><br>そうだ、いまはただ走ろう。<br>この目の先にある<br>ゴールだけを目指して――<br><br>いつか来る『その日』には<br>なるべくたくさんの『ありがとう』を<br>『蹄板』に書けるように――"}, {index="30147",text="(わああああああーーっ!!)<br><br>今日の曇天も晴らしてしまうほどの歓声が、<br>彼女に降り注ぐ――<br><br>それは、雨のような優しいものではなく、<br>この会場の熱気全てが声となり、<br>ターフに立つ彼女を殴りつけるかのようだ。<br><br>いつものレースとどこか雰囲気が違った、<br>闘諍のように熱を帯びた激しいレース。<br><br>常に最強を求め、憧れを追い続けてきた<br>ジャングルポケットが証明した。<br><br>最強の称号を手に入れるのは、<br>最後まで立ち続けたものだ――<br><br>「うおおおぉおーーー!!」<br><br>喝采を浴びながら、<br>彼女は、空を裂くように咆哮する。<br><br>(わあああああーーーーーっ!!!!)<br><br>まだ、歓声は止まない。<br>新時代の扉をこじ開けた彼女の創るレースは<br>強すぎるほどに人の心を惹きつける――"}, {index="30148",text="佳き日、佳き時。<br>色彩を束ねるリボンに触れ、<br>くるくると指に巻きつけて誰かを待つ。<br>やってきた足音は、<br>いつもより楽しげで、おかしくって。<br><br>「なにはしゃいでるのよ。<br>本当に……バカね」<br><br>ベールの隙間から覗いたのは、<br>喜びをたたえた満面の笑顔……。<br><br>「もう、なんでアタシより喜んでるわけ?<br>……勝負服とエンゲージする<br>だけなのに……ふふっ」<br><br>気持ちはわかってあげられる。<br>今日のアタシは1番輝いているもの。<br>けど、アンタは知っているはずよ。<br>……まだまだ、こんなものじゃない、って。<br><br>そう……今日は佳き日、佳き時。<br>シャーベットカラーを翻すのは一瞬だけ。<br><br>「最高の笑顔はとっておきなさい。<br>……アタシたちのゴールはまだ先よ」"}, {index="30149",text="とうとう、ここまで来ましたね。<br>はなまる5つあげましょう。<br>大きいはなまる、小さいはなまる、<br>ドドンと取りそろえましたので。<br><br>いろいろあって、いろいろしましたね。<br>親しき中でも仁義なきレース。<br>マーちゃんのコミカライズは<br>ミリオンに迫る勢いを記録しました。<br><br>あ、差し上げたマーちゃん人形は<br>達者でやっていますか?<br>まだまだ後が控えているので、<br>場所の確保をオススメします。<br><br>指を折って振り返れば、<br>両手じゃ足りなくなってきました。<br>そのうち、足の指を入れても<br>足りなくなるでしょうね。<br><br>……おやおや?<br>狩人さんにつままれたお顔。<br>むむっ、忘れてしまったのですか。<br><br>それは残念、はなまる没収になります。<br>消しゴムでゴシゴシ……<br>簡単に消えてしまいました。<br><br>でもご安心を。<br>また小さいはなまるから始めるだけです。<br><br>大丈夫。あなたとわたし。<br>新しい思い出になあれ。"}, {index="30150",text="「あーあ、こいつでカッ飛ばせれば<br>あとは言うことねーんだけど」<br><br>ウオッカが抜けるような青空を<br>恨めしそうに睨む。<br>とっくにエンジンは暖まっているらしく、<br>地団駄でも踏みかねない様子だ。<br><br>「……へへっ、このまま走り出しちまうか!<br>着の身着のまま、って感じでさ!」<br><br>「ある時は海沿いをタンデムして、<br>水平線を横目に流して。<br>ある時は夜空の下で、排気音だけを<br>響かせてどこまでも突っ走って――」<br><br>その時、教会の鐘が一帯に響いた。<br>夢想の旅に終わりを告げる音色。<br>ウオッカは空から視線を外し、<br>ニカッと歯を覗かせた。<br><br>「――ま、夢物語ってヤツだな。<br>今は追いかけてーもんがありすぎて、<br>現実【こっち】に全力だしよ」<br><br>「……よし、決めた!<br>いつかぜってーやってやろう。<br>今のまんまの変わらない俺たちで」<br><br>「何でもない日に、<br>何でもないとこへ行って――<br>バカみたいに笑うんだ。<br>……約束な!」"}, {index="30151",text="だってね、ずっと楽しみだったの。<br><br>見上げるたびに、隣にいて。<br>笑うと、笑い返してくれて。<br>嬉しくなって手を引くと、<br>仕方ないなって下がるまゆ。<br><br>もっと見てたいの。もっと遊びたいの。<br>でもね、まぶたが……おもたいの……。<br><br>「マヤ、次はね……夜ふかしの練習……<br>してくる……から……」<br><br>……デートの続きは、夢の中で。"}, {index="30152",text="――劇的過ぎた。<br>レースというよりむしろ……<br>歌劇を見ているようだった。<br><br>歓声が、喝采が、<br>うねり、あわさり、歌となる。<br><br>そうこれは、全八幕の一大叙事詩。<br>それはまさしく<br>大団円【グランドフィナーレ】――<br><br>「今、此処に改めて宣言しよう!<br>ボクこそが“世紀末覇王”であると!!」<br><br>嗚呼、歌が聞こえる。<br>成し遂げし者を讃える歌が、<br>世紀末覇王を讃える歌が――!"}, {index="30153",text="この夜が一生続けばいいと思った。<br>波になでられた砂浜はキラキラと光り、<br>昼間のビーチとは違う場所のようだった。<br><br>海と星のように、<br>交じり合うことのない青と黄色は、まるで、<br>この夜を1杯すくってきたようだった。<br><br>2人をイメージしたモクテルは、<br>ぱちぱちと炭酸を弾かせて――<br><br>騒がしく賑わっていたはずの海も、<br>今は落ちた月灯りをあやす様に波を揺らす。<br><br>いつも、<br>誰よりも輝いていなきゃって思っちゃう。<br><br>でも、アンタとなら、<br>アタシのままで……。<br><br>潮騒の中、<br>目に映る親友の笑顔は誰よりも優しく映る。<br><br>この夜の月は、<br>太陽のように2人を温めた。"}, {index="30154",text="まあ、海に行った時の写真ですの!<br>パラセーリングをなさったのですね。<br>すごく楽しそうですわ。<br><br>そうそう!<br>海が透明で空から見えた魚も<br>宝石みたいにキレイだったんだよ!<br><br>イルカもグライダーに触りそうなくらい<br>高くジャンプしてて!<br><br>ヘリオスが大騒ぎするから、<br>カモメが集まってきてさ。<br><br>うふふっ、それにしましても……<br>よい顔をされていますね、パーマー。<br><br>無邪気で、重力を忘れて舞う海鳥のように<br>自由な笑顔……。<br><br>あはは……うん、勇気出して飛び立ったら<br>広がってたよ、自由が。<br><br>ふふっ、ところでこの写真、<br>どのようにして撮りましたの?<br><br>ヘリオスがカモメにスマホを盗られてさ~、<br>でもヘリオスって誰でも仲良くなるでしょ?<br><br>最後にはカモメに返してもらってさ~、<br>そしたらこんな写真がいくつも撮られてて。<br><br>何者ですの!?<br>カモメもヘリオスさんも……!?"}, {index="30155",text="教室の女の子たちが<br>ファッション誌を見ながら談笑してる。<br><br>今日もそんなクラスメイトたちを<br>教室の端から眺めてる。<br>私だって本当は興味がないわけじゃない。<br><br>実際、インフルエンサーに憧れて<br>こっそりSNSもフォローしてる。<br><br>でも、自分なんかが<br>踏み込める場所じゃない気がして<br>今は見てるだけ。<br><br>踏み込んだとして、急に変わった自分を<br>みんながなんて思うか――<br>『流行に流されてる』『背伸びしてる』<br>そんなことばかり考えてしまう。<br><br>(ぴろんっ♪)<br><br>お気に入りのインフルエンサーの<br>SNS更新をスマホが知らせる。<br><br>「あれ……? えっ!?<br>これってヘリオスさん!?」<br><br>いつも明るくて陽気なヘリオスさんの写真。<br>でも、今日は違う。<br>大人っぽくて、いつもと違う姿――<br><br>『いつもと違うウチ!<br>気分変わってアガるー!』