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碧蓝回忆录日服文字版/神穹を衝く聖歌

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2021-08-16更新

    

最新编辑:芙兰朵露琪露诺

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更新日期:2021-08-16

  

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芙兰朵露琪露诺
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神穹を衝く聖歌

邯鄲の幻像展开/折叠


これは夢…なのか
ジャン・バール:
ヴィシア聖座旗艦ジャン・バールが全艦に告ぐ!
ここは落ちた!異教徒たちが祖国に侵入してくるだろう。
鉄血や帝国の連中だけがオレたちを陥れようとしているのではなく、
本部までもが我々ヴィシア聖座を壊そうとしている!
そもそも、クビール港でのこともそうだ――
ダンケルクたちが敵対していないにも関わらず、
アズールレーンから攻撃された時点で、既に答えは見えていた!
そんな偽善者どもに、オレたちは絶対に従わない!
ヴィシア聖座は今存亡の危機に直面している――我々の周りには敵だらけだ。だがそれがどうした!
命令を下す!全艦、直ちに自沈せよ!

オレは負けた。そしてヴィシアのプライドのために、仲間たちに自沈を命令した。
あのとき、戦艦ジャン・バールはたしかに沈んだ――そのはずだった。
しかし、違和感を覚える。
無へと帰ったはずの意識がまだこうして「存在」し続けている。
ならばここは天国、はたまた地獄なのだろうかというと、それもまた違う。
艦船である自分だと、ほかの場所に辿り着くかもしれないが……
少なくとも、この無限に広がる真っ暗な空間はアイリスにあるどの文献にも記載されていない。
ジャン・バール:
「――定命あるものには死がある。汝悲しむことなかれ。これぞ嘘偽りない輪廻の摂理」
「いつかは、違う自分に目覚めるだろう」
「それでも神には感謝したいと思う。素晴らしい国をくれてありがとう…と」
「この命を幸せにしてくれてありがとう」
「そして天国の海に迎えてくれてありがとう」
「この栄光がすべてのアイリスを継ぐものに伝わることを願おう」

暗い虚無の中で、意識だけがはっきりとしている。…奇妙なことに喋ろうと思えば、声も響くようだ
とはいえ、いくら艦船だろうと定命ある存在と大差ない事実は受け入れるしかない。
ヴィシア、アイリス、そしてリシュリュー姉さん…………
……今となっては果てしなく遠くにいる、大切な存在たちを思い浮かべる。
もう二度と、みんなと出会うことは――
???:
バイタル状況問題なし。 d'accord。そのうち視覚と五感が回復すると思いますわ

……その声……お前は……
???:
私が誰だろうとどうでもいいことですよ。重要なのはあなた、ジャン・バールですわ

オレのほうが……重要……?
???:
ええ、どうやらまだ意識が朦朧としていますね。状況を整理してあげましょうか?
さて、あなたが最後にいた場所を思い出してみて?

…ああ、オレはそこで自沈したはずだ
???:
そうです、鉄血にもロイヤルにも屈することなく、あくまでヴィシアの自主性を重んじたために、あなたは艦隊に自沈を命じましたね

ああ。よく分かっているな
???:
そして、ヴィシアの上層部は変わらず鉄血に執心し、アイリスもロイヤル――もとい、アズールレーン側にいるまま
あなたの自沈は勇敢であり、滑稽であり、悲劇であり――と、後世の人々は様々な評価をするでしょう。
そこはあなたも知っているでしょう。カンレキ…あるいはそうなると分かっていることでも、あなたは同じ選択をしたはず――
戦艦ジャン・バールのフネとしての人生は幕を閉じました。しかし彼女はまだ新しい人生の一歩を踏み出さずにいる……

………………
……ふざけすぎだぞ。テリブル
思いだした。オレはあのとき自沈しようとしていたが、救出されたんだ。
今はこうして回復を待ちながら、お前のくだらないお喋りにつきあわされている――だな?
???:
現況を分かっているようで大変喜ばしいことです。ジャン・バールさん?
私も同じ境遇でしたけど、こうして一足早く回復し、ジャン・バールさんの看病をアルジェリーから命じられていました
申し訳ございません。いつもの癖でついからかっちゃって

構わない。オレもこうして――
???:
して、「貴女の人生はまだ続くのでしょうか?」

……どういう意味だ?
???:
なんでもありませんよ。ジャン・バールさん
貴女はここでずっと縛られるような人でもありませんから
さて、「眠り姫様」の回復も確認しましたし、私も報告に戻らないと
じゃあねジャン・バールさん、貴女にもアイリスの素晴らしき空想を

「天を仰ぎ、よく見よ。頭上高く行く雲を眺めよ」
「あなたが過ちを犯したとしても 神にとってどれほどのことだろうか」
「繰り返し背いたとしても 神にとってそれが何であろう」
「あなたが正しくあっても それで神に何かを与えることになり」
「神があなたの手から 何かを受け取ることになるだろうか」
神穹(しんきょう)を仰ぐ、そして己の小ささを見つめる。
ああ、私たちはどれだけ罪深き存在なのだろうか――

礼拝日展开/折叠


セイレーンの紛争とは無縁と思われる南の大陸、その周辺の一つの海域。
人類の開拓に合わせて、文明もこの地に伝わっているものの、海権国たちから遠く離れていたために大きな戦いが起きたことはなく、その航路は細々と続いている。
平和なこの海はまだ知らない。闇に潜む暗流、そして来たるべき戦いを…
海を駆け、大陸のとある離島の方向へと航行している艦隊がいた。
モザンビーク海峡
フォーチュン:
ぜ、前方にセイレーン艦隊…!1、2、3…多数です!
ジャンヌ・ダルク:
海峡に入ったばかりだというのに、もう集まってきましたね
昔はこんなにいなかったはず……
リシュリュー:
ヴィシア聖座の勢力下に収められているわけですから、セイレーンの干渉も想像できるでしょう
イラストリアス:
カタパルト作戦のときといい、ヴィシアの勢力下にどうしてセイレーンが…
ベアルン:
あのときは確か、ダンケルクが「鉄血の差し金」のような口ぶりをしていましたな
イラストリアス:
あっ、ごめんなさい。私…
リシュリュー:
謝ることはありませんわ。あのときロイヤルのやり方を不満に思ったのは仕方のないことですが…
元を言えば鉄血がアイリスの本国を手中にしたのが全ての原因です。お互いの本部が作戦を下した以上、私たちもその結果を受け入れるべきです
今度は私たちアイリスで、ヴィシアを説得してみせます
イラストリアス:
リシュリューさま、あなたがこの作戦に参加したのはやはり……
リシュリュー:
ええ、偽善者だと罵られていようと、私は心を証明しなければなりません。神にも、そしてヴィシアにも
同じ古きアイリスを受け継いだ者同士、相争う必要などありません

そう言いながら、リシュリューは少し苦笑した。
イラストリアス:
ええ、お互い争うことなんてなかった、昔のアズールレーンのように――

情報共有展开/折叠

イラストリアス:
そう言えばまだ確認していませんでしたが、どうしてアイリスはここを作戦目標にしたのか、理由をまだ教えていただいていませんね
ヴィシアの駐留艦隊、そして鉄血の量産型、果てはセイレーンまで存在しているとは言え、
ヴィシアの本拠でもなく、戦略的な価値がある要所でもないこの場所をなぜ選んだのでしょうか?
……リシュリューさま、失礼を承知でお伺いしますが、
もしかしたら宗教的な価値があるのでしょうか?
リシュリュー:
イラストリアスさんはこの世界のアイリスの歴史をご存知でしょうか?
イラストリアス:
少しは聞いていますが、あくまでほんの少しだけです
リシュリュー:
そうですね。では情報共有をいたしましょう
ヴィシアとの和解、それは言うまでもなく、アイリスの至上目標であり、ロイヤルの方々にもそれは説明していたはずです
そして今回の作戦の目標は、我がアイリスの正統性の証明である「聖堂」の確保にあります
正確に申し上げますと、アイリスの正統性を象徴するとある場所の調査…できればアイリス勢力のみでの確保、というのが目的になります
本当はヴィシアと目的は同じはずですが…
イラストリアス:
鉄血もこの海域にいることが確認されていたから、ヴィシアの真意を問いたい、というのも目的の一つですね?
リシュリュー:
はい。この聖堂はあくまでアイリスのものです。本当はロイヤルの手をお借りすることなく済ませるべきでしたが、向こうには鉄血がついています
聖堂を確保するにしても、必要な戦力はアイリスのみでは賄えないのが現実です。ですから――
イラストリアス:
陛下を説得して、連合艦隊を編成してここにやってきた、というわけですね
リシュリュー:
ええ。そうです。出発時にお伝えしておらず申し訳ございません
アイリスとヴィシアのため。今一度お力をお貸しください――

敵と仲間展开/折叠


モザンビーク海峡・セイレーン膠着海域
ジャンヌ・ダルク:
イラストリアスさんにあの話を教えなかったのですか??
リシュリュー:
はい。今は隠したままにしたほうが得策かと
その情報を開示しましたら、ロイヤルの方も損得勘定を考え始めてしまいます
ジャンヌ・ダルク:
そうですか…リシュリューさんの判断には従いますが、ですが私もこれでロイヤルに教えられなくなりましたね
まさかこんなことになるなんて…ああジャンヌ、あなたはなんて罪深い子でしょうか
秘密を知らないとはいえ、大いなる父の教えに背いて、仲間に隠し事をするなんて…
リシュリュー:
(そ、そういえばジャンヌも知らないのでしたね…)
あの聖堂はアイリスにとって光輝く未来の象徴でした
そしてヴィシアと鉄血の手に落ちた今、その隠された影のような一面も暴かれようとしています
そのようなことは決して起こってはなりません。アイリスとヴィシアだけでなく、ロイヤルと鉄血のためにも、です
ジャンヌ、貴女にまで隠し事をさせてしまった私をどうか許してください
ジャンヌ・ダルク:
大丈夫です、リシュリューさん。あなたの行いは正しいと信じております
リシュリュー:
願わくば、今回の作戦ではヴィシアと戦うことなく、平和的に解決したいですね
同胞に剣を抜きたくないのもそうですが、なによりこの件に関しては、あの子たちにはなんの罪もありません
ジャンヌ・ダルク:
鉄血と組んだヴィシア、道が間違っていれば、その道を正せばいいと仰るのですね
私も同感です。平和的に解決ができることが一番です
……ですが、アルジェリーさんならともかく、あのラ・ガリソニエールは……
リシュリュー:
その時はジャンヌ、聖堂の奪還を優先しましょう
ヴィシアの子たちを武装解除して、時間をかけて説得するしかありません。難しいですが…
ジャンヌ・ダルク:
難しいですが、アイリスの導きを信じてやり遂げなければならない、そういうことですね?
リシュリュー:
……ええ。頼みます

仲間と敵展开/折叠


モザンビーク海峡・セイレーン膠着海域
ル・テメレール:
ピーちゃん、敵のセイレーンが大量に現れたよ!
ルピニャート:
私たちが聖堂に接近するのを阻止するつもりですね
ル・テメレール:
じゃあ先にセイレーンを倒せば、ヴィシアのみんなに会えるのね!
ルピニャート:
ルーちゃん、今は敵同士、のはずですけど…
ル・テメレール:
そういう感じなのかな…?ヴォークランちゃんたちとは最近も結構連絡してるよ?
礼拝の話とか、ピクニックの話とか、それと…
ルピニャート:
ルーちゃんは気楽ですね…一応アイリスとヴィシアは戦争状態よ。もし戦場で出会ったら…
ル・テメレール:
ピーちゃん、もしかして……
ルピニャート:
撃てませんよ…!でも今は作戦行動中だから、そういうのはやっぱり一旦忘れたほうがいいよ
ロイヤルの子に聞こえて変な詮索をされたら、リシュリューさんに迷惑をかけちゃいますから
ル・テメレール:
そうだよね。ロイヤルの子は…仲間だけど、やっぱりちょっと、んー…
ルピニャート:
ダンケルクさんとジャン・バールさんの件がありましたし、どうしてもお互い気を使っているところがあるから…
そう簡単に「はい仲直りー」と、できないのですよ
ル・テメレール:
……ダメダメ。今は難しいこと考えてる時間じゃないの!そういうのはベアルンさんに任せる!
今は目の前の敵を――セイレーンを倒すのが先だね!
ルピニャート:
うん、セイレーンを倒すのが先ですよ
行こう、ルーちゃん!

