碧蓝回忆录日服文字版/讃える復興の迷路
阅读
2021-08-16更新
最新编辑:芙兰朵露琪露诺
阅读:
更新日期:2021-08-16
最新编辑:芙兰朵露琪露诺
讃える復興の迷路
サディア帝国・タラント
リベッチオ:
というわけでマエストラーレ、おさらいをよろしくー!
マエストラーレ:
そ、そうですね…他所の陣営の方々も退場しましたし…
リベッチオ:
だからもう緊張しなくていいよマエストラーレ!準備、いっぱい頑張ったでしょ?
ニコロソ・ダ・レッコ:
ほうふぁよへっかくひゅんびしたのにほったいはいよ(訳:そうだよせっかく準備したのにもったいないよ!)
リベッチオ:
レッコ、食べてからでいいよ!
ニコロソ・ダ・レッコ:
はむはむ…まああのちょっぴり怖い鉄血の人もいなくなったし、別に――
ヴィットリオ・ヴェネト:
ちょっぴり怖い鉄血の人ってもしかしてフリードリヒのことかしら?
ニコロソ・ダ・レッコ:
ヴェネトさん!お疲れさま!
ヴィットリオ・ヴェネト:
皆もご苦労さま。レッコ、フリードリヒはああ見えてもビスマルクに信頼されている優秀な片腕ですよ
マエストラーレ:
鉄血の方々はもうお戻りになるのでしょうか
ヴィットリオ・ヴェネト:
どうでしょう。サディアの見学がしたいと言ってましたし…
マエストラーレ:
もしかしてそのまま行かせたのですか!?
ヴィットリオ・ヴェネト:
そうですね…そう仰ってたので……
マエストラーレ:
ビスマルクの片腕ともあるお方をそのまま一人泳がせるのはどう考えても大丈夫ではないでしょう…!
ニコロソ・ダ・レッコ:
マエストラーレは真面目すぎだよ~カラビニエーレと似てるねー
マエストラーレ:
ぐっ…ヴェネトさんがそう言うのでしたら…
ニコロソ・ダ・レッコ:
この航海士レッコの勘も平気だと言ってるからきっと大丈夫よ!
ヴィットリオ・ヴェネト:
まあまあ、あの方のことですからサディアの上層部の動向を探るのは分かっていますし、なにより――
……リットリオ、どうかしました?
リットリオ:
悪いわね。状況発生よ
資料は通信で届けるから、戻り次第詳細を話そう
ヴィットリオ・ヴェネト:
わかりました。それまでここで待機しますね
リベッチオ:
はい!その間にマエストラーレからの状況レポートでもどうぞ!
ニコロソ・ダ・レッコ:
(ドキドキ)マエストラーレ、頑張って!
マエストラーレ:
コホン!では――サディア帝国所属、駆逐艦マエストラーレ、状況を報告いたします――
「以前の『再現』において、我々サディア帝国所属艦船とロイヤル所属の艦船と交戦し」
「アズールレーン、レッドアクシズの分裂状況についてのロイヤル側の認識を確認しました」
「その後、上層部の指導によりサディアは勢力としてレッドアクシズに留まっておりましたが、」
「我々は引き続き各陣営と連絡し、特に鉄血の動向を随時調査していました」
「先日の鉄血からの招待で、カラビニエーレが現地に向かい、鏡面海域に関する鉄血の技術の展示を目にし」
「また、セイレーンのNA海域及び地中海の動向について、ヴェネトさんの発案により」
「各陣営の艦船たちの共同作戦の条約締結、そして連絡会合が行われました」
「さらに指揮官におかれましては、北方連合での滞在後、ユニオンに移動し」
「現在対セイレーンの反抗作戦の陣頭指揮を執っております」
「以上、現在の我々にまつわる情勢のおさらいになります」
「サディア総旗艦、ヴィットリオ・ヴェネトさま、ご指示を――」
サディア帝国・タラント
リットリオ:
「行方不明になった船団を捜索し、積載の芸術品を回収・もしくは敵から奪還する」――上層部である元老院からの連絡だ
ヴィットリオ・ヴェネト:
コンスタンティノープルからやってきた元老院の輸送船が行方不明になりました、と
んーまさかとは思いますけど、この船団、GBが護衛した船団ではないでしょうね…
リットリオ:
そのまさかだよ。移送中の芸術品の山、元老院依頼の特別船団ってやつだ
ヴィットリオ・ヴェネト:
GB(ヴィンチェンツォ・ジョベルティ)…無事でしょうか
リットリオ:
さあ、そこは調べておかないとね…流石にこの地中海で船団が丸々と消えてなくなるなんて予測できないよ
ヴィットリオ・ヴェネト:
こんなことになるとわかっていたらもっと護衛の艦船をつけるべきでしたね…
リットリオ:
このリットリオすら思いもよらなかったものに罪悪感を感じる必要はない。そもそもあの船団に位置的に護衛艦をたくさん送るなんて無理でしょ?
それに船団まるごと消えるとなればセイレーンの仕業である可能性が高い。それなら何隻増やしたところで状況は変わらないよ
ヴィットリオ・ヴェネト:
リットリオの言う通りですね…船団の連絡が途絶えたのはいつですか?
リットリオ:
昨日未明ってところか。上層部は我々に連絡するより前に独自で調べていたようだが…
ヴィットリオ・ヴェネト:
だから今更そんなことを……
リットリオ:
結局艦船の力に頼らざるを得ないってことだ
NA海域と違い、地中海のセイレーンの活動が活発化していることもあって、上層部もそのことでピリピリしているのさ
ヴィットリオ・ヴェネト:
ここは私達サディアの力でなんとかしないといけませんね
(艦船としてセイレーンの退治、サディアの一員として芸術品の奪還、なによりGBの救援を一刻も早く始めないと)
(行方不明になった場所はエーゲ海、艦船でなくても空中から手かがりがすぐ見つかるはず、それでも船団そのものがなくなった……)
やっぱり船団はセイレーンの鏡面海域に迷い込んだ可能性が高いですね
リットリオ:
鏡面海域?この地中海にか?
ヴィットリオ・ヴェネト:
そうとしか説明がつきません。輸送船団の救出だけでなくセイレーンの掃討戦力も配置しましょう
リットリオ:
となると、いつもどおり総旗艦殿は後ろで指揮を執り、そして現場は私が預かる――
ヴィットリオ・ヴェネト:
ちょっと待ってリットリオ。今回は私も出撃します
ロイヤル艦隊との「再現」と違ってセイレーンとの戦いになると、戦力は万全を期したほうがいいと思います
リットリオ:
全く、心配性だな。この私を誰だと思っている?
貴方こそいつも裏番をしていて前線での戦いは大丈夫か?コケてこのリットリオに総旗艦を譲ってしまうような展開にだけはならないようにしてくれ
ヴィットリオ・ヴェネト:
あははは……姉妹艦なのに信用されてませんね…
リットリオ:
まあ、お互い得意とするところが違うってのもあるけど
ヴィットリオ・ヴェネト:
わかりました。ではリットリオが先行して、私が後から支援艦隊を連れて合流する、というのはいかがでしょう
リットリオ:
どうしても来るというのなら止めないよ。総旗艦殿
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、戦力はしっかりと整えてから追いつきますね
地中海の平和のためにこの一戦でセイレーンを掃討する、というのが今回の作戦ですわ
リットリオ:
了解だ。エーゲ海など私達にとって馴染んでいるし、すぐにでもセイレーンを引っ張り出してみせる
そのときに貴方がどんな艦隊を連れてくるのか…楽しみだよ。ははは
エーゲ海・海域周辺
リットリオ:
これぞエーゲ海、我がサディアの文明のゆりかご、いつ来てもその美しさに心奪われる場所――
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
私も同感だ。この素晴らしい天気が我らの出撃を祝福しているようだ
そしてこの往来している輸送船の数々――まさしくこの航路こそ我らが守りしものだと実感させてくれる
ニコロソ・ダ・レッコ:
さすが貴族の皆の言うことは違うね!
リットリオ:
貴方もこの海のことをもっと勉強しないと航海士の名が泣くぞ?
ニコロソ・ダ・レッコ:
そ、そこまで!?
トリチェリ:
輸送船団の護衛が増えてるね……ふふ、ふふふ……
ニコロソ・ダ・レッコ:
本当だ!たくさんいるね!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
ヴェネトの計らいもあるとはいえ、どうやら上層部も多少はうちの護衛事情に気を使ってくれているようだ
しかし見た限り、我々以外の艦船は見当たらないな…
各陣営がセイレーンとの戦いに協働しているおかげで、襲われる心配もずいぶん減ったってわけか
リットリオ:
それとサディアの燃料事情もある。あのケチの上層部は真っ先に資源の配分を調整したのを忘れたか?
「量産艦なら自律制御も効くゆえ、艦船の過度の干渉は不要」だっけ?
