碧蓝回忆录日服文字版/刹那觀る胡蝶の夢
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2021-08-16更新
最新编辑:芙兰朵露琪露诺
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更新日期:2021-08-16
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刹那觀る胡蝶の夢
重桜の神石【ワタツミ】を祀る儀式が無事終了した。
鉄血の暗躍、セイレーンの襲来、【ワタツミ】の破壊を狙う「余燼」と名乗る存在。
数々の陰謀は重桜の仲間たちによって打ち破られ、その中でも駿河、能代と龍鳳ら――祭儀を執り行う進行役の活躍が目立っていた。
その裏で、祭儀の「真の主催」である人物が今、蘇ろうとしていた…………
信濃:
嗚呼…永らく世界を観るだけの妾(わたし)にも、再びこの手で万物と触れ合える契機が…
期待と、希望による具現は、まだ、無力……
嗚呼、妾が観た定めは、この光景にあらずと申すか…
もしくは、この困惑と、おぼろげな光景もまた、定めだと……
……妾は空母「信濃」。この身が具現化された以上、いかに定めに翻弄されようと、重桜を支えるのが妾の使命――
御狐様が眠りになられた桜は既に枯れ、ワタツミもまた、危機に瀕していた、と…
妾が観る夢もまた、喧騒と混沌に満ち溢れようとしていた…嗚呼、永く安眠が、妨げられるほど…
妾が観る夢は、「定め」……いつしか起きる、必至なる運命の兆し……
例え抗えぬとも、せめて、仲間を救う努力は……
来る破滅の波がもし、避けられぬと申すなら、せめて、妾の力で「真実」を知ることができれば……
どんなに小さく、儚く、一瞬にして消え去る夢の刹那、カケラだろうと……
拾い集めれば、きっと……
祭儀の島
能代:
…その決定には賛同しかねます
龍鳳:
でも……これは上層部が決めたことで…信濃さんもほら、特に反対してはいませんよ
信濃:
異議は申さぬ…目覚めたからには、本島への参列は当然…
能代:
そういうことではありません。信濃さんは目覚めたばかり、今の状況を把握しているとは思えません
そもそも、私たちの護衛もつけず単独で本島に出頭するなど、非常識にも程があると思います
信濃:
……状況は把握している…妾が夢を観ていた間に……
龍鳳:
ほら、信濃さんもそう言っていますよ?それに本島から迎えの艦隊もいますし
駿河:
(信濃さんを出迎える艦隊…たしか旗艦は紀伊だったわね……げぇ、アイツ、大丈夫かしら……)
能代:
話は平行線ね……信濃さんの航行には私も同行します
駿河:
(え)
龍鳳:
いくらなんでも急すぎませんか?配置変更には上層部の…いいえ、せめて赤城さんたちには……
能代:
そこは心配ありません。信濃さんが目覚めた以上、私たちの指揮系統は彼女に移行されているはず
信濃:
………んっ……そういう、話なら…
能代の申し出、妾から話を合わせよう…
能代:
信濃さん…感謝します
(トントン)
霞:
哨戒中の鬼怒たちから、迎えの艦隊がそろそろ到着、と…
信濃:
(今、危うく眠りに落ちるところだった…うぅ……)
龍鳳、能代、駿河、出立の準備を、お願い申す…
駿河&龍鳳:
かしこまりました!
涼月:
時間は正午、天候は快晴、離島へと航行して幾百里、我、祭儀の島についに到着せん!
紀伊:
祭儀の島だからさぞかし派手な島かと思ってたけど、これはちょっとがっかりするわね…
熊野:
「眠りから目覚めた重桜の最新鋭空母が戦力に加われば、我が有力なる重桜の機動艦隊の再編成がついに可能となり、もはや何人たりとも重桜の奮進を阻めない」
と、作戦命令書に書いてあるけど。マジで意味分かんないわね~
信濃さん、「重桜サイキョーの空母でどんな敵も得意の『てれぱしー』でパパパっとやっつける」って感じでしょ?
紀伊:
それ、一般人のイメージ?
熊野:
どーだろー
紀伊:
まあ意図が分からなくはないわね。さすがにうちの上層部も「ワタツミが奪われそうになったから信濃を本島で保護するように」なんて書かないだろうし
長門様が単独でやってきてセイレーンに襲われたってのも、相当効いたからね
涼月:
むむ…つまり、重要人物をセイレーンに襲われるような場所なんかにいさせられないって発想ね
熊野:
それな!あと、ワンチャン信濃の力をもう一回本島で使いたいってわけ
紀伊:
そっかー。確かに一石二鳥だわね
涼月:
あ、祭儀の島から艦船が出てきた!あの人が信濃さん?綺麗……
熊野:
武蔵さんと変わらないオーラだわね、ありゃ
紀伊:
と…隣にいる子はたしか能代って言ったっけ?ん?作戦命令書では確か「単独航行する信濃を出迎える」って書いてなかった?
涼月:
さあ?偉い人には側近がつくもの、一人二人いても別におかしくないと思うよ
紀伊:
んーまあいっか。信濃さんの護衛なら別に一人くらいいても大丈夫でしょ
みんな、信濃さんたちと合流するわよ!
紀伊たちと合流して、一緒に重桜本島まで出航する信濃。
信濃:
嗚呼…妾、現し世で航行しておるとは……
熊野:
信濃さんって祭儀の島から離れるのは目覚めてから初めて?どぉ?海を航行する気分は
信濃:
……かつて観た光景と、似ているような、似ていないような……
熊野:
んーじゃ話題ちぇーんじ!最近流行りのカード占いって知らない?
信濃:
占い…?夢を観れば物足りると思ふが……それに「かーど」とは……
熊野:
あ、大丈夫大丈夫!今の聞かなかったことにして!
信濃:
……はあ……
熊野:
(やば、地雷踏んだ?信濃さんと話題探しってムズくね?)
涼月:
(そうだね…信濃さん、夢を見る力?の関係であんまり遊びとか流行とかわからないだろうしー)
能代:
(当然でしょう。信濃さんは大和型3番艦にして、重桜の未来を背負い私達を導く方々の中の一人ですもの)
紀伊:
(御狐様とは違うタイプの面倒臭さだわね…本当は可愛い一面もあるのかしら?)
涼月:
(可愛い一面は知らないけど、あのモフモフは涼月には魅力的に見える!)
信濃:
涼月、汝(そなた)は…妾のしっぽに……?
涼月:
バレた!え、ええと!信濃さん、ちょっとその…モフモフしていい?
紀伊:
涼月?!
涼月:
やっぱり急に言い出して失礼だったよね!涼月、お詫び致す!
信濃:
……そのようなことなら、別に、構わぬ……ふぅ……
紀伊:
(前から聞いてたことだけど、信濃さん、いつも眠そうにしてるわね…)
よかったら量産艦で休んでいかない?ここまで来たらはぐれセイレーンもいないし別に信濃さんまでずっと航行する必要ないわよ
敵が来ても私たちがちゃちゃっと片付けるから、安心して休んでて!
信濃:
(これは……妾、眠っている……?)