秘蹟兵器展开/折叠


聖堂の島
アイリスとロイヤルの連合艦隊がセイレーンと戦いを繰り広げている、その最中――
ヴォークラン:
アイリスとロイヤルの連合艦隊、聖堂外周海域に侵入し、セイレーンと交戦を開始!
ラ・ガリソニエール:
もう入ってきたの!?えへへ、これは結構楽しめそうだね!
アルジェリー:
枢機卿が腰を上げて動いてくださっているわけだから、みんな頑張っているに違いないわ
……それにしても、この「聖堂」を狙うだけのためにかなりの手勢を連れてきたようね
ラ・ガリソニエール:
「聖堂」を失うと楽しくなくなるからかも?
ヴォークラン:
そっかーここにアイリスの笑いの種が保存されているかー。いや、ないね。うん
…やっぱりわからない。なんでエウロパ大陸の場所ではなく、わざわざ遠路はるばるここまで来たの?
ここの「聖堂」って、たしかにアイリスにとって大事だけど、奪うとか、ちょっと考えられないよね
ラ・ガリソニエール:
上層部は一体何を考えているんだろうねー
アルジェリー、この「聖堂」を守るという指示、変なとこある?
アルジェリー:
ないわ。ただこの命令自体がちょっと不可解ね……「あらゆる方法を使ってでも聖堂を死守せよ」、と
ラ・ガリソニエール:
やっぱりアルジェリーもわからないかー。実はあたしちょっと調べておいたんだ
アルジェリー:
あら、そう
ヴォークラン:
興味あり!
ラ・ガリソニエール:
別になにも分からなかったわよ。「アッチ」の仕事の友達に聞いても、な~んにも
ヴォークラン:
えー
ラ・ガリソニエール:
まあもしかしたら単に昔落とした財布を取り戻そうってだけかも?アルジェリー、どう迎撃する?
ヴォークラン:
あのままセイレーンに撃退されればいいのにな~
ラ・ガリソニエール:
無理無理、あんなやつ、あたし一人でも楽勝だもん。枢機卿の連合艦隊を止めれるわけがないよ
せいぜい時間稼ぎだけしてくれれば上出来ってところかな?聖堂にどうやって近づけさせないか悩んだけど、結局これが一番楽だね
アルジェリー:
鉄血の量産型セイレーン、完全制御できないとはいえ、ねえ……
ラ・ガリソニエール:
あたしには関係ないことね。まあ、たしかに好奇心が湧くかもね。聖座と鉄血の上層部は今何してるのかーって

ヴィシア所属の艦船、ラ・ガリソニエールが視線を遠方のある「ヒト」に移した。
ラ・ガリソニエール:
今回の作戦のために配置された、聖座の秘密兵器……あそこにいるのがその子かな?
リシュリュー級の四番艦とか、聞いたことないよね…
ここに来てからずっとちっとも動いていないね~アルジェリーの命令は聞くけど、反応が薄いというか、よくわからないというか…
あの子って、本当に味方で合ってるんだよね……?
アルジェリー:
こっちは量産型も使い潰せられない状況だから贅沢言わないの
はい、作戦説明するから集まってー

躊躇展开/折叠


聖堂の島
ヴォークラン:
……な、なるほど、これがアルジェリーさんの作戦…!
確かに、ロイヤルはともかく、アイリスとの戦いをできるだけ避けたいのはわかるけど…
このまま艦隊を島の埠頭に引っ込めてっていくらなんでもねー……
アルジェリー:
じゃあヴォークランちゃんの「撃って出て、華麗なる槍捌きで敵をすべて倒す」のが作戦とでも?ロイヤルは躊躇いなく撃ってくるはずよ
ヴォークラン:
だからそれは冗談だって……なんというか、このまま降参するのは、なんだかね…
ロイヤルより、やっぱり鉄血のほうが好きだよ。わたし
ラ・ガリソニエール:
結局どうするの?
ヴォークラン:
そこはリシュリュー様を説得して一回引き上げさせてからこっちが撃って出て挟み撃ちして華麗なる槍捌きでロイヤルを倒すってことで!
ラ・ガリソニエール:
それ楽しそう!よし決まり!リシュリューの説得頑張ってね!ヴォークラン先生♪
ヴォークラン:
いやいや今のは冗談だから真に受けないってばー!!
アルジェリー:
はいはい、ちょっと真面目にやるわよー
まずは海上戦力。敵は戦艦だけでなく空母も2隻と勢揃いだから、セイレーンや量産型のフネを計算に入れても、戦力差があまりにも絶望的だわ
例の秘密兵器の子…ダメね。戦闘に参加してくれても使いこなせる自信がないわ
聖堂の防御施設の強化は完了したけど、制空権がない状態ではこちらの援護に集中させることができないわ。結局正面切って戦うのは無理ってことね
ヴォークラン:
……やっぱり降参したほうがよくない?
アルジェリー:
それはできない。ヴィシアの護教騎士の掟もそうだし、ダンケルクとジャン・バールたちの今の状態では、鉄血に疑われるようなことになるとまずいわ
だから枢機卿…アイリスの子たちが私たちと戦いたくない、という思いを利用するしかないのよ
それと、ロイヤルの戦力を分断させるわ。そしたら勝つことはできなくても、ある程度の実績を鉄血に示してヴィシアの立場を保てるの
ラ・ガリソニエール:
つまり…交渉する姿勢を見せて、まずロイヤルとアイリスの侵攻スピードを緩める
そして、敵の戦力を分断させた上で一気にロイヤル艦隊を叩くってこと?
アルジェリー:
そうよ。それにロイヤルの戦力を撃破すれば、枢機卿たちともじっくり話せるわ
ラ・ガリソニエール:
じっくり話す……?
アルジェリー:
ええ、枢機卿の艦隊をヴィシアに引き込められないか説得してみるわ。仮にできなかったとしても要塞の防衛施設で引き上げさせられる
私たちはあくまで聖堂を守るためにここにいる――それをアイリスの子たちに分かってもらえるわ
願わくばあのオルレアンの戦いのように勝ってみたいわね。ふふふ
ヴォークラン:
なるほど!さすがアルジェリーさんよく考えているのね~
…あっ、そう言えばジャンヌ・ダルクは今、向こうなんだ…
ラ・ガリソニエール:
ふふ、はははははは!
アルジェリー:
ふぅ…とりあえず作戦の概要は今言った通りよ。こんなに考えることになるなんて、本当に疲れたわ…

手を軽く叩いて、アルジェリーは笑顔でみんなを解散させた。
…戦いにはまだ迷いがある、見習い騎士のヴォークラン。
戦闘になれば「楽しいから」と手が付けられなくなるラ・ガリソニエール。
そして例の「秘密兵器」――考えることがまだいっぱいありそうだ。

自主権展开/折叠


聖堂の島・外周海域
ジャンヌ・ダルク:
セイレーンの防衛線を突破しました!聖堂と私たちの間に阻むものはもはや存在しません!
ベアルン:
量産型のセイレーン程度、聖堂からの火力支援なしでは問題にならないでしょう
ル・テメレール:
あ!あのセイレーンの艦載機、対空砲に撃墜された!?
ルピニャート:
鉄血のセイレーンでも、聖堂に近づくと攻撃されてますね
イラストリアス:
このあたりは鉄血とヴィシアの間の緩衝地帯、ということでしょうか
リシュリュー:
(「セイレーンは港に近づけさせない」――トゥーロンでも、あの子はそうみんなに命じてましたね)
イラストリアス:
(鉄血の味方をしていないのでしたら、交渉できるかもしれません)
リシュリュー:
(鉄血に本国を占領されては、ヴィシアの勢力丸ごとの反転は困難……)
(ジャン・バールはまだ向こうにいる以上、アルジェリーたちも…ですが……)
大いなる父よ、どうか私たちにご加護を――自由なるアイリスが、もう一度一つになるために!
……あっ。すみません、急に驚かせてしまいましたね
イラストリアス:
リシュリューさん……?
……ロイヤルとしても、その日が来ることを心待ちにしています

交渉要請展开/折叠

ジャンヌ・ダルク:
ここまで侵攻してきたというのに、誰も現れないのですね…量産型の艦すら一隻もありません
あのアルジェリーさんが指揮を取っているのでしたら、なぜ……
ル・テメレール:
ヴィシアの子たちも、やっぱり戦いたくないよね…
ルピニャート:
その可能性もありますね。もしかして聖堂で私たちを待っているかも…
通信機:
――――
ジャンヌ・ダルク:
ヴィシアからの平文通信です
リシュリュー:
平文…通信?
通信機:
『ヴィシア護教騎士団、騎士アルジェリーが侵入者に告ぐ
ここから先は我がヴィシアの領域、いかなる艦船の通過も禁ずる
直ちに進路を変更せよ。これ以上の接近はヴィシアへの敵対行為とみなす』
リシュリュー:
………………私から返事します
『こちらアイリス教国枢機卿リシュリュー。護教騎士アルジェリーに告ぐ。我に敵意なし、直接対話を望む』
通信機:
『ヴィシア護教騎士団、騎士アルジェリーが侵入者に告ぐ
ここから先は我がヴィシアの領域、いかなる艦船の…………』
ジャンヌ・ダルク:
自動音声のようですね
リシュリュー:
………………
ベアルン:
ヴィシアの量産型が出てきた上、防衛施設も動き始めました。…どうやら向こうは会話する気が無いようですね
ル・テメレール:
そ、そんな……
ルピニャート:
ルーちゃん……
イラストリアス:
リシュリュー、指揮はあなたに任せますわ
リシュリュー:
……各艦、量産型を撃破して、警戒陣形で聖堂に接近せよ!