トリチェリ:
…………い、陰湿……
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
なるほど、だから例の輸送船団の護衛はあんなに手薄になっていたのか
我がサディアの貴き文明の結晶たる芸術品の運搬に護衛の艦船が1隻のみという愚行――
リットリオ:
元々はその一隻すら含まれていなかったがな
トリチェリ:
…えぇぇぇ……
リットリオ:
上層部の特別船団に艦船による護衛は憚られるらしい……が
GBもヴェネトがどうしてもって交渉して強引にねじ込んだのだ
………それがかえってあの子をピンチにさせたと…
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
そういう事情があったのか。このような失態は防げたであろうに……
トリチェリ:
あの船団は本当に「セイレーンに拉致された」のか……?
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
この狭いエーゲ海で連絡途絶から丸一日捜索しても手がかり一つも見つからぬのではセイレーンの仕業以外考えられん
リットリオ:
私とヴェネトはそう判断している。それに今は上層部がなぜ一日も私達に状況を隠したかを詮索する場合じゃない
今は現場に行って私達の目でしっかり調査するのが重要だ
もしセイレーンが原因じゃなくてただの遭難だったらGBたちを救出し、
もしセイレーンの仕業だったら、その犯人を引きずり出して叩くまでよ
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
こと今回の作戦は我がサディアの栄光に関わる。このドゥーカ・デッリ・アブルッツィ、貴き者の責務を全力で果たさせてもらう
リットリオ:
それは頼もしいな
ニコロソ・ダ・レッコ:
この航路が危険そうだったら、今度は徹底的な航路調査が行えるよね!
リットリオ:
そうだ。航海士レッコ殿の出番ってやつだ
ニコロソ・ダ・レッコ:
おおお!盛り上がってきた!!
トリチェリ:
(小声)じゃ、じゃあ偵察してくる……
ニコロソ・ダ・レッコ:
あれ?トリチェリどこ行く気…?
ニコロソ・ダ・レッコ:
コンス…コンスタンティノープルからの船団って?
リットリオ:
ああ、サディアのゆかりある都市コンスタンティノープルだ
トリチェリ:
あそこからの船団って珍しいね……
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
今回移送するのは芸術品だと聞いた。あの都市のことを考えれば納得するだろう
リットリオ:
かつては古代帝国の首都だった都市で、我がサディアの栄光のオリジンとも言うべきものだ
永遠の城、偉大なる都、神聖の王城、文化と歴史の都市、王冠の宝石……
我々サディアでなくとも、皇帝の町、偉大な町とか――
それだけ多くの呼び名が与えられた、素晴らしい都市だ
トリチェリ:
い、イスタンブールとも呼ばれているね……
リットリオ:
……………
トリチェリ:
ふふ、ふふふ………
リットリオ:
そうだな。そうとも呼ばれているな
その都市から蒐集された芸術品がどれだけ貴重なものなのか、想像に難しくないだろう
ニコロソ・ダ・レッコ:
とにかくすっっっっごいってことね!
リットリオ:
そういうことだ
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
逆に言うと今回の上層部の浅慮はとんでもない失態とも言えよう
リットリオ:
そう言いたいのは山々だが、今回ばかりは上層部を責めるわけにはいかない
そもそも、我々サディアの海上戦力が能動的に動いたことが少なかったことにも関係している
今回の作戦でサディアの実力を各陣営に見せることができれば、それだけサディアの威光を広めることにつながる
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
そして奪還した芸術品の展示を開き、各陣営を我がサディアに招くことができれば……
は!ヴェネト殿はそこまで考えているのか…!
リットリオ:
しかしヴェネトはともかく、上層部の思惑はわからないよ。なぜこのタイミングで急に芸術品の移転を行っているのか
トリチェリ:
も、もしかして芸術品と称して、何かを隠して運ぶつもり……?
ニコロソ・ダ・レッコ:
トリチェリ!いつ戻ってきたの?
トリチェリ:
ふふ、ふふふ……さっきから、ずっと……潜ってた……
ニコロソ・ダ・レッコ:
あ!トリチェリは太陽に当たってしまうととろけてしまうのね?
トリチェリ:
は、はい……だから、クレタ島の近くにやってきたことを告げて、また潜ろうと……
ニコロソ・ダ・レッコ:
クレタ…クレタ……あ!サディアの伝説にある大きな迷宮がある島?
トリチェリ:
というのはウソ……ふふふ…ふ、普通の島だよ……
ニコロソ・ダ・レッコ:
そっか……でももしかしたら地下に迷宮があるかもしれない!よぉし、今度調べてみよう!
トリチェリも一緒に来ようよ!なんか色々知ってるみたいだし!
トリチェリ:
融けてしまうから……ごめん…ふふふ……
ニコロソ・ダ・レッコ:
ってまた潜ろうとしてる!
トリチェリ:
ふふ、フフふふふ………
ニコロソ・ダ・レッコ:
通信機に反応あり!はぐれセイレーンだよ!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
はぐれかどうかはともかく、こいつらに案内してもらうとしよう
トリチェリ、我々が来た航路にいる船に連絡して。これよりセイレーンを掃討するから退避せよ、とな
トリチェリ:
はい……
リットリオ:
「リットリオが率いる艦隊が」も付け加えてちょうだい
トリチェリ:
りょ、りょうかーい…………
リットリオ:
サディア帝国艦隊、戦闘準備!
―――!!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
セイレーンの撃破を確認した。他愛ない
この貴きルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィの勝利である!
トリチェリ:
なんか、弱かったね……
(地中海に入り込んだ普通のセイレーンより弱い…?ん……どうかな…)
リットリオ:
航路にいる船への連絡を準備せよ。サディア帝国艦隊がセイレーンの脅威を解除したとな――
ニコロソ・ダ・レッコ:
了解!……あれ?なんか通信機が上手く動かないね
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
どうやら「当たり」のようね
ニコロソ・ダ・レッコ:
はい!通信の異常と気象状況の急変化を確認!
リットリオ:
カラビニエーレが送ってきた情報通りだな
トリチェリ:
こちらが連絡できなくなった座標、ヴェネトさんたちのところに自動で送られるはず……
(こ、これは伝説の鏡面海域……!ふふ、ふふふふふふ…じ、実験したい…!)
ニコロソ・ダ・レッコ:
航海士レッコ、まさかのスキルの半分が陳腐化!これが…鏡面海域!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
どうやらリットリオ殿の予想通りね。GBと輸送船団がここの鏡面海域に入って連絡が取れなくなった
リットリオ:
そしてここまでは作戦通りだな。ヴェネトは我々の座標にすぐ増援を連れてくるはず
(この海域は今でも船がかなり頻繁に周辺を通過している。私達がここに到着するまで異常はなかった)
(となると、もしやこれが何かしらの「罠」である可能性が…!)
ニコロソ・ダ・レッコ:
皆!あっちを見て!
トリチェリ:
……あれは…蜃気楼…?
サディア帝国・タラント
アクィラ:
風向きよし、波の大きさよし、艦載機を発信させるのにいい日ですね~
ヴィットリオ・ヴェネト:
アクィラ、調子はどうです?
アクィラ:
ええ、艦載機も艤装も、おかげさまで準備万端ですわ
ヴィットリオ・ヴェネト:
では出撃前に一回、発艦をお願いしますね
アクィラ:
はい。…ふぅ…こんな感じできっと問題ないはず…!艦載機、発進してください!
――エンジンの音ともに、アクィラの甲板から艦載機が滞りなく一機、また一機と飛び上がった。
ヴィットリオ・ヴェネト:
ふぅ…今日は調子がいいようですね
(空母アクィラ……頑張り屋さんで真面目な子なのに、ちょっとドジなところがありますね)
(ちょっと前も艦載機の発艦すらちょくちょくトラブルが起きていましたし…トホホ…)
(……でも彼女が原因ではないところもあります)
(サディア帝国の艦船技術ではどうしても空母と艦載機が苦手で、鉄血の協力がなければ、まともに飛び出させることも…)
(総旗艦として一度上層部にも話を通してみましたけど、なぜか話が途中でなくなりましたし…)
(やっぱり難しいですね…戦略的なことは…ほかの陣営のように「特別計画艦」なるものがあればいいのですが)
(いつまでもこういうので悩まされても仕方がありませんね。よし)
アクィラ、艦載機を回収しましょう。そろそろ出発の時間ですよ
(艦載機が戻ってきていない?アクィラ、どうかしました?)
……アクィラ、艦載機を回収してください!
ヴェネトに注意され、アクィラは慌てて艦載機たちを艤装に回収し始めた。
アクィラ:
あっ…!申し訳ございません!私つい見入ってしまいました…!
ヴィットリオ・ヴェネト:
あっ…こちらこそ急にごめんなさいね。こんなに綺麗に飛ばせるとついつい見入ってしまいますものね
まあ、この後にいくらでも飛ばせる機会がありますから、楽しみにしてていいですわ
アクィラ:
ありがとうございます!お任せください!
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、頼りにさせていただきます
リベッチオ:
ヴェネトさん、大変だよ!
マエストラーレ:
リ、リットリオさんたちの艦隊からの通信が途絶えてしまいました…!
アクィラ:
大変…!ヴェネトさん、私すぐ偵察の艦載機を飛ばします!