紀伊:
信濃さん、別にこちらまで出て来なくても…確かに向こうから重桜の艦船が接近してくるわ
涼月:
千歳さんと千代田さんが樫野さんや輸送艦たちを本島まで航行しているね
信濃:
(運送艦、樫野………)
紀伊:
珍しく運送艦も出撃してる…この航路の通行情報には何も書いてなかったわね
熊野:
熊野すっごく気になる!
樫野って確か大和型の主砲を運べるんだっけ?もしかして……
涼月:
すとぉっぷ!もう熊野ってこういう話は禁止って普段から言われていなかった?
能代:
涼月の言う通り、余計な詮索はしないほうがいいです――瑞鶴たちのように赤城さんたちとギスギスする必要はありませんわ
熊野:
そうだった…マジで面倒くさいわね、こういうの
能代:
ですが目的地が同じ重桜本島でしたら、同行する事自体は問題ないでしょう
信濃さん、どうします?
信濃:
(…妾の定めには、関わらせる気はない、と……)
「…あの子たちもまた使命を背負う身、行く先が同じといえど、共に旅する必要はなく……」
「各々の定めを、無理に交えることは、望まぬ……」
熊野:
信濃さん、いまのってどういうこと?
涼月:
た、多分だけど、「大丈夫、向こうにも任務があるから、無理して気を使わなくてもオッケー」ってことかな?
熊野:
じゃあとりあえずスルーって感じ?
涼月:
あ、向こうから連絡きてるよ
紀伊:
じゃあ繋いで。同じ重桜艦隊の仲間だし挨拶をしないとね
千歳:
こちら軽空母千歳。本島への輸送任務を遂行中。会えて嬉しい
紀伊:
こちら戦艦紀伊。同じく本島へ航行中。輸送艦隊の護衛任務、いつもご苦労さん!
花月:
紀伊さんたちと航行しているのは…信濃さん!?
千代田:
信濃さんの「初航海」が見られるなんて!千歳姉、私たちすごくついてるよ!!
信濃:
(初航海……?)
千代田:
あれ?信濃さんって私たちとどこかで会ったことあったっけ?
信濃:
「現し世ではなく、夢でならば……」
樫野:
信濃さん、はじめまして、給兵艦の樫野です。今は輸送艦隊と一緒に輸送任務を遂行中です
あの、余計な心配でしたらすみません、目覚めたばかりと聞いて…お体のほうは大丈夫でしょうか?
信濃:
「……ええ、心配は無用……大和型の建造への助力、感謝を申す…」
樫野:
とんでもございません!あれは運送艦としての役目ですから、感謝されるようなことはなにもしていませんよ
千歳:
任務があるから、その…先に失礼。重桜本島までの船旅をごゆるりと
信濃:
「ええ、カミの御加護があらんことを……」
紀伊:
……計器に異常!これは…!
能代:
一瞬で狂いましたね…間違いなく鏡面海域の反応です
熊野:
そんなのあり!?ここは鏡面海域どころかセイレーンの記録すらないわよ!
涼月:
千歳達もさっき無事に通過してたし!もしかして涼月たちが狙われている!?
紀伊:
狙われているとしたら…あまり言いたくないけど、きっと信濃さんが目当てね。信濃さん、私達から離れないで
信濃:
「……ええ、お頼み申す……」
能代:
信濃さんの「初航海」を狙うなんて…卑怯です
紀伊:
セイレーンの思い通りにはさせないわよ!皆、信濃さんを中心に戦闘陣形を!
涼月:
前方にセイレーン反応あり!大艦隊よ!
熊野:
さっきも大艦隊じゃなかった?!もう周りは敵だらけよ!
涼月:
いやいや、そのさっきの大艦隊よりも規模が大きい艦隊だよ!それと人型セイレーン……あれは、「テスター」!
紀伊:
やっぱりこれほどの規模だと人型が出てくるわね…!涼月、よく見つけたわ!
にしてもまずいわね…今は信濃さんをこの鏡面海域から連れ出すのが先…
みんな、敵の大艦隊から距離を取って、さっさと脱出経路を見つけ出して逃げるわよ!
能代:
このままでは囲まれて全滅するわ…紀伊、千歳たちのいた方向に向かって救援を呼べないか試させてください
仮に救援要請を出すのが難しくても、脱出経路を見つける成功率は多少上がると思います
紀伊:
ダメ、あんた一人じゃ死にに行くようなものでしょ!
涼月:
そうだよ!脱出経路を見つけたとしてもこちらと合流できそうにないよ……
能代:
…………っ…
紀伊:
まだ持ちこたえられているわ。ここは艦隊を反転させて、テスターを撃破する方がまだ現実的ね
つまり、全砲門集中して一点突破!指揮ユニットを叩けばセイレーンも少し大人しくなるから、そのタイミングが狙いね
涼月:
まずは大将首を討ち取る!……と言いたいところだけど、テスターを守るザコをどうやって引き離すの?
信濃:
「……その作戦は、妾に任せよ……」
涼月:
信濃さん?いいの?
信濃:
「……ええ、役目を果たそう…」
(セイレーンと戦う夢――嗚呼、数々のカケラの中では、一番多く観たもの……妾の力……)
(如何に悲しく、残酷な夢の中でも、妾はずっと重桜のために戦い、これだけは、ずっと変わることなく……)
紀伊:
……信濃さん、安心して戦って!私たちが全力で守ってあげるから!
信濃:
「妾の力…汝が見下せるものにあらず……しかし……っ……」
テスター:
ふん、まさか「信濃」がこの程度とはね
大和型から改造された装甲空母、重桜の機動艦隊の希望なのにこの程度のデータしか取れないなんて
信濃:
「テスターは何度も観たはず……なにゆえ……」
テスター:
「何度も観た」?ふふふ、それはこっちのセリフよ
私達の演算は無数の「楔」、そしてデータによって成り立っているのよ。「夢」でしか見れないあなたとはわけが違うわ
紀伊:
信濃さん!危ない!早く後退して!
信濃:
(…いいえ、妾は知っている…テスターが油断しているこの一瞬にこそ、弱点が――)
テスター:
…あら、まさかここを狙うなんて
涼月:
テスターの主砲が破損した…!
信濃:
(……ええ、次は…汝らの動力の源……)
――――――――!!
信濃:
(……!?せ、潜水艦からの攻撃……!?)
テスター:
「再現」テスト完了。この場所に来てくれてよかったわ――信濃、あなた一人の力では決して重桜の未来を変えられないの
……データ収集完了。そしてこの時間軸のあなたも――何も変わらないわよ
信濃:
(……嗚呼、此度の夢でも、妾……)
(幾度の夢を観て、定めを観て、目覚めた…というのに……)
(このカケラでも、何も、なし得ぬまま…)
(妾は…………わたしは…………)
目に映っているのは見慣れた風景――祭儀の島の施設だ。
信濃:
(嗚呼……夢のカケラが、また一つ……)
霞:
信濃さん…起きてる…!!
信濃:
(妾が…目覚めた直後の夢……?)
「霞、日時は…?」
霞:
あ、はい…今祭儀が執り行われている最中で、そろそろ【ワタツミ】が祭儀の会場に運ばれるよ
信濃:
「長門様や三笠様、赤城は、いずこに……?」
霞:
?長門様はこちらに来ていないよ。ってふわりん、霞にそう言った
信濃:
(……いささか、違う………?)
―――――!!