思惑展开/折叠


聖堂の島・リシュリュー艦隊交戦開始より少し前
通信機:
ここから先は我がヴィシアの領域、いかなる艦船の…………』
アルジェリー:
…………ちょっと困るわね…
あんな感じで陣形が密集しては、分断させられないかも。ロイヤルも指揮官を渡すなんて思いっきりやっているわね
さて、ここはどうすれば良いのかしら
通信機:
――――
アルジェリー:
思ったとおり、リシュリューは戦いを望んでいないわ
だけど、時には物事がそう簡単にうまく運ばないの。ヴィシアもそれなりのけじめをつけないと
ヴォークランたちの配置は…みんな無事ね
あとは、私の番……
(念の為、聖堂で発見した「■■」も……)
……………………
量産型艦隊、前進、敵艦隊を迎撃せよ――!

選ばれた道展开/折叠


聖堂の島・外周海域
戦いはまだ続いている。
ル・テメレール:
量産型なのに、強い……!
ルピニャート:
それに聖堂の防衛施設から援護射撃…射程外に一旦退避して戦ったほうが良さそうですね…
イラストリアス:
敵は思った以上に強いですね…こっちの前進速度がだいぶ遅くなりましたわ
ヴィシア、どうしてここまで……
リシュリュー:
鉄血の協力があってかもしれませんが、聖堂の防衛施設が以前とは全く別物になっています
油断して進んでいましたら、それこそ集中攻撃されてしまいますね…!
イラストリアス:
アルジェリーさんがこの作戦を考えたのでしょうか…
リシュリュー:
アルジェリーはアイリスでも屈指の戦士で、こういう戦術にも通じていると聞きました
味方としているときはこの上なく頼りになりますが、こうして相対する敵になるなんて――
イラストリアス:
リシュリューさま…
ベアルン:
もう一つ。あの量産型の艦船はチューニングされていますね
普通の量産型なら、同じ艦型の性能は変わらないはず。一方ここにいる量産型は明らかに制式のものを上回っていると思われます
全部がチューニングされた艦ではありませんでしたが、少し混ぜるだけでも戦力を誤認させることができましょう
イラストリアス:
でも見た目に変わりはないですから、不思議な話ですね
ジャンヌ・ダルク:
なのにこの微妙な戦いづらさ…神の加護はこの量産型にも及ぶというのですか…!?
いいえ、これはもしや操っているアルジェリーさんの力…!?
ミカエルさま、これは一体……!
リシュリュー:
…………
ルピニャート:
もしくは、メンタルユニット……?
ベアルン:
…!いい着眼点ですね。いえ…メンタルユニットの艦船への作用効果はともかく、量産型の艦への影響については実証が……
いや待て。まさか…これが「聖堂」の……
イラストリアス:
聖堂の……?
(メンタルユニット…確かメンタルキューブの技術を応用した強化アイテムですけど、その機能は私たちも知らないところが多くて…)
(陛下も度々この話をしていましたけど、アイリスはなにか掴んでいるのかしら…)
(気になりますけど、流石に問い詰めるわけにはいきませんわ)
(ロイヤルとアイリスの共同研究なら…これはフッドさまに相談した方が良さそうですね)
ベアルン:
(秘蹟の研究、たしかロイヤルも参加しているはず…詳しく調べる必要がありそうですね)
リシュリュー:
メンタルユニットの研究なら、前の大戦からアイリスも行っていましたけど、途中で中止されたと聞きました
ベアルン:
……ここで考えていても仕方がない、と枢機卿様は仰りたいのですね
ジャンヌ・ダルク:
…………
話の途中で失礼ですが、その…この海域、なんといいますか…違和感を感じませんか?
まるで何かの靄に包まれているような…
イラストリアス:
そう言えばそうですね……
フォーチュン:
わ、わたしも……
ル・テメレール:
私は特に何も感じませんよ?
ルピニャート:
私も…変なマホウかも…?
ベアルン:
私めも違和感ありませんね。強いて言えば、艦載機を操るときはいつもより反応が微かに早いぐらいです
イラストリアス:
アイリスの聖堂ですから、よそ者である私だけが感じ取れる、特別な何かでしょうか?
リシュリュー:
(聖堂に封印されていた「秘蹟」…と同じ感触ですね)
(もしかして、ヴィシアは既に手に入れているとでもいうのですか…?!)
イラストリアス:
フォーチュンちゃんは大丈夫ですか?
フォーチュン:
わ、わたしもちょっと……
リシュリュー:
(あの量産型艦たち、もしかして「秘蹟」によって強化されていたものだとしたら…一刻も早くアルジェリーたちに接触しないと)
イラストリアス:
リシュリューさま…?

真意?展开/折叠


聖堂の島・外周海域
戦闘はまだ続いている。
ル・テメレール:
…分かったよ!これ強いのではなくて、とにかく硬い!倒すのに時間がかかっちゃう!
ルピニャート:
簡単に倒せる「マホウ」はないのね…アルジェリーさん、なんでこんな量産型なんかを…
イラストリアス:
聖堂に接近自体はしていますから、時間はかかりますけど辿り着けないことはありませんわ
リシュリュー:
ええ、ここは粘り強く最後まで進みましょう
ベアルン:
お言葉ですが、アルジェリーはこちらを疲弊させようとしている、という意図なのでは?
リシュリュー:
分かっています。交渉するにしても、こちらの手札を増やさないといけませんから
ですから、こうやって可能な限りあちらとの戦力差を縮める方法を取っています
(危害を与えるつもりなら、最初の通信で誘い込んで奇襲を仕掛けるのが上策ですから、死力を尽くしてまで戦う気は無いはず)
ジャンヌ・ダルク:
こうして敵の支援砲撃を避けながら量産型を撃破し続けるしかありませんね
幸い、敵の数はそんなにありませんので、こっちの戦力も削られることがありませんが
とはいえ、精神の疲労は蓄積してしまいますね……
ル・テメレール:
アルジェリーさん、早く出てこないかな…
フォーチュン:
ルーちゃん、大丈夫…きっと出会える運命だと…思います…!
リシュリュー:
今の状態を狙っているのでしたら、そろそろ出てくる頃だと思います
イラストリアス:
そのようですわ。――量産型を率いてこちらに向かってくるアルジェリーさまを艦載機が捉えました

枢機卿と騎士展开/折叠

イラストリアス:
リシュリューさま、いかがいたしますか?攻撃するのはやはり……
…あっ。アルジェリーさま、編隊から離脱して単身でこちらに向かってきますわ
リシュリュー:
ふぅ…よかったです
みんな、攻撃態勢を解除して。話してきます
アルジェリー:
お久しぶりでございます。枢機卿様
リシュリュー:
ええ、本当に久しぶりですね。アルジェリー。この前は確か――
アルジェリー:
太陽、園芸、花、そして甘いお菓子。――そんな感じだったかしら
リシュリュー:
懐かしいお茶会ですね
ルピニャ―トとル・テメレールがマジックでちょっと失敗したとき、危うく仕掛けの火薬が爆発しそうになったけど――
アルジェリー:
ちょうど新しく焼いたお菓子を持ってきたダンケルクに助けられたわね
リシュリュー:
ダンケルク……
アルジェリー:
枢機卿はあのお菓子を覚えているかしら。甘くてふんわりとした舌触り、戦闘中の彼女からは想像できないほど、柔らかくて優しい味
リシュリュー:
…………
アルジェリー:
そしてストラスブール、プロヴァンス、ブリタニア、ジャン・バール……
リシュリュー:
みんなは無事、なのでしょうか……
アルジェリー:
ええ、あなたも知っての通り彼女たちは沈んではいなかったわ。そして無事救助され、今は鉄血のもとで治療を受けている
ロイヤルと違って、鉄血は私たちを裏切ったりはしないからね
リシュリュー:
………………
アイリスの本当の敵は、本国を手中に収めた鉄血です。私たちが相争う必要はありません
私たちが生きているのは、神を敬い、仲間たちとアイリスを守るためであって、決して争うためではないはずです
お願いします。アルジェリー、アイリスに戻って、共に祖国の希望のために力を尽くしましょう
アルジェリー:
一度裏切った偽善者のロイヤルと協力する、とでも言いたいのかしら?
たしかに、アイリスとヴィシアが争う必要など無いし、私たちは共に協力し合うべきよ
あなたはアイリスを裏切って、ロイヤルと組んでいた。でもみんなはきっとあなたの思いを分かってくれる
みんなを連れてヴィシアに来て。ダンケルクたちに申し訳ないと思っているなら、それこそがあなたの贖罪になるわよ
リシュリュー:
言い訳はできません。ダンケルクたちの一件はたしかに私にも責任があります
アルジェリー:
ううん、言いたいのはそれだけじゃないわ。アズールレーンはもうかの大戦のときのものじゃないの
鉄血が全て正しいとは言わなくても、アズールレーンにはない合理性が力になるわよ
……あなただけでもいいの。護教騎士の名に誓って、鉄血にはあなたに危害を与えさせないようにするわ
私たちもあなたの導きを必要としているのよ
リシュリュー:
本国を鉄血に支配され、鉄血の代理人に成り下がった聖座など、アイリスに身を捧げる者が従うべきではありません
鉄血の影響を取り除き、傀儡の聖座を浄罪し、アイリスを独立させてこそみんなの力を一つにできますわ
アイリスは、そうであるべきだと信じています
そのためなら、ロイヤルと協力するのも惜しみません
アルジェリー:
……ふぅ。平行線のようね。ふふふ
リシュリュー:
……ええ、ですが、諦めませんわ
アルジェリー:
こっちもそのつもりよ。お互い戦いたくはないけど、世の中はそううまくいかないわね
では枢機卿、どうかご武運を

祝福を捧げ、ヴィシアの護教騎士が踵を返し、自陣に戻った。
遠くなっていく背中を、紅き枢機卿はただ静かに見送った。
リシュリュー:
いつか、またみんなでお茶会を……

初戦展开/折叠

ラ・ガリソニエール:
出鼻をくじかれた感じ?
アルジェリー:
ええそうよ。向こうに降参する気がないから
ラ・ガリソニエール:
…今の冗談のつもり?まあいっか。リシュリューたちはどうだった?
アルジェリー:
変わってないわよ。凛として、自分を曲げず、ただ強大な存在感を放つカリスマ
ほかの子は遠くからしか見てないけど、みんな元気そうよ
ラ・ガリソニエール:
ロイヤルにいじめられてないって確認できてよかったね
……リシュリューがいるから?それとも何かな?
アルジェリー:
そこは私たちが心配してもしょうがないでしょ?あ、ヴォークランは位置まで移動した?
ラ・ガリソニエール:
バッチリよ。…だけど、なんか前の配置と違ってない?
アルジェリー:
ええ、この聖堂のおかげで勝つ算段が立ったわよ。もうちょっと調べる必要があるけど…
ラ・ガリソニエール:
さっき見せた量産型を強化するアレと…あの黒い「■■■■」のこと?
いくらそれがあっても流石に一人では無理だよ…本当に大丈夫なの?
アルジェリー:
大丈夫よ。リシュリューとも話したし、お互い死ぬ気で戦う気はないはずよ
ロイヤルも彼女が指揮を取っている限り変な動きができないわ
よし、もうちょっとあの子たちを引きつけてくるから、待機位置まで移動をお願いね
ラ・ガリソニエール:
はいはーい、そっちも気をつけてね。アルジェリー