リベッチオ:
ええと、通信途絶になった座標は……はい!マエストラーレがここに書いた!
アクィラ:
ありがとうございます!ヴェネトさん、私達もすぐに出発しましょう!
マエストラーレ:
ヴェネトさん、「クレタ島」海域はもうすぐです
ヴィットリオ・ヴェネト:
ありがとうございます。もうすぐでエーゲ海に入りそうですね…
アクィラ:
ついさっきリットリオさんからセイレーンと交戦中との連絡がありましたわ
リベッチオ:
航路にいる船は全部退避させたね!
ヴィットリオ・ヴェネト:
リットリオ、上手くやりましたね
(あの「リットリオの艦隊が」って強調されてたところはちょっと余計かもしれませんけど)
鏡面海域を上手く攻略できたら、今度上層部に具申してこのセイレーンの出現警報を活用したいです
アクィラ:
私達だけならまだしも民間の船も関わりますから、上層部との調整が難しそうですね…
ヴィットリオ・ヴェネト:
その時はそのときです
リベッチオ、リットリオたちの座標はこの先で間違いありませんね
リベッチオ:
はい!リットリオさんたちとの最後の通信はこの先の海域からだよ!
ほかのみんなとも連絡したけど、全員つながらなくて…!
ヴィットリオ・ヴェネト:
通信の妨害、気象状況の変化、そしてこの「神隠し」……航路に元々いた船は大丈夫ですか?
マエストラーレ:
リットリオさんの通信のおかげで退避していましたら、全員無事のはずです
ヴィットリオ・ヴェネト:
あとはこちらも鏡面海域に突入して……
アクィラ:
ふふふ、ヴェネトさん?このアクィラのことを忘れたりしていませんか?
ヴィットリオ・ヴェネト:
あ。そう言えば今は空母のアクィラもいますね。私としたことが……
アクィラ、艦載機を座標のある海域に飛ばしてもらえませんか?
アクィラ:
お任せください♪
ヴィットリオ・ヴェネト:
気象状況と通信機を随時チェックしながら、ゆっくりと座標へと前進しましょう!
アクィラ:
ごめんなさいヴェネトさん、リットリオさんたちの艦隊を発見できなかったどころか、艦載機を数機失っちゃいました…
ご期待に添えられず申し訳ございません…
ヴィットリオ・ヴェネト:
別に気にしなくてもいいですよ。鏡面海域で艦載機を飛ばすこと自体難しいですから
そしてこの鏡面海域の座標とGBが行方不明になった座標はほぼ一致…うん、これは同じ鏡面海域だと判断したほうが良さそうですね
マエストラーレ、カラビニエーレからもらった資料との照合はどう?
マエストラーレ:
空間の物理的隔絶、通信装置へのかく乱効果、そしてセイレーン反応多数ーー鏡面海域、だと思います
ヴィットリオ・ヴェネト:
ふふ、まあ確認するまでもなかったですね
GBとリットリオたちの場所は確認できなかったけど、鏡面海域の範囲は概ね確認できました
作戦の前準備通りでしたら、リットリオたちはそう遠くない場所で私達を待っているはず
(でないと大変なことになりますね…暇つぶしに雑誌でも持たせたほうがよかったかしら……)
アクィラ:
ヴェネトさん、あちらをご覧ください!
ヴィットリオ・ヴェネト:
これは…カラビニエーレから聞いてたのよりずっと壮観ですね…
「クレタ島」周辺の鏡面海域化している海域に、まさに言葉通りの――巨大な迷宮が浮かびだした。
……いや、「クレタ島」だけではない。巨大な迷宮は水平線へと続き、まるでエーゲ海すべてを覆う勢いだ。
迷宮を目の当たりにした艦船たちも思わずこの壮観な風景に圧倒されてしまっている。
リベッチオ:
す…すごーーーーーーい!
これって迷宮だよね!マエストラーレ、これどういう迷宮なの?!すごい!!!
マエストラーレ:
リベッチオ、落ち着いて……
ヴィットリオ・ヴェネト:
ただの蜃気楼である可能性もありますよ。アクィラ、艦載機を飛ばしたときの感触を教えて
みんなも通信機器の調子の確認を怠らないようにね
みんな:
はい!
アクィラ:
んーうまくいえないけど、この「壁」には艦載機も止められそうな感じですね
ぶつかっても何も起きませんが、そこからいくら頑張っても「壁を通り抜け」られませんっ
上の方はとくに問題なく俯瞰できますけど、迷宮の通路にちょっとしたもやが掛かってて中の様子はよくわかりません
マエストラーレ:
ヴェネトさん、この迷宮…セイレーンの罠だと思います!
カラビニエーレの資料によると鏡面海域は通常、「実験場」としてあるようですが、この迷宮みたいのにそういった合理性はありませんっ!
ヴィットリオ・ヴェネト:
(確かに、わざわざこういう迷宮を建築する意図は全くわかりませんわ)
(といっても、「実験場」一言でまとめられるほど単純なものではありませんし、少し変わった鏡面海域もあるのでしょう)
(心配なのはわかりますけど、鏡面海域に入らなければ調査はできませんし、リットリオとGBたちを救出するなんてできないでしょう)
大丈夫ですよマエストラーレ、たとえセイレーンの罠でも、私達ならきっとそれを乗り越えられますわ
サディアの威光、私達を導いていくように――
トリチェリ:
ヴェネトさん見つけた……ふふふ……
ヴィットリオ・ヴェネト:
――トリチェリ!リットリオと一緒にいましたよね?
リットリオたちはどこ?怪我している子はいませんか?
トリチェリ:
だ、大丈夫……皆無事だよ……
セイレーンの襲撃があって、少し移動したけど……うん、セイレーンも全部倒したよ…
リットリオは……ふふふ…見れば分かる、と思う……
あたし、ああいうのは苦手だから…ふふ、ふふふ…
リベッチオ:
ああいうのは、どういうこと?
マエストラーレ:
なんとなくわかります…
ヴィットリオ・ヴェネト:
リットリオのことですもんね…
トリチェリ:
じゃ、じゃあ…迷宮の入り口で待ってるから…ついてきて…
トリチェリ:
ふふ、ふふふ……つきました…
リベッチオ:
「クレタ島」の岸にだいぶ近いね!ここにみんながいるの?
マエストラーレ:
たぶんあの量産艦の上にいますよね
トリチェリ:
そうだよ…あたし以外はみんなあそこにいる…ふふふ………
ヴィットリオ・ヴェネト:
(どうなるのやら……?)
リットリオ:
総旗艦殿、そして支援艦隊の諸君、このリットリオの量産艦へようこそ!
はるばるご苦労だ。どうぞお構いなく寛いでくれ
ヴィットリオ・ヴェネト:
リットリオ……何をやっているんですか?
リットリオ:
見ての通りお茶会だが?
ヴィットリオ・ヴェネト:
いや、お茶会なのはわかりますけど…一応作戦行動中ですよ?
確かに「鏡面海域に突入したら合流しやすい場所で待機」とは言いましたけど……
リットリオ:
だからこの迷宮の入口に移動したのだが?いずれこの鏡面海域――つまり迷宮を探索するには中に入らなければならない
となるとここで英気を養って援軍である貴方達の支援を待つのは、考えうる上策ではないのかな?
そしてなにより――
美しいシニョリーナのご到着に、このリットリオが盛大におもてなししないはずがない――そうだろ?
ヴィットリオ・ヴェネト:
はあ…………
ではコーヒーでもいただけないかしら♪
リットリオ:
ロイヤルから取り寄せたプレミアム紅茶もあるよ?あの女王陛下からも大好評のものだと聞いたのだが…
ヴィットリオ・ヴェネト:
そちらはGBのために残しておきましょう
リットリオ:
了解だ。では小休憩のあとすぐに出発しよう
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ。皆も今のうちにちょっと休憩しましょう
リットリオ:
アクィラとマエストラーレはまだ戻ってきていないのか?
ヴィットリオ・ヴェネト:
艦載機を遠くまで飛ばすのにまだ慣れていないから、もうちょっと迷宮に近づけさせましたわ
空からのはいいとして…トリチェリからは何か情報はありますか?
トリチェリ:
あたし…?あ、あるには、あるけど……
ええと、鏡面海域って、発生装置とか、エネルギー供給装置があるけど…一通り見たけど、特に見つからなかった…
うん、多分、多分だけど…一番奥に置いてるのかなと……入らずに装置を破壊する方法は、なさそう…
壁を壊すのも、難しいかも…魚雷で撃ってみたけど、びくともしなかったし……
リットリオさんも、主砲でやってみたけど、手応えがなかった……
つまり、壁を壊しながら進むのも、多分……
ヴィットリオ・ヴェネト:
予想通り迷宮を進むしかありませんね
トリチェリ:
うん、そうだと思う……迷宮の壁、シールドみたいなものだから……
リベッチオ:
トリチェリさん、さっきみんなが休んでた間にそこまで調べてくれたの!?