霞:
信濃さん…!
信濃:
(……外からの砲撃……?)
霞:
ごめんなさい、霞、信濃さんが目覚めたのを見て、大事なことを忘れてた
さっきセイレーンが攻めてきて、祭儀の島を鏡面海域にまるごと取り込んで、みんなバタバタしていたの
敵は赤城さんと三笠大先輩たちに倒されたはずなのに、今のは一体どこから……
外が危ないから、ここにいたほうがいいってふわりん、霞にそう言った…信濃さん?
目覚めたばかりにも関わらず、砲撃の方角へと急行する。
信濃:
(……ワタツミを奪わんと…いいえ、壊そうとする謎の艦船……)
(……「余燼」と名乗った、あの子……)
千代田:
……し、信濃さん!?
信濃:
(樫野に、千歳、そして千代田…妾の観た祭儀には、この子たちの姿はなかった……)
(カケラが連なる、と申すか……?)
「何故この祭儀の島に……?」
千歳:
輸送船団の護衛でやってきた…けど、帰還する前にセイレーンの襲撃にあって
千代田:
せっかく現れたセイレーンを全部倒したというのに、わけのわからないやつがいっぱい出てきた
セイレーンの新兵器?みたいけど、いつものとちょっと違う雰囲気だし…
千歳:
ほかの仲間はその迎撃に集中しているけど、敵のほうが多勢で…
信濃:
「支援に向かわぬのは…?」
樫野:
敵の狙いが『ワタツミ』かもしれないから、早く安全な場所まで運び出したほうがいいって三笠大先輩から指示されました
そこで私が運搬担当で、千歳と千代田が護衛担当、です
信濃:
(重桜の宝、【ワタツミ】…妾とて如何なる存在か知り得ず……)
「…敵は妾が引きつける…【ワタツミ】をどうか…」
樫野:
は、はい!がんばります!
千歳:
信濃さん、お一人では……
千代田:
最新鋭空母の信濃さんならきっと大丈夫よ千歳姉!不届き者に重桜の力を見せてやろう!
信濃:
「……ええ」
鬼怒:
くっ…ここまでか…!
龍鳳:
この強さは一体何なの……!?
能代:
…信濃さん、すみません…!
量産艦、砲台、そして駆けつけてきた数々の艦船達は――すべて一撃で戦闘不能にされていった。
あまりにも圧倒的な実力差の前に戦いにすらならなかったが、それでも重桜は全力を尽くして「余燼」の攻勢を緩めようとしていた。
瑞鹤:
攻撃が効かない!大先輩、このままでは…!
三笠:
怯むな!翔鶴、救援艦隊はどこまで来ている!?
翔鶴:
すみません、もう少し時間を要するとのことです!
三笠:
しかしこれでは増援が来ても時間稼ぎにしかならないぞ…何か手は…
赤城、なにかいい案は……
……赤城?
赤城:
くっ…!ここまで来たら使うしかありませんわ!
これこそが私の愛の力…カミの力よ…!すべてを破壊してみせますわ!!
???:
…………邪魔をするな
加賀:
――姉さま!!!
強大な力がぶつかり、爆発の光が襲撃者と守護者を飲み込んだ。そして――
驚異的な力を見せた襲撃者はついに膝をつき、戦いの勝敗が決した。
赤城:
…………
三笠:
げほげほ……いまのは流石にきつかったぞ……
…………赤城?
お主、まさか――
赤城:
…………
フフフ、ふふふふはははは!
この期に及んでまだ傍観しているつもりですか?信濃
振り返る赤城。その手の上に妖しき光を放つ「黒箱」が浮かんでいた。
赤城:
人々の望み、願い、願望、それらを反映し具現化する「箱」、メンタルキューブ――その中でも特殊なものがありますわ
そんな力が、あなたのような存在に使われるよりも……
加賀:
赤城……姉さま?
赤城:
例えこの身が海底に沈もうとも、例えこの体が永遠に炎に焼かれようとも、私は…私は……
私の愛は――誰にも邪魔させませんわ!!
信濃:
(……赤城…………)
(黒い光…黒い箱………あれが、災い…)
「赤城……止まれ」
赤城:
……信濃、やっぱりあなたが現れたわね
三笠:
信濃!?お主、眠っていたはずでは……
信濃:
「黒い箱は災い…重桜には不要な存在……それを捨てよ」
赤城:
ははははは!何を言い出すかと思ったら、祭儀の島でずっと眠っていたあなたが「重桜」を?
信濃:
「………………」
(…赤城は、誰よりも重桜を思ふ)
(…故に、行き過ぎた激情が、ときに危うさを生む…)
(妾は、それを止めたかった…しかし、眠っていた妾には、現し世に干渉することが叶わず…)
(そんな妾に、赤城を止めることができようか……)
(嗚呼、妾には、カケラを観るしかできなかった……されど……っ)
(すべてを虚無にする光…このカケラも、ここで終わり……)
(妾が目覚めたのは、重桜と仲間を救わんとしたため……)
(妾が観た「破滅の夢」から――)
信濃:
(波の音が聞こえる…海…なれど……)
(肌に刺さる凍りつく風、錆の匂い……この夢は……)
(いいえ、この「世界」は、妾が知り得るいずれのものとも異なる……)
能代:
信濃さん、そろそろ集結地点です
涼月:
あれはこの作戦に参加する艦隊なの?すごい!
紀伊:
そうよ、あれは重桜の最後の戦力で、かつてない規模の艦隊だわ
千代田:
私達だけじゃなく、ユニオンもロイヤル、そして鉄血も全戦力を出してきたわね
涼月:
総力戦ってこういうことなんだ…これでオケハザマ並に一発逆転できればいいよね
熊野:
ええ、作戦通りに行けばね。信濃さんの夢もそうなっていましたもの。そうですよね?
信濃:
「………ええ…」
熊野:
信濃さん、大丈夫?なんか元気ないわね
涼月:
まあここまでずっと戦ってきたから、まだ元気があることのほうが珍しいわね
熊野:
ドンマイドンマイ、涼月ちゃんの言うとおり、反撃戦で大逆転すればいいっしょ!
ユニオン艦隊に遅れるんじゃないわよ!
信濃:
「艤装の破損は…もはや直せないか…?」
紀伊:
この状況ではね。どこもかしこもすっからかんだから、高望みはできないのよ
これでも最大限に直しているから、もうこれで頑張るしかないわ
信濃:
(…疲労困憊な様子に、永く修理されていないような艤装…これは…一体…)
千代田:
千歳姉…!
千歳:
千代田!無事で良かった…早く補給艦隊のところに行ってきて
紀伊:
補給物資もあるの!?やっっったあ………
涼月:
ほかの艦隊も敵と連戦したようね…
千歳:
皆同じだったわ。「敵」がまだこの海域を掌握していないというのは本当のようね
熊野:
あそこにいるのが…今回の切り札だそうよ
涼月:
北方連合の技術をふんだんに使った兵装ね。それとコアを運ぶ運送艦たち
信濃:
(運送艦たちが……切り札……?)
千代田:
まああの子たちもすごいけど、樫野たちの【ワタツミ】もすごいよ!
千歳:
信濃さんは設計に参加しているから、知っているはず
信濃:
「……ええ…」
(【ワタツミ】を使った…兵器…?)