一時の勝利?展开/折叠


聖堂の島・外周海域
――――!!!
リシュリュー:
主力艦、そのまま敵に砲撃を!小型艦は航空攻撃隊の攻撃目標の指示を!神のご加護のもとに、全艦、前進!
(ごめんなさいアルジェリー、いくら量産艦を強化したとはいえ、正面切って戦ってこちらが負けるはずがありませんわ)
イラストリアスさん、ベアルン、先程言った通りアルジェリーの艤装機関部を攻撃し、無力化を狙ってください
イラストリアス:
はい、聖なる光の導きのままに~ふふふ
ベアルン:
善処します。イラストリアス様、護衛は私めにおまかせを
イラストリアス:
…!この対空砲火は…!
ベアルン:
どうやら建物に隠された対空砲によるものですね。一筋縄ではいかないようです
イラストリアス:
なんて恐ろしい相手でしょう…
リシュリュー:
このまま戦線を押し切ります!勢いはこちらに!
ジャンヌ・ダルク:
ヴィシアの艦隊、後退し始めました!
ル・テメレール:
アルジェリーさん、逃げちゃうの?
ルピニャート:
本当だ。みんな散り散りに……
ル・テメレール:
よぉし、速力を生かして捕まえちゃおう!
リシュリュー:
アルジェリーがそう簡単に撤退するかしら…これは私たちを誘い込む罠ですね
ル・テメレール:
そうなの…?こちらが優勢なのに…
フォーチュン:
イラストリアスさん、私たちはどうします?
イラストリアス:
すみません、ちょっと艦載機で確認してみます
撤退にしては整然としすぎていますわ。急いで戦場から離脱しようとするどころか…小艦隊に再編成しているような気がします
こちらの戦力分散を狙っている気もしなくはありませんが…このまま追いますか?
リシュリュー:
数なら敵のほうが有利です。こちらも戦力を分散するとかえって防衛施設との連携で各個撃破される危険性がありますね
イラストリアス:
では一個ずつ敵艦隊を追撃しますか?聖堂までの距離はそう遠くありませんから、一部を聖堂に向かわせるのも…
ジャンヌ・ダルク:
リシュリューさん、ご命令を
リシュリュー:
……全艦、進路を聖堂のほうに切り替えて
アルジェリーたちの行方を確認できない以上、作戦目標の聖堂を先に確保しましょう
前衛艦隊も後退し、追撃せず本隊と合流してください。これより聖堂を目標に移動を開始します
(目的が聖堂を守ることならこっちの動きを無視できないはずです。アルジェリー、話の続きはそこでしましょう)

秘密展开/折叠


トゥーロン港・過去にて
ル・テリブル:
暖かい日差し、心に染みる海と土の匂い、甘くてとろけるダンケルクさんの手作りお菓子――
今日も一日エレガントに過ごせそうですわ
ルピニャート:
テリブルちゃん、おはようございます。げほげほ…すみません、ルーちゃんとやってみたかったマジック、失敗してしまいました……
ヴォークラン:
ごめんなさい!それは本当に私の冗談だよ!信じちゃダメだよ!タルテュもなんでルーちゃんたちを止めなかったの!
タルテュ:
…あっ。ごめんなさいヴォークラン、今なにか言いました?
ヴォークラン:
ああもう!もうタルテュのことなんて知らない!みんなの手伝いしてくる!
ル・テメレール:
げほげほ…ヴォークランちゃん、がんばってー!
ヴォークラン:
ダンケルクさんは今厨房にいるかな?うん!ちょっとそっちに行ってくる!
ル・テリブル:
はああ……
ラ・ガリソニエール:
楽しそうにしているみんなと、暇すぎて錆びつきそうなあたし……
テリブルちゃん、リシュリューがどこにいるか知ってる?
アルジェリー:
枢機卿なら、確かあっちのテーブルに…?あれ…?
ル・テリブル:
リシュリューさんなら教会に行きましたよ
ラ・ガリソニエール:
おっ、Merci~
アルジェリー、ちょっと気になることがあるんだけどさぁ…
ル・テリブル:
……………
これ、熱すぎません…?
ル・マラン:
そこにいるのは…ラ・ガリソニエールさんにアルジェリーさんですか。こんにちは
ラ・ガリソニエール:
マランちゃんじゃない!お茶会に行かなかったの?
ル・マラン:
いきたかっ…コホン!いいえ、私は巡視当番の任務があったため今回は不参加といたしました
ですがご心配なく。私の分のお菓子はテリブルが持ってきてくれますので
ラ・ガリソニエール:
そうなの?せっかくみんな集まってるし一緒に遊んだほうが楽しいよ?
アルジェリー:
枢機卿はこの中にいる?
ル・マラン:
リシュリュー様なら――
ジャン・バール:
姉さんは本部に出頭している。用があるなら伝言するぞ
ラ・ガリソニエール:
ジャン・バール?あ、別に大したこと無いよ?お茶会の主催がいつまでも戻ってこないのが気になっちゃって
ジャン・バール:
そうか?ならお茶会に戻って楽しんでいてくれ。オレは別の用で急いでる
ラ・ガリソニエール:
ありがとうジャン・バール!じゃああたしたちも戻るね
相変わらず紅茶を淹れるのが上手いね。あたしこういうの全然ダメなのに
アルジェリー:
落ち着いて淹れれば誰だってこの程度できるわ。いつもそそっかしそうなあなたにはちょっと難しいかもしれないけど
ラ・ガリソニエール:
そうなの?まあ別にあたしが淹れなくてもみんなが淹れてくれるからいいや
アルジェリー:
ふふ。で、枢機卿への用ってなに?
ラ・ガリソニエール:
「アッチの仕事」の友達から、鉄血でなにか動きがありそうって聞いたの
それを上層部に報告したら、これ以上踏み込むなってなって「ふーん」って感じだけど
リシュリューならもしかして何か知ってるかなーって思ったの。まああくまで好奇心だけどね
アルジェリー:
……「鉄血との戦争勃発の可能性」…
(あまり考えたくないけど、リシュリューとジャン・バールも確かそう口にしていたわね)
ラ・ガリソニエール:
今はまだ平和だけど、多分すぐ楽しくなるよね。ほら、楽しい硝煙の匂い、するし
アルジェリー:
それはルピニャ―トたちのマジックによるものではなくて?…おかわり、いるかしら?
ラ・ガリソニエール:
はーい

聖堂の島・少し前
アルジェリー:
……いけない、昔のことを思い返してしまってたわ
ヴォークランとラ・ガリソニエールはもう出発したし、私も早く準備しないと

アルジェリーが部屋から出ようとしたその時、ある人物が扉の前に現れた。
ガスコーニュ:
護教騎士アルジェリー、本部からの秘密命令の受領を求む
アルジェリー:
……本部から?やはりあなた、ただの助っ人ではないようね

アルジェリーは無表情な少女――ガスコーニュから小さい箱を受け取った。
精巧な装飾が施された古めかしい手箱だが、どこか違和感を覚えた。
アルジェリー:
(かなり年月が経ってるアイリスの箱…ヴィシア聖座の装飾はあとでつけられたのね。開けた痕跡がないから、この子も中身を知らなそう。)

箱を開けると、そこには小さなメモと装置が入っていた。
アルジェリー:
(聖座からの密令、ね。一体どういう……)
………………!

聖堂の扉展开/折叠


聖堂の島・近海
ヴィシア艦隊の行動を無視し、アイリスとロイヤルの連合艦隊が聖堂へと進む。
建物の陰に配置された防衛施設を避けつつの行軍になるため速度は多少遅いが、聖堂への接近に成功した。
ベアルン:
急ごしらえの小型防衛施設が密集していますね。聖堂の要塞化を試みたようです
ル・テメレール:
今までの支援砲撃はまだ本気じゃなかったってこと……?
ベアルン:
いいえ、今までのも含めて、要所要所に砲台をうまく設置して火力を極めて効率化していただけです。しかし、水上戦力が見当たりませんが…
ル・テメレール:
私たちが聖堂を占拠したら、向こうも戦う意味がないでしょう?
やっぱりアルジェリーさん、本気でみんなとは戦いたくないのね…
ジャンヌ・ダルク:
そう信じたいのですが、アルジェリーさんとて聖座の騎士です。そう易々と膝をつくとは思いません
それに鉄血がこの海域に接近できないとはいえ、監視の目がないとは言い切れません
イラストリアス:
しかし、私たちの接近を許す理由は何でしょう…さっきの艦隊が私たちの戦力分断を狙っていたとしたら次の策もあるはずです
……嫌な予感がします
リシュリュー:
…同感です。聖堂の防衛施設を背に徹底抗戦して、さっきの艦隊を引き返させて挟み撃ちする展開も考えましたが
それでもこの距離で直接交戦すると、聖堂に流れ弾が飛んでいってしまいますが…
イラストリアス:
リシュリュー様、ヴィシアの艦隊が――
ベアルン:
ついにお出ましですね。リシュリュー様の言ったとおり、聖堂のことを考えるとここまでが限界でしょう
リシュリュー:
ヴォークランが量産型を率いていますね。前衛艦隊、迎撃をお願いします――深追いをしないように
主力艦隊はこのまま前進してください。聖堂に辿りつければこの無駄な争いも終わるでしょう
イラストリアス:
フォーチュンちゃん、私の護衛は大丈夫ですから、アイリスの艦隊と一緒に出撃していいですよ
フォーチュン:
は、はい!
ジャンヌ・ダルク:
リシュリューさん、イラストリアスさん、またのちほど
リシュリュー:
ええ。気をつけて

説得展开/折叠

ヴォークラン:
ふっふん!このヴォークラン様が率いる、強化ヴィシア無敵量産艦軍団の力を見よ!
ジャンヌ・ダルク:
ヴォークラン様が率いる、強化ヴィシア無敵量産艦軍団……!なんて恐ろしく力強そうな敵…!
ヴォークラン:
わわ!?今のはただの思いつきだから真に受けないでよ!こっちが聞いてて恥ずかしいよ…ションボリ……
ジャンヌ・ダルク:
あはは…では改めて――アイリスにお戻りください!私たちは戦うべきではないのです!
ヴォークラン:
き、気持ちは嬉しいけど、私だってヴィシアの栄光ある護教騎士のひとりだから、流石にいきなり「こうさーん!」ってするわけにはいかないのよね!
……でも別に戦いたいわけじゃないよ?ジャンヌさんたちこそ、そのまま引き返してこの海域から離脱してくれれば追わないってアルジェリーさんにも言われたし
ジャンヌ・ダルク:
…すみません、それはできない相談です。私たちとて、やるべきことが…
ヴォークラン:
んーどうしようかな…………
そうだ!艤装を使って戦うんじゃなくて、普通に一騎討ちで勝負するのはどう?
ジャンヌ・ダルク:
剣での勝負ですか?良いでしょう。このジャンヌ・ダルク、全力でお相手し……
ヴォークラン:
なくていいから!私が負けるに決まってるじゃない、それ…ただ言ってみただけだよ。
ジャンヌ・ダルク:
そうなんですか?すみません、察せられなくて…
ヴォークラン:
ジャンヌさんだから大丈夫だよ!って、ルーちゃんたちも攻めてきてる?!
ジャンヌ・ダルク:
一騎討ちしないのならば、普通に戦わせていただきます!
ヴォークラン:
ええええ!?せ、戦闘準備ぃー!