トリチェリ:
えへ、へへへへ……一緒にお茶会とか、無理だし…暇だから………
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
にしても「クレタ島」の迷宮か。伝説によれば怪物ミノタウルスの棲家だと言われているが
そのような怪物がもし奥に鎮座しているのなら激戦は免れん。皆、気をつけて進もう
ニコロソ・ダ・レッコ:
航海士のスキルは使えないけど、ルートの記録なら任せて!
ヴィットリオ・ヴェネト:
ふふふ、私達が迷っても入り口に戻れるように「糸玉」は任せましたわ。
ニコロソ・ダ・レッコ:
はい!任せて♪
リットリオ:
アクィラの偵察情報にトリチェリの現地調査、さらにレッコのナビゲート――よし、希望が見えてきた
ミノタウルスでもセイレーンでも何が来ようと、この迷宮を攻略してみせよう!
「サディアの威光は力のみではなく――」
「私達の誇らしき文化・歴史・芸術、この海と大地の人類の文明の結晶」
「それを知ってもらい、感じてもらい、誇りに思ってもらってこそ」
「サディアの威光が広まる、ということになりましょう」
「私、ヴィットリオ・ヴェネトはそう考えております」
アクィラ:
伝説の迷宮なんて誰も入ったことなどありませんけど、多分こんな感じなのでしょうね
壁の高さもそうですけど、量産艦が航行できる広さなのに、ここまで威圧感があるなんて……
セイレーンはもしかして奪った芸術品から何か学んだのかしら…
リベッチオ:
サディアの芸術品から恐ろしい新兵器を開発したーっ!って感じかな
ヴィットリオ・ヴェネト:
それは流石にないと思いますね…この迷宮はスケールが大きいですが、そこまで手の込んでいるものには見えませんわ
各海域に現れる新型セイレーンの話も、聞いている限り性能のみの強化がほとんどですし
芸術的な意匠を取り入れたって話は聞いたことがありませんわ
アクィラ:
セイレーンと芸術的な意匠ですか…そういえばセイレーンって言葉はこの海と馴染み深いですよね
この呼称はどこから来たのかしら?
ヴィットリオ・ヴェネト:
さあ…?セイレーンの中でコミュニケーションが取れる個体もいるし、自称もありなのかしら
実際上層部の資料の中には自称と書いてる資料があるのかないのか、うーん
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
常識的に考えて自称などありえないだろうな
リットリオ:
どうだろう。現れて数十年ずっとこの呼称で「慣れ親しんできた」というのに、未だに誰もそのオリジンがわからないとは――
アクィラ:
流石におかしい、と気づく方もきっといますよね
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
そこは私達の領分ではない、というのが一応の上層部の主張なのだが
リットリオ:
気になるだろう?セイレーンのオリジンって。一体なぜこのサディアとゆかりのある「セイレーン」という名前なのか
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
…こちらの知識の範疇外だから考えても仕方ない気がしなくもない
リットリオ:
もしここにいる者の中でそれが分かるようなことがあったら、真っ先に元老院の研究部門が動くだろうからな
アクィラ:
……動くとは、一体どういう……?
リットリオ:
「研究の知見として詳しくお話を聞かせていただきたい」と、親切な誘いかもしれないよ
ヴィットリオ・ヴェネト:
(セイレーンに関する研究ですか…気になりますけど、私達でどうこうできるものではありませんね)
(女王陛下やビスマルクならなにか知っているのかも?んー彼女たちは彼女たちで科学的にしか見ていませんね)
リットリオ:
どの陣営の上層部もセイレーンの研究に夢中だが、それは公然の秘密だ。別に隠すようなものではない
ヴィットリオ・ヴェネト:
(まぁ、こちらの知っている限りどこもセイレーンのオリジンを突き止めていないようですね)
ニコロソ・ダ・レッコ:
ではここでこの航海士レッコが新説を発表するとしよう!
伝説の中のセイレーンは歌とかを使って航海士たちを海へと誘い込む
アクィラ:
うんうん、確かにそういう感じのお話でしたね~
ニコロソ・ダ・レッコ:
そしてあたしたちの敵であるセイレーンは何かしらの方法で船を鏡面海域へと誘い込む
ヴィットリオ・ヴェネト:
海の中と鏡面海域を比べるのはどうなんでしょう…?
ニコロソ・ダ・レッコ:
誘い込まれることは…まあどっちもどっちで大変だけど、要はこんな感じで共通点があるってことよ!
航海士のレッコ的に、鏡面海域は航路から外れるわ、普通の航行もできなくなるわで、ただの遭難よりずっと危険だって感じね
あれ?そう考えると、化け物というより天災に近い…?のかも…?
ニコロソ・ダ・レッコ:
次の交差点は取舵一杯でお願いしまーす!アクィラさんも、艦載機をお願い!
ヴィットリオ・ヴェネト:
(艦載機で空中から様子を見ながら、レッコの方向感覚を頼りに進んでいるけど、上手くいっているのかも?)
アクィラ:
ヴェネトさん、前方にセイレーン艦隊の反応です!こちらの進む通路の真っ正面に待ち受けているようです…!
あまりはっきりとは見えませんけど…このカラーリング、新型のセイレーンだと思います!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
セイレーンの新型だと!
リットリオ:
こ、この悪趣味なカラーリング…いや、どことなく「サディア風」に見えなくもない
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
トリチェリ曰く、見た目だけ新型、ということらしいが
ヴィットリオ・ヴェネト:
もしやセイレーンも我がサディアの威光に感動して量産艦の塗装を――
リットリオ:
なるほど、芸術品を奪ったセイレーンが芸術品の偉大さに圧倒された…か、いかにも貴方らしい発想だな
しかしだからといってセイレーンに我がサディアの意匠をこうもチープに使われるのは不愉快だな
ヴィットリオ・ヴェネト:
まあまあ…………
リットリオ:
こういうまがい物ではなくこのリットリオが率いる艦隊こそサディアの正統なる威光の継承者――
そしてサディアの威光を広めるのによその手を借りることなど不要である
仮にサディアに関係なく本当にこのようなカラーリングを採用してたにしても、そこはセイレーンではなく我がサディアの艦船たちがすべきだ
ヴィットリオ・ヴェネト:
さっき悪趣味だと言っていたのはどちらさまでしたでしょうかー?
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
自ら進んで動く的になるのは感心しないな
アクィラ:
目立っちゃうからしょうがないですね…この色合だからこそ早めに発見できましたし
トリチェリ:
う、海の中からだとわからない……ふふふ……
リットリオ:
(それはそうと…いや待て、もしかしてこいつら、わざと目立つ塗装で我らを誘い込もうとしている…!?)
(今の戦力ならこの程度の量産艦程度いとも容易く蹴散らせるから、気に留める必要もないはず)
(しかもアクィラの艦載機からでもわざわざ「見える」ぐらい目立っているから…やっぱりこの塗装の威力は侮れんな……)
ヴィットリオ・ヴェネト:
(うーん、この塗装はあとでリットリオと本気で検討してみようかな……)
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
トリチェリの言った通り、ただの「見た目だけ」の新型だな
全く、塗装程度変えたところで、このサディアの総旗艦もいる主力艦隊に――
アクィラ:
アブルッツィさん、ヴェネトさん、すみません…!
ぜ、前方にロイヤルの艦船たちがいるようです!
ヴィットリオ・ヴェネト:
ロイヤル艦隊はたしか地中海の西側にいるはずです。こんなところにいないと思いますが……
リットリオ:
あのシニョリーナたち、もしやこのリットリオの助けを待っている――
ヴィットリオ・ヴェネト:
ロイヤルの艦隊が私達に全く気付かれもせずサディアの主要航路を通ってここにたどり着くなんてあり得ます?
リットリオ:
ないな。じゃあ答えがわかった。例のセイレーンの「駒」というやつか
ヴィットリオ・ヴェネト:
アクィラ、すみません、艦載機からどの艦がいるか見えますか?
アクィラ:
はい、ちょっと艦載機を近づかせてみますね
イラストリアスにウォースパイト、フォーミダブル…あとは巡洋艦と駆逐艦が何隻か…
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
あの悪趣味のサディア塗装に「駒」と来たか
ヴィットリオ・ヴェネト:
「鏡面海域」と呼ばれる理由ですね
リットリオ:
まあ、もしこちらの戦意を削ぐ狙いだったら見当違いだな
(確かにあの「再現」では手ひどくやられていたが、今は陣営間の争いを考えるときではない)
(他の陣営はともかく、サディアは「駒」程度で心を揺さぶられるようなヤワなものではないというのをセイレーンに思い知らせるまでだ)
(とはいえ、同じ顔の者が敵に回るのは心の準備がないときついな)
(あの装甲空母姉妹たちもこのように戦っていたことを思えば……)
ヴィットリオ・ヴェネト:
トリチェリは空母の注意を引いて、アクィラの艦載機が戦いやすいように牽制をお願いしますっ!
ほかの艦船は戦闘陣形での応戦を!サディアの威光をセイレーンの偽物に知らしめるのです!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
「駒」たちを全部撃退した。こちら側の損傷は?