(思いを集め、形にする器――メンタルキューブ…メンタルユニットと一緒に、妾たちに力を授ける……)
(それが兵器だと申すなら…嗚呼、妾たちも、また同じく――)
通信機:
――――
エンタープライズ:
こちらエンタープライズ。そろそろ作戦開始時間だ。重桜艦隊の準備はどうなっている?
高雄:
集結完了だ。今「切り札」の最後の調整をしている。そなたたちのほうは?
シャングリラ:
行動開始から各タスクフォース、概ね順調です。目標海域にも「敵」の動きはありません
神通:
重畳です。作戦がうまく行けば「敵」を一気に殲滅できるかもしれません
夕立:
早く出発しようぜ!もう待ちきれないよ!
熊野:
ヒュ~夕立ちゃんは元気ね~私ももうちょいがんばろっかな~
高雄:
エンタープライズ、こちらに来ていない戦力はまだあるか?
エンタープライズ:
ああ、「アンチエックス」の艦隊がまだ集結を完了していないようだ
高雄:
妙だな。あの連中は一番心配いらぬものと思っていたが
ヴィクトリアス:
まああの子達はあくまで予備戦力だから。少し後から追って来てもらっても大丈夫よ
加賀:
では確認はここまでとしよう。信濃、そちらの指揮は任せるぞ
信濃:
(…あんち…えっくす……?)
能代:
はい、私も補佐いたします
加賀:
よし、重桜艦隊、作戦開始時間に合わせて、前進せよ!
熊野:
ここまでの間、敵はそんなにいなかったわね
紀伊:
ここは艦隊の中心部よ。敵が近づく前に周りの艦隊にやられてるわ
涼月:
……いつどこから敵が襲ってくるかわからないんだから慢心しちゃダメよ
熊野:
分かってるって。別に初見じゃないし~
涼月:
……うん!ちょっと緊張してるけどきっと大丈夫!
紀伊:
そうそう、慢心してはダメだけど、重い雰囲気に押しつぶされないことも重要よ!
花月:
よければハーブティーでもいかがでしょうか?…すみません、選べるほど種類は残っていませんが……
紀伊:
ありがたくもらうわ!信濃さんは?
信濃:
「……ええ、いただきましょう…」
雑談の声があっちこっちから聞こえる。決戦の緊迫感をかき消そうとしているようだ。
高雄:
敵の前衛艦隊が近づいてきているな
…先ほどユニオンの数個艦隊との連絡が途絶した。今状況を調べている
気を引き締めて、警戒して進もう
紀伊:
この身の毛がよだつような感じ…そろそろ「敵」の主力に近づいているわね
信濃:
「……鏡面海域……」
紀伊:
「きょうめんかいいき」?…なんだ、それ?
涼月:
多分アレのことじゃない?「敵」と戦うときにたまに起きるよ、天気がおかしくなったり、こっちの子と似た「敵」が出てきたりして
熊野:
へーそれで「鏡面海域」っていうんだ
信濃:
(……「敵」は、セイレーンでは…ない?)
(あの「アンチエックス」は、もしや……)
高雄:
まずいな…ユニオン艦隊との連絡が完全に途絶えた
紀伊:
ユニオン艦隊どころか、こっちのいくつかの艦隊からも定時連絡が来なくなったわ
信濃:
「……『敵』の本隊は……まだ先…」
神通:
ええ、私もそう思いますわ。今まで遭遇した敵はあくまで敵の偵察部隊、本隊はまだ先です
ただ、この規模の敵が偵察部隊って……
信濃:
「……例え燃え尽きようとも…」
高雄:
……このまま戦えば間違いなく、燃え尽きるな
信濃:
「…ええ、燃え尽きて、灰と化そうとも……」
高雄:
…いいや、拙者たちは灰にならぬ。例え燃え尽きようとも、人類の灯火を守らねばならぬ
熊野:
高雄……
高雄:
それが砲火の光だろうと、拙者たちの力はこの闇に光をもたらすためにある。決して「余燼」ではない…!
信濃:
(……!)
(……「余燼」…この夢は…もしや…)
高雄:
信濃殿、「切り札」の発動タイミングは任せる
信濃:
「……ええ」
「敵」は文字通り「波」となってやってきた。
信濃:
(やはり「夢」でははっきりと見えぬ…)
(知り得ているのは…恐ろしく、強い…こと……っ)
それは「海」そのものをも超越し、まるでこの星のいかなる存在をも蹂躙できる破壊の嵐を放つ「獣」。
█ █ █ █:
▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ■■■■▋▌▊▎▇
信濃:
(あれが…「敵」……)
天を突くほど巨大な、鋼鉄を思わせる黒光りする巨体がゆっくりと圧殺しにきているように見えた。
信濃:
(……っ…)
█ █ █ █:
▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ■■■■▋▌▊▎▇ ▊▇ ▊ ▊▇ ▊ ▊▇ ▊▊▊▊▊
千代田:
信濃さん!護衛艦隊が突破された!
樫野:
そんな…!どうしてこの海域にあのような「敵」が…!
千歳:
【ワタツミ】を狙っている!信濃さん、しっかり…!
信濃:
(重桜を…みんなを…人類を守るのが妾の定め…)
(いいえ、「定め」ではなく、果たすべき「務め」…)
(精魂果つるまで、戦おう……!)
―――――!!
無数の火薬による爆風に包まれ、鋼鉄の巨躯はついに止まり、「敵」は初めてよろめいた。
信濃:
(この力は……今の妾なら、「勝てる」……!)
しかし、一体倒れようが、また次の「敵」が波とともにゆっくりと近づいてき、そして黒い「壁」となって立ちはだかる。
――――まだ足りない。
信濃:
(妾は艦船、人々の思いで具現化され、願いを背負って戦う兵器)
(妾は重桜を思い、仲間を思い、そして救わんとする存在)
戦いはそう長く続かなかった。
信濃:
(千歳、千代田、樫野、紀伊、熊野、涼月、能代、みんな……)
――まだ一つだけ、ピースが足りないのだ。
█ █ █ █:
▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▇ ▊▎▇ ▊▇ ▊ ▊▇ ▊ ▊▇ ▊▊▊ ▊▇ ▊▇ ▊▇
信濃:
(これが、この「世界」の「信濃」……)
(また一つ、夢のカケラが連なっていく……)
(嗚呼、幾度も観た破滅の夢、いと悲しく、虚しく、無力……)
(妾に足りぬ「ぴーす」は、いずこに…)
信濃:
(…ここはまた、異なる「夢」……海……?)
(雪風、浜風に磯風……この風景はたしか…呉への途中…)
(刻印されし妾の「記憶」…妾の「初航海」…)
(連なるカケラが、時間の糸で繋がっているとすれば――)
(これこそ「最初」にして、妾を形作る「素体」)
(妾を「信濃」足らしめるリュウコツの「カンレキ」――)
浜風:
信濃さん…信濃さん?んー、よく寝た?
信濃:
「あ…妾はまた眠っていた……?」
磯風:
うん!ぐっすり寝ていた!さすが大将、敵に見つかっても全然動じないね!