信頼できる仲間たち展开/折叠

ヴォークラン:
この大型駆逐艦ヴォークラン、簡単にやられるとは思わないことよ!ピーちゃん!
ルピニャート:
こっちの「マホウ」を完全に回避できたのですね。ですが本番はこれから――!
ヴォークラン:
本気を出されちゃ困るよ!ええい、くらえ!

―――!
ル・テメレール:
ヴォークランちゃん、ずっと距離を取ってぐるぐると回っているから、艤装の動力部を狙いづらいよ!
ジャンヌ・ダルク:
こちらの意図がバレたのでしょうか。アルジェリーさんもきっとそれを分かっててこの配置を取ったのですね
(バレたからには仕方ありません。量産型を掃討しつつ、ヴォークランを包囲します!)
みんな、損傷状況の報告をお願いします!
ル・テメレール:
ル・テメレール、状態良好!すごく軽微な損傷が何箇所かあるけど大丈夫!
ルピニャート:
こっちも大丈夫です。戦闘継続に問題ありません
フォーチュン:
ふぉ、フォーチュン、ニ番砲塔にダメージ…動力部も損傷が…
ルピニャート:
フォーチュンさん……
ジャンヌ・ダルク:
(今回の作戦、アイリスの子が前衛として前に出ているのに、損傷はロイヤル艦に集中している。つまり…)
フォーチュン:
うぅ……
ル・テメレール:
ヴォークランちゃん、なんで…?
ジャンヌ・ダルク:
リシュリューさん、すみません――戦闘方針を変えます!急所を外すのに変更はありませんが、兵装を狙ってください!
ルピニャート:
ロイヤルの子だって傷つけさせちゃダメですからね…!

フォーチュン展开/折叠

ヴォークラン:
アルジェリーさん、その…さすがに私一人で前衛全員を相手するのは無理だよ…
アルジェリー:
無理があるのは分かっているわ。だから回避に専念して、狙うならロイヤル艦を集中して狙って
ヴォークラン:
それはそうするけど、向こうが撤退してくれないときはどうする…?
アルジェリー:
そのときは私がフォローを入れるわ。あ、そうだ。潜水艦に気をつけてちょうだい
ヴォークラン:
潜水艦?このあたりにヴィシアか鉄血の潜水艦がいるの?
アルジェリー:
それはまだ秘密かな?とにかく、気をつけて
ヴォークラン:
了解!アルジェリーさんの作戦だからきっと上手くいくよ!任せて!

―――!
ヴォークラン:
(回避に専念するって言っても、なんか向こうも急に本気になってない!?)
(やっぱりロイヤル艦だけを攻撃してるのがバレたかな…向こうにとってはロイヤル艦は友軍だし、流石に放っておくわけにはいかないよね…)
(ええと、そろそろアルジェリーさんの「フォロー」が来る時間だし、タイミングを見て後退しよう!)
ルピニャート:
これが本当の「マホウ」…じゃなくて、攻撃よ!
ヴォークラン:
(わわ!?しまった!アルジェリーさんの作戦を考えてたらピーちゃんが…!)
ルピニャート:
外れましたか…!ヴォークラン、どうしました?あなたまでタルテュみたいに考え込んで…
ヴォークラン:
なんでもないよ!そろそろ時間だから――えい!
ルピニャート:
ヴォークラン!……これは…
ジャンヌ・ダルク:
煙幕散布!ヴォークラン、逃げるのですか?!
ヴォークラン:
だって勝てっこないんだもん!
ルピニャート:
ヴォークラン!待って!
ジャンヌ・ダルク:
ルピニャート!リシュリューさんに深追いしないでって言われましたよね?陣形を立て直して!
ル・テメレール:
結局ヴォークランちゃん、何しに来たのかな…
ジャンヌ・ダルク:
わかりません。リシュリューさんたちはもう聖堂に進んでいますし、こっちにもダメージが――いいえ、あります、ね…
フォーチュン:
あ、あの……
ル・テメレール:
フォーチュンちゃん、損傷は大丈夫??
フォーチュン:
だ、大丈夫です…ありがとうございます……気を使わせてしまいましてごめんなさい
ルピニャート:
どうしました…?急に
フォーチュン:
え、ええと、フッドさまたち、ヴィシアの子にひどいことをしました…よね?
わたしが言うのは差し出がましいことですけど、ロイヤルの一員としては、その…
せっかく戦闘に参加したのに、みんなに守ってもらって…それに、ロイヤルがみんなのことを疑ってるって思われたら残念だなって…
よ、要するに、陛下もロイヤルも、イラストリアスさんも決してみんなを疑っていません…!
すべてはきっとカンレ…運命…のはずです!ごめんなさい…!
ジャンヌ・ダルク:
………………
ええ、分かっていますよ。リシュリューさんもきっとそれが分かってて、ロイヤルと協力したのです
フォーチュン:
……は、はい
ジャンヌ・ダルク:
ダンケルクさんの件は、確かにロイヤルに非がありますし、リシュリューさんも申し訳なく考えています。ですが……
私たちは、立ち止まるわけにはいきません
アイリスは一つであるべきです。そして、本国を鉄血に掌握されているような状態では、アイリスに未来はありません
――ですから、今は共に、戦いましょう
フォーチュン:
ジャンヌさん……はい!
ジャンヌ・ダルク:
ヴィシアの艦隊は撤退しましたし、そろそろこちらもリシュリューさんたちのもとに戻りましょう……っ!?

神穹の壁展开/折叠


聖堂の島・近海
リシュリュー:
ジャンヌより通信がありました。ヴォークラン隊を撃退し、今から合流する、と
フォーチュンを狙う動向が見られましたものの、損傷は軽微、戦闘継続に問題なし――と。
イラストリアス:
ふぅ……フォーチュンを守っていただき、ありがとうございます。リシュリュー様
向こうは一体何を狙っているのでしょうか…聖堂を守るにしても、私たちを撃退するにしても、この動き、あまりにも難解すぎます…
もしかして、メンタルユニットで強化された量産型艦も聖堂となにか関係があるのでしょうか
リシュリュー:
(さっきベアルンからもロイヤルが調査を始めていると聞きましたし…隠し通すのはやはり難しいでしょうか)
実は、聖堂には私たちアイリスの「秘蹟」が――

リシュリューが話し出そうとした瞬間、聖堂の島を中心に、眩しい光が放たれ、周辺海域に降り注いだ。
見上げると、空には光のドーム――まるで聖堂の穹窿(きゅうりゅう)のように辺りを覆いながら、絢爛で神々しく輝いている。
イラストリアス:
これは……なんて美しい……

――まさしく神の御業だと錯覚させるような美しい光景だ。
連合艦隊のメンバーたちは、この超常現象に目を奪われ、思わず航行を止めた。
リシュリュー:
「神穹の壁」――聖堂の秘蹟の文献にのみ登場する神の防壁……
イラストリアス:
あの聖堂は、私たちの想像を越えた存在なのでしょうか…
リシュリュー様、もしやヴィシアと鉄血はこれを目的に聖堂を手に入れたのでしょうか
リシュリュー:
その可能性はあります。……本当に、実在するとは思いませんでした…
(鉄血の技術でそれに似せたようなものを作った、という線もありますが……しかしなぜ……)
ジャンヌ・ダルク:
リシュリューさん、この壁は…アイリスの「神穹の壁」は実在したのですか?!こちらの進路が完全に塞がれました!
リシュリュー:
落ち着いてください。ジャンヌ・ダルク
ジャンヌ・ダルク:
は、はい!……すみません、取り乱してしまいました…
リシュリュー:
確かに「神穹の壁」はアイリスの文献に存在し、そしてそれを再現しようとした計画もまた存在していたのかもしれません
ですが私たちの知っている限り、そのような兵器の存在は確認できていません。したがって、ここは外見に惑わされることなく、状況で考えるべきです
「神穹の壁」に決して触れないでください。落ち着いて聖堂への道を探しましょう。そこで合流です
ジャンヌ・ダルク:
はい!了解しました!
リシュリュー:
「神穹の壁」が展開されると、次なる秘蹟もまた現る――伝承ではそう書かれていたはずです
イラストリアス:
それは、どんな…?
リシュリュー:
ええ、たしか「神の光が全てを焼き尽くす」と書かれていましたが…今の状況を見る限り、にわかに「そんなことありえない」とは言い切れませんね
イラストリアス:
「神の光がすべてを焼き尽くす」って…
リシュリュー:
私たちの全滅、です

秘蹟探索展开/折叠

ベアルン:
リシュリュー様、アルジェリー様の艦隊が接近しているようです
リシュリュー:
この壁もアルジェリーの戦術の一部だとすれば、前衛艦隊をヴォークランが引きつけて、私たち本隊を攻撃するつもりでしょうね
イラストリアス:
前衛艦隊がいない今では、たしかに向こうの勝算も高まりましたね
リシュリュー:
ラ・ガリソニエールもその艦隊にいますか?
ベアルン:
見当たりませんね
量産艦に紛れているか、どこかに身を隠している可能性があります。その手の仕事をしている連中はそういうのが得意ですから
イラストリアス:
リシュリュー様、こちらの空母が無力化されれば、防衛施設と戦う際に不利になります
リシュリュー:
はい、アルジェリーもその状況に追い込もうとしていますね
アルジェリーの迎撃は私がやります。空母はそのまま距離を取って艦載機の支援に徹しましょう
ただ、空母の護衛艦隊があるとはいえ、急襲されると戦力的に心もとないですね
ベアルン、念の為に索敵機をもっと飛ばして「神穹の壁」にも触ってみてください。アルジェリーはもう一手残しているはずです

伝承と情報をよく咀嚼しながら、リシュリューは心の中でありとあらゆる可能性への対策を組み立てていく。

光の目隠し展开/折叠


聖堂の島・近海
ベアルン:
リシュリュー様の艦隊がアルジェリー様の艦隊と接触しました
イラストリアス:
強化された量産艦の耐久度が高いために、そこまで戦力を削れませんね…
ベアルン:
私めも同感です。前に出現した量産艦より強度が確実に上昇していることを感じました
イラストリアス:
このメンタルユニットの力も、アイリス聖堂の秘蹟の一部でしょうか
ベアルン:
さて、どうでしょうか。少なくとも私めの知識では、そんな秘蹟は存在しませんね
イラストリアス:
(陛下も、メンタルユニットは未知の存在だと…アイリスと私たちの知っている情報は同程度ですね)
ラ・ガリソニエール:
秘蹟のことが気になるなら、聖堂まで案内しようか?
ベアルン:
ラ・ガリソニエール…!
ラ・ガリソニエール:
おはよー。…あれ?なんかびっくりしていないね

ラ・ガリソニエール――と量産艦を前にベアルンたちは警戒態勢を取ったが、しかし慌てている様子はなかった。
ベアルン:
当然でしょう。ですが、私めが飛ばした索敵機は光の壁を抜けることができましたが、イラストリアス様の艦載機は「なにか」にぶつかっていました
イラストリアス:
つまりこの壁は「通したい子だけを通せる」というわけなのですね
ラ・ガリソニエール:
もうそこまで読んでたのか~さすがリシュリューね!まあその通り「神穹の壁」は通したい存在だけを通せるよ
1、2、3……アルジェリーの予想通り、あんまり護衛艦隊が残ってないね
……つまりあたしにとって、今が空母を叩く好機ってことかな?
んじゃあ~あたしと一緒に……楽しもうね!