<br><br>いつもの、じゃない、<br>爽やかで、艶っぽいヘリオスさんの表情。<br><br>変わることを楽しむ、そんな心が伝わる。<br>いつもと違う自分を人に見られること。<br><br>それって、ちょっと怖いことだと思ってた。<br>私も、少しだけ変わってみようかな……。<br>ほんの僅かでいい、小さいことから……。<br><br>目線を上げると、クラスメイトたちは、<br>雑誌をめくりながら<br>ウマスタ特集を見て盛り上がっている。<br><br>「ねえ、その雑誌……一緒に見てもいい?」"}, {index="30156",text="……たしかに楽しいことばかりじゃ<br>なかったねぇ。<br>でも、楽しいことばかりの物事なんて<br>そうはないでしょう?<br><br>追い抜かされることも、<br>比べられることも……。<br>物事を突き詰めようとしたら、<br>それがどんなに好きなことでも苦難はある。<br>折れたら、はい、おしまい。<br>でも、それじゃ面白くないでしょう。<br><br>大切なのはね、続けること。<br>続けていたら、きっといいことがある。<br>嬉しいことや楽しいこともあるし、<br>そうなれば面白くもなるよ。<br><br>諦めずに走り続ければ。<br>泥だらけになったって、走り続ければ。<br>4度の曲がり角にも、負けない。<br>最後の直線でだって、きっと勝てるの。<br><br>ほら、今日のあたしみたいにねぇ。"}, {index="30157",text="……すくってもらったのだ。<br>私の息する世界ごと、<br>あの温かな手のひらで。<br><br>誰にも理解されなくていい。<br>私の世界は、他人が思うほど、<br>ほの暗くも冷たくも寂しくもない。<br>だから、誰も私の邪魔をしないで。<br>私はここでしか、息ができない。<br>苦しくなってしまうから……。<br><br>あの手のひらは私の世界から<br>私を連れ出そうとはしなかった。<br>私の世界がひとつもこぼれないように<br>そっと包んでくれた。<br><br>今日も私はこの世界で息をする。<br>そして、眩い光を見る。"}, {index="30158",text="ん? なに見てんだ?<br>あ! これビーチパーティーの時の<br>写真じゃねえか!<br><br>楽しかったよなあ~!!<br>ビーチバレーで盛り上がって、<br>BBQで食いまくって、<br>海に沈んでく夕日を見た後は<br>花火でブチ上がって!<br>最後にみんなで星を見上げてさ!<br>タキオンとカフェもクソ笑ってたよな。<br>あーもう1回やりてえー!<br><br>……ん?<br>アハハハ! そんな顔すんなって~!<br>たしかにビーチパーティーは<br>終わっちまったけどさー。<br>サイコーな思い出作りは<br>アレで終わりじゃねえだろ?<br><br>カマしてこーぜ!!<br>夏だけじゃねえ、春も秋も冬も!<br>これからくる、ぜーんぶの季節でさっ!!"}, {index="30159",text="ああ、お疲れ様。楽しめているか?<br>……私か?<br>ふ、見ての通りだ。<br>自分がここまで開放的になれるとは、<br>正直思っていなかった。<br><br>知らない自分に出会う。<br>かけがえのない誰かに出会う。<br>そんな奇跡のようなことが<br>簡単に起こるのは、<br>『この季節』ならでは<br>なのかもしれないな。<br><br>そうだ、乾杯を忘れていたな。<br>この季節に……この出会いに、乾杯。"}, {index="30160",text="「やよい。覚えているか?<br>幼い頃も、こんなふうに<br>2人で星空を見上げたこと」<br><br>「旧懐。星に願いをかけたな。<br>夢が叶うようにと」<br><br>「だが……<br>どれだけ強く願っても、努力しても<br>叶わないこともある。それが夢だ。<br>酸いも甘いも知った今ならわかる」<br><br>「だからこそ、この経験を次に繋げる。<br>ロンシャンの芝2400mを<br>誰よりも速く駆け抜ける、<br>世界一のウマ娘を育ててみせる」<br><br>「宿願――今度の夢は叶えよう。<br>星を頼りにせずとも、我々と<br>今代のウマ娘たちの力で」<br><br>「ああ。必ず成し遂げる。<br>……共に見よう。<br>今まで日本のレース界が<br>見ることの叶わなかった景色を。<br>新時代到来の瞬間を――」"}, {index="30161",text="見上げた空は快晴。<br>踏みしめた地面は重いけれど、関係ない。<br>飛びたい、今日この場所で。<br><br>スタート位置についたら、<br>気持ちは自然と落ち着いた。<br>思い出す。ここに来るまでを。<br>ここに立たせてくれた人たちを……。<br>――ただ1つの栄冠を獲りに行く。<br>この夢はもう1人だけの夢じゃない。<br><br>誰よりも前へ。<br>誰も追いつけない所まで。<br>誰も届かなかった高みを目指して――<br>今日この場所で、飛んでみせる。"}, {index="30162",text="パーティー会場は騒がしい。<br>私は独りで構わないから、<br>隅のほうで静かにしていたいのだけれど――<br><br>「アヤベさ~ん!<br>よかったら、一緒にまわりませんか?<br>ぜひ! お願いしますっ!」<br><br>こんなはずじゃなかったのに……。<br>いつも正しく光る北極星のような<br>彼女に手を引かれて、<br>明るくて賑やかな会場の真ん中へ。<br><br>思えばこの学園ではいつもそう。<br>明るくて、うるさいほど賑やかで、<br>気づくと誰かが隣にいる。<br><br>「みんなの笑顔を1枚……<br>記念撮影ですって!<br>あははっ、ぎゅうぎゅうですね!<br>くすぐったいですか?<br>アヤベさんも?<br>私もです、ふふっ!」<br><br>この学園にはいつも笑顔があふれている。<br>きっとこの先もずっと――"}, {index="30163",text="『まさかの一発』を狙ってくってぇなら……<br>ま、ナカヤマフェスタだな。<br>そういう感じだろ? あのウマ娘はよ。<br>どうせ見果てぬ夢なんだ。<br>叶えるなら、<br>より夢らしい方、面白い方、度肝抜く方……<br>『そういう方』に期待した方が<br>楽しみがいがあるってもんよ。<br><br>――なーんて、<br>レース前は冷めたフリして<br>海千山千ぶってたけどな……。<br><br>いやはや、<br>いざ本当に『それ』を<br>目の当たりにすると<br>人間、ろくな言葉なんて<br>出てきやしねぇ。<br><br>来た! 行け……!!<br>まさか……<br>ついに、この夢を叶えてくれるのか……!?<br>どうか、どうか……!!<br><br>――がんばれ!!!!!<br><br>『そうだ、それでいい。<br>勝負はまだまだここから――』<br><br>『余計なことは全部忘れて<br>空前絶後の夢を見な!!』"}, {index="30164",text="中山の乾いた芝に、怪物の末脚が伸びる。<br>2500mの戦場、そのクライマックスを<br>猛々しく、ねじ伏せるように、圧倒的に。<br><br>それは何者をも寄せつけぬ走り。<br>あまねく心を打ち砕く脅威。<br><br>もう届かない。<br>もう太刀打ちできない。<br>誰もがそう悟るほどの威容。<br><br>だが。<br><br>「――まだだよ」<br><br>後方から、ひとつの影が追い迫る。<br>力強い踏み込みで必死に並びかけ、<br>前行く怪物の背を掴みにかかる。<br><br>決して挫けることのない心。<br>前だけを見据え続ける瞳。<br><br>――ゆらり、不屈の魂がくゆる。<br><br>「さぁ……タイマンだ!」"}, {index="30165",text="「さあ、魂の複写機の前で整列せよ!<br>俺たちのクラウ・ソラスを<br>大祭で掲げるために!」<br><br>「Yes Ma'am!<br>ならアタシが真ん中だな!」<br><br>「私はその隣ね!<br>ほら、クリスもおいでよ」<br><br>「――わかった」<br><br>「オイ、オレをうるせェので挟むな」<br><br>「いや、俺はそこに君臨しない。<br>幻影となり貴様らを覆うのだ!<br>賢者は俺の虚像を創造する運命にある!」<br><br>「……だりィ」<br><br>「ふふっ、みんなバラバラ。<br>変わった集まりだよね♪<br>でも、だから楽しいのかも」<br><br>「そう、個性あふれる愉快な一味さ!<br>『フォルトゥーナの喝采』より、<br>『バラバラ劇団』のがお似合いかもな!」<br><br>「ほう、改変を目論むアンチテーゼか。<br>名を賭けるのならば、相手になろう!