信濃:
「時間は……?」
浜風:
そろそろ8時よ。ユニオンの潜水艦の痕跡を見つけてから、信濃さんの指示通り陣形を変えているよ
信濃:
(体に力が入らない……)
(艤装は急ごしらえのように至る場所にツギハギで…艦載機もなく、主機はかろうじて動いている)
浜風:
緊急の回航だから仕方ないけど、呉に着いたらちゃんと艤装を完成してもらって、艦載機の発艦も慣らして…
磯風:
ユニオンにギャフンと言わせよう!
信濃:
「…ええ……」
(「夢」の中では、背中を合わせることも、相争うことも…)
(これも……「夢」ゆえのことか……)
信濃:
(この「世界」もまた、妾の知っている「世界」のいずれとも異なる…)
(【ワタツミ】も、祭儀もなく…自身がフネか、それともヒトか、その境界線すら薄れている……)
(フネとして生まれ、そして戦いで沈む)
(艦船は「メンタルキューブ」から生まれる存在… されどセイレーンの影に怯えぬ「世界」でも、艦船たちは生活している…)
(メンタルキューブ、セイレーンとの戦いの折に発見され、セイレーンとの関わりを疑う者もいるが…)
(もしや、その関わり、最初から偽りだと申すか……)
(……そう思ふのは、早計かもしれない…ここは「夢」、いわば、セイレーンが操る「世界」の一部やもしれぬ…)
(……セイレーンが己の存在を敢えて隠した、という推理も……んっ……)
雪風:
雪風様の帰還なのだ!
信濃さん、もう起きたのか?
信濃:
「ええ、起きてはいるが……」
雪風:
そうなのか…信濃殿だけじゃなくてみんな元気ないのだ……
磯風:
もう夜10時だから、磯風も眠い…雪風は疲れないの?
雪風:
あーはっはっは、大人の雪風様はいつも元気なのだ!あんたたちのようにそう簡単に眠くならないのだ!
浜風:
いつも早く寝てしまうくせに…偵察の状況はどう?
雪風:
頼まれた3つの方向に敵はいなかったのだ
浜風:
おかしいわね…ユニオンの潜水艦を捕捉してたのに、もう諦めたの?あと一つの方向もよろしく頼むわ
信濃:
「いいえ…敵はあっちに……」
雪風:
そうなのか?雪風様が偵察したときはいなかったのだぞ?
浜風:
幸運にも敵に出会わなかった雪風ってわけね…
磯風:
信濃さん、再び敵の潜水艦の反応だ!たかが潜水艦一隻、この磯風が……
信濃:
(ええ、磯風に任せ……)
――これは罠だ。
信濃:
(罠…?何故、このような声が……?)
――回航計画はすでに解読されている。すべては敵の手中にある。
信濃:
「磯風、控えよ……」
磯風:
信濃さん?
信濃:
「狼の群れに遭遇しないよう…早よう…回避を……」
雪風:
こちらの速力は敵の潜水艦よりずっと早いのだ!このままいけばすぐ撒けるのだ!
磯風:
進めー進めー大義は我らにありー西軍を討とうー♪
浜風:
……どこから出てきた西軍よ、それ
磯風:
あ、信濃殿?急に速度を落としてどうしたの?
信濃:
「動力が…少々不調な様子……嗚呼、全速力では…」
浜風:
やっぱり工期を繰り上げたのがよくなかったわね…
雪風:
大変なのだ!信濃さんの速力だとユニオンの潜水艦に追いつかれるのだ!
浜風:
そのようね…!もう潜水艦の信号を捕捉したわ!
信濃:
「さっきついてきたのと…同じ子か……?」
浜風:
それは…わからない。もしかしたらもう囲まれているのかも……
――すぐに逃げて。潜水艦のいる方向から離れるんだ
信濃:
「みんな、反転し…敵潜水艦から距離を……」
(さっきの「夢」から聞こえた声は…一体……)
信濃:
「注水作業、実施できず……嗚呼、装甲空母の装甲を持ってしても、斯様なことになるとは……」
―――!
信濃:
「わずか4発の被雷で、妾は…信濃は……」
(未完成の艤装に、艦載機すら載せず…このような回航は狙われる定め……)
(これが妾の…「信濃」の…フネとしての定め……)
(されど、「夢」なのに、何故この身に起きているような実感を……)
(これで、「カケラ」がまた一つ……)
(リュウコツに宿りし「過去」もまた、妾――「信濃」の力の源にして、定め……)
(連なる夢は、終わらない…まだ「カケラ」…いいえ、「未来」を変えるには……)
(果たして…何を求めれば…)
信濃:
(温かい日差し、小鳥のさえずり、風と自然の香り……)
(……ここは………?)
ラフィー:
Zzzzz……
信濃:
(……この子は…?)
ラフィー:
Zzzzz……
信濃:
(この耳は……いいえ、この耳は、ニセモノ…)
ラフィー:
ラフィーは、寝てない……うん、寝てない……
信濃:
(ラフィー…?名をラフィーと言う……あっ)
ラフィー:
ラフィーはユニオンのラフィーだよ。信濃も一緒に寝てた
信濃:
(ユニオンの…ラフィー…)
ラフィー:
ラフィー思い出した。皆を港に集めるよう、指揮官に頼まれた……
ほかの子も呼ばなきゃならないから、もう行く…
信濃:
(敵意も警戒も感じない…まるで一緒にいるのが、当たり前のよう…)
(ユニオンと重桜が仲間の、「夢」……ここで観ているのは、一体……)
信濃:
(あそこにいるのは……?)
紀伊:
はああああ!!
プリンス・オブ・ウェールズ:
さすがの太刀筋ね。座学より剣戟戦闘のほうが得意…というだけはあるわ
デューク・オブ・ヨーク:
ふふふ、ウェールズ、よもやそなた怯んだとは言わないでしょうね
樫野:
こ、これは「エキシビション」ですよね…??
デューク・オブ・ヨーク:
勝利もヴェヌスの形――たとえエキシビションでも、ただの演舞で終わるより競わせたほうがより美しくなるわ
プリンス・オブ・ウェールズ:
「鍔競合い(つばぜりあい)こそ殺陣の華」と聞いたことがあるわ。――あなたも相手がいたほうが都合が良いでしょう
紀伊:
もちろんよ。あんたに勝って、この話を駿河と飲む時の肴にしてみせるわ
プリンス・オブ・ウェールズ:
そううまく行くとは思わないことね?さあ、かかってくるがいい!
明石:
ちょっと待つにゃ!対抗戦をやるならもっと人を集めたほうがいいにゃ!
熊野:
そうだ!鈴谷にも連絡して来てもらお!
明石:
ムフフフ、どんどん人が集まってきたにゃ…重桜とロイヤルの異種剣撃試合エキシビションマッチにゃ!一儲けするにゃ!
信濃:
(はあ……)
紀伊:
あ、信濃さんも見に来たの?これは負けられないわね!
信濃:
(え、ええと……これは何事なのか……)
樫野:
信濃さん、大丈夫ですか?港へ行くのでは…?
紀伊:
まだ時間があるし、別に少し寄り道をしても構わないでしょ
信濃:
「ああ…妾には、務めがあるゆえ……お詫び申す……」
信濃:
(どうやら…雰囲気に流されそうになるも、逃げ出せたようで……)
(妾の知っている「世界」とは異なる、この居心地の良さは……何故……)
(あの建物は……)
アマゾン:
今学期の授業はここまでだ!夏休み中は安全に気を付けろ!宿題もちゃんとしろよー!