マエストラーレ:
かすり傷程度でしたら、いくつか……
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
やはり本物のロイヤル艦隊とは全然別物だな
「駒」というのは私達艦船の模倣だと聞くが、これではあまりにも雑だ
(普通は相手の行動に応じて戦い方を随時切り替えるものだが、この敵たちにはそれがない)
(そう、まるで「意図」を持って戦っているような気がしない相手だ)
ふん、本物のロイヤル艦隊相手でも、こちらだけで勝てるかどうか知りたいものだ
ニコロソ・ダ・レッコ:
この程度の敵、レッコと仲間の前に何度現れようと……わわわ?!
リベッチオ:
迷路の壁が…変わった…!
迷路を構成する「壁」が一呼吸のうちにガラリと変化した。
先程まで重厚な壁に囲まれていた通路の方向が一気に変わり、まるで違う迷路に入ったかのようだ。
艦載機で迷路の様子を観察していたアクィラはもちろん、サディアの艦船たちもみな目の前の出来事に途方に暮れていた。
ニコロソ・ダ・レッコ:
せ、せっかく考えた迷路攻略ルートが台無しだああ!
マエストラーレ:
うっ…元々アクィラさんの艦載機のおかげでなんとか正しそうな通路を進んでいましたのに…
もし迷路の通路がこのまま変わるのであれば空からの偵察も無理ですね…
トリチェリ:
で、でも…大丈夫だと思うよ…
今はみんな、迷路の奥にGBたちがいると思って…進んでいるよね…?
ええと、その迷路が変わるというのなら、何かを隠している…つまり、正しい方向に進んでいる気がする…
ヴィットリオ・ヴェネト:
もしくは「駒」などで誘い込んで、ここで迷路を変えさせ私達を迷路に閉じ込めるのですね
トリチェリ:
う、うん…だから、で、でも出口への道は変わっていない…よ?
リベッチオ:
つまり、あたしたちを迷わせるというより、何かに近づけさせないために迷路を変えたの?
マエストラーレ:
もし本気で閉じ込めるのなら、アクィラさんの艦載機が一番先に狙われますよね…
ニコロソ・ダ・レッコ:
むむ…いずれにしてもここは進むしかないよね!
アクィラさん!引き続き空からの偵察を頼むっ!
アクィラ:
はい!迷路の構造が変わりましたけど、私達の居場所と入り口まで戻る経路はしっかり把握していますから、安心してください!
「芸術品も取り戻す、GBも救い出す」
「艦船たちを率いる総旗艦として、両方考えなくてはなりません」
「こちらが緊張しすぎても皆の士気にも影響しますし」
「気楽になりすぎても警戒心が緩んでしまいます」
「その点ではリットリオはとても安心できますね」
「だって彼女は普段からいざというときに」
「しっかりと真面目になれるって評判ですから」
リベッチオ:
マエストラーレ、さっきから同じ場所でぐるぐる回っている気がしない?
マエストラーレ:
どうでしょう…この迷路の風景はどこも似ていますから、気のせいかもしれません…
伝説のクノッソス迷宮も、その虚々実々の無数の分かれ道で設計者すら閉じ込められそうになったって…
トリチェリ:
か、壁が変わるのは想定できないけどね……
ニコロソ・ダ・レッコ:
いざというときは直感頼りにすることも考えないと…恐るべし……
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
この迷路が実験場というのなら、参加者が踏破出来るかどうかも含めてセイレーンの実験の一環だ
この貴きドゥーカ・デッリ・アブルッツィをモルモット扱いとはいい度胸だ
アクィラ:
戦う相手だけではなく、試してくる相手でもあるのがセイレーンの恐ろしいところです
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
ああ、道理で私達がずっとセイレーンには「勝つ」事ができないわけだ
トリチェリ:
き、気になるね…セイレーンは「実験」で何を知ろうとしているのか…ふふふふ…
「目的」がないと、こうした「実験場」のような鏡面海域は作らないし…
カラビニエーレが行ってたあの鉄血の鏡面海域も、艦載機の性能?を検証するところだったんだよね…
ふふ、ふふふ……き、気になるなー…セイレーンの目的……
ヴィットリオ・ヴェネト:
各陣営の連絡会議でフリードリヒと何を話していた、ですか?リットリオにしては珍しくそんなことを聞いてくるのですね~
リットリオ:
政治や上層部の話とかは興味ないけど、総旗艦殿にいざというときに何かがあったらどうする?
ヴィットリオ・ヴェネト:
そこはリットリオが私の代わりに皆を率いてくだされば大丈夫ですよ~
概ねカラビニエーレちゃんが行ってたあの鏡面海域のことですね。あそこでセイレーンと戦っていたらしくて
鉄血の空母ペーター・シュトラッサーの活躍とか、そしてうちのカラビニエーレも多いに役に立っていたとか
セイレーンの技術を吸収していたのは分かっていましたけど、鏡面海域を丸々支配下に収めていたのはさすがですね
リットリオ:
そこが気になっている。ヴェネト、鉄血とセイレーンの関係が本当にただ「鹵獲した技術を利用している」だけだと思ってないだろうね
同じ鹵獲した技術を使っているという北方連合と比べてもいくらなんでも進みすぎだよ
ヴィットリオ・ヴェネト:
まあまあ、そこは私達だけで邪推しても仕方がないことではなくて?
そういえばリットリオはフリードリヒがサディアで見学していることを気にしていましたね
リットリオ:
全く呆れたものだよ。まさかヴェネトがすんなりと自由を許していたとは
ヴィットリオ・ヴェネト:
もしかしてまずかったのですか…?
リットリオ:
………おいおい、今更気づいたのか…?
ヴィットリオ・ヴェネト:
ううん、そこは流石にわかっていますわ。サディアの上層部の話を色々と探っているらしいですよ
リットリオ:
道理であんなトンチンカンなことを言いだしたのか…ヴェネトがわかっていればいいが
ヴィットリオ・ヴェネト:
もしかしてリットリオもフリードリヒと話したりしていました?
リットリオ:
ああ、上層部についてどう思うかとか、サディア帝国の威光をもっと広めたくないかってね
帝国の威光を広められるのはありがたい話だが、上層部のいざこざに巻き込まれるのは御免だ
ヴィットリオ・ヴェネト:
あら、あの方も意外とそんな話を簡単にするのですね
リットリオ:
そういうところはヴェネトと一緒さ。気楽なのか打算的なのかわからない――ヴェネトはわかっているけど
ヴィットリオ・ヴェネト:
ふふふ、せっかくの提案は嬉しいですけど、サディア帝国の威光は私達の手で広めるべきですよ
大陸と島をつなぐ航路は文明の風の運び手――この航路を平和にしてこそ、サディアの栄光をもっと多くの人々に知ってもらえるのです
リットリオ:
ああ、そしてこの地中海だけではない。エウロパ大陸…いや、世界中に私達サディア帝国の素晴らしさを知ってもらわなくてはな
(この思いと願いが私達の戦う理由、そして私達が戦う兵器だけじゃないことの証明)
(この迷路を突破し、芸術品を奪い返すことがどれだけ重要なのか、言わなくても皆わかっているさ)
(どんな困難と敵が待ち受けていようと私達の目指す先は決してブレることはない……!)
アクィラ:
前方にロイヤルの「駒」がいます!規模と配置はさっきのと同じですわ!
ニコロソ・ダ・レッコ:
さっきのと同じ…?
リベッチオ:
「この程度の敵、レッコと仲間の前に何度現れようと……」って言ったからじゃない?
ニコロソ・ダ・レッコ:
まさかのレッコのせいだー!
マエストラーレ:
……違いますっ!リベッチオの冗談ですから!
ニコロソ・ダ・レッコ:
うーん、本当だったらいいのにね…レッコのアイデアをもしセイレーンが採用するというのなら――
この迷路を解除して!はい!お願い!
……………………
ニコロソ・ダ・レッコ:
セイレーンの分からず屋ー!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
落ち着け。こんなことをしていてもセイレーンに笑いものにされるぞ
私達をからかおうが試そうが、簡単にくじけないことを示すまでだ
リットリオ:
良いことを言うわね!とことんセイレーンの「駒」とやらに付き合ってあげようじゃないか
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
よし、片付けたぞ
リットリオ:
この私リットリオ、そしてヴェネト、さらに空母のアクィラもいるサディア主力艦隊の前では、「駒」なんか所詮足止め程度ね
アクィラ:
空中支援のほうは任せてください。迷路の偵察と支援、両方がんばります
リットリオ:
あはは、あまり無理をしすぎないようにな
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
これが何回目の敵だったのかもう数えるのも面倒だな
(迷路が変わる度に新しい敵が出てくるような気がする。そろそろ弾薬も気にしないといけないな)
ニコロソ・ダ・レッコ:
みんな、こっちだよ!
リベッチオ:
マエストラーレ、ついてきてー!
マエストラーレ:
リベッチオ、先を急ぎすぎよ…!