<br>反逆の使徒に鉄槌を下してやる!」<br><br>「いいから早く撮れ!!」"}, {index="30166",text="シナリオを書き上げるなんて<br>大それたこと、アタシにはできない。<br>きっと明日になれば、それまで書いた<br>ストーリーよりもいいものを見つけちまう。<br><br>だからアタシは原稿用紙に向かうより、<br>紙で折った船に飛び乗るのさ。<br><br>躍り出た大海原、何もない水平線。<br>やることは1つだ! 歌って笑おう!<br><br>どこかで誰かと交わった時は楽しく乾杯だ!<br>それが人生の醍醐味ってやつだろう?<br><br>結末になんて向かってやるもんか。<br>Weave an endless story!<br>アタシはアタシの物語を突き進むのさ!"}, {index="30167",text="「ねえ、クリス。<br>顔のキズって本当にメイクだよね?<br>すっごく本物っぽいけれど……」<br><br>「――これはシールだ。<br>このとおり――簡単に……剥がせる」<br><br>「わぁ~、すごい! 私もつけてみたいな♪<br>ちょっとお借りしてもいいかしら?<br>これをこうして……っと」<br><br>「……うっ……うぅっ……どうして?<br>どうして私は作り物なの?<br>私も、みんなと同じがいい。<br>だから、お願い……クリス――」<br><br>「む……。どうした――大丈夫か?」<br><br>「アナタノイノチヲチョウダーーイ!!」<br><br>「ファイン……!」<br><br>「あははははっ! ごめんね♪<br>でも、ハロウィンっぽかったでしょう?」<br><br>「……そうだ!<br>他のみんなにもやってみようっと♪」<br><br>5分後、特にエアシャカールには強く<br>叱られたファインモーションなのだった。"}, {index="30168",text="(前奏)<br><br>ハァ~~~~ ヨイショ エイヤサ<br>どんぶら船ふね 船が出る<br>でっかいアタシの宝船<br><br>夢と黄金 積んでは漕いで<br>行き先よいよい 波に聞け<br>ハァ ドッコイ<br><br>暴れ大だこ 音に聞け<br>カサゴのご婦人 目にも見よ<br>沈まぬ船が 今ゆくぞ<br><br>(☆)ゆくぞ ゆくゆく 黄金船が<br>荒波うずしお 乗りこなせ<br>舳先で見るは 終わらぬ夢さ<br>ハァ ソイヤ ソイヤ<br><br>どんぶら船ふね 船はゆく<br>でっかいみんなの夢の船<br><br>世界一周 ちょちょいのちょいさ<br>月面着陸 朝飯前だ<br>宇宙【そら】になびけよ 大漁旗<br><br>(ラップ)お祭り 大博打<br>しょせん ロマン主義<br>アタシの ソーラン節 の敵じゃねえや<br>とるぜ世界一 いくぜメガ花火<br>どっどど どどうど どどうど どどう<br><br>(☆)くりかえし<br><br>ハァ ソイヤ ソイヤ<br>ハァ ソイヤ ソイヤ……<br>(フェードアウト)"}, {index="30169",text="「くぅ……あと少しで出番だ~っ!<br>緊張しないの、テイオーちゃん?」<br><br>「そりゃ、ちょっぴりドキドキするけど……<br>ボクもツルちゃんも、ゼッタイ大丈夫。<br>稽古の通りなら、拍手喝采だって!」<br><br>「ハ、ハートが強いね……。<br>私はなんだか、レースと違うゾワゾワが……<br>うう、落ち着かないっ!!」<br>(バサバサッ!)<br><br>「ああっ! ツルちゃん、暴れちゃダメ!<br>着付けしてもらったんだから!」<br><br>「あ、頭が真っ白になっちゃってさ!<br>ほっぺも固くなってきてる気がするし……。<br>ほぐれろ、ほぐれろぉっ!」<br>(ペチペチッ!)<br><br>「わっ、今度は白粉が……!<br>ツルちゃん、もう動くの禁止!<br>ほら、ボクと一緒に、深呼吸!」<br><br>「ふへ……しん、こきゅう……?」<br><br>「役を考えて、ボクと合わせて――<br>すぅ――はぁ――」<br><br>「すぅ――はぁ――<br>リラックスして……神秘的に……<br>ゆったりと……不思議な微笑みで……」<br><br>「……うんうん! その表情だよ!」<br><br>「……ふふっ。<br>『踏み込みし足元も甘きこと』――どう?」<br><br>「――『ああ、左の手元もおろかなり』!<br>えへへ、ボクと舞うならそうでなくっちゃ!<br>さあ、出番だよ!」"}, {index="30170",text="まずは軽く顎を引くこと。<br>天に向かい、首筋、すっと伸びるように。<br><br>手をかざすときは、穏やかに。<br>遠く、岩上の鳥を見やるように。<br><br>体の芯は、風雨の中の竹。<br>しなやかなれど、根は毫もぶれない。<br><br>そして、扇は手ならざる手。<br>指、中骨、扇の先まで、油断せずに。<br><br>「――ここまで、理解できて?」<br><br>私の言葉は、<br>あなたに根を張り、あなたに息づく。<br>あなたが舞うときは、<br>私もまた、心の中で舞っている。<br>だから――<br><br>『弟子よ、我が弟子よ。<br>稽古のときである。こちらへ参れ』<br><br>あなたに、託すの。"}, {index="30171",text="――今年もまた、駿大祭がやってきた。<br>舞台を狭しと舞うウマ娘たちに心奪われ、<br>以来、何年も欠かさずに見続けている。<br>さて、今年はどんな『奉納劇』を――<br><br>『――わははっ、楽しや、楽しや!』<br><br>「はぁっ――!?」<br><br>仰天した。<br>自分が知る演技ではなかった。<br><br>台詞回しのおぼつかなさに、<br>芝居に漂う子どもっぽさ。<br>幾度も見てきた『奉納劇』とは、全く違う。<br><br>「ま……まるでなっとらんっ……!」<br><br>現代風のアレンジか、それとも即興か。<br>どうあれ、自分には受け入れがたい。<br>肩を落とし、足が出口に向いた――<br><br>『ああ、楽しや~、楽しや~♪』<br><br>だが。<br>あの子の剣舞はどうしてなかなか、<br>頭から離れない。<br>例年とは比ぶべくもない、なのに、なぜ。<br><br>逡巡した後にゆっくりと振り向けば、<br>ちょうど見せ場を迎えていた。<br>真剣な目つき、額に浮かぶ玉の汗。<br><br>『師の芸継げずとも、<br>斯様な楽しび授けたもー師の、<br>いみじう素晴らしきこと!』<br><br>しっかり握られた剣が、心地よく空を切る。<br>振り向いた笑顔は、まさに満開の桜で――<br>その瞬間、自分の子供時代が頭をよぎった。<br><br>でたらめでも懸命だった、幼き日々。<br>その一瞬一瞬が、地層のように降り積もる。<br>昔の自分が、やがて目の前の娘と被り――<br><br>「なるほど、だからこの子が」<br><br>舞と囃子に心を委ねる。<br>なんだか、明日は別の誰かが<br>この子に元気を分けてもらう予感がした。"}, {index="30172",text="『本日の野球観戦、お疲れ様でした』<br><br>>お疲れさま!すっごく楽しかったよ!<br>>(ありがとう!スタンプ)<br><br>『それはなによりです』<br><br>『途中、少々はしたない姿を<br>お見せしてしまったかと思いますが、<br>あれは本日の試合が<br>あまりに熱かったためでして。<br>なにしろ9回裏6点ビハインドからの<br>追い上げだなんて、<br>そうそう見られるものではありません』<br><br>『と、私はあまり詳しくはありませんが<br>近くの席のおじさまが仰っていました』<br><br>『特に同点のランナーの決死の盗塁、<br>そしてその後のセーフティスクイズは<br>痺れました。<br>プロ野球であれを仕掛ける度胸と<br>成功させる技量。あっぱれです』<br><br>>なるほど、たしかに!<br>>(勉強になりますスタンプ)<br><br>5分後……。<br><br>『先ほどは長文を失礼いたしました。<br>とにかく、非常に有意義な時間でした』<br><br>『機会があれば、またぜひ。<br>あまり詳しくはありませんが、<br>私でよければお付き合いしますので』<br><br>『(ヴィクトリーズ球団最高!スタンプ)』"}, {index="30173",text="ターフと言う名の五線譜に<br>刻まれていく蹄跡【メロディー】。<br><br>「ふふ……このレース、<br>正にエズルタツィオーネ!」<br><br>それが彼女の見つめるもの。<br>それが彼女の愛するもの。<br><br>Obbligato?<br>Accompagnamento?<br>――役割はなんだっていい。