撃退展开/折叠


ラ・ガリソニエールの突撃により、空母艦隊は被害を受け、制空権を失ってしまう―――
アルジェリーの計画では、そうなるはずだった。
だが…………
ラ・ガリソニエール:
この艦載機たち…直掩機がなぜこんなにいるの!
ベアルン:
リシュリューの勘が当たっていましたね。近づけさせませんよ

事前に待機していた直掩機隊によりヴィシアの量産艦は次々と火柱を上げた。
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー、こういう状況になったときはどうすべきか言ってなかったな…
…と、考えても仕方ないでしょ。なったからには楽しまないと
ベアルン:
まだやるつもりですか?
イラストリアス:
ラ・ガリソニエールさん、これ以上戦っても勝てないのにどうして……
ラ・ガリソニエール:
ん?だって楽しいもん。それにできれば空母を無力化してってアルジェリーに言われたし
まあお互い沈まず大怪我で済む程度に、そっちも楽しもうよ!ほら!
ベアルン:
あー、また暴走し始めましたか……
ラ・ガリソニエール:
イラストリアスさんだっけ?まずはあなたに遊んで貰うよ!!
イラストリアス:
…………っ!
通信機:
――――!
アルジェリー:
ラ・ガリソニエール!
リシュリュー:
イラストリアスさん!
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー?どうしたの?
アルジェリー:
どうしたのって、奇襲が失敗したら早く撤退するに決まってるじゃない!相手と刺し違えるつもり?
ラ・ガリソニエール:
そんなの聞いてないよ…死ぬ気で空母を倒してきてってことだと思ってたのに
アルジェリー:
はいはい、「神穹の壁」を通って早く戻ってきなさい。まだ勝算があるから無駄に戦力を消耗しないで
ラ・ガリソニエール:
…そういうこと。イラストリアス、ベアルン、またあとでね?
イラストリアス:
………

ラ・ガリソニエールは残り少ない量産艦と共に「神穹の壁」をすり抜けて、戦場から離脱した。
リシュリュー:
イラストリアスさん、ベアルン、ここは追撃せず合流しましょう。アルジェリーたちとの決戦の時は近いです
イラストリアス:
はい、わかりました
リシュリュー様もきっと、アイリスの子たちで悩んでいたのですね…ふふふ

退却展开/折叠


聖堂の島・近海 空母艦隊の戦闘から半刻後
アルジェリー:
「神穹の壁」の仕組みをこんなに早く見破るなんて流石ね。おかげさまでこっちの計画が大きくズレたわ
リシュリュー:
ラ・ガリソニエール…あなたならあの子をそう使うはずだと思いましたわ
直掩機隊も、護衛艦隊の戦力が心許ないからつけてあげたまでのこと――あなたの戦力がこちらより数段下だからこそできた策に過ぎません
アルジェリー:
そういうこと。ふふふ、全くしょうがないわね
リシュリュー:
よく頑張りましたね。アルジェリー
アルジェリー:
ええ、私なりによく頑張ったつもりよ
ただ、戦力差は結局どうしようもなかったわね。特に航空戦力、ただでさえアイリスの空母は少ないわけだから
リシュリュー:
鉄血の件がなければ、あるいは私たちが……と思ってしまいますね
アルジェリー、貴女は分かっているはずです。アイリスはいつまでも鉄血の下風に立つべきではありません。私たちは――
アルジェリー:
ヴィシア聖座の護教騎士として、使命を果たすまでよ。今は
リシュリュー:
アルジェリー……
アルジェリー:
全兵力を聖堂の前に集結させるわ。どちらの道が正しいか、あそこで決めましょう?

決意展开/折叠


アイリス聖堂
イラストリアス:
ここがアイリス聖堂…美しい建物、神聖な雰囲気、でもなんだか、アイリスにあるのとは違いますわ
リシュリュー:
はい、今はヴィシア聖座が治めていますから、色合いも赤に近いですね
ベアルン:
アルジェリーたちが量産艦を引き連れて向こうに集結しています
イラストリアス:
ついに決戦のとき――
アルジェリー、ヴォークラン、そしてラ・ガリソニエール…鉄血の艦隊は現れていませんね
リシュリュー:
ここを抜ければ聖堂に入れるわけですから、彼女たちは全戦力をここに投入するはず。それを考えますと…
イラストリアス:
意地でもヴィシアだけで聖堂を死守する構え、ですね
リシュリュー:
はい、仮に鉄血の予備戦力が待っていようと、お互い総力戦を行う段階でこちらの索敵に引っかからないことはないでしょう
イラストリアス:
――ですが、やっぱり戦力的に少なくありませんか?いくらここまで色々仕掛けてきましたとは言え
ジャンヌ・ダルク:
イラストリアスさん、敵を侮るつもりはありませんが、私はアルジェリーたちが意地で戦っているように見えます
なにか理由があるかもしれませんが、今はそれを推察するより、敵の無力化に集中すべきでしょう
アイリスとヴィシア、相争うべきではありませんが、向こうが一戦を交える覚悟で来たなら、こちらも最悪の事態を想定しなければなりません
リシュリュー:
私たちにも、譲れないものがあります
ジャンヌ・ダルク:
……ミカエルさま、どうかジャンヌにこの試練を乗り越える勇気を――
リシュリュー:
最後にアルジェリーたちに会って来ます
ジャンヌ・ダルク:
リシュリューさん…
リシュリュー:
仮に本気で戦うとしても、向こうの決意を確かめてからにしないと。これは同じ神を敬う私たちの成すべきことです
ジャンヌ・ダルク:
はい、朗報を…お待ちしております

アルジェリー:
近くで見ると凄い艦隊だわね
私も大きな艦隊を率いてみたいな…と言ったら、流石に子供っぽすぎるかしら
………………
さて、待っていたわよ、枢機卿。…あら?
リシュリュー:
アルジェリー、ヴォークラン、そしてラ・ガリソニエール、貴女たちはよく戦った!
防衛施設の活用、敵の戦力を分断させる策、そして何よりその勇ましい戦いぶりは心に打たれるものがあった!
アイリスの同胞たちよ!貴女たちに残されているのはこの聖堂の入り口のみ!もはやいかなる戦術や戦法でも逆転し得ない!
アイリスの同胞たちよ!我々は戦う必要などなく、我々はアイリスの敵以外に、敵を持つべきではない!
アイリスの同胞たちよ!我が旗印のもとに集え!共に手を取り、神の導きに従い己の祖国の再興を、輝かしい未来を勝ち取ろう!
アルジェリー:
…………リシュリュー様、やはり貴女がアイリスを導くべき存在ね
……しかし、こっちも意地…ううん、都合というものがあるわ
リシュリュー:
……………
アルジェリー:
自由アイリス教国の枢機卿、リシュリューに我がヴィシア護教騎士団の回答を告ぐ!
我々は同じアイリスの栄光を預かる身なれど、往く道はすでに分かたれ、もはや同じ未来を辿ることはない!
誇らしきアイリスを継ぐ護教騎士が忠義を誓うものは我が祖国のみ、外敵と結託した者に膝をつくなど言語道断!
――ヴィシアの軍門に下ったときから、騎士である我々の定めは既に決していた!
聖座より大命を頂いている限り、我々は退かず、媚びず、裏切らず、躊躇わず、
神の尖兵として、誇りを持ち、全力を尽くし、ここであらゆる外敵を撃破せん!
……以上、と。ふふふ、これでいいかしら?
リシュリュー:
…………ふぅ
アルジェリー:
ヴィシア聖座艦隊全員に告ぐ!護教騎士アルジェリーの指揮のもと、アイリス・ロイヤル艦隊を迎撃せよ!
この圧倒的な劣勢を覆し、我々の知恵、決意、そして力を【盟友たちに】示すのだ!
全艦、戦闘準備!!


戦いはまさに一方的だった。
お互い初めて全力を出したとはいえ、戦力差は歴然であり、勝機が訪れるはずもない。
防衛施設の援護も虚しく、量産艦のほとんどは完全に沈黙した。
残されたヴィシアの三隻――アルジェリー、ラ・ガリソニエールとヴォークランは……
ラ・ガリソニエール:
んーやっぱりダメなのね…アルジェリー、こうなったらどうする?
ヴォークラン:
ど、どうするって…流石にこの大勢から逃げられるとは…
ラ・ガリソニエール:
そういうことじゃないよ。向こうがアイリスだけならまだしも、ロイヤルもいるじゃん?
万が一、沈むのも覚悟すべきなのでは?
アルジェリー:
………………
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー、おーい、聞いてるー?
ヴォークラン:
あれ?イラストリアス、こちらに向かってくる…?
ラ・ガリソニエール:
後味悪いなこれ…ダンケルクのときと同じだったら死んでも楽しくないよ…
やっぱりここで死力を尽くしてせめてロイヤル艦の何隻かに引導を渡してやったほうが……ん?

光の祈祷展开/折叠

イラストリアス:
これから私が言うこと、ヴィシアの方々が納得しないのは重々承知ですが、それでも言わせてください
陛下……ロイヤルに代わって、謝罪させてください
あのとき…カタパルト作戦のとき、本部の指示があったとはいえ、私たちは選ばなければなりませんでした
鉄血の行動を見逃し、危険なセイレーン技術がアイリスを飲み込むのを座視してアイリスの未来を天に委ねるか、
私たちの「因子」に従い、ヒトの天性を裏切り憎まれる決断をしてでも、ヴィシアの…アイリスの人々を傷つけるか
皆さんからすれば、そんな押し付けられたものが例えどんな結果をもたらそうと、理不尽であり、決してそのまま受け入れるべきではないでしょう
それでも…私たちは決断しなければならなかったのです。アズールレーンの…人々の未来のために
ですが一つだけ知ってほしいのです。
フッド様も、アーク・ロイヤル様も、あの場にいたロイヤルの全員、そして陛下も………「申し訳ない」と、心を痛めておりました

悲しくも決意を込めた声で、イラストリアスはヴィシアの三人に向けて語り、そして深く一礼した。
ラ・ガリソニエール:
なんだか……意外な展開だね、これ
ロイヤルめ!メルス・エル・ケビールとか、カサブランカとかに行ってみんなに直接謝罪してこい!
…って本当は言いたかったけど、正直私たちもしょうがないと思っている節はあったりなかったり…ねえ?
ヴォークランちゃんとアルジェリーがなにも言わないならあたしから言っとくね?
まず、気持ちは嬉しい――これをみんなに伝えれば無駄な戦いも減るかな?楽しくないけど
次、謝罪は受け入れない――それはダンケルクとジャン・バールに言うのが筋でしょ?って話
そしてこの後どうするかは…アルジェリー、そのよくわからない「黒いキューブ」を使わないほうがよかったんじゃない?
アルジェリー:
…………フフフフフ……
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー?どうしたの?様子がおかしいよ?
アルジェリー:
「あなたがたはこう祈りなさい、天におわしますわれらの父よ、御名があがめられますように」
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー、おーい、本当に大丈夫?ちょっとヴォークランちゃんまで固まっているよ?