リットリオ:
アクィラの見立てでは既にかなり迷路の深部へと入っているという
しかしここまで探索の成果はなし……ふぅ、そろそろ周りの状況を一回確認したほうが良さそうだ
ヴィットリオ・ヴェネト:
気をつけてね、リットリオ、セイレーンの布陣は不気味ですわ
リットリオ:
言われなくてもわかっているさ、この「駒」相手の勝利に驕りを覚えるほど薄っぺらくなんかない
ヴィットリオ・ヴェネト:
奥に鏡面海域の制御装置があったら、そろそろ敵も本気を出してきてもおかしくはないはずですね
リットリオ:
心配するな。ここには仲間たちがいるし、いざというときの脱出路もしっかりと見定めている
総旗艦殿らしく、いつもの余裕で安心して指揮するといい
サディア艦隊の迷路攻略はまだまだ続く。
サディア艦隊はエーゲ海の鏡面海域にある迷路を着々と進んでいる。
入り口に入ってから既にかなり長い時間が経過しており、「駒」によって編成された艦隊も何個も撃破した。
そして、「駒」の艦隊を撃破する度に、迷路の壁――迷路そのものの構造が変わっていった。
トリチェリ:
(おかしいね…迷路が何回も変わっているのに、目的地に向かって進んでいる気持ちも強くなってる…)
(もしかしてこの迷路、本当にあたしたちをどんどん奥へと誘い込もうとしているのかも……)
(でも困ったね…行かないとGBと芸術品を回収できないし…ふふふふ…ここはヴェネトさんにちょっと聞いて)
ヴェネトさんってセイレーンの歌は知ってる…?
ヴィットリオ・ヴェネト:
どうしたの、急に?
トリチェリ:
か、考えすぎかもしれないけど、あたしたちが迷路の奥へと進もうとしている気持ちがね…
ふふ、ふふふ……もしかしてセイレーンに利用されているかもって…
ほら、アクィラの艦載機の目もあの目立つ敵や、「駒」に引き込まれているのでは……
ヴィットリオ・ヴェネト:
………………自覚しないうちに、ですね?
トリチェリ:
か、考えすぎかもしれないよ?あたしもヴェネトさんも普通に喋れてるし…
ヴィットリオ・ヴェネト:
(トリチェリの言う通り…この迷路の奥へと進む手がかりはほとんどが「敵」から与えられている…)
(……やっぱり迷宮に入るのは迂闊だったのでしょうか。ううん、それでも…)
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
ヴェネト殿、この先の敵は既にリットリオ殿が倒しました
アクィラ:
敵を倒してどんどん前へと進むのはとても気持ちいいですね
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、そうですね。…リットリオ?
リットリオ:
どうしたの、ヴェネト。私たちの戦果を確認しに来たのかな?
ヴィットリオ・ヴェネト:
いいえ、一つだけ確認しに来ましたわ
――私達が進んでいる方向は、どうして正しいと言えるのでしょうか?
リットリオ:
それはこの奥に進めば、芸術品の輸送船を守るGBがいて、彼女を救出して作戦を完遂するから…
いや、鏡面海域の制御装置も一番奥にある可能性が高いと言ったな
あれを破壊できれば鏡面海域を消失させることができて、地中海を脅かすセイレーンを一掃できる――
ヴィットリオ・ヴェネト:
そこですよ。私たち、この作戦の目的と迷路を進むという手段を履き違えていませんか?
リットリオ:
ヴェネト、今更何を言い出すんだ……あっ
(仲間たちと一緒に進んでいるルートだが、このルートは「迷路の奥へ続く」以外何もわかっていない)
(そして私達が敵と戦って勝つことで、自分たちの道は正しいと信じて疑わなくなっている)
アクィラとレッコの案内を、自分の誤った方向を正当化しようとしている…
ヴィットリオ・ヴェネト:
別にアクィラとレッコが悪いと言うつもりはありません
リットリオ:
もちろんだ、この作戦に参加している仲間たちの働きに文句のつけようはない
ヴィットリオ・ヴェネト:
ですが、仲間たちを正しい、そして自分のしてきたことが正しいと思い込んでいるから
私達は「迷路の奥へ進む」という手段と「GBを助けて芸術品を取り戻す」という目的を入れ替えてしまっているのですよ
確かに、最初は迷路に入るしか選択はありませんでしたが…
それでも迷路が一回構造を変えた時に、本当に正しいかどうかを分析しなければなりませんでしたね
出口への道が変わっていなかったことでの安心感
そして仲間たちの努力を否定したくない想い、勝利が続いたことでの驕り、慢心……
ごめんなさい。私は皆を上手く導けませんでしたね
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
ヴェネト殿……
ヴィットリオ・ヴェネト:
(まだ事態は最悪の状況にはなっていませんけど、このままひたすら「勝利を追っていく」状況はなんとしても避けないといけませんね)
(接敵する度に弾薬が消費しますし、またいつまでも警戒して航行しているようでは体力がもちません)
(それと、アクィラたちはまだ大丈夫なようですが、いつまでも目的地のないまま探検するのは望ましくありません)
(セイレーンの実験場であることを、ついつい忘れてしまっていたからでしょうか…)
(GBの状況、そして芸術品のことも心配ですけど、仲間たちを失う危険を冒してはならないですよ、ヴェネト)
(いつもはリットリオのことをちょっとせっかちかなーって思っていましたけど、今日の作戦は完全にこちらの失敗ですね)
(思えば入り口でリットリオとお茶会を開いて休憩していなかったら、今頃どうなっていたのでしょう…トホホ)
リットリオ、この作戦を完遂させるには貴方の力が必要です
リットリオ:
わかっているよ。貴方が掲げてくれた理想のために皆集まっているのだから
そしてこうなったのは貴方だけの責任じゃないよ。せめて半分はこのリットリオに託してほしいものだ
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
このドゥーカ・デッリ・アブルッツィも敵を侮っていた。反省をせねば
アクィラ:
アクィラも迷路を俯瞰できたはずなのに、それをせずに……
ニコロソ・ダ・レッコ:
航海士レッコ、修行し直しになりそう…
リベッチオ:
は、反省会ムード!?
ヴィットリオ・ヴェネト:
もう、皆までしんみりモードですか?仕切り直しを決めたのですし、気持ちも新たにしませんと
リットリオ、ここは元気よく――皆に出航の号令を!
アクィラ:
セイレーンの「駒」がまた現れました…!
ニコロソ・ダ・レッコ:
ど、どうするの!?やっぱり倒す?
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
ヴェネト殿、私に一案がある
この敵には「戦いの意思」がない。一度仕掛けず、ただ通り過ごしてみてはどうだ?
アクィラ:
本気ですか?ここの通路は広いと言っても、すれ違った時に攻撃されたら――
リベッチオ:
マエストラーレ、ほーい!こっちよー!
マエストラーレ:
リベッチオ……危ないよ!
ヴィットリオ・ヴェネト:
………!リットリオ!
リットリオ:
まさか本当に攻撃してこないとは…!
「ヴェネトさんは芸術品とか結構好きな方?」
「どうかしら…芸術品が好きというより、サディアのことが好きですね」
「それって食べ物とか、お風呂とかも?」
「ええ…そして、GBたち仲間のことも好きですわ」
マエストラーレ:
「駒」を倒さなければ、迷路が変わる可能性もほぼなし…っと
でもこの道を塞いでしまうようなセイレーンはどうすれば……
ニコロソ・ダ・レッコ:
避けて通るのは無理ね…さっき来る途中にはいなかったから、もしかしてセイレーンの嫌がらせかも…
前も後ろも塞がれてるし…
マエストラーレ:
後ろに出てきたセイレーンを倒したことはありませんね…
リベッチオ:
そうだよ!もし倒して帰り道がなくなったら大変だよ
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
糸玉の裏技を使わせてくれるほど、セイレーンはお人好しじゃないってことさ
もっとも、今の目的が入り口に戻る、という意味ではないがね
リットリオ:
ああ、最短経路で迷路の「奥」でも「入り口」でもなく「中心部」に向かうんだ
ヴィットリオ・ヴェネト:
その「中心部」の場所もアクィラの艦載機で把握できましたわね
アクィラ:
名付けてイカルスの翼作戦、ということですわ♪
ヴィットリオ・ヴェネト:
そうですね。アクィラの艦載機で私達を直接連れて行ってもらいましょう
アクィラ:
はい!未熟者ですがこのアクィラにお任せくださいませ
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、迷路のセイレーンと戦わなければ中心部への距離も最小限にすることができますわ
リットリオ:
ちょっと待てヴェネト…まさかとは思うが…艦載機に私達を乗せる気!?
ニコロソ・ダ・レッコ:
そんなのありなの!?