<br><br>「さぁ! セッションの始まりだ!」<br><br>重ねられた蹄跡を、ただ楽しもう!"}, {index="30174",text="今夜は『メジロ・クリスマス・ナイト』……<br>あたしを含めたメジロのウマ娘が、<br>メジロを応援してくれるみんなに用意した、<br>特別な夜――<br><br>「め、『メジロ・クリスマス・ナイト』へ<br>ようこそ! 受け付けはこちらです!」<br><br>「え……アタシと写真、ですか……!?<br>……は、はい、わかりました……<br>…………に、にこっ」<br><br>だから、人前が苦手なはずのドーベルも、<br>たくさんの勇気を振り絞って、<br>来賓の方々の対応をしてくれていた。<br><br>「うん、すごいよドーベル……<br>頬筋はまだちょっと固いけど、<br>丁寧な受け答えができてる!」<br><br>ドーベルをこっそり見守り始めた当初は、<br>あの子が大変な思いをしていないか、<br>心配してしまったけど……<br>これなら、あたしが持ち場を離れる必要は<br>なかったのかもしれないな……。<br><br>「素敵な夜ねえ……メジロ家から、今年は<br>こんなプレゼントが頂けるなんて……」<br><br>「……いいクリスマスになるよう、<br>みんなで精一杯、準備してきました。<br>ちょっとでも、楽しい思い出にして<br>いただけたら、嬉しいです」<br><br>初対面の貴婦人にも物怖じせず、<br>ドーベルは自身の言葉で想いを語る。<br>……いつの間にか、あたしの大頬骨筋が<br>ふっと緩んでしまっていた。<br><br>そうだ。ドーベルはそうだった。<br>あの子は、誰かのために、<br>みんなのためにを想った時にこそ――<br><br>一歩踏み出す勇気を出せる、<br>優しい子だから。<br><br>「……頑張ってね、ドーベル!」"}, {index="30175",text="「ラモーヌ様。昼食の用意が整いました。<br>……ラモーヌ様?」<br><br>……ノックをしてもご返事がない。<br>失礼を承知で、私はロッジの扉を開ける。<br><br>ラモーヌ様は絵を描いていた。<br><br>私では理解できない――<br>余人に理解させる気のない抽象画。<br><br>メイド仲間から聞いたことがある。<br>ラモーヌ様は昔、脚が弱く、トレーニングに<br>参加できない冬の時間を過ごされたという。<br>その際に描かれていたのが、抽象画。<br><br>気炎を、<br>陶酔を、<br>焦熱を、<br>憂鬱を――<br><br>思うままキャンバスに叩きつけた<br>彼女の作品は、ラモーヌ様と同様、<br>えも言われぬほどに美しかったという。<br><br>では、なぜ。なぜ彼女は今になって、<br>再び筆をとったのだろうか――<br><br>「……あの頃には、遠く及ばない。<br>けれど、それもそうよね――<br>今は、私の愛に会いに行けるのだから」<br><br>……意味もわからず息を呑む。<br>何に圧倒されているのかもわからないまま、<br>私はただ、美しい彼女に見蕩れていた。<br><br>「雪が止んだわ。<br>愛を、語らいましょう」<br><br>ラモーヌ様はそれだけ呟くと、<br>静かに部屋を出ていく。<br>……そうして、あとに残されたのは、<br>するべき仕事を全うできなかった私と、<br><br>――白いキャンバスに彼女が描いた、<br>青々とした新緑だけだった。"}, {index="30176",text="クリスマスも間近の、ある日のこと――<br><br>「う~ん、これだけ品揃えがあると、<br>どれにしようか迷ってしまいますね~」<br><br>「たしかに……ライアンならどんなものでも<br>喜んでくれそうだけど……どうせなら、<br>もらって本当に嬉しいものがいいよね」<br><br>「でしたら、蹄鉄などいかがでしょうか~?<br>昔、ライアンお姉さまが、わたくしの<br>蹄鉄選びに、のんびり付き合って<br>くださったことがございまして~」<br><br>「なので、今度はわたくしが。<br>ライアンお姉さまの蹄鉄を、<br>じっくり選んで差し上げたいのです」<br><br>「そっか。ブライトが決めるまで、待ってて<br>くれたんだ……ふふ、ライアンらしいな」<br><br>「……アタシも小さい頃、雷の夜に、<br>手を握っててもらったことがあってね。<br>ライアン、夜ふかしキライなのに、アタシの<br>ために、ひと晩中起きててくれてさ……<br>ああいうとこ、敵わないなぁって思うんだ」<br><br>「なにをあげたら、恩返しになるのかな……<br>快眠グッズとか? でもライアン、<br>寝つきはいい方だと思うし――」<br><br>『閉店30分前になりました。お客様の<br>またのご来店を、心待ちにしております』<br><br>「え、もうそんな時間!?<br>……えっと、どうしよう……<br>思ってた以上に決められない……」<br><br>「それでいいんですのよ、ドーベル。<br>感謝を伝えるには、時間も使わなくては。<br>でないと、このありがとうの気持ちを<br>伝えきることはできませんわ~」<br><br>「……ふふ。ブライトの言う通りかも。<br>じゃあまた明日、いろいろ見て回ろっか」"}, {index="30177",text="ヴィブロスが駆けだす。<br>記者たちはもっと話を聞きたいと思ったが、<br>彼女がこの場でじっとしていないのも<br>当然だとすぐに気づき、苦笑した。<br>疲労でいっぱいのはずの足取りが軽い理由、<br>それが彼女の視線の先に見えたからだ。<br><br>「ねえねえお姉ちゃ~~~んっ!<br>ゴールするとこ見てたよねっ!?<br>1着だよ1着!<br>私、ほんとに勝ったんだよっ!」<br><br>真っすぐ自分目がけて駆け寄ってくる<br>無邪気な妹を、ヴィルシーナは<br>万感の想いで出迎える。<br><br>「ヴィブロス……ありがとう……!<br>本当に、本当にすごい末脚だったわ。<br>私が届かなかった7cm……<br>あの先にあった景色を、<br>今日、私に見せてくれたんだもの」<br><br>「えへへ~、もっと褒めて褒めて~~~♪」<br><br>「……最近まで甘えん坊で、<br>かわいらしい妹だと思っていたのに、<br>いつの間にかこんなに強くなっていたのね」<br><br>「勝負根性で有名なお姉ちゃんの妹だもん!<br>勝つって決めたら絶対勝つよ!<br>あ、でも強くなってもかわいい妹の部分は<br>変わらないんだからねっ♡」<br><br>「ふふふっ、そうね。<br>強くてかわいいヴィブロスの活躍……<br>私ももっと見てみたいわ」<br><br>「うん!<br>私、これからもたくさん勝つよ!<br>おっきなレースでも、<br>強い相手ばっかりでも!<br>そしたらお姉ちゃん、<br>もっともーっと褒めてよねっ♪<br>ね、ね、約束♡」"}, {index="30178",text="『ドゥラメンテ、外に大きく膨らんだ!<br>これは手痛いミスっ!!』<br><br>風を切る音に交じって聞こえてくる、<br>観客の騒然とする声。<br><br>まるで自分の体が、<br>自分のものではないような感覚。<br><br>(冷静さを欠いたか……!?)<br><br>否、それとも違う。<br>緊張に呑まれるのとは別の、<br>体の底から沸き立つような衝動――<br><br>「はああああぁぁぁぁっ!!」<br><br>『外からドゥラメンテ!<br>外からなんと、ドゥラメンテー!!』<br><br>そうだ……これは私に流れる血の衝動。<br>一族の結晶としての誇り。<br>私自身が“最強”を示せと、<br>私を奮い立たせている……!<br><br>『これほどまでに強いのか!?<br>ドゥラメンテ!!』"}, {index="30179",text="花手水。<br>春の芽吹きはまだ遠い新年を、<br>鮮やかに彩る花々。<br>その美しさに、2人して<br>しばらく見惚れてしまった。<br><br>願いは花開く――小さく、あなたが言う。<br>咲かせよう、と。<br><br>手水鉢を満たすたくさんの花たち。<br>――花の数だけ、願いがあった。<br>私が歩むサトノの名のもとには。<br><br>ぽたり、ぽたりと落ちた雫が、<br>水面に波紋を描いて広がる。<br>頬を伝い落ちた、いつかの雫を思い出す。<br>咲けなかった、多くの花。<br><br>すべて、私が咲かせましょう。<br><br>一生に一度だけの、最も華々しき舞台で。<br>必ずや、願いの花を満開に。<br>この美しい花手水のように。<br><br>「はい。咲かせましょう、必ず」<br><br>あなたが力強く頷く。