みんな:
はーい
新月:
ふぅ…これで授業は全部終わって、あとは今日の演習だけですよね…?
花月:
はい!ようやく一日中お花の世話ができるように…うぅ…どの花から始めるべきでしょうか…
涼月:
もう、宿題があるって言ったじゃない!…わわ!プー太、出てくるのが早いって!
花月:
えっと、アマゾン先生にバレるのがこわいのでしたら、プー太を寮に置いてきてはいかがでしょうか…?
涼月:
プー太だってひとりで部屋に置いていかれたら寂しいよね~。指揮官に預けてもいいけど、でもそれじゃ指揮官に迷惑か…
花月:
よかったら私がお預かりしましょうか?ひまわりの種とかをあげたら落ち着くと思いますよ
涼月:
本当?!助かるよ~考えとく!
信濃:
(駆逐艦の子たち…授業に参加している……)
(重桜の子だけでなく、ロイヤルの子も…これはもしや、「アズールレーン」が再度一丸となる「夢」……)
(嗚呼、仲睦まじいこの風景…これが「夢」でなければ、如何ほど……)
(…物陰に、駆逐艦たちを見守っている人……?)
アーク・ロイヤル:
うわ!?な、なんだ??私はただ駆逐艦の妹たちが下校しているのを見守っているだけで別におかしくも何ともないぞ!
信濃:
「そう弁明されると…かえって疑わしく……」
アーク・ロイヤル:
いやほら、駆逐艦の妹たちに元気な子が多くてな、こう一気に走り出されてぶつかったら危なくなるのだ!だから誰かが見守らねば!
信濃:
(は、はあ……)
アーク・ロイヤル:
そういうわけだ!信濃だって何かにぶつかったことくらいあるだろう!分かるはずだぞ!
信濃:
(よく…解せない……)
工房らしき場所にやってきた。
千歳:
信濃さん?艤装を修理しにきたの?
信濃:
(ここは…修理施設……?)
千代田:
修理ならそこで突っ立ってないで早く中に入った入った!私と千歳姉も同じ用だから!
夕張:
…むむ、科学部に何か用?
千歳:
エレベーター、ちょっと不調。すぐに演習があるから直してほしい
千代田:
こっちは主機のほう、もうちょっと出力が上がるよう頼むわ!
夕張:
即発注即納品は基本請けたくないけど…しょうがないね
千代田:
ごめん!信濃さん、こっちが終わったらすぐ信濃さんの番だから!
千歳と千代田、そして夕張は工房のどこかに消えた。
信濃:
(明石……?さっき紀伊たちのところにいたはず……)
明石:
?どうして驚いているにゃ?あそこは饅頭たちに任せたにゃ。ほっといてもモノを売ってくれるにゃ
信濃こそどうしてここにいるにゃ?どこか具合でも悪いのかにゃ?
信濃:
「…………」
(体の調子は万全……前の「夢」と打って変わり、生まれ変わった気分……)
(念の為、一回診て頂くとしよう……)
明石:
にゃ?やっぱり身体検査がしたいのかにゃ?
信濃:
「ええ……」
明石:
別にいいにゃ。信濃は大事な艦船だから無料で診てあげるにゃ
別にどこも具合は悪くないにゃ。バッチリにゃ
信濃:
(やはり…この姿は「あるべき」姿……そして、この力も…)
明石:
そう言えばこれから指揮官のところに行くところだったのかにゃ?明石の新商品のチラシを……
あれ?信濃はどこに行ったにゃ??
信濃:
(大きな敵もなく、脅威もなく、争いもない……)
(「レッドアクシズ」…いいえ、「アズールレーン」の存在すら希薄した「平和」な世界……)
(この「世界」の妾も、明石の言う通り、本当の「妾」に一番近い……)
(嗚呼、これこそ、妾が探し求めた「真実」……破滅を避け、重桜も、人類も救われる「未来」……)
(ようやく、この「カケラ」を……)
不意に、目の前の風景が一変した――舞い散る桜の彼方に、「いるはずのない」彼女がそこに居た。
信濃:
(天城……さん……嗚呼、重桜の皆が…赤城が、そなたをどれほど……)
天城:
信濃…?どうしてここに?
信濃:
(妾は……)
天城:
どうかしましたか?あなたがそんなに驚いたような表情をするなんて…いいえ、驚いただけではなく、嬉しいような、悲しいような…
私の知っている「信濃」なら、そんな顔を見せることは決してありませんわ。ふふふ
信濃:
(妾のことを…もしや、察している……?)
天城:
私の目の前にいる「信濃」は、きっととても遠い場所――げほ、げほ…
信濃:
(……!!)
天城:
大丈夫、ただの持病みたいなもので…その顔から察するに、あなたはもしや「私」とは会ったことがありませんね?
…ここの「信濃」なら、この病気のことを知っていますし、あなたのように心配してくださいませんもの。ふふふ
信濃:
(…………………)
天城:
ここにやってきた理由はわかりませんが、でもその様子を察するに、今までさぞ辛い戦いをしてきたのでしょう
信濃:
(妾は……ただ「夢」のカケラを集めて、そして「未来」を求めて――)
天城:
安心して。ここはあなたにとっての「夢」だけじゃありませんわ
大切なのは「夢か現か」ではなく、あなたがヒトとして――「夢」を観るものとして、「幸せ」を感じているかです
あなたがそう望んでいる限り、例え刹那の夢であっても――――それもきっといつか「現実」にすることができましょう
信濃:
(妾が観る「夢」を…「現実」に……)
天城:
ええ、あなたがそう思っていれば、きっと。胡蝶の夢は、あなたが思うことで観れますもの
信濃:
………………妾は…
天城:
少し心配そうな表情をしていますね。ふふふ
信濃:
……あっ…
天城:
では一緒に参りましょう。あなたが探し求めるものがきっと、そこにあるはずです
母港周辺・演習海域
紀伊:
天城さん?これはすごい助っ人を連れてきたわね…
天城:
あくまで信濃の補佐として、ですよ。急に参戦しましたら不公平でしょう
千代田:
でも、信濃さんに天城さんって…負ける気がしないかも
千歳:
指揮官の艦隊には油断は禁物
涼月:
信濃さん!艦隊の準備はできているよ!いつでも命令を!
―――――!!
信濃:
……目標、討ち果たしたと見ゆ……次は…
熊野:
信濃さん、いつもと違ってすごく思い切って戦ってるわね…!
千歳:
おかげで指揮官も、信濃の動きに集中せざるを得ない。…今は、動ける
涼月:
でも流石に信濃さん一人に敵をいつまでも引きつけるわけにはいかないよね…大名出陣、危うし!
紀伊:
分かってるわ!ここは駿河みたくうまく二番手に徹する…!