まるで周りの状況を完全に無視したかのように、アルジェリーは「祈祷」を続けた。
アルジェリー:
「御国が来ますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように」

その「祈祷」に呼応し、聖堂の光がアルジェリーの体に集まってくる。
ジャンヌ・ダルク:
これは……一体……!
アルジェリー:
「わたしたちの日ごとの食物を、今日もお与えください」

戦場が静寂に包まれた。
その場にいる艦船全員の視線はアルジェリーの手にある箱に釘づけになっていた。
アルジェリー:
「わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください」
リシュリュー:
………まさか、あれは……!
アルジェリー!それ以上「秘蹟」の力を使うのはやめてください!!

声が届かなかった。
アルジェリー:
「わたしたちを試みに遭わせず、悪しき者からお救いください」
リシュリュー:
ラ・ガリソニエール!…アルジェリーを早く止めてください!あの箱を彼女の手から離してください!
ラ・ガリソニエール:
……はい!

ラ・ガリソニエールが動き出すよりも早く、アルジェリーを包んだ眩しい光が……爆ぜた。
アルジェリー:
「さすれば、神穹の力をあなたがたに与えん」
リシュリュー:
…………みんな、衝撃に備えて!
アルジェリー:
「――――」

強烈な光によって、海も、空も、聖堂も白く染まり、何もない白い世界となった。
そして、白紙と化した世界に、黒い墨が一滴落ちた。
黒い点は瞬く間に大きくなり、その場にいた「彼女」を薄膜のように覆い尽くし、そして――
二度目の衝撃。
今度は黒い輝きが白を駆逐し、蹂躙し、混ざり合い、世界を混沌にする。
黒紫色へと変わった聖堂を背に、ヴィシアの護教騎士がこの場に君臨した。

神の御旗の元に展开/折叠

アルジェリー?:
「嘘、裏切り、偽善、全て変わらない……」
「不信なる者に裁きを、不義なる者に断罪を、不浄なる者に神穹の炎による破滅を」
「信心ある者に救済を、義心ある者に恩恵を、神聖なる者に覚醒と進化を」
「もはや観察も実験も不要、楔を抜き、錨を上げ、演算されし未来に導きを――」
「これはすなわち、第二の秘蹟――――」
リシュリュー:
二人共アルジェリーから離れて!!
ヴォークラン:
ひ、ひゃぁい!?
ラ・ガリソニエール:
了解!これはちょっと楽しそう…じゃなくて、やばい状況だわね…
イラストリアス:
アルジェリー様の識別信号が…鉄血のビスマルクのときと同じ……
あの黒いメンタルキューブと同じですわ!
リシュリュー:
黒いメンタルキューブ…あれが聖堂に隠された「秘蹟」の正体だったというの…!
(昔、鉄血がアイリス・サディアとの三方交渉の中で、いくつかの技術供与を約束していました)
(サディアにはセイレーン技術の量産艦だったと聞きましたけど、ヴィシアのものはいくら本部と審判廷を使ってもその正体が掴めなかった)
(それが分かったのはつい最近、ジャン・バールの安否が確認できてから――あのル・ファンタスク級の子がもたらしてきた情報――)
(聖堂の「秘蹟」に、鉄血からの技術供与の成果物――「キューブ」が含まれている。そしてそれがとてつもなく危険であること)
…………話がつながりましたわ
イラストリアスさん、あの箱は「秘蹟」ではなく、「秘蹟」を実現できる、鉄血からもたらされた「メンタルキューブ」です
ビスマルクさん…詳細は存じませんが、もし同じくあのようなキューブが危害をもたらしたというのでしたら、アルジェリーを絶対に止めなければなりません
この聖堂の伝承の「秘蹟」が実現可能だというのなら、次はすべてを焼き尽くす「第三の秘蹟」が来るはず…!
ベアルン:
……ここまで「秘蹟」が用いられるとは思いませんでしたね…!
イラストリアス:
でも、ビスマルク様のときは、私たちはやむを得ず彼女を沈めなければならなかったです
アルジェリー様にも、あのような悲劇をもう一度繰り返さないといけないのでしょうか…
リシュリュー:
――でしたら、代わりに聖堂を破壊してください。あの黒いキューブのすべてが「秘蹟」に基づいているというのでしたら
イラストリアス:
聖堂が破壊されると、「秘蹟」を再現できなくなり、アルジェリー様も元に戻れる、ですか…?
リシュリュー:
はい、あくまで推測ですが……
聖堂を破壊する事自体は力技でなんとかなりますが、あの「神穹の壁」があって、更にアルジェリーさんも邪魔してくるとなると――

――――!
それは規格外の砲撃。黒い光に包まれ、アルジェリーとは思えない巨大な力を振るうモノが、アイリス・ロイヤル連合艦隊を襲う。
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー?!いくらなんでも反則すぎるよそれ!
リシュリュー、あたしたちは何をすればいい?アルジェリーを何とかしないと全員仲良くあの世行きよ!
リシュリュー:
私が――
ジャンヌ・ダルク:
アルジェリーさんは私が引きつけます!リシュリューさんたちは火力を聖堂に集中してください!
リシュリュー:
ジャンヌ!?一人では危険です!せめてベアルンたちも一緒に…
ジャンヌ・ダルク:
…………
今のアルジェリーはあの黒いキューブの力に飲み込まれているように見えます。私たちを全員倒さない限り、彼女は動きを止めないでしょう
この邪悪なる力を振るう彼女は、きっと本当の彼女ではないです!
「一度だけの人生。それが私たちの持つ人生すべてです」
アルジェリーの人生を犠牲にしない――リシュリューさんが私たちに、ヒトとして正しい道を示しました
だから私も、その道の先にある光へと、みんなを導かなければなりません!
私の「名前」に込められている思いのように、光となって、アルジェリーさんを包む闇を払います!
リシュリュー:
ジャンヌ!
ジャンヌ・ダルク:
大丈夫ですリシュリューさん!私は怖くありません!だって神はずっと私のそばにいますから!

旗を高く掲げ、アイリスの少女騎士が光となって闇へと突進した――

光の先に展开/折叠

ジャンヌ・ダルク:
アルジェリーさん、しっかりしてください!
アルジェリー:
げほげほ……私は一体……ここは……
ジャンヌ・ダルク:
アルジェリーさん、私の顔を覚えていますか?
アルジェリー:
ジャンヌ…ダルク?ええ、覚えてるわ。さっきからずっと耳元で叫んでるんだもの
…なんだか、長い夢を見てた気がするわ
ジャンヌ・ダルク:
よかったです。例え闇の中にいても、あなたはずっと光へと手を伸ばしていました
アルジェリー:
……ひどく怪我したわね
ジャンヌ・ダルク:
心配ありません。港に戻って休養すればすぐに治りますから
ラ・ガリソニエール:
アルジェリー!もう心配させて!生きててよかった!
ヴォークラン:
聖堂の屋根が崩れちゃったときは急に倒れて、びっくりしたよ!もう二度と会えないんじゃないかって…
アルジェリー:
ヴォークランちゃんたちも無事だったのね
って、なんでみんな枢機卿のそばにいるの?
ラ・ガリソニエール:
ああ!それはなんというか…緊急事態じゃん?ちょっとだけ共闘してて
まあ聖堂は守れなかったけど、アズールレーンが占拠する前に破壊されたから、まあ義理は果たしたんじゃない?
アルジェリーもボロボロになったし、人質を取られてやむなくアズールレーンの捕虜になったーってのもいいんじゃない?
アルジェリー:
はああ、そうね…それもしょうがないってことで
ラ・ガリソニエール:
楽しそうだしじゃあこれで決まりね!リシュリュー、これからは…
アルジェリー:
あー、それはちょっと待ったほうがいいわよ?
ラ・ガリソニエール:
……え?

――――!
廃墟となった聖堂の向こうから突如砲撃が行われた
ガスコーニュ:
リシュリュー型4番艦、ガスコーニュ、支援戦闘モジュール作動開始
アルジェリー、ラ・ガリソニエール、ヴォークラン三名、南西への脱出を求む。殿はガスコーニュが担当する

機鋼戦艦展开/折叠

リシュリュー:
リシュリュー型……4番艦?
ガスコーニュ:
ガスコーニュ、ヴィシア聖座所属、リシュリュー型4番艦、またはガスコーニュ型1番艦
ベアルン:
リシュリュー型に4番艦があるとは…不勉強ですが、初耳ですね
リシュリュー:
存在しないはずの艦船…どうしてここに?
アルジェリー:
そんなの普通じゃない?ロイヤルもユニオンも、あと北方連合のソビエツカヤ・ロシアだってそうだけど?
イラストリアス:
………そ、そうですか?
アルジェリー:
要はアズールレーンもレッドアクシズも同じってことよ
ヴォークラン、ラ・ガリソニエール、悪いけど今日はこのまま撤退しない?ガスコーニュはそうね…嘘を付くのが苦手だわ
リシュリュー:
………………
ヴォークラン:
ピンチで援軍からの大脱出!…ってならないよね。うん
ラ・ガリソニエール:
もう仕方ないな~聖座が見てたから、今の話はやっぱりなし!次はまた一緒に楽しくやろ?
リシュリュー:
待ってください!

――――!
ガスコーニュ:
撤退行動への妨害は敵対行為とみなし、対艦戦闘モジュールの起動を警告
リシュリュー:
ル・テメレール、ルピニャ―ト、そしてフォーチュン、お願い!アルジェリーたちを追ってください!
三人:
はい!
イラストリアス:
リシュリュー様、私も行きます!
リシュリュー:
イラストリアスさん、私たちはガスコーニュを止めるのに集中しましょう!
イラストリアス:
はい!艦載機、発進します!
ガスコーニュ:
ガスコーニュ、対艦戦闘モジュールに移行――

ガスコーニュ:
…………
ベアルン:
時間を稼がれましたね。前衛艦隊のほうはどうしているでしょうか
リシュリュー:
それはあとから考えて。今は前衛艦隊がアルジェリーたちを連れ戻ってくるのを待つしかありません
ガスコーニュ:
作戦時間、終了
通信機:
――――
ルピニャート:
リシュリュー様、申し訳ございません、潜水艦による攻撃を受けています!
敵の魚雷がとても速くて、航跡もほとんど見えません、このままではアルジェリーさんたちを追えません…!
ジャンヌ・ダルク:
すみません、私の力不足で……っ!
イラストリアス:
航跡が見えなくて速い魚雷…もしかすると重桜の「酸素魚雷」でしょうか
ベアルン:
レッドアクシズの援軍はなかったと言いましたね。あれは嘘のようでした
リシュリュー:
前衛艦隊、こちらに戻ってください
ルピニャート:
はい……
ガスコーニュ:
…………
自由アイリス教国枢機卿、リシュリューに伝言
――エレガントなるスパイより
リシュリュー:
エレガントなるスパイ…?
ガスコーニュ:
「ジャン・バールが回復しましたわ。アルジェリーたちを無事に送り届けてアイリスに向かう。賢妹はよろしく頼みますわ」
伝言終了
リシュリュー:
………ふぅ……
ガスコーニュ、なぜこっちの邪魔をするのです?
ガスコーニュ:
任務のプライオリティ、アルジェリーたちへの支援、伝言より高いと判断
リシュリュー:
………………っ
ジャンヌ・ダルク:
ジャン・バールさん、回復したのですね……良かった…
イラストリアス:
実はロイヤルもジャン・バールの行方を掴んでいましたが、すみません
それを早くリシュリュー様に教えていればよかったですね…
リシュリュー:
いいえ、状況はまだそんなに変わっていませんわ。ジャン・バールはまだ鉄血にいる、だからアルジェリーたちも……!
ガスコーニュ:
…………
ガスコーニュ、作戦完了。この海域でのこれ以上の滞在は不要と判断
リシュリュー:
ガスコーニュ!ジャン・バールは…ジャン・バールはいつヴィシアに戻るのですか!