<br>つぼみに降り注ぐ<br>暖かな日差しのような笑顔で――"}, {index="30180",text="ウマ娘――<br>時に数奇で、時に輝かしい歴史を持つ<br>別世界の名を背負い、その魂を受け継ぐ、<br>走るために生まれてきた存在。<br><br>幾多のレースを経て、やがて<br>彼女たち自身も歴史へと刻まれていく。<br><br>「私、日本一のウマ娘になります……!」<br><br>2人の母との約束――<br>“日本一”という大志を抱き、<br>故郷を離れた少女は、ライバルたちと共に<br>レースを駆け、敗北と勝利を重ね、<br>やがてその夢を掴んだ。<br><br>「それでもボクは勝つんだ」<br><br>“皇帝”の背を追う“帝王”は、<br>幾度となく挫折を繰り返しながらも<br>諦めぬ心を奮い立たせ、<br>共に走りあった友や<br>支えてくれたライバルに向けて<br>奇跡を起こしてみせた。<br><br>「みんなが見たいって<br>言ってくれてるんです。<br>……あたしの走る姿を」<br><br>挫けぬ“帝王”に憧れた少女は、<br>約束を交わした親友と共に、<br>レースの世界へ飛び込んだ。<br><br>自らの夢に迷うこともあったが、<br>遂には在るべき姿を見つけ、<br>やがてはみんなに愛される<br>お祭り娘になった。<br><br>そして――<br><br>「あ、こっちですスペさん!」<br><br>「お、お待たせしました~!<br>気合いを入れるための腹ごしらえが<br>思いのほか美味しくて……」<br><br>「んも~、レース始まっちゃうよ?<br>――そうだ!<br>どうせだから、パドックまで競走しない?<br>ボクたちの中で誰が1番か、決めようよ♪」<br><br>「あ、それ楽しそうっ!<br>スペさん、やってみませんか?」<br><br>「臨むところですっ!<br>ここに着いたのは最後だけど、<br>今度は1番にゴールしてみせますよ~!」<br><br>『それじゃあ――よーい、どんっ!!』<br><br>彼女たちの軌跡は今も尚、続いている。"}, {index="30181",text="「次は『ソシテミンナノ』いくぞーっ!<br>みんなターボについてこーーーい!!」<br><br>「燃やせ夢の火を~<br>鳴らせゴールのこどぉ~♪」<br><br>「絶望しても前向けGO!<br>……えっと……? えとえと、<br>限界なんてふんふふんふ~~ん♪<br>ててれてれてれ~♪ ターボの逃走っ!!」<br><br>「(おや……ターボ、<br>歌詞が飛んでしまったのかな?<br>ロイスさんネイチャさん、<br>ここは私たちで!)」<br><br>「(ええ、フォローね!<br>練習中もターボさんは、AメロとBメロの<br>歌詞をよく忘れていた……。<br>そこは楽器メインでクリアする!)」<br><br>♪♪♪~~~♪~♪♪~<br>♪♪~~♪♪♪♪~♪♪<br>シャカシャカシャシャッシャカシャ!<br><br>「むむむっ、音が大きくなった!<br>もっと盛り上げろってことだな!?<br>よーーーしっ!」<br><br>「ゴーゴーレッツゴー! おーおおーお!<br>ゴーゴーレッツゴー! ターボは強い!<br>ごーごーれっつごぉー! うおーおおお!<br>いけいけごーごーターボぜんかーーい!!」<br><br>「いや、なんで声量上げた!?<br>歌詞間違ったままだし!」<br><br>「フッ……テンポアップか。いいね!<br>ターボ、君のパッションに倣おう!!」<br><br>「くっ、速い……だけどついていかなきゃ!<br>耐えるのよ、ロイス!」<br><br>「2人とも運指えっぐ! てか速い速い!!<br>そんなペースにしたら――」<br><br>「なな何回だって何度だってぇ!<br>ぜんりょくぜんかーーーーーーいっ!!<br>なな゛なんがい、だってぇ!<br>な゛んどだっでぇ……ゼェゼェ……!<br>んああああきっ、らめっ、なぁあああい!<br>ヒィー、ハァー、ゼェー……ゥヒヒヒヒ!」<br><br>「うおぉおおおおおおおおターボっ、<br>ま゛け゛な゛い゛ぞぉ゛ーーーーーっ!!」<br><br>「あああ、やっぱりー!<br>ターボにつられて全員暴走したら<br>収拾つかんてー!!」"}, {index="30182",text="目に入るのは、まばゆい光。<br>よく知る故郷の会場に、<br>見知った人々の顔。<br><br>『歌もダンスも、<br>とっても上手になったわねえ……!<br>さすがはあたしたちの看板娘だよ!』<br><br>『ああ、彼女のおかげで観光客も<br>たくさん来てくれるようになったしね。<br>本当に頼もしくて、誇らしいよ!』<br><br>温かな言葉と笑顔に、<br>目頭が熱くなって仕方ない。<br>かつては弱まっていた光が、<br>今はこんなにもきらめいて、<br>はじける笑顔で満ちているのだから。<br><br>「最後の歌です!<br>聞いてください――」<br><br>「『おいでよ、とまこまい』!」<br><br>いくら泥だらけになったって、<br>いくら足を取られたって、<br>これからもずっと走り続ける。<br><br>失いたくない場所を、その両脚で守るため。"}, {index="30183",text="ユキちゃんのお部屋から、<br>故郷のお菓子のレシピが見つかったみたい。<br>『久しぶりに作ってみるかなぁ~』<br>って言うから、アタシも見学させてもらう<br>ことになったんだけど――<br><br>ユキちゃん、めちゃくちゃ上手いんだよね!<br>早くて、器用で、すっごく丁寧!!<br><br>「すごいすごい!!<br>最後にキュッ! ってつまむのが、<br>大事なんだね!!」<br><br>「ユキちゃんってば、ホント上手っ!!<br>細かいところもきれいに作れて<br>すごいよおおおおっっ!!」<br><br>「も、もうチケゾーさんってば、<br>そンな大袈裟な~」<br><br>「けンど……ありがとがんす。<br>ほにほに嬉しいです♪<br>よーし、もうひとがんばりしますよ~!」<br><br>お菓子を作っている時のユキちゃん、<br>ホントに楽しそう!<br>その姿を見ていると、なんだかアタシまで<br>お菓子を作りたくなってくるなー。<br>エプロンと三角巾はロッカーに<br>あったはずだし――よし、作ろう!!<br><br>あとは、何を作るかだけど……。<br><br>「あっ、思いついたっ!!」<br><br>頭に浮かんだイメージを元に<br>アタシも手を動かしていく。<br>なかなかいい感じじゃないかな!?<br><br>「耳はこうして、キュッと!!<br>で、あんこを小さくちぎってぇ……<br>そーーーーっと載っけてぇ――」<br><br>「できたあああああああっっ!!!!」<br><br>「わぁっ、めンこいなぁ~♪<br>にこにこしてて、<br>優しそうなお菓子ですねぇ」<br><br>「えへへ~!<br>これはね~、ユキちゃんなんだよっ!!<br>楽しそうなユキちゃん見て<br>お菓子作りたくなったから、<br>作るんだったら、ユキちゃんにしよって!」<br><br>「じゃじゃっ!?<br>この子が、あたしですか!?<br>……そっかぁ。ほに、嬉しいでがんす」<br><br>「うんうん、その顔!<br>やっぱりそっくりだね!!」<br><br>「えへへ……。チケゾーさん、<br>あたしもチケゾーさんの顔見てたら、<br>お菓子作りたくなってきちゃいました。<br>もう1個、作ってもいいですか?<br>チケゾーさんのお菓子っ」<br><br>「ユ、ユキちゃあああああん!!<br>もちろんだよおおおおおお!!」"}, {index="30184",text=" ごあいさつ<br><br>みんなの学級委員長として、<br>日頃の感謝をお菓子に込めて贈ります!!<br>感謝、それは美しい気持ち!<br>そして、美しいといえば桜!!<br>ですので、桜の花びらの形をした<br>お菓子を作りました!<br>それはそれは美しい仕上がりに<br>なっていますよ!<br>なぜならば、美しい×美しいですから!!<br> サクラバクシンオー<br><br>一言で『感謝』といっても、<br>さまざまな形があると考えました。<br>桜の花びらのお菓子を作りたい――<br>というバクシンオーちゃんのアイディアから<br>アレンジを思いつきました。<br>5枚からなる、キレイな花びら。<br>5色からなる、さまざまな感謝。<br>箱を開けたときに目で味わい、<br>口に運んだときにもお楽しみください♪<br> ノースフライト<br><br> おしながき<br><br>一、元気に感謝<br> さっくさくなクッキー!<br> 明るい黄色が力を与えます!<br><br>二、優しさに感謝<br> とっても甘いすあま!<br> キュートな桃色が心温めます!