トリチェリ:
べ、べつにできなくはないけど……この場でやるのは無理かも…
アクィラが一人で取り残されるし、何より戦闘用の艦載機は旅客機とかとは違うから
いくら艦船でも訓練なしでやるのは危険…ふふ、ふふふふ……
ヴィットリオ・ヴェネト:
(本当はそれをやりのける方はいますけど、あの方は色々と規格外ですしね…)
もちろん艦載機に乗せるようなやり方ではありませんよ。ええと、なんといいましょう
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
……なるほど、セイレーンを「撃破」すると迷路が変化するのを利用するのか
ヴィットリオ・ヴェネト:
まず、私達の目的は迷路を進むのではなく、迷路に隠されているかもしれない、GBや芸術品を確保すること
そしてこの迷路はセイレーンを倒すと変化し、中心部への距離がどんどん遠くなる
ここまで、私達の中では「セイレーンを倒す」ことを目的としてしまい、結果的に私達はいつまでも目標地点までたどり着けませんでした
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
これからは戦うことを考えず、迷路を踏破することだけに集中するのだな
リットリオ:
セイレーンと交戦せず、一直線で中心部に向かい、どうしても道を塞ぐ敵は水上機や艦載機で遠く引き離す
まあ、向こうが素直に釣れてくれればいいけど、だめな場合に備えて、一応戦闘態勢も取っておこう
というわけで総旗艦が言った通りだ、早速ここの道を塞いている敵で試してみよう
30分後――
リットリオ:
うっ、流石にいきなりそううまくはいかないか
ヴィットリオ・ヴェネト:
量産艦を睨みつけながら無防備で通り抜けるのはやはり抵抗がありますね…
トリチェリ:
ふふふ…じゃ、じゃあちょっとだけボコボコにすればいい気がする……
ヴィットリオ・ヴェネト:
迷路が変わるのは、セイレーンに攻撃したときではなく、セイレーンを「倒した後」ですね
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
………そういうことか
ヴィットリオ・ヴェネト:
はい、親善試合や演習みたいに「戦っても結局お互い無傷」であれば、セイレーンが結果的に動いてくれるってことです
アクィラ:
なるほど、「ギリギリ倒せそうな程度にとどめて倒さなければ迷路が変わらない」という状況を作るのですね
つまり…こちらも本気を出さずに追っ払うだけですね
リットリオ:
まあ、本音を言えば今は迷路が変わるリスクを背負ってまで「ここのセイレーン」と戦う場合ではないな
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、中心部に鏡面海域の制御装置がもしあるとしたら、それを守るためのセイレーンも当然いるはず
そこまでに戦力の温存もしておきたいですから、ここはなんとか我慢してください
トリチェリ:
ふふふ、せ、潜水艦なら潜るだけでも通れるね……
リットリオ:
この艤装を背負って潜るのは艦載機に乗るよりも難しそうだ。…よし、出発するぞ
リベッチオ:
あいたた!マエストラーレの艤装に頭ぶつかっちゃった……
マエストラーレ:
リベッチオ!?ちょっと見せて…ふぅ…たんこぶができただけですから、大丈夫ですよ
アクィラ:
アブルッツィの言う通り、脅威とみなされなければ向こうも本気を出さないのですね
リットリオ:
何かしないと通れない以上、これが最善策だと思うよ
ヴィットリオ・ヴェネト:
迷路の様子は大丈夫?みんな、このまま中心部まで突っ走りましょう!
アクィラ:
見えました!サディア上層部の特別輸送艦で間違いありません!
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
よし、ようやく見つけることができたか
アクィラ:
護衛の艦船もいます!うちのジョベルティと…あら、北方連合の子のようですね…
ヴィットリオ・ヴェネト:
(この間の連絡会議でソユーズと一緒にやってきた子かしら…どうしてここに?)
(ううん、考えるのは後にしましょう。今はGBの救助が先ですね)
近くにセイレーンがいたりしますか?
アクィラ:
はい…!二人と対峙している人型個体の姿が見えます!
量産艦が何隻いるか、今の高度からだとよく見えませんね……
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
やっぱり迷宮に化け物がつきものなのは本当だったか
温存していた戦力を解き放つ時が来たようだ。ヴェネト殿、戦闘準備は大丈夫だ
ヴィットリオ・ヴェネト:
ええ、悪いことが起きる前に急ぎましょう!
そして卑怯にもサディアの宝を奪ったセイレーンに、サディアの威光を見せてあげましょう!
ヴィットリオ・ヴェネト:
セイレーンの上位個体、テスター……
サディアの輸送船を襲い、護衛の艦船をここに連れてきたのは貴方ですね
テスター:
………いいわね。予測していたデータと全く変わらなかった
いいや、少しだけ上回っているのか。誤差程度ではあるけど
ヴィットリオ・ヴェネト:
…やっぱり。貴方は名前通り、あくまで私達を実験のモルモットとして扱っているようですね
鏡面海域を作り出し、航路を襲ったのも私達を誘い出すためなのかしら?
テスター:
閉鎖環境での不完全の「再現」によるテスト、条件設定はノーマル、そして不確定要素の「モノ」も「ヒト」もなし
あの重桜の空母で観測できた現象はやはり「極めて特殊」と判断すべきね
ヴィットリオ・ヴェネト:
私の質問に答えないのですか?テスター
テスター:
データのアップロード開始。このボディはこの後ジャミング兵器のテストに好きに使いなさいな
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
こちらのことを完全に無視しているな。どこまでもなめてくれる
アクィラ:
他の陣営でも「テスター」と名乗っている個体と遭遇したことがあるようですけど、それらは意思疎通が可能だったそうです……
ヴィットリオ・ヴェネト:
地中海に現れる「個体」はこんな感じという可能性も……
リベッチオ:
ヴェネトさん!GBたちと輸送艦の退避が完了したよ!
マエストラーレ:
私たちを退避させているのですか…それとも単に私達に興味がないとも…
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
剣を構えていない相手を裏から刺すのは好かんが、セイレーン相手に使える手を選んでいる余裕はない
トリチェリ:
ぎ、艤装のパーツ…もしよければ、ふふ、ふふふふ…回収してくれたら…ふふふ…
テスター:
兵装テスト設定完了、ジャミング音波砲撃兵器、稼働開始――
ニコロソ・ダ・レッコ:
いきなりこちらに砲を向けてきた!
トリチェリ:
あわわ、やはり戦わないといけないよね…!
ヴィットリオ・ヴェネト:
先に攻撃してきたのがそちらなら…!各艦、セイレーン上位個体テスターを撃破せよ!全砲門、発射用意!
リベッチオ:
わわ!?艤装の電子機器がさっきからずっと調子が悪いよ!
マエストラーレ:
こちらも!武装の制御も難しくなっています…!ど、どこに問題が…?
トリチェリ:
これがセイレーンの秘密兵器の力…!怖いけど、わくわく…ふふ、ふふふふふ……!
ニコロソ・ダ・レッコ:
航海士を惑わすセイレーンの歌か!全然聞こえないけど…!
トリチェリ:
た、多分電磁波か何かの特定の周波数で鳴らすような兵器だから、普通のヒトなら聞こえるはずがないよ…
でも兵装の精密機器には効果がバツグンで……こ、怖い…
ヴィットリオ・ヴェネト:
(セイレーンと呼ばれたのはこの兵器があったから、ということだったら皆納得できますね…)
ヴィンチェンツォ・ジョベルティ:
ヴェネトさん!リットリオさん!ヴィンチェンツォ・ジョベルティ、只今艦隊と合流完了!
リットリオ:
GB!被害は大丈夫か?無理しなくていいから!
ヴィンチェンツォ・ジョベルティ:
大丈夫よリットリオさん!GBだけでなく輸送艦も頑張ってなんとか守り抜いた!
だけど気づいたらここに放り込まれてて、もう2日間だよ!お腹がもうペコペコ…
リットリオ:
本当はGBと輸送船が襲われたあとすぐ駆けつけたかったが、色々あって一日遅れてしまったよ…
すまない、あとでヴェネトと一緒に謝らせてほしい
…それと貴方は…?
ストレミテルヌイ:
北方連合所属、駆逐艦のストレミテルヌイだよ!今はソユーズさんから任された外交任務を遂行中!
…と思ったらセイレーンに鏡面海域に連れて来られて…あぅ…
ヴィットリオ・ヴェネト:
(ソユーズのお付きの子…これは意外ですね…)
サディアのせいで巻き込んでしまってごめんなさい。ここの作戦が無事終了しましたら、ぜひ帝都にご招待させてください
今は戦闘中ですから早く退避を――
ストレミテルヌイ:
セイレーンをやっつけるのはあたしたち北方連合も得意よ!
それに助けてもらったお礼もちゃんとしないとね!
だからあたしにも一緒に戦わせて!あの悪いセイレーンに雪玉ちゃんの力を思い知らせてやるわ!
―――――!
テスター:
兵装出力、70%に低下――テストは早く終わらせたほうがいいわね
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
テスターの力はともかく、このジャミング兵装のせいでこちらが全力を出せないことが憎い…!
やつの艤装にあるジャミング兵器を早く破壊しないとこちらの戦いは不利だ!
アクィラ:
ここの空に靄がかかっています…!対空なら大丈夫ですけど、爆撃はよく見えるようにしないと…
ヴィットリオ・ヴェネト:
(この中心部は輸送艦や量産艦がかなりの数停泊できる広さ、靄の掛かったままでテスターに当てるのは不可能に近い…)
(冷静になってヴェネト、どこかで解決法があるはず…ソレさえ見つけることができれば……)
リットリオ:
ヴェネト、一旦下がって戦場をよく見てくれ!こちらはなんとか持ちこたえる…!