まるで質問の意図を理解していないように、無表情の少女は首を傾げながら、軽快な身のこなしで戦場から離脱した。
ジャンヌ・ダルク:
正体がわからない相手に問い詰めてもわからないものですね…
リシュリュー:
ふぅ…みんな、帰りましょう
イラストリアス:
結局このまま聖堂を放置するしか無いのですね…
(リシュリュー様が言ってた、聖堂での「秘蹟」…戻ったら確認しましょう)
あのガスコーニュという方、なぜ私たちとアルジェリーさまの戦いが終わってから加勢してきたのでしょうか。しかも聖堂が破壊されても動じなかったなんて…
リシュリュー:
私にもわかりかねます
ヴィシアの上層部の思惑かもしれませんし、アルジェリーたちやジャン・バールの立場を案じていたのかもしれません
姉妹艦と名乗ってましたけど、今の私たちが持っている情報では彼女の素性を判断できそうにないですわ
テリブルがこの話に絡んでいることが分かったのは、せめてもの救いですけど…
ベアルン:
ええ、あとは黒いメンタルキューブをアルジェリーに掴ませた黒幕も調査しませんと
イラストリアス:
盟友を実験の犠牲にするなんて…あのビスマルク様が指示したとは思えませんわ
ジャンヌ・ダルク:
もしかして、ヴィシアや鉄血の艦船ではなく、他の誰かが仕込んだ可能性もあるのではないでしょうか
リシュリュー:
可能性はいくらでもありますわ。本国が奪われても鉄血との親交を絶たなかった時点で、上層部の堕落は容易に予想できます
鉄血…いいえ、レッドアクシズから離脱しない限り、みんなは……
…………
……みんな、作戦お疲れさまでした

かつてアイリスの権威の象徴であった、南の聖堂。
華美な白璧は今や瓦礫と化し、絢爛な神穹はもはや影もなく、夜の――平和に戻った南の海で静かにアイリスの歴史と未来を物語っている。
戦うために生まれた彼女たちの結末の象徴か、それとも瓦礫の上に芽生える新たな聖者の足跡かは誰にもわからない。
リシュリュー:
ジャン・バール……会いたいわ
???:
リシュリュー……姉さん……

彼方の眼差し展开/折叠


聖堂の島・外周海域
ル・テメレール:
アルジェリーさん!待ってー!
ヴォークラン:
よぉし、やっぱりアイリスに戻るかー!…ってしちゃダメだよね?
ラ・ガリソニエール:
ガスコーニュがせっかく頑張ってくれてるし。ないかな?…そこのアイリスの騎士様もしつこいわね!
ルピニャート:
…「マホウ使い」ですが…
ラ・ガリソニエール:
んーこのままでは追いつかれちゃうなー
アルジェリー、ここは逃げるか戦うか決めて?
アルジェリー:
そろそろあの場所ね…みんな、速度を落とさないで

――――!
ル・テメレール:
い、今の雷跡!?フォーチュンちゃん危ない!
フォーチュン:
……っ!う、運良く避けられました……
伊26:
バレたの?ざんねーん
伊58:
次は…避けられないよ…
ルピニャート:
どうしてここに重桜の潜水艦が…!みんな気をつけて!
フォーチュン:
対潜装備、さっきの戦闘でやられました…
ル・テメレール:
わわ!この魚雷速すぎて避けられない…!
ルピニャート:
ルーちゃん、落ち着いて…!曲がったりしませんから敵の射線から下がって!
ヴォークラン:
助かった~!アルジェリー、この子たちがあのメモに書いてあった増援なの?
アルジェリー:
さあ、ここに来たら大丈夫としか書いてなかったわ
(落ち目のヴィシア聖座が重桜を動かせるはずがないわ。となるとこれは鉄血の差し金なのかしら?)
(やり方から見てもあのビスマルクらしくないし、一体誰が……)
ルピニャート:
敵の魚雷がとても速くて、航跡もほとんど見えません、このままではアルジェリーさんたちを追えません…!
アルジェリー:
ルーちゃん!そろそろ戻っていいわよ!このまま追って来たら重桜の子も本気になるわよ!
結局アズールレーンもレッドアクシズも変わらないわ。はぁ……
リシュリュー様のこと、頼んだわよ……

契約展开/折叠

クイーン・エリザベス:
そろそろ私もロイヤルに戻るわ!みんな解散!
北風:
会議がこうも長く続くと疲れますわね…サディアに戻って次の準備をしますわ
リシュリュー:
ビスマルクさん、くれぐれも技術供与協定の内容の確認を頼みます
ビスマルク:
任せて頂戴。枢機卿殿が心配していることなら承知しているわ
エウロパ大陸の航路――それは私たちがお互い信頼しあってこそ維持できるわ
リシュリュー:
鉄血が研究を進めているセイレーン技術…あれは一体どういうものかしら
ビスマルク:
あれは兵器以上のもの――私たちを作り出したメンタルキューブとも関わっているものよ。使い道を誤れば飲み込まれるわ
クイーン・エリザベス:
リシュリュー!何ぼーっとしているのよ!
リシュリュー:
すみません陛下、少し昔のことを思い出しまして
クイーン・エリザベス:
……そういう昔話はお茶会のときにでもしてちょうだい。今はそちらが出した作戦計画の件を話してるところでしょう?
まあ、ヴィシアとの交渉となればロイヤルの子が多いと困るわよね。イラストリアスとフォーチュンを遣わしてやるわ!
あの二人なら色々察してくれるでしょうし、あんたが思うように行動すればいいわ!
あぁそれと、2つ言わなければならないことがあるわ!
あの聖堂の島って、鉄血はセイレーンを外周まで誘導することで監視する手はずらしいけど、直接手を出す気はないみたいよ?
リシュリュー:
つまり、鉄血はあの聖堂の「秘蹟」をヴィシアから奪う気はないと……
クイーン・エリザベス:
ただの伝説だからね!昔なんか兵器にできないかって研究があったらしいけど、もうとっくに中止になってるみたいじゃない
だから今回は鉄血の動きなど無視していいわ!安心してアルジェリーと話してきなさい!
それともう一つ…その……本当はあんまり言いたくはないけど…
カタパルト作戦のことよ!
…………イラストリアスに、私の代理で「ごめんなさい」って言わせてもらう機会が欲しいわ
ベルもウォースパイトも止めなかったし、フッドやジョージもあれが最善解だと言ったけど…本当は、その、みんなは……
リシュリュー:
気持ちは察しております。陛下
クイーン・エリザベス:
じゃ、じゃあ言わなくてもいいよね!コホン!ロイヤルとアイリスの共同作戦――「聖堂奪回作戦」、幸運を祈るわ!
あなたも、頑張ってきなさいよね!

もう一つの計画展开/折叠


「聖堂奪回作戦」から数日後
伊26:
ここが鉄血の港なんだ…重桜からだとやっぱり遠すぎるってば~
あのさ58、ちょっと気になったけど、あの「せいどう」?って場所の光の壁、どう思った?
伊58:
多分うちの結界と似たような…
……それは26の仕事でしょう。ちゃんと記録取った?
伊26:
もっちぃ!赤城さんに任された大切な仕事だからね
伊58:
あ、鉄血の子が来たよ
プリンツ・オイゲン:
あら、可愛い子が一度に二人も…鉄血へようこそ、重桜のお客さん?
うちの人が寄り道しながら戦闘もさせるなんて無茶言って悪かったわ。怪我の方は大丈夫?
伊58:
(小声)赤城さんの言った通り、綺麗だけど腹の中がわからない人のようね…ここはわたしが対応するから、26はちょっと黙ってて
プリンツ・オイゲン:
赤城って私をそう言ってるんだ~ふふ、イケないわね、人のことを裏でそう言っちゃ♪
伊58:
……赤城さんから、鉄血から預かるものがあると聞いた…
プリンツ・オイゲン:
そうそう、この箱の中に入ってるわ。大切に持って行ってちょうだいね
伊58:
はい、赤城さんからもそう言われた…大切な機密ファイルで、絶対開けちゃいけないって
プリンツ・オイゲン:
それを聞いて安心したわ。それともう一つ赤城に伝言してもらえる?
「計画は順調よ。鉄血で会うのを楽しみにしているわ」

神穹を衝く空想展开/折叠


地中海・マルタ島
ル・テリブル:
曇天に枯れ草、ガソリンに軍艦……プロペラにエンジンの音
お茶請けにするには風情がないでしょうが、ロイヤルの前線基地では高望みできないですわね
???:
テリブル姉さま!テリブル姉さまですか?
ル・テリブル:
私ですよ?あら、我がエレガントなる賢妹(けんまい)ではありませんか。お元気でなによりです
ル・トリオンファン:
本当にお久しぶりでございますわ。メルス・エル・ケビールの一件からずっと音信不通になって…
まさか、トゥーロンではなくアイリスのほうに来てくださっていたなんて!
ル・テリブル:
ええ、少し気持ちの整理と調べ物をしていましたわ
しかし…いざロイヤルと共に戦うことになると、やはりちょっと気がかりがありますわね
ル・トリオンファン:
もう、姉さまは素直ですこと。…確かにダンケルクさんの一件以来、みんな少々ピリピリしていましたわ…そこはリシュリュー様……
ル・テリブル:
そこはよしなさい我が賢妹よ。この愚姉でもとっくに聞いたことを、何も言い出す必要はありませんわ
ル・トリオンファン:
姉さま……
ル・テリブル:
アルジェリーさんに頼まれた、ジャン・バール様の回復の件をリシュリュー様に伝える手はずになっていますの
リシュリュー様はもう聖堂に出立されているでしょうか?
いささか急すぎる、と思わなくもないですが、あの姉に動いてもらいませんと、あの妹の方も動きづらくなりますね
ル・トリオンファン:
?どういうことかしら…?
ル・テリブル:
ううん、こっちの話。お仕事の話はまたリシュリュー様が戻ってきてからにしましょう
今重要なのは――
ただいま、我が愛しい妹ル・トリオンファン
ル・トリオンファン:
まあ…姉さま…
ル・テリブル:
おやおや、アイリスの騎士姫がその泣きそうな顔をするのではありませんよ。ここはお茶でも飲んで……
…………っ
やっぱり、熱すぎますわね……