<br><br>三、笑顔に感謝<br> もちもち柔らかなお団子!<br> 純白の人懐っこい笑顔に釣られ笑い!<br><br>四、厳しさに感謝<br> ちょっぴり硬いおかき!<br> 後からじんわり甘みが広がります!<br><br>五、夢に感謝<br> きらきら金粉入りようかん!<br> さあ、共に高め合って輝く未来へ!"}, {index="30185",text="「ふぅん、ヴィンテージ風のジャケット?<br>……あら、このブランド!<br>へえ、こんな新作も出していたのね!<br>ハイクラスな雰囲気が素敵ねって<br>昔お母さまと話し――いえっ、コホン。<br>ありがとうございます、フライトさん。<br>このキングの輝きに耐えうる格調高さで<br>ありながら、新たな一面も引き出してくれる<br>……まさにファッショニスタですね!」<br><br>「やーん、ストリート系ですか!<br>オーバーサイズパーカーにショートパンツ、<br>ちょっとおちゃめなデザインの<br>厚底スニーカー……うふふっ、<br>話してるだけでお出かけしたくなっちゃう♪<br>映えスポットでキメキメなカレンのこと、<br>早くみんなに見てもらいた~い!<br>その時はフライトさんもいっしょに、<br>ウマスタライブ、どうですかっ?」<br><br>「すご……これセレクトショップにしか<br>置いてないアクセだよね?<br>マジでアンテナ高いね、フライト。<br>また情報交換させてよ。<br>見返りにアタシも、<br>最新アイテム情報持ってくるからさ。<br>……てか、マジ、アンタのその追究ぶり、<br>リスペクトだよ。ガチでね」<br><br>あなたにも、あなたにも。<br>そしてもちろんわたしにも!<br>持って生まれた大事な原石が、<br>輝きの源が、それぞれ眠ってる。<br><br>わたしはそれを磨きたい、きらめかせたい!<br>そのお手伝いができたなら、<br>こんなにうれしいことはありません。<br><br>さて――こんにちは、新たな原石さん!<br>輝く方法、いっしょに見つけてみませんか?"}, {index="30186",text="さて、此度私と矛を交えてくださるのは<br>どのような方々かしら――?<br><br>『間近で拝すことを許そう<br>我が金色の覇道をな』<br><br>『楽しみだぜ?<br>全員抜かして最強【テッペン】への<br>扉ぶち開けるのがよ!』<br><br>『この血を、最強を――<br>証明する相手として不足はない』<br><br>『勝ちます! 勝って……わたしが<br>ティアラウマ娘の道を切り拓きますっ!』<br><br>まぁ素敵。<br>此処を駆けるのは皆<br>金剛石のような<br>煌めきと強靭さを持つウマ娘ばかり……――<br><br>「――だからこそ、砕きがいがありますわ」"}, {index="30187",text="――玉盃を浴びよ。<br><br>君臨せしは激情の覇王。<br>ターフの頂点にて、遍く総てを踏みしだく。<br><br>其の覇業は芸術の如く、<br>其の道程は嵐の如く、<br>世界を黄金色に染め上げる。<br><br>控えよ、拝せよ、跪け。<br>我らは只、其の尊きを仰ぐのみ。"}, {index="30188",text="伝えたい情熱がある。<br>届けたい感動がある。<br><br>だから私は、今日も探す。<br><br>その夢が、最も輝く舞台を。<br>その魂が、最もきらめく瞬間を――<br><br>「――どうですか、涼花さんッ!<br>メラメラな私のやる気、出てますかね!」<br><br>「ええ、いい表情してるわ。<br>エルフィーの熱意が、<br>画面越しでも伝わってくるわね」<br><br>「よし、今回の動画は<br>このテイクでいきましょう。<br>お疲れ様、エルフィー」<br><br>「やったー!<br>ありがとうございます!」<br><br>「えっへへ~、今回の動画も<br>みんなに楽しんでもらえるといいですね!」<br><br>「大丈夫よ。<br>きっと皆、喜んでくれる」<br><br>――だって貴方は、こんなにも眩しくて。<br><br>多くの人にパワーを与えるキラメキが、<br>あふれ出ているのだから。<br><br>そして……<br>それを余すことなく届け、<br>時により輝かせるのが、私の仕事。<br><br>「そうだ、涼花さん!<br>今日このあと、次の企画について<br>相談したいことがあるんですけど――」<br><br>「あら、そうなの? じゃあこのまま、<br>軽く打ち合わせしちゃいましょうか。<br>撮影もスムーズに終わったし」<br><br>「わっかりました!<br>テキパキ合理的に! ですね!」<br><br>「ふふっ……――そうね」<br><br>さぁ、今日も作り上げよう。<br>心震わす、エンターテインメントを。<br><br>――私の最高のパートナーと共に。"}, {index="30189",text="手を繋いで。<br>夢の始まりに胸を躍らせて。<br>一緒にその門をくぐった。<br><br>「あたしも絶対なるんだ!<br>テイオーさんみたいなウマ娘に!」<br><br>「私も、マックイーンさんのように。<br>サトノのウマ娘として輝いてみせるよ!」<br><br>憧れの場所が、夢の形を教えてくれた。<br>たくさんの出会いが、未来を彩ってくれた。<br><br>2人だけだった世界はどこまでも広がり――<br><br>「ひと足先に行ってるね、ダイヤちゃん!」<br><br>「うん。追いかけて……必ず追いつくから」<br><br>道は分かれ、それぞれの先へ。<br>そして再び交わり、ぶつかる。<br><br>「ダイヤちゃん……<br>ずっとこの日を楽しみにしてた!」<br><br>「私も。でもね……<br>あなたを追い越し、私が勝利する」<br><br>「望むところ!」<br><br>――さあ、繋いだ手を離そう。<br><br>たったひとつの輝きをつかみ取るために!"}, {index="30190",text="彼女は“最強”を求める。<br>9か月というブランクを強いられても、<br>その血を歴史に刻むために。<br><br>「私は証明する<br>――誰の目にも明らかな最強を」<br><br>彼女は“栄冠”を求める。<br>サトノ家として名誉ある功績を残し、<br>一族の期待に応えるために。<br><br>「1番人気は譲っても、勝利までは譲らない<br>――逆境なんて覆してみせるわ!」<br><br>互いに求める“理想”があるのなら――<br>レースの栄光を争うのは、必然。<br><br>「圧倒的に、ねじ伏せる」<br><br>「完璧なプラン、見せてあげる!」<br><br>彼女たちは駆ける。<br>それぞれの激情を、胸に。"}, {index="30191",text="「こうして、みんなの愛バとなったあの娘は<br>最強の一角として、いつまでも、<br>いつまでも語り継がれるのでした。<br>めでたし、めでたし……<br><br>ロイスちゃんの名作劇場でした♪」<br><br>「――と、いうにはまだ早いわ!<br>さあっ、行くわよアースさん!<br>第二章、愛される最強バ編の開幕よ!」<br><br>【トランペットによるファンファーレ】<br><br>「了解だよ、シニョリーナ!<br>登場シーンの演奏は任せておくれ!」<br><br>【アップテンポな曲】<br><br>「いくよ、ロイスさん!<br><br> ♪君の歩く道をワルツで飾ろう<br> UNO DUE TRE!」<br><br>「♪だけど狙うはナンバーワン!<br> そう! 目指すは最強!」<br><br>「♪奏でる舞曲!」<br><br>「「♪つ ぎ の 主役はぁ~~……」」<br><br>「では私のメインパートだ! ロイスさん、<br>アパッシオナートな伴奏で頼むよ!」<br><br>「ちょ、ちょっと!<br>抜け駆けなんて聞いてないわよ!?」<br><br>【荒ぶるマラカスの音】<br><br>「ウッ! ハッ!」<br><br>【ピアノの音】<br>【アコーディオンの音】<br><br>「まだまだ行くよっ!」<br><br>【おもちゃのヴァイオリンの音】<br>【サウンズオブアースのハミング】<br><br>「うっ、入る隙が見つからない……!?」<br><br>「ふふっ、怯えないでシニョリーナ。<br>私は君と、忘れられない<br>アンサンブルがしたいんだ!」<br><br>「さあ、おいで!<br>魂のままに、君の音をぶつけて奏でて!」<br><br>「……おもしろいじゃない……!<br>お望みどおりにいくわ!<br>1人で目立とうだなんて、<br>そうはいかないから!」<br><br>【荒ぶるマラカスとギロの音】"}, {index="30192",text="世界の猛者たちも集う大舞台で、<br>三姉妹の“誇り”は<br>愛すべきライバルに打ち勝った。