ラフィー:
信濃、こっち……
信濃:
ユニオンの駆逐艦・ラフィー……っ……
天城:
信濃、どうかしました?急に動きが変わって…
信濃:
…………天城…
天城:
弾薬について気になることはありませんわ。演習弾はタンコブができるかもしれませんが…
信濃:
いいえ…妾は…演習とはいえ、このような平和な世界で本当に戦ってもよいのかと…
天城:
………あなたがそう望むのでしたら、戦うも戦わないもあなたの自由です
信濃:
ええ……ただ、私の観た「夢」は、「世界」が異なっても同じく「事実」…なれど拾えるのは刹那のみであり、この「夢」の行き先など知り得ることは……
天城:
なるほど、あなたは私たちのことを案じて
信濃:
「アズールレーン」も元々一つの陣営、「レッドアクシズ」の出現により世界は引き裂かれ、お互いの思いこそあれど――
天城:
敵として、ついには反目に至ることに……
それも信濃、あなたの意思に関係なく、定めとして起きたこと…そう思うのでしょう
信濃:
……妾は「夢」を観ることのみで、ついぞ現実に干渉することが叶わず…
この夢を現へと変えたくとも、それを如何にして……
天城、妾に教えてくださいませんか……
天城:
ええ、もちろんです。「天城」として、あなたの力になりましょう
この母港には、いいえ、この世界には、とある存在がいますから――
千代田:
艦隊の東より敵潜水艦隊が接近!空から艦載機も…!
千歳:
信濃さんを誘い込んで各個撃破、狙い通りね
紀伊:
やっぱり頭を使った作戦は駿河のほうが得意ね…相方の子にも私にもこういうの最初から無理だわ
あ、信濃さんと天城さんが戻ってきた!って信濃さん珍しく爽やかな表情をしてるわね
天城:
皆さん、お疲れさまでした
信濃:
皆の演習での協力に、お礼を申す……
熊野:
お礼なんて大げさな~平和なのはいいけれど体が鈍っちゃうから、たまにはこういう演習あってもいいかもね☆
樫野:
さあ皆!そろそろ母港に帰ってパーティーの準備よ!今日はサディアの子の歓迎会があるもんね!
天城:
ふふふ、それは楽しみですわ。ね、信濃?
………幸運を祈っていますわ。夢見る胡蝶に幸せな未来を
そして、赤城のことを、加賀とともに頼みます――
信濃:
(連なる夢は、これで最後……永遠に覚めたくないほど、幸せな刹那…)
(妾たちは艦船、思いを映されし鏡にして、想いを、願いを叶えられるヒト……)
(そして、争いを止め、あらゆる陣営の間を取り持つ力…破滅の未来を回避できる「指揮官」…)
(そなたと一緒なら、この思い出も……)
(きっと、「夢」ではなく――)
紀伊:
信濃さん、起きたの?
信濃:
ええ…眠ってしまい、お詫び申す……戦況は……?
紀伊:
?戦況って…今祭儀の島から出発して、量産艦で休んだばかりだよね…?別に敵となんて遭遇していないわよ?
信濃:
(嗚呼、妾としたことが、夢でないことに気づかず…)
(…刹那を観る胡蝶が荘周と為れば、このような…)
能代:
信濃さん、よくお休みになれましたか?
信濃:
ええ…長い、長い夢を……心配をかけたこと、お詫び申す……
能代:
いいえ、とんでもございません
熊野:
(信濃さん、ちょっと雰囲気チェンジした?)
涼月:
(眠そうなのは相変わらずだけど、なんか垢抜けた気がするね…あああ良く寝たーって感じかな?)
信濃:
…妾の顔に、なにか……?
涼月:
なんでもない。ごめんなさい気のせいだった
信濃:
……気になることがあったら、どうぞ遠慮なく…
紀伊:
きっと気のせいよ。信濃さんは安心して休んでいて
信濃:
………重ねて、心配をかけたことに、お詫び申す…
紀伊:
あ、あははははは……
熊野:
まあ別に今回は本島まで回航するだけだから、なんにも起きないよ!楽々~!
涼月:
何が起きても、この涼月、命をかけてお守り致す!なんてな♪
紀伊:
まあ私は言うまでもないわ。一応この艦隊の旗艦ね
信濃:
能代は………
能代:
え、ええ、今は信濃さんの下に転属していますので、お守りするのは当然のことです
では、引き続き……
信濃:
ええ、そろそろ…定めにある場所に……
紀伊:
前方に重桜艦隊…千歳と千代田、そして樫野たち輸送艦隊ね。私たちと同じく本島に向かっているわ
信濃:
定めは交わり、旅は道連れ…ともに本島へと参ろう……
涼月:
あ、はい!
千歳:
信濃さんの回航に同行できて、光栄
千代田:
私も!
信濃:
…長く眠っており、心配をかけたこと、お詫び申す……
花月:
そそ、そんなことありませんよ!
信濃:
(樫野が運んでいる積荷に、力を感じる……これはもしや……)
樫野、その積荷は如何なるものか……?
樫野:
はい、補給物資と、連合艦隊への小包です
信濃:
赤城、それとも長門様からの命で……?
樫野:
どうでしょう…私は上層部からの命令を受領しただけなので…加賀さんからなにか聞いてはいませんか?
信濃:
……いいえ、特には……
千代田:
(信濃さん、こんなに気を使ってくれる方だったっけ?)
涼月:
(どうかな…優しい人だったけどここまで細かいことに気を使ってくれるような…)
熊野:
(もしかして伝説の「寝ながら祭儀を仕切ってた」のもこんな感じ?)
能代:
(そんな事実はありません)
紀伊:
千歳、これより艦隊と合流するわよ。輸送物資は何なのか知らないけど、あんたたちが護衛につけられている以上、貴重な品に違いないわ
千歳:
同じく、信濃さんのお守りも、おまかせ
千代田:
これで大艦隊結成ね!私が活躍する機会は減るけど千歳姉と一緒なら我慢できるわ!
信濃:
……セイレーンの鏡面海域は、ここから……
千代田:
鏡面海域?確かに突然現れるものだけど、それって信濃さんの力で予測できるの?
能代:
私にもわかりませんが…信濃さんがおっしゃった以上、夢で何かを見知ったに違いありません
紀伊:
あまり自分らしくないけど、セイレーンのこととなれば慎重になるほかないわね。信濃さん、ここは指揮をお願いしても大丈夫?
天城:
………幸運を祈っていますわ。夢見る胡蝶に幸せな未来を
信濃:
(…夢を…「再現」を変える力を妾に…!)
熊野:
やばっ、鏡面海域の発生だけでなく、敵の配置も言い当てるなんて…!
涼月:
なんで本島からわざわざ出迎えの艦隊を派遣したかが納得できたよ…
樫野:
本当に危なかったです……
信濃:
いいえ、この力は不安定…幾度も使えるものでは…むしろ皆を巻き込んでしまい、お詫び申す……
千代田:
そんなことないよ!信濃さんがいなければみんな待ち伏せされて全滅だったわ…!
千歳:
本島にこれほど近い距離でセイレーンが出現するなんて…信濃さんと積荷、やはり狙われてるのね
信濃:
……護衛に感謝を申す
紀伊:
しかし、敵の待ち伏せを見破ったのはいいけど、あの規模の大艦隊の包囲は輸送艦隊を抱えながら突破できるものじゃないわね
樫野はいいが、足の遅い輸送艦をどうやって守り切るか…悩ましい!