アクィラ:
リットリオさん?一体何をなさるおつもりで…
リットリオ:
何って今まで通りさ。ヴェネトは指揮、そしてこのリットリオが現場を持たせる――各艦、当たらない攻撃は一旦止めて回避運動に専念しよう!
アクィラ:
はい、ヴェネトさん、リットリオさん、よろしくおねがいしますっ
リットリオ:
さあ、総旗艦らしく冴えた采配を見せてご覧なさい…!
ヴィットリオ・ヴェネト:
(アクィラの艦載機にとってテスターを視界内に捉えるのに邪魔な「靄」……よし!)
リットリオ、皆にテスターのいるところの上に向けて撃つように!時間も合わせて!
リットリオ:
どうしてそこを狙わないといけないのか理由はわからないけど、ここは貴方を信じることにするよ!
皆も総旗艦殿の指示をよく聞いたな?テスターに当たらなくていいから最大仰角で撃て!
アクィラ:
ありがとうございます!場所は捉えさせていただきました!
爆撃機、戦闘爆撃機全機、突っ込みます…!!
リットリオ:
(そうか!靄を消すのではなく、上に届いた爆煙を目印に爆撃機を突入させることで視界を確保するのか!)
(だが精度はどうやって確保する?!いや、これは力技で集中爆撃か…!?)
ヴィットリオ・ヴェネト:
爆撃機が来ます!テスターが逃げられないように牽制砲撃も頼みます!
サディアの威光に触れた罰を受けなさい!セイレーン!!
アクィラの爆撃がジャミング兵器を破壊したかどうかは定かではなかったが、集中爆撃の威力がテスターを撃退したのは確かだった。
そしてテスターの離脱とともに、航路を脅かす鏡面海域――巨大迷路もまた蜃気楼のように消えていった。
残されたのは量産型セイレーンの残骸と漂流する資材、そして退避したサディア上層部の特別輸送船だった。
ヴィンチェンツォ・ジョベルティ:
ふふん、あたしたちサディア帝国の艦船の力もすごいでしょー!
ストレミテルヌイ:
うーん、たしかに弱くはないけど、でも北方連合と比べるとまだまだよ!
今度北方連合の皆と演習をやろうよ!
ヴィンチェンツォ・ジョベルティ:
わかったわ!忘れちゃダメだからね!
アクィラ:
あら、ふたりともあんなに頑張ったのにまだまだ元気ですね~
ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ:
輸送船の様子を確認してきた。芸術品は全部無事だ
ヴィットリオ・ヴェネト:
ふぅ…よかったです。もし戦いで芸術品に被害が出ていたらどうしようかと……
アクィラも皆もご苦労さまでした。今回の作戦の成功は皆のおかげです
アクィラ:
とんでもございません!作戦を指揮したヴェネトさんとリットリオさん、そして哨戒と戦闘で頑張った皆と比べたらアクィラはまだ全然ダメですわ
これからももっと一流の空母になるよう精一杯勉強させていただきますわ
ヴィットリオ・ヴェネト:
まあまあ、謙虚が過ぎてしまうと変に見えちゃいますよ?ふふふ
(セイレーンの鏡面海域、結局調べる前に消えてなくなってしまいましたわね)
(芸術品とGBも無事でしたし、セイレーンの脅威も一掃できましたし、そして北方連合の子も……)
(あとはいかにして今回の勝利を糧にサディアの威光をより広めるか!を考えなくちゃならないけど……)
ふぅ……久々の実戦でちょっと疲れちゃいましたわ……
リットリオ:
最後はまさに天晴な采配だったな。このリットリオの姉妹艦にして、「サディアの栄光ある総旗艦殿」?
輸送船も救出できたし、あとは報告を上層部に打電して帝都に戻れば一段落ってところかな
ヴィットリオ・ヴェネト:
…………んー実はその件なんですけど
リットリオ:
ん?上層部から何か言われたのか?
ヴィットリオ・ヴェネト:
逆ですね。いつもは受信報告の連絡もありましたのに、全然連絡がつかなくて
リットリオ:
鏡面海域のジャミング効果の余波か?上層部への連絡などすぐじゃなくてもいいんじゃないか?そんなことより……
ヴィットリオ・ヴェネト:
そんなことより仲間への労いですね。女王陛下のプレミアム紅茶、まだ残っているかしら?
「迷路」での戦いより数日前
パーミャチ・メルクーリヤ:
雪玉ちゃん、遊びに来たよー
ストレミテルヌイ:
あ!パーミャチさん!また新しいゲームを買ったの?
パーミャチ・メルクーリヤ:
まあそんなとこかしらね。雪玉ちゃんは最近どぉ?
ストレミテルヌイ:
雪がないのはちょっと退屈だよ…戦闘もないし毎日訓練訓練って
あ、そうだ!パーミャチさんもここが初めてでしょ?色々見回りとかしてみない?あたしが案内するよ?
パーミャチ・メルクーリヤ:
それは…またちょっと後で!旅のあとにまた長歩きすると色々と疲れちゃうから…次の出先もあるし
ストレミテルヌイ:
次のって、パーミャチさんはまたどこかに出かけるの?
パーミャチ・メルクーリヤ:
そうよ?明日にでも出発する予定~
ストレミテルヌイ:
そ、そんなに忙しいのにあたしに会いに!?
パーミャチ・メルクーリヤ:
へへへ、ちょっと久しぶりだったからってのもあるけど、ソユーズから一つ秘密任務の連絡を受けてるの
そう難しいものじゃないよ?このファイルケースの中の書類を届けるだけ……ふはー
うっ、ちょっと眠いわね…説明は後でするから、今は新作を早くチェックするわ!
――――!!
ジュリオ・チェザーレ:
帝都の近海にセイレーンが現れた!?
哨戒する艦隊と防御施設、まさか皆今日休みで作動していないとは言わないでしょうね
ポーラ:
言わないわよ。例の鏡面海域の消滅がさっき確認されたから、そこ以外のどこかから流れてきた雑魚かもしれないわ
ジュリオ・チェザーレ:
ロイヤルにも連絡したほうがよさそうかしら…
とにかく、今は港の安全確保が最優先ね。民間船の避難命令は?
ポーラ:
もう出しているわよ
ジュリオ・チェザーレ:
あとは沿岸砲台が少しは粘ってくれるかどうか…
ポーラ:
残念だけどそう長くは望めないみたいね。私達と違って平時状態から完全作動まで時間がかかるの
ジュリオ・チェザーレ:
今はヴェネトも鏡面海域の件で不在か…
ポーラ:
不在ね。ザラたちは迎撃に出ているけど、まあ機先をセイレーンに制されたってところかしら
ジュリオ・チェザーレ:
まったく、こういう肝心なときに戦力が足りないなんて…
私たちもチビタベッキアから支援しに行く
前の大戦でもセイレーンによる被害を受けなかった帝都が攻撃されると大変なことになるわ
ポーラ:
同感ね。重巡一隻に戦艦一隻、戦力として結構期待されるかもよ
???:
違うわ。支援に行く戦艦は2隻よ
ポーラ:
……あなた…!?
フリードリヒ・デア・グローセ:
鉄血艦隊所属、戦艦フリードリヒ・デア・グローセ
このシンフォニーに私のパートを付け加えてもらえないかしら?
ふふふふふ……
ロイヤル海軍基地
ロイヤル所属の空母・イラストリアスは一枚の招待状の封を開けた。
イラストリアス:
この招待状は…リットリオさまからですわ
各陣営の協同作戦に連絡会議の出席要請…
こうして読んでみると、各陣営の皆の想いもわかりますわ
………………………………
招待状を閉じ、別の一枚の手紙に目を通す。
イラストリアス:
こちらはリシュリュー様からのものですね
鉄血が協力してくださるのはいいですが、もしかしたら裏があるかも…と
上層部が絡んでしまうようなことでしょうか
………入っていいですよ
エイジャックス:
ごめんなさい。東からの連絡ですわ
イラストリアス:
ヴィシア聖座?それともサディア帝国からですか?
エイジャックス:
サディアのほうです。帝都の近くにセイレーンが現れたとのことよ
イラストリアス:
帝都の近くにセイレーン…?一体どこから…
エイジャックス:
詳しいことはわかりませんけど、対処するにも人手がどうやら不足しているようで…
イラストリアス:
わかりました。ありがとうございます
リットリオさまは確かエーゲ海に現れた鏡面海域の対処に向かったとか…帝都のほうは大丈夫でしょうか……
リシュリュー:
「フリードリヒさん、正確に言うと鉄血ですが、まだ私達にもわからないことが多く、同じ想いを共有することができても腹の中を見せ合うにはリスクがあります」
「地中海の平和を守るために、ロイヤル艦隊のマルタでの駐在を継続していただくことができれば、アイリス聖座としては大変嬉しく存じます」
イラストリアス:
………………
どうしたらいいのでしょうか…