<br><br>「こーらっ、シュヴァち!<br>はじっこには行かせないもんね~♡」<br><br>「ヴィブロスの言うとおりよ、シュヴァル。<br>主役の位置は真ん中でしょう?」<br><br>「……い、いいって。<br>この前みたいに2人のどっちかが――」<br><br>「ダメ! 今日の主役はシュヴァちなの!」<br><br>――妹は譲らない。<br>なぜならずっと姉の努力を見ていたから。<br><br>「そうよ。胸を張って。<br>……来ないならこっちからいくわよ」<br><br>――姉だって譲らない。<br>何度も立ち上がる妹の姿を見ていたから。<br><br>「えっ……えええっ!?<br>ちょ、ちょ……2人とも……!?」<br><br>そして間に挟まれた彼女は、<br>困ったように顔を赤らめて……はにかんだ。<br><br>3人は、愛で家族を抱き寄せる。"}, {index="30193",text="輝かしい才能たちが<br>ターフに煌めく世代にあって、<br>彼女の戦績には鬱屈としたものが漂う。<br><br>勝者への称賛の裏で、<br>どれほどの辛酸を嘗めてきただろう。<br>土埃に塗れた背から、<br>その想いを窺い知ることはできない。<br><br>ただ……<br>目深に被った帽子から微かにのぞく双眸には<br>悔しさとも、怒りともとれる炎が<br>静かにゆらめいているように見えた。<br><br>世界を相手取る大舞台に、<br>薄青いマントがはためく。<br>これまでの鬱屈を振り払うように、<br>すべての期待と予想を覆し走るその姿は――<br>いつか世界を制したあのウマ娘と重なった。<br><br>――ああ、きっと彼女も<br>偉大な海へ漕ぎ出すだろう。<br><br>遠く世界へ羽ばたくように、<br>ゴール板をマリンブルーが彩った。"}, {index="30194",text="――路を辿って、ここまで来た。<br><br>鋼の肉体と精神を持ち、幾多ものレースを<br>無傷で駆け抜けた“鉄の女”が。<br><br>“華麗なる一族”としての使命と向き合い、<br>その末に自らの路を見出した令嬢が。<br><br>どんな相手にも怯まず重賞6連勝を果たし、<br>“怪物”にすら肉薄した“女傑”が。<br><br>“女王”の跡を継ぎ、ティアラ路線の活躍<br>のみならず、『天皇賞(秋)』をも<br>勝ち抜いた“女帝”が。<br><br>どんな路線であろうと関係ない。<br>『強いウマ娘は、強い』と言い放ち、<br>その身をもって証明した“魔法少女”が。<br><br>美しく、麗しく、そしてどこまでも速い――<br>尊敬する先輩たちが残した軌跡を追って、<br>わたしはここまで来られた。<br><br>今度は、わたしが繋ぐ番。<br>今ならきっとできる。<br>わたしの想いは、ティアラに届く……!"}, {index="30195",text="夜のレッスン室に、白い羽が舞う。<br>これは誰かのためのダンス。<br>やさしい想いが込められたダンス。<br><br>一歩、ステップを踏むごとに<br>それは洗練されていく。<br><br>一歩、ステップを踏むごとに<br>この世のものとは思えぬほど美しく。<br><br>一歩、もっと先へ<br>一歩、限界を超えて<br><br>美しく透き通った、<br>硝子のような羽をはばたかせ<br>遠い空へ飛んでいくように――<br><br>――カタンッ<br><br>「――!」<br><br>「あ……すみません、もう時間ですよね。<br>すぐに片付けますね」<br><br>間もなく学園の施錠時間。<br>申し訳なさそうに眉尻を下げて<br>ふわりと微笑むその顔には、<br>年相応の素朴さが滲んでいる。<br>そのことに、何故だかひどく安堵した。"}, {index="30196",text="おなじ大地に生まれた。<br>おなじ空の下で生きている。<br>おなじ芝の上を駆けていたい。<br><br>あなたと私、<br>すぐに凪いでしまうとしても<br>確かにつながっている縁。<br><br>春風のようなあなた<br>どうかぬくもりの中にいて。<br>そよ風のようなあなた<br>どうか永くたゆたっていて。<br><br>大切な同期、<br>大切な日々、<br>とてもとても大切な、あなたの幸福。"}, {index="30197",text="“デート”の手を強く握り、中央に立つ。<br>流れてくるのは情熱の音楽。<br>鼓動を打つのは熱いリズム。<br>この会場に立つすべてのペアがライバル。<br><br>けど、この場で1番のライバルは――<br><br>「いくっスよ、オグリ先輩!<br>ステップ、からのターン!!」<br><br>「――! さすがだ……でも、私も……!」<br><br>「うおっ――!<br>へへ、さすがっス、オグリ先輩。<br>アタシも負けないっスよーっ!」<br><br>リード&フォローなんて、<br>アタシたちには似合わない。<br>互いにリードを奪い合い、<br>ひと時も気を抜けない、<br>このヒリヒリした感覚が心地いい。<br><br>レースで競り合う熱さと同じ、<br>本気全力の戦いが――<br>アナタと向き合うこの瞬間こそが、<br>何にも代えがたい特別なんだ。"}, {index="30198",text="“フィラメント”接続。<br><ツー、ツー、トン、ツー、ツー><br><br>“ゲイン”を上昇<br> 『聞こえる』ができる?<br><br><br> 『祝福』を“FELT”するよ<br><ツー、ツー、トン><br><br> 透明なHz<br><br> 実体化による変動 ―― 承認<br><br>“RCOL”ごと送信<br><トン、ツー、トン、トン><br><br><トン、トン><br><br> 視点位置、エラー<br><br> 再送信開始<br> 送信、再送信<br><トン、トン、ツー、トン、トン><br><br> 送信<br> 送信<br> 送信<br> 届け<br><トン、トン、ツー><br><br><br><br> ネオユニヴァースも『嬉しい』、から"}, {index="30199",text="【4月○日 晴れ】<br><br>■記入者<br>ヒシミラクル<br><br>■時限・内容<br>1~5限:ファン感謝祭!<br><br>■感想・反省<br>みんな出場競技がんばってました。<br>トランちゃん、エスポちゃん、<br>フリオーソちゃんの三人四脚レースが<br>盛り上がってました。<br>バンブーちゃんの応援団かっこよかった。<br>あと、自分は陣取り合戦がんばりました。<br>まあまあ活躍できた気がするし、<br>クラスのみんなからいっぱいホメられて<br>ちょっとスターになった気分でした。<br>先生からの差し入れジュースうれしかった<br>けど、次はアイスがいいな~と思いました。"}, {index="30200",text="一、定めし本意、必達するべし<br><br>一、当意即妙、変幻自在たるべし<br><br>一、計略も戦のうちと心得るべし<br><br>一、敵味方、遍く謀ってみせるべし<br><br>一、人と入れ物は有り次第、<br> 有利不利をも覆すべし<br><br>「――いざ、下剋上!」"}, {index="30201",text="「ふふ……この時のタイシンちゃん、<br>かっこよかったですね~♪」<br><br>「は? ああ、ファン感のときの写真か。<br>って、何そのアルバム!? んなモン<br>ご丁寧にアルバム貼らなくていいって!」<br><br>「どうしてですか~? タイシンちゃんが<br>陣取り合戦で大活躍したお写真ですよ、<br>大事にとっておきたいじゃないですか~。<br>あ、こっちの写真も♪」<br><br>「いいってもう、恥ずいから……」<br><br>「本当に、立派になりましたねぇ。<br>いつの間にかすっかり大きくなって……!」<br><br>「母親かアンタは!」<br><br>「だって~。私ってば、タイシンちゃんを<br>心配するばかりで……。でも<br>私が思っていた以上に、タイシンちゃんは<br>立派で、勇気をもって、堂々としてて――」<br><br>「……別に、……アンタが動きやすいように<br>隙作るくらい、なんてことないし…………」<br><br>「タイシンちゃん……! ほんとにもう、<br>優しくて立派なんですから~~!」<br><br>「だから別にそんなんじゃ……<br>って、アンタ付箋に何書いて――」<br><br>「ふんふん♪ 『タイシンちゃんは、とても<br>立派で……みんなのために勇気を』――」<br><br>「ちょっ、んな恥ずいことメモんな!<br>写真の横に貼るなーー!!」"}, {index="30202",text="おお、サマんなってるじゃん!