信濃:
あとしばし待てば…テスターの艦隊が現れると思ふ
指揮ユニットさえ倒せば……
テスター:
大和型から改造された装甲空母、重桜の機動艦隊の希望なのにこの程度のデータしか取れないなんて
信濃:
既に「夢」で観た敵、敗北することなどありはせぬ
テスター:
演算された結果とは違うのね。面白い
信濃:
理を図る演算など、妾の想いに届くはずが……!
テスター:
(困ったわね。演算結果とこんなに違うならテストするにも条件が揃わない。それに覚醒かと思ったけど「指揮官」との接触もないようで)
なるほど、あなたも端末と同じく「観測」できるようね
信濃:
(観測端末…もしや、テスターと同じくセイレーンの個体……)
テスター:
ピュリファイアーのマネ事はしたくないけど、アビータたちの前座として端末もどきを潰すデータを蓄積させたいわ
信濃:
(……やはり、今は熟考する時にあらず…)
戦いを求めるなら、退きはしない――仲間を、重桜を、そして人類を守る艦船として…
精魂果つるまで、妾の務めを果たそう…!
信濃:
涼月、花月、潜水艦の警備を――
涼月&花月:
はい!
信濃:
千歳、千代田、艦載機での制空、お願い申す――
千歳&千代田:
はい!
信濃:
余人は、待機を――
熊野:
よっしゃ!…って待機??
信濃:
テスターの反転を待ち、一挙に猛襲し、それを撃破す……!
紀伊:
分かったわ!ふふん、強敵を追い詰めて、一挙にそれを撃破する――そういう状況はいいわね!
信濃:
皆、妾にもう一度ご助力を……!
テスター:
装甲破損、エネルギー供給線路破損、子プログラムに重大エラー発生――
テストデータ、中層プログラムに送信、覚醒に近しい反応を観測するも覚醒状況を認めず、演算システムに不具合発生の可能性
信濃:
(そなたたちセイレーンこそ、「アンチエックス」…そしてあの「夢」で観た光景の艦船と余燼は一体――)
テスター:
(あなたに教えられる情報などないわ。残念ね)
信濃:
(…………)
(……ええ、なれば己で答えを探し出そう……)
涼月:
敵将討ち取ったり――!テスターを撃退したよ!
樫野:
輸送艦隊の損傷も軽微です…!これで安全に本島まで帰れますね!
千代田:
千代田、信濃さんのせいであまり活躍できなかったわね…
信濃:
…嗚呼、これで一つ、定めを乗り越えた……
能代:
(信濃さんの力、制御できないとはいえ強烈です。なぜ彼女を今まで本島に迎えるのではなく、あの祭儀の島に安置していたのでしょう…)
熊野:
これは今日のタイムラインに載せようね!最上にとりあえず送信送信っと!
紀伊:
こっちも伊勢と飲むときの土産話ができたわ!あーあ、駿河もいればなぁ……
信濃:
(……………………)
(祭儀の島より出立して半日経たずして斯様にも夢を旅し、そしてセイレーンを撃破するに至り…)
(仲間たち、そして「夢」で観た数々の未来は妾の力となった……嗚呼、これも妾の定めというのか…)
花月:
信濃さん?みんなが出発の命令を待っていますよ?
紀伊:
もはや目覚めたばかりの護衛対象じゃなくて、共に戦う仲間だからね。ここは信濃さんに一声をかけてもらうことにするよ
「本島まで、ヨーソロー」ってね!ふふふ
信濃:
(よ、よーそろー……)
(セイレーンの狙いは妾だけにあらずとすれば、輸送船団の積荷、そして妾が観た破滅の「夢」…それを変えるには、夢ではなく、現実で……)
………信濃の名にかけて命ず…皆、本島まで出航を――
重桜本島・某所
赤城:
オブザーバー、いるのは分かってますわ
テスター:
うふふ、こんな場所に呼び出すとは、随分と用心深いようね。そんなにこちらと話しているのをバラされたくないの?
赤城:
最初から知っていましたわね。宝器【ワタツミ】と信濃の力に関係があることを…
テスター:
あなたがそれについて何も聞いてくれなかったもの
それになにが不満なの?鉄血と取引して無事欲しいものを手に入れたし、信濃も目覚めたし、いいこと尽くめじゃない
赤城:
そしてそんな目覚めたばかりの信濃がテスターの襲撃に遭う――全く、加賀の助言を聞いていてよかったわ
テスター:
悲しいわ。あなたのカミへの信心はその程度だなんて
赤城:
あなたたちは断じてカミなどではありませんわ。利用する相手に信心を語るなど、ふざけているにもほどがあります
二度は言わないわ。これ以上信濃を襲うような真似は止めなさい
そして重桜周辺のすべての鏡面海域の場所を教えなさい。最初から約束していたはずよ
テスター:
随分と酷なことを~私たちはただ、あの「楔」がどこまで利用できるか調べたかっただけなの。観測出来ない個体が、どこまで私たちの演算を上回れるか…ね
まあいいわ。あの子のことは放っておいてあげる。テスターの一件は、機能プログラムの予期せぬエラーだと思ってちょうだい
…あら、どうやらお客さんが来たようね。先に失礼するわ。元気でね、赤城
赤城:
……セイレーン、重桜の領域をまるで我が家のように土足で踏み込んで…
私があなたたちをいつまでも泳がせるとは思わないことよ……!
ピュリファイアー:
あーあ、ようやくこっちにも来やがったなーどうすんのオブザーバー、大ピンチだよ~
オブザーバー:
各観測スポット、処理リソースをセンサーに回しなさい。すぐに来るわ
3………2………1………
ゼロ。
コンパイラー:
ええ、来た。目標は3つ、識別子照合完了、エネルギーレベル記録完了
オブザーバー:
上手くいったわね
オミッター:
?これがアビータ?思ってたよりぜんぜんしょぼいじゃねぇか!
コンパイラー:
嵐か津波か何かと勘違いでもしたの?
オミッター:
オーラがねぇんだよ!なんかこうやっべぇ奴が登場って感じがなくて拍子抜けだぜ
コンパイラー:
向こうの目標は「コードG」、「余燼」。目的は実験場の影響低減、演算精度向上。騒ぐのは不本意
時間と場所を知らされていなかったら観測が不可能。エネルギー変動は微小だから
ピュリファイアー:
逆に言えば、こいつらがこの時間軸を行き来しても足跡が掴めないってこと?
あーこわいこわい
テスター:
アビータはこちらとは別プログラムよ。「零」も下位プログラムである私たちにいちいち教える必要などないわ
あっちが「コードG」にのみちょっかいを出すというのなら、こちらの計画を邪魔する可能性は低いと思うけど?
ピュリファイアー:
つまり面倒事を押し付けるのに一番もってこいなやつからかー。ようやくあいつに邪魔をされずに動けるぜ!はははは!
オブザーバー:
(ほかのオブザーバーたちとの交信が禁止されているから、ほかの時間軸の様子はわからないけど…「零」がここにリソースの多くを割いているのは間違いないわ)
(この時間軸での「楔」も不確定要素があまりにも多い――それに「指揮官」の存在も)
(「ソウゾウシュ」そして「シンパンシャ」――あのお方たちの狙いがようやく見えてくるのかもしれないわね。うふふふ……)