<br>やっぱ俺の思ったとーりだな!<br><br>真っ赤なボディのレーサーレプリカ。<br>いっつも熱く指導してくれる<br>アンタにピッタリだ!<br><br>とうとうアンタもバイク乗りかぁ。<br>ヘヘッ、先越されちまったな~。<br><br>タンデム? いや、それなら<br>俺も乗れるけどさ……う~~ん――<br><br>あっ、嫌とかじゃねーよ!?<br>そうじゃなくて……<br>どうせなら並んで走りてえから。<br><br>待っててくれよ。<br>俺がもうちょっと大人になるまでさ。<br><br>それまで、たくさん練習しとけよ!<br>俺に追い抜かれねーようにな!"}, {index="30203",text="天才と呼ばれたヤツがいた。<br>常人とは違う世界を見るヤツがいた。<br>絶対勝利を諦めねぇヤツもいた。<br><br>十分だ。最高じゃねぇか。<br>ようやく揃った。<br><br>――お前らは、強い。<br><br>ああ、そうだ。相手にとって不足ねぇ。<br><br>なぁ、勝負しようぜ。<br>鉄格子が開いたら合図だ。<br>風を裂いて、土を抉って、本気でぶつかれ。<br>死ぬ気で生きろ。本能で吼えろ。<br><br>たったひとつの頂点を獲るために、<br>出せるモン全部出してさ。<br>なぁ、やろうぜ。<br><br>お前たちなら、文句ねぇ。<br>お前たちに勝てば――<br><br>【最強】は、俺だ。"}, {index="30204",text="「ふわぁ、あ~……<br>…………おや? 見つかっちゃいました?」<br><br>木の上で、猫と眠る姿を見つけた。<br>まだ重い瞼をこすって、<br>ふにゃりと笑うさまは本当に無防備で。<br>どんなに綺麗なドレスを着ていても、<br>マイペースにくつろぐ姿が、<br>なんだか少しおかしかった。<br><br>「ほらほら、見上げてないでどうですか?<br>特等席、空いてますよ?」<br><br>ぽんぽんと叩かれた太い枝まで登り、<br>彼女の隣に腰を下ろしてみる。<br>木の葉がこすれて音を立てる。<br>木漏れ日が柔らかく降り注ぐ。<br>時間の流れが、ここだけとても<br>ゆっくりしているようで。<br><br>小さく、あくびが出てしまった。<br><br>「いいもんでしょ、こんな時間も」<br><br>心地よい声にうなずく。<br><br>「私、こういう時間を探すのが<br>ちょこっとうまいんですよ。<br>いい場所、いい時間、いい風も。<br>欲しいと思ったら、すぐ見つけちゃう」<br><br>素敵な特技だ。<br>こんな心穏やかな時間を<br>いつでも過ごせるなんて。<br>少し羨ましい、とこぼした。<br><br>「なら、どうでしょう。<br>このネコちゃんたちみたいに、隣にいたら」<br><br>ひときわ強い風が吹いた。<br>枝にかけてあった薄手のヴェールが、<br>風に乗って飛ばされてしまう。<br><br>「あちゃー……まあいいか。<br>なくてももう――ね?」<br><br>木漏れ日を受けて<br>いたずらっぽく笑う顔が、<br>今日は、やけに目に焼きついた。"}, {index="30205",text="目をそむけたくなる過去があった。<br>何度挑んでも敵わない相手がいた。<br>……何度も味わった辛酸は忘れない。<br><br>だけど、下を向くのはおしまい。<br>振り返って立ち止まることもしないわ。<br><br>頭に戴くはイキシアの花。<br>背筋を伸ばして、顎を引いて。<br>迷いはいらないわ。<br>ただ、前を見据えるの。<br><br>恐れず、倦まず、誰よりも気高く。<br>この世に咲き誇るのは私。<br>誓ったの、女神【ミューズ】の名のもとに。<br><br>「もう、誰にも負けないわ。<br>貴方にも、自分にも……!」<br><br>女王は、私よ。"}, {index="30206",text="「ねぇねぇ、どう? 似合ってる?<br>セレブみたい?」<br><br>無邪気にはしゃいで跳ねる妖精から、<br>何度目かの質問を受けた。<br>似合ってるよ。<br>そう返すのも、何度目だろう。<br><br>「えへへ~、だよねだよねっ♪<br>この勝負服【ドレス】で~、<br>ドバイに行って~。<br>豪華客船貸し切っちゃおうよ!<br>海の上でみんなで踊って歌って、<br>ごちそうも食べて~。<br>んでんで、夕日が沈むのを見ながら、<br>未来のこと語り合っちゃったりして~……<br>きゃ~~♡」<br><br>「もう、ヴィブロスたちったら。<br>さっきからずっとそのやりとりじゃない?」<br><br>「だってお姉ちゃん!<br>何回聞いてもうれしいんだもんっ!」<br><br>身をかがめた彼女の瞳が、くりりと光った。<br><br>「あの日のお姉ちゃんに、ず~っと憧れて!<br>やっと手に入れた勝負服だよ?<br>とびっきりセレブで、<br>とびっきりの夢を詰め込んだ……<br>とっておきの、<br>勝負服【ウェディングドレス】!」<br><br>「……!」<br><br>「それが似合ってるって……<br>サイコーにうれしいじゃんっ!」<br><br>次の瞬間、青い空に純白の勝負服が<br>ふわりと広がる。<br>ドレスにちりばめられたパールが<br>陽の光を反射して、とびきりの笑顔を<br>照らし出す。<br>そんな笑顔で、上目遣いで。<br><br>「ねっ、ねっ!<br>もう1回言ってよ! さん、はいっ♡」"}, {index="30207",text="「わーっはっはっはっ!<br>見たまえ、諸君!<br>この艶! 色! 大きさ!<br>どれをとっても一級品じゃないか!」<br><br>「おおおっ!<br>なまら美味しそうなにんじんだべ~♪」<br><br>「本当! こんなに立派なにんじんが<br>たーくさんっ! どんな料理にしようか、<br>今から迷っちゃうね~♪」<br><br>「って、おいおい理事長!<br>尻もちついちまってるじゃねーか……!<br>そんな泥だらけになっていいのかよ!?」<br><br>「なんの、なんの! むしろ誇らしいぞ!」<br><br>「君たちが、手間暇かけて育てたのだ。<br>愛を詰め込んで育てたのだ。<br>そんなにんじんに、全力で向き合える!<br>なんと幸福なことだろう!」<br><br>「その結果泥まみれになるのなら、<br>それはむしろ大歓迎!<br>理事長冥利に尽きる!」<br><br>「さあ、どんどん掘り起こそう!<br>君たちの愛は、君たちを作り、<br>夢へとつなげてくれるだろう!」<br><br>「激賞ッ! さあ、全てを力に<br>いざ進みたまえ、若者たちよ!」<br><br>「理事長さぁん……!<br>はいっ! このにんじんさんたちも<br>連れて、日本一の舞台に立ちます!」<br><br>「きっとおいしく料理するからね!<br>そうしたら、理事長さんも食べにきてね!」<br><br>「うむっ、うむ!<br>期待をしているぞ!」<br><br>「……ん? なぁ、あっちから<br>すっげー勢いで走ってくるのって――」<br><br>「うふふ、理事長?<br>この後の会議、お忘れですか?<br>そんな泥だらけになって……」<br><br>「驚愕ッ!! た、たづな……<br>若者たちよ、わたしに構うな、振り向くな!<br>進めッ、進めーーッ!!」"}, {index="30208",text="吐く息が白く上る、冬の早朝。<br>起きてすぐに、あの子たちのもとへ走った。<br><br>一晩中、大雨は降り注いで。<br>ざあざあとやまない音に、<br>目をぎゅっと閉じて祈っていた。<br><br>――どうか、負けないで。<br>小さなあなたたち。<br>ここまで大きくなったんです。<br>真っ赤にかがやく日を、どうか見せて。<br><br>目覚ましよりも早く起きて。<br>カーディガンを羽織って。<br>冷たい風が頬にぶつかっても、<br>全然なんとも思わなくて。<br><br>たどり着いた畑は、薄青く、<br>しんと静まりかえっていた。<br><br>雨水が溜まったビニールを、<br>ゆっくりとめくる。<br>祈るような気持ちで、息を止めて――<br><br>「……ああ、よかった!」<br><br>雨にぬれながら、<br>あの子たちは上を向いていた。<br>白い花が、花托が、<br><br>おかえりなさい。<br>まけなかったよ。えらいでしょ。<br><br>そう言っているようで。<br><br>「冷たかったね。よくがんばったね。<br>もう大丈夫だからね」<br><br>朝日に染まって柔らかく色づいていく。<br>その様子が、ほっと安心してくれたように<br>見えて。たまらなく、愛おしくて……<br><br>「今日も1日、一緒にがんばろうね。<br>大きくなるその日まで……」"} } return p